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菩提樹荘の殺人 [読書・ミステリ]


菩提樹荘の殺人 (文春文庫)

菩提樹荘の殺人 (文春文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/01/04
  • メディア: 文庫
評価:★★★

臨床犯罪学者・火村英生(ひむら・ひでお)と
ミステリ作家・有栖川有栖(ありすがわ・ありす)の
コンビが活躍するシリーズ。本書は4作を収録。


「アポロンのナイフ」
東京で起こった連続通り魔殺人事件。
その容疑者として指名手配されたのは17歳の男子高校生。
未成年であるがために顔も名前も伏せられていたが、
ネット上では美少年との噂が流れていて、
アポロンというあだ名までついていた。
彼は依然として逃走中であり、
大阪は有力な潜伏先のひとつと見られていた。
そんなとき、大阪で女子高生・八木紫苑(やぎ・しおん)、
そして彼女と面識のある男子高校生・座間剣介が
相次いで刺殺体で発見される。
少年犯罪では未成年の保護と知る権利のせめぎ合いが問題となるけれど
いざ自分が未成年者による犯罪の当事者になったとしたら
どうなるのだろう。そんなことを考えながら読んだ。

「雛人形を笑え」
漫才コンビ・”雛人形” の片割れ、メビナこと矢園歌穂が殺される。
死体は手足を使って奇妙なポーズをとっており、
何らかのダイイングメッセージかとも思われた。
コンビの相方、オビナこと帯名雄大(おびな・ゆうだい)は
高校時代に同級生・小坂ミノリと ”雛人形” を結成したのだが
人気が伸び悩んで小坂とのコンビを解消していた。
そして帯名は、当時 ”モーニング・シャワー” というコンビで
活動していた矢園に声をかけ、彼女もまたそれに応えて
コンビを解消、帯名と組んで新生 ”雛人形” を名乗っていた。
ダイイングメッセージというのは、たいてい
真相が分かってから解釈が確定するもので
解決へ直接つながるものではない(のがほとんど)んだけど、
今回のものについては、火村はちゃんと犯人指摘のきっかけをつかむ。
いささか偶然の産物ではあるけどね。

「探偵、青の時代」
有栖は、大学時代の知人・阿川アリサとたまたま出くわす。
思い出話の中で、アリスは学生時代の火村のエピソードを聞かされる。
大学2年生の11月、犯罪学を履修する生徒たちが
片平という学生の家に集まり、飲み会を開いた。
しかし参加者のうち、岡崎と大友は車で現地に来る途中、
ある ”問題” を起こしてしまう。
その場にいた全員が、それについて口をつぐむことを
暗黙のうちに了承したとき、最後の参加者として火村が現れた。
そしてなんと、彼はその場に着いてわずか15分ほどで
岡崎と大友が何をしでかしたのかを言い当てて去っていったのだという。
一種の倒叙ものなんだけど、文庫でわずか30ページ、
そのうち火村が登場するのはその半分にも満たないが
コロンボ張りの迫力でぐいぐいと真相に近づいてくる。
20歳の火村の切れ味鋭い推理が堪能できる。
でもそれだけだと、火村が人間的にちょっと冷たい印象に
なってしまいそうなんだが、ラストの有栖の台詞が
絶妙に雰囲気を和げる。名人芸だね。

「菩提樹荘の殺人」
大人気のアンチエイジング・カウンセラー、桜沢友一郎が殺される。
現場は《菩提樹荘》と呼ばれる彼の自宅だった。
死体は庭にある菩提樹の脇でトランクス1枚の裸で発見され、
服はその横にある池に浮かんでいたという。
友一郎の仕事関係のスタッフは、彼の姉でマネージャーの亜紗子、
そして秘書兼付き人の鬼怒川正斗(まさと)。
異性関係では、被害者はデザイナーの長束多鶴(ながつか・たづる)と
交際していたが、最近は神戸の良家のお嬢さんである
北澄萌衣(きたずみ・もえ)に乗り換えようとしていたという。
捜査が進み、犯人はこの4人の中にいると思われた。
不可解な状況から導かれる火村の推理が、一人ずつ容疑者を消去していく。
ここでの展開がとても心地よい。本格ミステリはこうでなければ。

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オチケン探偵の事件簿 [読書・ミステリ]


オチケン探偵の事件簿 (PHP文芸文庫)

オチケン探偵の事件簿 (PHP文芸文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2015/09/10
  • メディア: 文庫
評価:★★★

落語に興味がないのに無理矢理オチケン(落語研究会)に
入部させられてしまった学同院大学の学生・越智健一(おち・けんいち)。
彼とオチケンの部員たちが出くわす事件を描いた連作ミステリ。

レギュラーメンバーは噺家・花道家春蔵(はなみちや・はるぞう)の
一番弟子でもあるオチケン部長・岸弥一郎と、
飄々としていて正体不明な中村誠一の二人。
ちなみに越智を含めて部員はこの3人のみである。

本作はシリーズ第3弾、中編2編を収録している。

「幻の男」
学同院大学落語研究会に次ぐ歴史を持つ千条学園落語研究部。
同部は毎年夏に落語の発表会「千条寄席」を開いていた。
岸はそのイベントに呼ばれ、ゲストとして出演することになる。
もう一人のゲストは真打ち・鈴の屋池海(すずのや・いけうみ)師匠。
岸の噺の後、一人挟んでトリが池海という順番。
千条学園落語研究部は全日本学生落語選手権で三連覇中という強豪。
しかし、岸の存在が四連覇を阻むかも知れない。
何らかの陰謀の気配を感じながらも当日を迎えた岸と越智。
本番を迎え、高座に上がった岸は『不動坊』を演じ始めるが、
聞いていた越智は、本来の噺と細部が異なることに気づく。
さらに内容は逸脱していき、後半は『たらちね』へと変化してしまう。
文庫で170ページほどの中編なんだが、この岸の行動の謎は
なんと開始40ページほどで明かされてしまう。
そしてそれは、千条学園落語研究部に隠された秘密が
明かされるきっかけへとつながっていく。

「高田馬場」
学同院大学に1つしかないプールの使用を巡って、
水泳部と水球部の間には確執があった。
そして5日前、水泳部の部室で火災報知器が鳴った。
室内には部室等での使用が禁止されているコンロがあり、
火がつけっぱなしで上の鍋が煮立っていた。
しかしその時間には部員は誰もおらず、何者かの工作かと思われた。
水泳部部長・鴻上は落研に対して事件の調査を依頼してきた。
その翌日、大学のプールに大量の古新聞が投げ込まれていた。
水球部部長・霧ヶ峰をはじめ部員たちは水泳部の仕業だといきり立つ。
単なる二つの部活動の抗争劇かと思いきや、
ストーリーが進むにつれて、大学改革の名の下に
邪魔な団体の淘汰を狙う新学長の存在が浮かび上がってくる。
そしてラストでは、すべての騒ぎの糸を引いていた
意外な人物の存在が明かされる。

基本的には一話完結なのだけど、サザエさん時空(笑)ではないので
作品内では巻を追うごとに時間が経過しており、
どの巻から読み始めても大丈夫、とはちょっと言いにくい。

前巻から繋がっている部分(特に中村が関係するところ)もあるし、
新学長と落研の関わり(対決?)は次巻以降に持ち越されるし。
もしこれから読もうという人がいるなら、
できれば第1巻から順番に読むことをオススメする。

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創薬探偵から祝福を [読書・ミステリ]


創薬探偵から祝福を (新潮文庫nex)

創薬探偵から祝福を (新潮文庫nex)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/11/28
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

患者数の極めて少ない、稀な病気の治療法の開発は
製薬会社の採算が取れないためになかなか進まないようである。

本作では、作品内設定として
『URT (Ultra Rare-disease Treatment)・超希少疾患特別治療』
なるものが登場する。

日下病院の院長・日下公一郎の尽力により、
医療制度として認められた『URT』とは
世界でたった一人しかいない病気の患者でも
その治療のために薬剤を開発するというものである。

国内で唯一、URTに対応した日下病院は、公一郎亡き後も
その娘・貴美恵が後継者となって希少疾患患者を受け入れていた。

主人公・薬師寺千佳は、日下病院直轄の創薬チームで
調査担当として働いている。
相棒は遠藤宗史(そうし)。化学合成において卓越した才能を示し、
薬理試験・分析も担当している。

二人とも、製薬会社に勤務しながら半ばボランティアのような形で
日下病院の創薬チームとして活動していた。
彼らには、URTの仕事とは別にもう一つの目的があったからである。
2年前、千佳の姉であり遠藤の婚約者でもある姫子(ひめこ)が
脳炎を発症し、それ以来回復のめどが立たない昏睡状態にあった。
彼女を目覚めさせるべく治療法を模索する二人だが、
千佳の中には、遠藤に対する思慕の情が次第に育ちつつあった・・・


「第一話 見えない檻」
アフリカのS共和国から帰国した駒川悟は、
エボラ出血熱に酷似した症状を示して危篤状態に陥る。
しかし検査の結果、彼はエボラウイルスには
感染していなかったことが判明する。
駒川と面会した千佳は、彼の口から
「呪いは・・・あった」という謎の言葉を聞く。
駒川のメモによると彼は2年近くの間、原住民の村に滞在し、
そこで ”宝の山” なるものを見つけたらしい。
伝奇的な言い伝えから科学的な解釈を導き出すくだりや
病状を引き起こした犯人を突き止めるまでの二転三転する展開が面白い。

「第二話 百億分の一の運命」
プロ野球チーム・東京エレファンツに所属する選手・岩里真吾。
彼は視神経に生じた腫瘍のために視力の低下を来していた。
しかし治療にあたっては薬物療法を望んだ。現役続行にこだわるがゆえに、
メスを入れることによって視神経が傷つくことを怖れたためである。
しかし分析のために腫瘍の一部を切りとることすら拒否されたため、
千佳たちは仕方なく、腫瘍細胞の遺伝子の活性化パターンが
岩里と同じものをもつ患者を探し始めるが、
世界中のデータにあたっても、わずか数例しか見つからない。
患者(データ)探しは難航するが、やがて戸倉潤平という10歳の少年が
磐里と全く同じ腫瘍を発症していることが判明する・・・
ラストは意外な人情話になったりする。

「第三話 受け継がれるもの」
千佳たちは日下病院のオーナー・貴美恵から
「骨突起異形成症」の治療薬開発を依頼される。
それはかつて貴美恵の母・弓子が罹患した希少疾患であり、
父・日下公一郎がURT制度の創設に踏み切るきっかけともなっていた。
弓子は創薬が間に合わず、死亡してしまっていたが、
日下病院へ同じ病気を発症した患者・新塚美幸が入院したことにより、
治療薬開発への再挑戦が始まったのだ。
千佳はかつての創薬チームのメンバーと会って情報を得ようとするが
彼らは千佳の姉・姫子の治療を行ったメンバーでもあった。
美幸の治療と並行して、過去のエピソードもまた語られていく。
ラストでは意外な人間関係も明かされる。

「第四話 希望と覚悟と約束」
女子高生・藤崎乃々葉(ののは)は、腫瘍の除去手術を受けた直後、
造血機能が大幅に低下してしまう。
旧創薬チームの一人であった生物系の研究者・蓮見から
iPS細胞を用いた造血幹細胞を治療に用いたらどうかとの
提案が為されるが、過去に姫子へ行った治療について
憤りを覚えていた遠藤は、蓮見との共同作業を拒否してしまう・・・
終盤近く、乃々葉とそのボーイフレンド・耕介の会話が泣かせる。

「第五話 破壊、そして再生」
iPS細胞を用いた、姫子の脳神経細胞再生治療が始まり、
遠藤は長年の心労から解放されたせいか創薬への熱意を失ってしまう。
勤務している会社でも評価が急落、閑職へと左遷されてしまう。
そんなとき、遠藤は駅の階段から転落、頭蓋内出血に陥る。
早めの処置で命は取り留めたものの、判断力・思考力が極度に低下して
日常会話もままならない状態になっていた。
日下貴美恵は、URT制度を用いた遠藤の治療を提案する・・・


これで完結、って感じのラストを迎えるが、
姫子を含めた登場人物たちがその後どうなるかは
明確には描かれず、読者の想像に任せられる。
もっとも、どうなりそうかはなんとなく示されてるけどね・・・

でも、私としてはちょっとすっきりしなかったかなぁ。
この終わり方が万事丸く収まるのは分かるんだが。

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おんみょう紅茶屋らぷさん ~この一杯に、すべてを~ [読書・ファンタジー]


おんみょう紅茶屋らぷさん ~この一杯に、すべてを~ (メディアワークス文庫)

おんみょう紅茶屋らぷさん ~この一杯に、すべてを~ (メディアワークス文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/02/24
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

就活に失敗して失意のうちにいた女子大生・佐々木英子が
アルバイトとして働き始めた不思議な紅茶屋<らぷさん>は
現代に生き残る陰陽師・本多正朝(まさとも)が
人々の悲しみ苦しみを取り除く究極の一杯を提供する店だった・・・
というシリーズの第3作

「第1章 透きとおるキャンディ」
<らぷさん>に現れたのはサングラスに
マスクとマフラーで顔を隠した謎の男。
正朝に対してやたらと喧嘩腰な言葉使いである。
男の職場にいた庶務担当の女性。彼女が淹れるアイスティーが
絶品だったのだが残念ながら産休に入ってしまった。
そこで代わりにその男がアイスティーを淹れるようになったのだが
どうしても彼女のアイスティーを再現できない。
そこで、正朝に対して彼女のアイスティーを再現して見せろという・・・
読んでいくと、男の正体は早々と見当がついてしまうだろう。
そしてアイスティーの件は口実に過ぎず、男の目的は他にあることも。
今までのシリーズではやたら珍しい茶葉とか出てきて、
紅茶の知識が乏しい人(私だ!)なんか簡単に煙に巻かれてしまうのだが
今回は題材がアイスティーで、正朝が語る薀蓄もそれなりに理解できる。
しかしまあ、紅茶というのはなんとも奥が深いものだね。

「第2章 まごころはアッサム(上)」
「第3章 まごころはアッサム(下)」
正朝にとって父であり師であり、そして不倶戴天の仇敵でもある
陰陽師・”麿” が再び<らぷさん>に現れる。
正朝の姉を人質にとり、師弟の戦いに決着をつけるために。
そしてその方法は意外にも魔道の応酬ではなく、茶歌舞伎(闘茶)。
”麿” が淹れた5杯の紅茶。それに使われた茶葉の産地を当てる。
優雅なようだが、敗れたほうは命を失う真剣勝負である。
正朝は4杯目まではたちまちのうちに当ててみせるが、
5杯目の茶葉が何なのかがどうしても分からない・・・


以下の文章は結末の内容に触れるので、ご注意を。


主人公の父親が最強の敵、というのは
ヒーローものの王道パターンなんだが本作もまたその一つ。
そして迎える結末もまた王道パターンといえるだろう。
私の場合、読んでいて頭に浮かぶのは
星飛雄馬vs星一徹だったりする(齢がわかるね)。
もっとも、ストーリーの展開としては
ダース・ヴェイダーvsルーク・スカイウォーカーのほうが近いかな。

星の数が今一つなのは、もうちょっと
パターンから外れた物語が読みたかったなぁ、って思ったから。
”麿” がホントにとことん冷酷非情・悪逆非道に描かれてきたので
最後までその線で突っ走って、往生際悪く
ジタバタしてもらいたかったなあ、とか思ったりした。

でもまあ、本シリーズはテーマが「紅茶」なので
あんまり陰惨な話はそぐわないだろうし、
なんと言っても王道パターンで終わったほうが後味もいいので
エンタメ作品としてはこの結末が正解なんだろうけど。

”麿” との決着がついてしまったのでシリーズ完結かと思いきや、
あとがきを読むとまだ続きそう。
新たな敵が現れるのか?
それともまさかまさかの ”麿” 復活だってりして(笑)

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新鮮 theどんでん返し [読書・ミステリ]


新鮮 THE どんでん返し (双葉文庫)

新鮮 THE どんでん返し (双葉文庫)

  • 作者: 青柳 碧人
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2017/12/13
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

アンソロジー「theどんでん返し」シリーズの第3弾。
既発表作品から、作家が ”自薦” した作品を集めた前2巻と異なり
今回はこのアンソロジー用に新たに書き下ろしたもの、または
雑誌発表のみで書籍化されていない作品を収録している。


「密室竜宮城」青柳碧人
海辺でいじめられていた亀を助けた浦島太郎は、
そのお礼にと竜宮城へ連れて行ってもらう。
そこは様々な魚たちが ”人間態” に変身して暮らしていた。
しかしそこで密室殺人(殺魚?)事件が起こる・・・
なんで浦島太郎?って思ったが、一種の特殊状況下ミステリで
ラストではこの物語世界でのみ可能な仕掛けが明かされる。
いやあでも、太郎君の扱いが悲惨すぎませんかこれ。

「居場所」天祢涼
若い女性の脚に異様な執着を示す八木は
援助交際で知り合った女子高生を殺してしまい、逮捕される。
刑務所を出てからも、その前科ゆえに仕事を転転としている。
そして今、彼の関心の対象は女子高生・マナ。
悶々とした思いを抱えて彼女の後を追い回している八木の前に
謎の男が現れ、こう提案する。
「いっそのこと、彼女のスカートの中を盗撮しませんか?
 そしてあなたが警察に捕まるまでの一部始終を撮影させてください」
男なら誰でも(程度の差はあるが)、
性的な衝動を隠し持っているものだろうが、八木がとにかく哀れ。
意表を突く展開で、ミステリ的にはよくできてるとは思うが。

「事件を巡る三つの対話」大山誠一郎
路上で発見された男の撲殺死体。氏名は峰岸洋平、そして無職。
しかし毎月定期的な入金があることから、
峰岸は何者かを恐喝していた疑いが浮上する。
事件の捜査を巡り、三つの対話が綴られる。
まずは所轄署の捜査員・水原とその上司・小野寺係長、
翌朝の水原と春日捜査一課長、そしてもうひとつ。
これも会話劇ならではの仕掛けが施されている。
作者は密室ものが得意と思っていたが、こういうものも達者なんですね。

「夜半」のちぎり」岡崎琢磨
”俺” と妻・茜は新婚旅行でシンガポールを訪れる。
しかし4日目の夜、宿泊中のホテルで ”俺” は
かつての恋人・紗季と再会する。
彼女は ”俺” の同期だった川島と結婚し、
彼らもまた新婚旅行に訪れていたのだ。
その夜、”俺” は紗季と密会するが、
部屋に帰ってきたとき茜の姿は消えており、
翌朝、浜辺で扼死体となって発見される・・・
うーん、幕切れは一種のイヤミスですねえ。
それに加えて男女の間のドロドロな話は苦手だなあ・・・

「筋肉事件/四人目の」似鳥鶏
雪に閉ざされた山荘で起こった殺人事件。
警察の到着まで時間がかかるとのことで、
現場にいる人たちによる犯人探索の様子が綴られるのだが・・・
これは紹介が難しいなあ。
読み進んでいくほどにだんだんと不可解さが増していくのだが
これ、”どんでん返し” って言えるんですかねえ・・・?

「使い勝手のいい女」水生大海
28歳・独身の葉月は勤めていた会社が倒産してフリーター暮らし。
ある日彼女のアパートに、かつての恋人・智哉が押しかけてくる。
強引に金の無心をする智哉と激しく押し問答をする葉月。
そしてその夜、葉月の友人・加奈が訪ねてくる。
彼女こそ智哉がかつて浮気をした相手であり、それが別れた理由だった。
長々と居座る加奈に対し、じりじりと焦る葉月。
彼女には、はやく加奈に帰ってほしい理由があったのだ・・・
葉月が黒い想いを秘めながら包丁をシャクシャクと研ぐ描写が
随所に入って恐怖感を盛り上げるのだけど、
テーマが ”どんでん返し” なのを忘れてはいけない。

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