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影の中の影 [読書・冒険]


影の中の影 (新潮文庫)

影の中の影 (新潮文庫)

  • 作者: 月村 了衛
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2018/02/28
  • メディア: 文庫
評価:★★★★☆

中華人民共和国、新疆ウイグル自治区。
"自治区" という名称とは裏腹に、
中国政府によるウイグル族への弾圧は苛烈を極めている。

ジャーナリストの仁科曜子は、在日ウイグル人コミュニティの活動家が
次々と変死を遂げていることを知る。
その真相を探るため、曜子はコミュニティの有力者である
テギン・ヤンタクとの接触を図るが、会合場所に現れたテギンは
謎の男たちに襲われて惨殺されてしまう。
しかしテギンは今際の際に曜子へ告げる。
「カーガーに連絡を・・・助けを・・・求めるのだ・・・」

その数日後、曜子はかねてから取材の約束を取り付けていた
広域暴力団菊原組の組長と会う。
取材の最後に、曜子は組長の菊原に「カーガー」について問う。
それを聞いた菊原は顔色を変え、こう告げるのだ。
「ええか、それに触ったらあかんで」

さらに、ウイグル人道支援協会理事の松坂から
曜子は驚くべきことを聞かされる。

高名な学者やジャーナリストを含む9名のウイグル人亡命者が
日本に不法入国して潜伏中だという。
その中には老人、女性、幼児もいる。
彼らは中国政府がウイグル自治区で行っている暴虐の証人として
国際世論に訴えるべく、中国を脱出してきた。
そして、アメリカ中央情報局(CIA)の仲介で
日本を脱出する予定だが、CIA側の受け入れ態勢が
まだ整っていないため、国内での待機を余儀なくされている。

しかし中国政府が亡命団を見逃すはずがない。
すでに、彼らを抹殺するための "刺客" を送り込んでいる。
テギンを殺害したのもその "刺客" の仕業だという。

そして曜子は亡命団のメンバーと接触する。
会合場所は東京の中心部、時刻は白昼。
しかしそれにもかかわらず、その場へ "刺客" たちは襲撃を掛けてきた。
中国政府と事を構えたくない日本政府。当然、警察は動かない。
孤立無援、絶対絶命の状況下、一人の男が現れて "刺客" を撃退、
曜子たちを救い出す。名を問われた彼は答える。
「カーガー」と。


冷静かつ巧緻な頭脳、最強の格闘技術を備えた彼の本名は
景村瞬一(かげむら・しゅんいち)。
物語はここから時間軸を戻して景村の過去を語る。

正義と理想に燃えた若きエリートだった彼が
ある人間の裏切りによって全てを喪い、失意のうちに日本を離れて
世界中の戦場を放浪するようになった、悲哀に満ちた半生。
二度と陽の当たる場所で生きていくことができなくなった彼は
「カーガー」という名で呼ばれるようになる。
それは、沖縄言葉で「影法師」のことだった・・・


一方、菊原組の組長は曜子が遭遇するであろう苦難を予期し
若頭の新藤をはじめとする武闘派の精鋭13人を
彼女のもとへ護衛として送り込んできていた。
亡命団と合流した新藤たちは、景村と手を結んで
"刺客たち" を迎え撃つことになるが、
いくら手練れとは言ってもヤクザは素人、
プロの暗殺団の前に次々と倒されていく。

CIA側の受け入れ態勢が整うまであと12時間、
彼らは最強の暗殺団を相手に亡命団を護り抜くことができるのか・・・


本書の一番の読みどころは、もちろん後半の
暗殺団との壮絶な戦闘シーンだ。
その中で、景村の戦闘能力がずば抜けていることは当然なのだが
プロの暗殺団と比べれば分が悪いヤクザたちの戦いも見逃せない。
いや、この物語の感動ポイントの多くは、実は彼らが示してくれるのだ。

世間から外れ、裏街道を歩いてきた彼らだが、
亡命団の存在を知り、"護るべきもの" を背負ったとき、彼らは変わる。
護るための戦いに意味を、そして矜持を見いだしていくのだ。

組長の菊原もそうだが、彼らもまた "古い時代のヤクザ" で
新藤たちの見せる言動はまるっきり "浪花節" なのだが
それゆえに、単純に読み手を感動させる。

暗殺団相手の、勝ち目の薄く生還の可能性が低い戦いにも
彼らはあえて飛び込んでいく。
一人一人が背負ったドラマが明かされ、
死闘の末に一瞬の輝きと共に消えていく姿が読み手の涙を誘う。


景村の過去については上に書いたが
曜子もまた、過去の取材に "トラウマ" を抱える身。
この物語は、他の多くの冒険小説がそうであるように
過去に "悔い" を残した者たちの "敗者復活戦" なのかも知れない。


中盤から終盤にかけてはページを繰る手が止まらない怒濤の展開。
楽しい読書の時間を約束してくれる、冒険アクションの傑作だ。
清々しい読後感を味わえるラストまで一気読み。

その気になれば続きが作れそうな結末なので
ぜひ続編を希望したいなあ。
また「カーガー」に、そして曜子さんに会いたいものだ。

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バチカン奇跡調査官 ソロモンの末裔 [読書・冒険]


バチカン奇跡調査官  ソロモンの末裔 (角川ホラー文庫)

バチカン奇跡調査官 ソロモンの末裔 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 藤木 稟
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/02/25
  • メディア: 文庫
評価:★★★

カソリックの総本山、バチカン市国。
世界中から寄せられてくる "奇跡" 発見の報に対して
その真偽を判別する調査機関『聖徒の座』。

そこに所属する天才科学者の平賀と、
その相棒で古文書の解析と暗号解読の達人・ロベルト。
「奇跡調査官」である神父二人の活躍を描く第13弾。
長編としては11作目になる。


政府軍、反体制勢力、イスラム過激派などが入り乱れ、
戦火が絶えない中東地域。
ヨルダンの教会に保護された老人は爆撃での負傷がもとで亡くなるが
その遺品の中に、暗号のような記号がぎっしり書かれた
羊皮紙の束があった。

羊皮紙はバチカンに持ち込まれ、ロベルトによって
暗号ではなく3000年以上前に使用されていた古代文字と判明。
ソロモン王とシェバの女王の交流が記録されていることが判明する。

 ちなみに「シェバの女王」とは一般的に「シバの女王」として有名。
 シェバ王国の所在地はエチオピアにあったという説と
 イエメンにあったという説があるらしいが
 本書ではエチオピア説を採っている。

そんなとき、エチオピアから奇跡調査の依頼が入る。
モーセの十戒を記した石板を収めた "契約の箱" (聖櫃)は、
かつてエルサレム神殿にあったが、
ソロモン王とシェバの女王との間に生まれた子が
その "契約の箱" をエチオピアに持ち帰ったとの伝説があった。
そのため、エチオピアでは『タボット』と呼ばれる
"契約の箱" のレプリカを各教会に祀る習わしがあるが、
そのタボットの一つが奇跡を起こしたらしい。

タボットの上空に、回転する巨大な炎の剣が現れ
その中に智天使ケルビムの姿が浮かび上がったというのだ。

現地入りした二人の前に現れたのは、
学者兼冒険家を自称するマヌエル・パチェッティ。
彼によると、奇跡を起こしたタボットは
既に盗まれてしまって行方不明になっているという。

盗んだのはタボットを守っていた司祭・アボットとその弟ベハイル。
エチオピア正教会はその事実を隠し、
ひそかに二人を追ってタボットを取り戻して
犯人は殺してしまうつもりだとマヌエルは語る。

彼から協力を求められたロベルトと平賀。
三人は犯人たちが通った "巡礼の道" をたどり、
彼らが目指した "栄光の門" と呼ばれる場所へ向かうことになる。

その途中でロベルトと平賀は殺人事件の容疑を着せられたり、
"栄光の門" に辿りついたのもつかの間、
砂漠の真ん中に身一つで放り出されたりとか
とにかく過酷な試練の連続にさらされる。

でもって、毎度のことながら驚かされるのは平賀くん。
絶体絶命かと思われた砂漠での放置プレイも
何とか切り抜けてしまうんだから彼のサバイバル能力の高さには恐れ入る。
ただの科学オタクではないのが実証されて誠に目出度い(笑)。

そして、今回のメインゲストとなる元シエナ大学准教授マヌエル。
TVではヤラセ満載の探検番組で隊長役を務めたりとか
吉村教授と川口浩を一人二役でこなしているような胡散臭さ100%の男。
(「川口浩探検隊」なんて今の若い人は知らんだろうなぁ)
口がよく回る上にへんに愛嬌があって、堂々の怪演ぶりである。

ソロモン王とかシェバの女王とか "契約の箱(聖櫃)" とか、
伝奇小説の世界ではおなじみの "用語" が頻出し
クライマックスではインディ・ジョーンズばりの展開もあって、
「いつもより余計に冒険しております」(笑)
 ↑by 海老一染之助・染太郎 (これも若い人は知らないだろうなぁ)

毎回恒例の、奇跡についての謎解きというかこじつけ(笑)というか
平賀くんによる "解釈" が語られるけど、
細かい整合性とかリアリティよりは「考えるな、感じろ」(爆)の世界。

毎回書いてるがこのシリーズでは、小難しいことは考えずに
壮大なスケールでの "ほら話" を楽しんだもん勝ちだ。

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サザンクロスの翼 [読書・冒険]

サザンクロスの翼 (文春文庫)

サザンクロスの翼 (文春文庫)

  • 作者: 高嶋 哲夫
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/11/10
  • メディア: 文庫

評価:★★★☆

1937年、日中戦争が勃発。
アメリカで育った16歳の少年・峯崎は
日本人を取り巻く環境が厳しさを増してきたのを機に
父母、妹とともに帰国の途についた。

その後、海軍に入隊した峯崎は
パイロットとしてずば抜けた技量を示したが、
ある空戦がきっかけとなって、
敵機を止めを刺すことができなくなってしまう。

そして太平洋戦争も末期の1945年7月。
峯崎はボルネオ北端近くのロンプラタ基地にいた。
彼はそこで "特攻部隊" の護衛任務に就いていたのだ。

敵を倒すことより、味方を守り抜くことを優先する峯崎。
しかし敵機を撃墜できないことを見抜いた上官と対立してしまう。

そして峯崎は、空襲によって彼の家族全員が死亡したとの報せを受けて
"特攻部隊" への参加を志願するのだった。

しかし、基地から飛び立った編隊はグラマンの襲撃を受けて全滅、
たまたま機体の不調によって戦闘に巻き込まれなかった峯崎は
生き延びて絶海の孤島にたどり着く。

不時着の衝撃で負傷した峯崎は、野村という男に助けられる。
彼は空母・翔鶴の整備士官だったが、レイテ沖海戦で乗艦が沈み、
漂流しているうちにこの島へ流れ着いていたのだ。

無人島での二人きりのサバイバル生活を過ごしていたが
ある日、島へ一機の「ダコタ」が不時着する。

 wikiによると、正式名はダグラスDC-3。
 1930~40年代にかけて10000機以上製造された輸送機の傑作。
 戦前の日本でもライセンス生産されていたという。
 なんと製造開始から75年以上過ぎた21世紀でも、
 現役で使用されている機体が存在するらしい。

飛来したのは、本来は陸上機であるダコタに
無理矢理フロートを装着して水上機に改造したものだった。
(表紙のイラストがそうだ)

乗員はすべて死亡しており、唯一の生存者は
日本人の血を引く高藤マリアという女性。
彼女たちは闇の運び屋をしていたらしい。

マリアは、峯崎と野村に、
機体の修理と目的地までの飛行を持ちかける。
機体に積んである "あるもの" を、
どうしても届けたいのだという・・・

野村の尽力で最低限の機体の修復が行われ、
そして峯崎の巧みな操縦によって
ダコタは米軍の追撃を逃れ、島を脱出することに成功するが
3人が向かう先では、終戦による混乱が、
そしてインドネシアの独立運動が燃え上がろうとしていた・・・


冒険小説としてみると、ちょっと物足りないかなぁ。
主人公の峯崎は零戦に乗っているときから
戦いを避ける生き方をしてきて
ダコタに乗った後も、米軍の追撃から逃げ回ってばかり。

アクションシーンはどちらかというと "地味" だろう。
だから勇壮な空戦シーンを期待すると当てが外れる。
"爽快感" には、いささか乏しいかと思う。

でも、本書のメインテーマはそこではないのだろう。

主人公の峯崎は、アメリカで育ったが故に日本軍の価値観に馴染めず、
自分の "ポリシー" を貫けば軍規から外れてしまい。
当然ながら上官からは睨まれてしまう。
だからといって、自分を曲げる生き方ができないのが峯崎という男。

そんな彼が、巡り合わせとはいえ軍からはぐれてしまい、
同じく軍を離れた野村、謎多き女・マリアとともに
自分の意思で、自由を求めて再び大空を飛ぶことを選ぶ。

そここそが作者が描きたかったことなのだろう。

そして峯崎は、過去の軛から逃れて新天地で生きることを決意する。


ここから先はラストのネタバレになると思うので未読の方はご注意を。


物語の終盤に、ある架空の機体が登場する。
日本海軍が誇る傑作機でありながら、大戦の中盤以降では
米軍機の性能向上によって輝きを失っていった零戦。
その "最終進化形" として登場する「零戦五五型」。

峯崎が乗り込んで、クライマックスシーンで空を舞うのだが
最高時速750km、10分で高度8000mまで上昇とか
作者が創作したものとはいえ、ちょっと "盛りすぎ" (笑)な感も。

 だってこれ、零戦の後継機として開発されてた
 「烈風」を上回る性能じゃないか?

登場にあたっては、何の伏線も脈絡もなく、唐突さが目立つ。
そしてその活躍のさせ方も、ちょっともったいないかなあ・・・

こんなスゴイ機体を出すのなら、逆にこれを主役機にして
大戦末期を舞台に壮絶な空戦を描いた
一大冒険絵巻が語られてもいいんじゃない?

そんな話ならぜひ読みたいなあ・・・
でもそれじゃあ『終戦のローレライ』の航空版みたいだなぁ。

・・・なぁんてことを思ってしまったよ(笑)。

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土漠の花 [読書・冒険]

土漠の花 (幻冬舎文庫)

土漠の花 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 月村 了衛
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2016/08/05
  • メディア: 文庫



評価:★★★★☆

アデン湾からインド洋にかけて出没する海賊への対処行動のために、
東アフリカのソマリア国境付近で活動する陸上自衛隊第一空挺団。

その活動拠点に通信が入る。
CMF(多国籍軍による連合海上部隊)の連絡ヘリが墜落し、
その捜索救助を要請するものだった。

隊長の吉松3尉以下12名の隊員は機動車3台にて現地へ向かう。
しかし発見したヘリに生存者は見当たらず、
迫る日没から吉松は野営を決断する。

そしてその深夜、3人の女性が野営地に現れ、
自衛隊に保護を求めてきた。
北ソマリアのビヨマール・カダン小氏族の
族長の娘・アスキラを含む3人の女性たちは、
敵対関係にあるワーズデーン小氏族の襲撃から逃れてきたという。
二つの小氏族の間には、彼らの暮らす地に眠る
石油の利権を巡っての長年にわたる争いがあった。

吉松が3人の受け入れを決断したまさにそのとき、
野営地はワーズデーンの武装勢力によって急襲を受ける。

初めての "実戦" に混乱する中、次々と倒れていく隊員たち。
吉松隊長まで失い、壊滅寸前の小隊を救ったのは
89式小銃で反撃に出た市ノ瀬1士。
それは史上初の自衛隊員による発砲だった。

辛うじて窮地を脱した彼らだったが
生き残ったのは隊員7名とアスキラだけだった。

機動車も通信機も失い、武器も乏しい状態で脱出行を始める隊員たち。
帰るべき拠点は70kmの彼方にあった。
そんな彼らに対し、ワーズデーンの執拗な追撃が続く・・・


生き残ったメンバーで最上位者は友永曹長と新開曹長。
最年長の朝比奈は階級が1つ下の1曹、
警務隊出身の由利1曹、
津久田2曹はトップクラスの射撃の名手、
梶谷士長は車の運転に秀でた整備の専門家、
そして最年少の市ノ瀬1士は元インターハイ水泳選手。

しかし彼らの中には
生まれ育ちの違いから僻みを持つ者や
過去の経緯から反目を抱えた者までおり、
とても一枚岩とはいえない関係にある。

さらに友永と新開は同階級、同年齢。
指揮権を巡る問題もあった。


そしてまた彼らは普通の人間でもあった。
初めて自らの発砲によって人を死に至らしめた市ノ瀬は
ことの重大さから腰を抜かしてしまうし、
津久田2曹は「娘を殺人者の子にしたくない」と
引き金を引くことを拒み続ける。

そんな集団が、ワーズデーンとの死闘を繰り広げながら
過去の怨恨や反発を乗り越え、新たな絆と友情を結んでいく。

ある時は追っ手に罠を仕掛け、
ある時は反攻に転じて敵の武器を奪い、
そしてクライマックスでは、廃墟となった町に立てこもり、
敵の大軍を迎え撃ちつつ脱出の機会を窺う。
彼らは知謀の限りを尽くして、生き残るための抵抗を続けるのだ。

隊員各自が特殊技能をもっており、
それぞれに応じて随所に "見せ場" が用意されている。
誰がどんな活躍を見せるかは読んでのお楽しみだが
個人的には、津久田が迷いを振り切って銃を手にするあたりが
いちばん感激したポイントだ。
彼が決断した理由がまた泣かせるんだなあ。

しかし敵の物量は圧倒的だ。
追撃を逃れる度に櫛の歯が欠けるように仲間を失っていく。
だが彼らは最後まで男として、人間としての矜持を失わない。
そんな男たちの壮絶な戦いぶりが本書の最大の読みどころだ。


本書のラストでは、友永たちの戦いがどう扱われるのかが語られる。

そこには現在の自衛隊の置かれた立場の微妙さがあり、
そして国際社会における大国のエゴ、
地下資源の利権を巡る勢力争いなど
世界の "冷酷な現実" というやつもまた明らかになる。


「海外派遣された自衛隊」というものを扱っているだけに
議論を呼ぶ作品なのかも知れない。

しかし本書の主眼は「極限状態に置かれた人間の戦い」だと思うし、
冒険小説としても超一級の面白さなのは間違いない。

第68回日本推理作家協会賞を受賞したのも納得の傑作だ。


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迎撃せよ [読書・冒険]

迎撃せよ (角川文庫)

迎撃せよ (角川文庫)

  • 作者: 福田 和代
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2013/11/22
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

このタイトルと表紙の写真(文庫版の表紙はFー2戦闘機)を見れば、
本書を航空アクション小説だと思う人もいるだろう。
(実は私もそうだったんだが)
たしかにF-2戦闘機が空を舞うシーンもあるのだけど、
作中のアクションシーン、戦闘シーンの9割は地上戦だったりする。


北方にある某国が弾道ミサイルの発射準備を進めているとの
情報がもたらされ、自衛隊は警戒態勢に入る。
日本各所に迎撃ミサイルPAC-3が配備され、
各種レーダーが監視する中、発射されたミサイルは
日本上空を飛び越え、太平洋に落下する。

各部隊の緊張がゆるむ中、自衛隊岐阜基地からFー2戦闘機が奪取される。
しかも最新鋭のXASM-3ミサイルを4発装備したまま。
F-2はミサイルの威力を見せつけるかのように、
1発を富士の樹海に打ちこみ、そのままF-15の追撃を逃れて
西へ逃走、レーダーから消える。
やがて政府に送りつけられた動画で、犯人グループは宣言する。
「明日24時、日本の主要都市にミサイルを撃ち込む」
タイムリミットまでわずか30時間・・・

主人公、安濃将文(あのう・まさふみ)一等空尉は
ミサイル防衛の要となる統合任務部隊で
作戦指揮の一員に加わっていた。
そんな矢先に起こったミサイル強奪事件だが、
安濃はその背後にかつての上官・加賀山元一等空佐の影を感じる。
加賀山は2年前、ある問題を起こして
自衛隊を追われるように退官していた。
安濃は加賀山に会うために、
強奪事件で騒然となる基地を抜け出すが・・・


自衛隊員/元自衛隊員が戦闘機を強奪、
その矛先を一般市民へと向けてテロリストと化す・・・
ざっくり書くとこういう話で、そうなると
福井晴敏の『亡国のイージス』を思い出す人も多いだろう。

共通するモチーフを持つが故に比較されてしまうのは
ある程度は仕方がないだろう。
でも、読んでいくと「現役自衛官が書いた論文」とか
「息子が死亡」とか、両者に共通する "要素" がちらほら。

まあ自衛隊員がテロに走るまでの経緯を
リアルさを持って描かなければならないのだから
それなりに説得力がなければいけないのは分かるんだが
このあたりちょっと似すぎてないかなあ・・・

F-2を強奪した "パイロット" にも、
テロに荷担するにいたる背景がきちんと描かれていて、
このあたりはけっこう感情移入する。
だからこそ、クライマックスは
この "パイロット" が操縦するF-2と、
迎撃する自衛隊との壮烈な攻防戦を期待したんだが・・・
(だってタイトルが『迎撃せよ』なんだよ)
うーん、これはかなり消化不良。あの幕切れはちょっとなあ・・・


もっとも、これは比較するのが悪いのかもしれない。
ストーリー上のメインとなるのは、
ミサイル強奪計画の要となる加賀山とテロリストの一味がたて籠もる
軽井沢の山荘での、安濃(とその仲間たち)との対決である。

著者の描きたいのはあくまでサスペンス、冒険アクションであって
東京湾のど真ん中でイージス艦が爆発、沈没するような
ど派手なスペクタクル小説ではないのだろう。

文句ばっかり書いているようだが、作品自体は十分面白いと思う。
特にキャラがいい。

主役の安濃は、仕事からくるストレスで動悸、目まい、息切れと
今にも死にそうな体調不良に陥っており、
なんと開巻早々「退職願」を懐に忍ばせて登場する。
もっとも、事件が起こって加賀山の追跡を始めてからは
いつのまにか "病気" は吹っ飛んでしまい、
テロリストと死闘をおっぱじめるに至っては
「おまえ、いつのまにそんなに元気になったんだい」
って思ってしまう(笑)。
ついでに、安濃の妻・紗代さんもよくできたいい嫁だ。

安濃の部下で新人隊員の遠野真樹二尉がまたいい。
妙齢の美女にしてオリンピック候補の呼び声も高い射撃の名手。
出番も多いし、要所要所で機転が利いてストーリーを引っ張っていく。
加賀山に捕らえられた安濃を救い出す場面でも果敢に行動し、
プロ(?)のテロリストを相手に互角に渡り合う。
本当の主役は彼女なんじゃないかっていうくらいの大活躍。

安濃の同期生・泊里一尉も
「主人公の親友」というポジションを過不足なく務め、
陰日向になって安濃を支える。

本書はそんな「安濃一尉とその仲間たち」が活躍するシリーズ第1作。
現在3作目まで刊行されているらしい。

実は第2作『潜航せよ』の文庫版が手元にあるので
秋くらいまでには読むつもり。


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ラインの虜囚 [読書・冒険]

ラインの虜囚 (講談社ノベルス)

ラインの虜囚 (講談社ノベルス)

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/10/04
  • メディア: 新書



評価:★★★★

UNDER CONSTRUCTION.  m(_ _)m


この本は先月の19日に読み終わってるんだけど、
記事を書こうと思ったら肝心の『ラインの虜囚』が
見つからないんですねえ・・・

なにせ積ん読状態の本が大量に散乱しているもんで。

いちおう既読と未読は分けてあるはずなんだけど
既読の中にないんですねえ。

未読の方がはるかに多いので、その中に紛れ込むと
探し出すのが結構たいへんかも。

記憶に頼って書くといろいろ間違えそうなので
とりあえずこのままにしておきます。
見つかり次第、記事を書いて差し替えますのでご容赦下さい。

記事を読もうと思ってきていただいた人には
誠に申し訳ないのですけど、
2週間くらいしたらもう一度来てみて下さい。
スミマセン。


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大空のドロテ 上下 [読書・冒険]

大空のドロテ(上) (双葉文庫)

大空のドロテ(上) (双葉文庫)

  • 作者: 瀬名 秀明
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2015/11/12
  • メディア: 文庫




大空のドロテ(下) (双葉文庫)

大空のドロテ(下) (双葉文庫)

  • 作者: 瀬名 秀明
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2015/11/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

幼少期のミステリ読書体験に、ホームズと並んで
ルパンを挙げる人は多いだろう。私もその一人だ。

ちょっと思いつくままに挙げても
「奇岩城」「813」「緑の目の令嬢」「三十棺桶島」「虎の牙」
「カリオストロ伯爵夫人」「バーネット探偵社」・・・
懐かしいタイトルばかりだ。

そんな私の前に、この本は現れた。


20世紀初頭の世界を舞台にアルセーヌ・ルパンの新たな物語の幕が開く。
主人公には空に憧れる少年とサーカスの少女を配し
冒険を通じて成長していく姿を描く。
脇役陣にはルパン・シリーズからのキャストをそろえ、
さらには実在の人物まで登場させる。
フランスの片田舎の町を旅立った少年は、
世界の運命を左右する力を秘めた財宝を求めて
愛する少女とともに幾多の困難をくぐり抜け、
いつしかアフリカの大空を飛び回り、砂の大地に降り立つ。

本書のストーリーをざっくり書くとこうなる。
これだけでも胸がわくわくしてくるだろう。

というわけで文庫上下巻、合計1000ページに及ぶ大著に挑んだのだけど、
だがしかし・・・なんだなぁ。


感想は後に回して、まずはもう少し詳しい紹介をしよう。


時は1919年。
フランスはノルマンディー地方の町・ドンフロン。
そこで暮らす14歳の少年・ジャンが主人公だ。
両親を失い、祖父と暮らしながらも大空への憧れを胸に抱いている。
彼はある日、ドンフロンを訪れたサーカス団の一員で、
飛行機で曲芸をする少女・ドロテと知り合う。

赤ん坊の時に修道院の前に置き去りにされ、孤児として育ったドロテ。
彼女の身元を示す手がかりは、一枚の黄金のメダルのみ。

しかしそのメダルを狙う "謎の一団" が現れた。
"疣(いぼ)鼻の老人" とその配下たちは執拗にドロテを追いかける。
一団の襲撃から彼女を救い出したジャンだったが、
彼らの怒りを買ってしまい、家は焼かれ、祖父は命を落としてしまう。

折しも、ルパンを名乗る何者かが
大胆不敵な犯行予告とともに古銭を盗み出す事件が起こっていた。
盗まれた貨幣は、同じものが5枚鋳造されており、
それにはプランタジネット家の財宝のありかを示す
手がかりが秘められているという。
そして、ドロテが持つメダルはその中の1枚だった。

 ちなみにwikiによると、プランタジネット家とは
 12世紀に英仏にまたがる大王国を築いた王朝の家系である。

第II部では、「奇岩城」の舞台となったエトルタにて、
次なるメダルを狙うルパン(を名乗る怪盗)と
フランス警察との攻防が描かれる。
サーカス団と共にエトルタに向かったジャンとドロテ。
その二人の前に再び "疣鼻の老人" が現れる。
そして次第に明らかになるドロテの出生の秘密。
なんと彼女はルパンの娘かも知れないのだ・・・

世界を支配することもできる "巨大な力" を秘めた
プランタジネット家の財宝を巡り、物語の舞台は
第III部のパリ、そして第IV部のアフリカへと拡がり
物語は秘境冒険小説へと変貌していく。


本書はルブランが書かなかった空白部分を埋める作品、と言う位置づけ。
作者は膨大な原典に当たり、
他の作品との矛盾が生じないように時代を選び、
当然ながら他作品のキャラも大挙して登場させている。
(まあパスティーシュなのだから当たり前かも知れないが。)

 とは言っても、大胆に設定を変更している部分もある。
 (改変というより作者による独自の解釈という方が正しいが) 
 「えっ、そうだったの?」
 私も驚いた "新解釈" は読んでのお楽しみだろう。

文庫で1000ページということは、たぶん原稿用紙だと1500枚近い大作。
ルブランの原典を詳細に読み込み、当時のヨーロッパ・アフリカの
風俗や情勢も十分に下調べをして書かれているのはひしひしと感じる。
そういう意味では、並々ならぬ労力と情熱を注ぎ込んだ、
途轍もない「力作」なのは間違いない。

でもそれがそのまま作品の高評価につながるか、と言われれば
「それはそれ、これはこれ」なんだなあ。

いささか乱暴だが、一口で言うと「疾走感に乏しい」と感じる。
波瀾万丈の一大冒険活劇のはずなのに、である。


ルパン・シリーズに関する蘊蓄も尋常ではないし
背景となる世界の書き込みも半端ではない。
描写が厚くてリアルなのは間違いないんだが、
逆にそれが読むテンポを妨げているような気がしてる。

海外作品を翻訳したような文体(って思うのは私だけかも知れないが)
もあって、すいすい読めるとはいいがたい。

特に後半に入ると、ルパン・シリーズを知らない人や、
昔読んだけど細かいとこはさっぱり忘れてる人(私だ)には
今ひとつぴんとこない展開もあって、
(とりあえずストーリーは追っていけるのだけど)
ちょっと読むのがしんどくなってきた。

「マニアック」と言ってしまったら言い過ぎだろうが、
原典を知ってる度合いによって、
楽しめるレベルがかなり異なるのではないだろうか。
(これも、パスティーシュなのだから当たり前、とも言えるが)

 ルパン・シリーズを知らない人っていないと思ってたんだが
 若い人の中にはアニメの「ルパン三世」は知ってても
 ルブランの「ルパン」は読んだことないって人は
 けっこういるんじゃないかなぁ。
 もちろん、ルパン・シリーズが大好きで何回も読み返してる、
 なんて人にとっては、
 本書はたまらない魅力に溢れているんだろう、とは思う。


なんだか文句ばっかり書いてるようだが、それもこれも、
面白くなりそうな要素はてんこ盛りにあるのに、
それがうまく伝わってこなくて、なんだかスゴくもったいない。
そんな気がして仕方がないから。

 器に大盛り、味付け濃いめ、食べたら胃もたれ。そんな感じ?

枝葉を切り払って、長さをこの2/3くらいにして、
展開をスピーディに、活劇部分のアクションを増量したら
リーダビリティがぐ~んとアップして、
もっと燃えて萌えられる(笑)んだろうけど、
たぶんそれでは、作者が書きたかったものとは違ってしまうのだろう。

結論:やっぱり瀬名秀明とは相性が悪い(苦笑)。

星3つにしようかと思ったんだけど
ルブランへのリスペクトと作者の情熱で、星半分増量。


最後に余計なことをいくつか。


その1

本書のプロローグは1963年。
一人の若い作家が高齢の大御所を訪ねていくところから始まる。
その老作家が44年前(本編の1919年)の出来事を回想する
(つまり彼は本編の登場人物の一人)、
というかたちで物語の幕が上がる。
この二人の正体(どちらも実在の作家)も最後に明らかになるのだけど、
この二人がこの "組み合わせ" である必然性はあったのかなあ。


その2

主人公の男の子の名がジャン、ヒロインがサーカスの少女。
そして彼女の持つ "アイテム" を狙う一団が現れる、なんて
まんま「ふ○ぎ○海○ナ○ィ○」じゃないか、
って突っ込みが入りそうだが(私も入れました)、
中盤以降にドロテの本名が明らかになってみると、
案外、狙ってるのかなとも思えるが、まさかね。
真相は不明です(笑)。


その3

本編終了後のジャンとドロテがどうなったのかが
すんごく気になるんだけど、後日談は一切語られない。
わずかに老作家の回想にドロテがちょっぴり出てくるけど・・・
すぱっと切ってしまうのも潔いとは思うが、
やっぱりちょっとは知りたいよねえ。

 「ふ○ぎ○海○ナ○ィ○」は、主役カップルをはじめ、
 その他のキャラも含めて後日談(12年後)をしっかり描いていたしね。

共白髪になった二人が見たいとまでは言わないが、
もうちょっとサービスしてよ、瀬名さん(笑)。


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冒険王<4> 日露スパイ決戦 [読書・冒険]

冒険王〈4〉日露スパイ決戦 (ハルキ文庫)

冒険王〈4〉日露スパイ決戦 (ハルキ文庫)

  • 作者: 赤城 毅
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2015/12/18
  • メディア: 文庫



評価:★★★

旅順要塞の図面奪取に失敗した前作から4年。
いつのまにか元陸軍中尉・志村一心が
スパイの道に入ってから10年が経った。

時に1904年。日露はついに開戦した。

ロシア海軍の根拠地となった旅順港。
海軍による3度にわたる湾口の閉塞作戦も、
陸軍による2度の総攻撃も失敗し、
旅順は難攻不落の大要塞として日本軍の前に立ちはだかる。

連合海軍参謀・秋山真之中佐に呼び出された一心は、
旅順への潜入を命じられる。目的は、攻略目標である
"二百三高地" の偵察だった。

現地人になりすまし、ジャンク船で旅順港へ向かった一心は
首尾良く潜入に成功し、無事に偵察任務を終えたものの
意外な人物の登場によってロシア軍に捕らえられてしまう・・・


「冒険王」シリーズ、全4巻の完結編。
時代背景は日清戦争直後から日露戦争まで。
ずぶの素人から日本軍の間諜の切り札へ。
年齢も20代半ばから30代半ばへ。
ちょうどこの10年間の一心の成長が描かれてきた。

舞台も、前作からの因縁の場所である旅順。
最終作らしく、長年の宿敵だった諏訪雷四郎との決着も描かれる。
その他いろいろなしがらみにけりがついて、確かに区切りはいい。
いいんだけど。

本書は、日露講和会議のため全権大使・小村寿太郎が
日本を出発するシーンで終わる。
交渉場所であるポーツマスで展開されるであろう
ロシアとの情報戦に備えて、一心は小村の随員に加わっている。
彼のスパイとしての活躍はこれからも続いていくのだ。

だから、"完結" って感じは全然しないんだよなあ・・・


いつの日か、「冒険王」第二部が開幕することを期待したい。
史実の裏に隠れた "秘話" を語るのもいいけれど、
1巻や2巻みたいな「007」や「インディ・ジョーンズ」を
彷彿とさせるような、波瀾万丈な "物語" を読んでみたいよなあ。

3巻と4巻が地味というわけではないんだけどね。
やっぱり "冒険王" な話が読みたいじゃない。
作者はそういう話が書ける人だと思うしね。


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冒険王<3> 旅順の謎 [読書・冒険]

冒険王〈3〉旅順の謎 (ハルキ文庫)

冒険王〈3〉旅順の謎 (ハルキ文庫)

  • 作者: 赤城 毅
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2015/09
  • メディア: 文庫



評価:★★★

1895年。陸軍中尉・志村一心は、独仏露三カ国の外交官と
乱闘騒ぎを起こし、士官の身分を剥奪される。
しかし彼の素質を惜しんだ軍部により1年間の特別訓練を受け、
間諜(スパイ)として生きることになった。

そして6年後の1901年。
独仏露の三国干渉によって日本が放棄した遼東半島は
ロシアによって租借され、軍港・旅順は大要塞へと変貌していた。

ロシア駐在武官の広瀬少佐に呼び出された一心は、
旅順要塞の図面奪取を命じられる。

首尾良くロシア陸軍省に潜入し、
図面をマイクロフィルムに収めることに成功した一心は、
そのままイギリスへ向かう客船に乗り込む。
(イギリスと日本は、このころ水面下で
 「日英同盟」の交渉中という "友好国" だった。)

怪しい同乗客に囲まれる中、一心は何者かに襲われる・・・


順調にスパイとしての実績を上げてきた一心だけど
今回は冴えない面が目立つ。

成功したかに見えた図面奪取でミソをつけ、
中盤以降は敵の打つ手に対して後手後手に回ってしまう。

本来は敵のはずの人物からの助け船にすがって
何とか事態の打開を図ったり、クライマックスでのピンチも
自力で切り抜けたとは言い難かったり・・・

読んでいて颯爽感があまり感じられないのは
この展開では致し方ないかな。
好意的に解釈すれば、今回はそれだけ
敵の策略が巧妙で、一心より一枚上手だったとも言えるが。


前巻の時に書いたかも知れないけど
日清・日露の間に時代設定していて、
史実に基づいて物語を構築している。
リアルではあるのだけど、窮屈な雰囲気も感じる。

なんだか文句ばかりになって申し訳ないけど
一読者としては、もっとカッコいい一心が見たいんだなあ。

タイトルだって「冒険王」(!)なんだし。


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冒険王<2> 北京潜入 [読書・冒険]

冒険王 2 北京潜入 (ハルキ文庫 あ 24-3)

冒険王 2 北京潜入 (ハルキ文庫 あ 24-3)

  • 作者: 赤城毅
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2015/06/13
  • メディア: 文庫



評価:★★★

元陸軍中尉・志村一心は、堪能な語学力と
その武芸を買われ、間諜として生きていくことになった。

舞台は前巻から4年後、1900年の中国。
義和団が北京を占領、列国公使館は包囲されて、
救援のために日本を含む8カ国連合軍が北京へ向かっていた。

特務機関長・佐久間大佐が一心に与えた任務は
北京へ潜入し、現地の状況を探ること。

特務機関に協力する中国人女性・玉藻(たまも)と
夫婦を装い、物資を輸送する水夫となって北京を目指す。

しかし行く手には、義和団のみならず、
一心を不倶戴天の敵とつけ狙う諏訪雷四郎もまた待ち受けていた。


ヨーロッパの都市や鉄道などが舞台で、
"和製007" 的にスマートな雰囲気だった前作と比べると
主な舞台が荒野だったり、移動が帆船や馬だったり、
使う武器も銃よりも剣がメインだったりと、より泥臭くなって、
こちらは "和製インディ・ジョーンズ" という趣向。

文庫で200ページちょっとしかないんだが、
主人公を襲う危機また危機、ライバルの登場、
愛と友情と裏切り、そして意外な幕切れと
この手の話では "お約束" ともいうべき展開が
しっかり盛り込まれているのは、流石の出来というべきだろう。

これはこれでとてもおもしろいと思うんだけど
日露戦争直前の中国という舞台もあり、
荒唐無稽さよりは、ややリアル志向のつくりになってるかな。
そのせいか、読んでいてなんとなく窮屈さを感じたりもした。

リアル志向が悪いわけでは全然無いんだが、
デビュー作「魔大陸の鷹」に始まる初期作品の自由奔放さ、
ぶっ飛んだ想像力全開ぶりを知ってるだけにねえ。
まあ、あんなものはそうそう量産できるものでもないんだろうけど
またいつか "ぶっ飛んだ話" を書いて欲しいなあ。


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