So-net無料ブログ作成
読書・ファンタジー ブログトップ
前の10件 | -

荒神 [読書・ファンタジー]


荒神 (新潮文庫)

荒神 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2017/06/28
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

「ソロモンの偽証」以来、久々の宮部みゆき。

本書は "怪獣が出てくるスゴい時代小説" だという噂を聞いたので
怪獣好きの私としても放っとけない。
というわけで読んでみた次第。
ちなみにタイトルは「こうじん」と読むそうです。


時は元禄。東北の二つの小藩が舞台となる。

香山(こうやま)藩と永津野藩は、関ヶ原の昔からいがみ合う仲であった。
もともとは永津野藩の家老の一人、瓜生氏が独立したのが香山藩だが
それを認めない永津野藩主・竜崎氏は香山藩の併合を狙っていた。

その永津野藩に曽谷弾正という男が現れる。
彼は藩主・竜崎高持に気に入られ、
藩政改革で成功を収めて、たちまち藩主側近筆頭まで上り詰める。

やがて故郷から妹・朱音(あかね)を呼び寄せたが、
彼女は城下の屋敷住まいを嫌がり、
香山藩との境界近くの集落に居を構えた。

そんなある日、朱音は瀕死の状態の少年・蓑吉を保護する。
意識を取り戻した蓑吉が語ったのは、恐るべき変事だった・・・


この物語における "人間側の主役" は朱音だろう。
人間のドラマも、"怪獣" を巡るストーリーも、
最終的には朱音に集約されていく。


"謎の巨大生物" が現れ、破壊の限りを尽くすのが
メインストーリーとなれば、もうこれは怪獣ものの王道パターン。
それも『ゴジラ』がモチーフとなっている。

主要登場人物の一人である曽谷弾正が、
隻眼で眼帯をつけているところなど
『ゴジラ』に登場した科学者・芹沢博士への
オマージュ以外の何物でもないだろう。

もっとも、その役回りは芹沢とはかなり異なる。
"怪獣" を "葬る" のに大きく関わるのは同じなのだが・・・

その "怪獣" だが、通常の生物ではないことがだんだん分かってくる。
どちらかというと "妖怪" に近い存在かと思う。
終盤でその出自が明らかになるのだが、読者はちょっと驚くだろう。

"怪獣" の出現の背後には凄まじい "人間の業" があり、
そういう意味では『大魔神』にも通じる雰囲気もある。


メインとなる怪獣譚とともに、サイドストーリーも同時並行して語られる。

香山藩側のメインキャラとなるのは、藩主の小姓・小日向直弥。
長い病気療養から復帰した直弥は、
永津野藩との境で起きた "変事" の真相を探るべく現地へ向かう。

その香山藩では、藩主の世継ぎが病に伏すが、
そこには何者かによる陰謀の存在が疑われる。

 このあたりはミステリ的な "絵解き" も最後に示される。
 さすがは宮部みゆきと言うべきか。
 これだけでも短編が一本書けそうなネタが投入されている。

永津野藩では、弾正が壮大な野心を内に秘めて画策を続ける。


複数のストーリーラインに伴い、多彩なキャラが登場する。
朱音を支える浪人・榊田宗栄(さかきだ・そうえい)、
相模藩の絵師にして諸国放浪中の菊地圓秀(きくち・えんしゅう)、
直弥の親友・志野達之助、その父・兵庫之介、
志野家に仕える従者・やじは、何やら事情を秘めた様子。

冒頭に登場人物の一覧表があるのだけど、
けっこう登場シーンが多くて台詞もあるキャラが載ってなかったりする。

特に、物語上重要と思われるキャラが2名ほど載っていない。
これは入れ忘れたのではなく、故意に載せていないのだろう。
(だからここにも書かない。)

どんなキャラが出てくるのかは読んでのお楽しみだ。


"怪獣" の猛威の前に、人間たちはあまりにも無力だ。
そんな人間たちの愛憎のドラマをも呑み込んで、
"怪獣" は人間たちの営みを蹂躙していく。

そして "怪獣" の出自が明らかになったとき、
同時にそれを "葬る" 策もまた、もたらされる。
その方法とは・・・

しかし、このエンディングはなあ・・・
ちょっと××い結末なので、本体なら星4つなんだけど
星半分減点してしまいました。

いや、「素晴らしいラストだ」って思う人の方が多いと思うよ。
それは分かってるんだ。
でも、私の好みとは微妙に異なるんだなぁ。


この小説は、NHKでドラマ化されて
来年1~2月頃にBSで単発ドラマとして放送されるとのこと。
ちなみに放送時間は100分。うーん、ちょっと短いかな。
枝葉のエピソードがばっさりとカットされそう。

NHKのホームページで、現在までに判明している配役は以下の通り。

朱音:内田有紀
曽谷弾正:平岳大
榊田宗栄:平岡祐太
菊地圓秀:柳沢慎吾

この4人に関しては、けっこうイメージはあってるように思う。

特に平岳大さんは、最近ますますお父さんの平幹二朗に似てきて、
(本人は嫌がるかも知れないけど)いい雰囲気。

"人間の業" の化身のような、
野心たっぷりの弾正を見せてくれそうだ。

nice!(1)  コメント(1) 

鹿の王 全4巻 [読書・ファンタジー]


広大な平原地帯にあったアカファ王国は、
東の大国・東乎琉(ツオル)の侵攻を受けた。

東乎琉の強大さを知るアカファ王は
あっさりと降伏し、恭順の意を表したが
最後まで抵抗を続ける者もいた。

"独角"(どっかく)と呼ばれる戦士団の長にして
"欠け角のヴァン" の二つ名で知られる男もまた
最後の一人になるまで戦い続けたが、衆寡敵せず
捕らえられて奴隷となり、アカファの岩塩坑の奥底に囚われていた。

妻も子も故郷も仲間も失い、絶望に沈んでいたヴァンだが、
ある夜を境に運命が変転していく。

不気味な犬の群れが岩塩坑を襲い、
それに噛まれた者たちの間に謎の病が発生したのだ。

看守・囚人を問わず、発病した者がことごとく死に絶える中、
ヴァンと、奴隷女の生んだ女児の二人のみが生き延びる。
彼はその幼子をユナと名づけ、ともに岩塩坑を脱走する。

かつて平原地帯に栄えたオタワル王国は、
伝染病によって多数の人民を失い、国勢の衰えを悟ると
アカファ人に王国の統治権を譲り、
その中枢だった貴人たちは険しい山々に囲まれた盆地に
"オタワル聖領" を築いて移り住んだ。
そしてそこで古より伝わる医学・工学などの技術を磨き、
深めることに専念することにしたのだ。

 読んでいて、このへんはアシモフの
 「ファウンデーション」を連想したよ。

そのレベルの高さに東乎琉帝国も利用価値を認め、
"聖領" はその存続を容認されていた。

その "オタワル聖領" でも「天才的な医術師」と目されるホッサル。
彼は謎の病で全滅した岩塩坑を調査し、遺体の状況から
250年前に故国を滅亡へ導いた伝説の病 "黒狼熱"(ミッツァル)が
再び現れたことに気づく。

さらに彼は、病から生き残った者がいたことを知り、
その後を追い始める。
その男の体を調べれば、病に対抗する方法が見つかるのではないか。
そう考えたからだ。

物語は、ユナと二人で安住の地を探すヴァンと、
彼らを追うオタワル医師ホッサル、
それぞれのパートを交互に描きながら進行する。

オタワルの最新医術を受け入れようとしない旧弊な東乎琉の祭司医たち、
それに苦慮するオタワル医師たち。
その中心になるのはホッサルの祖父にして高名な医術師リムエッル。

平原の北辺にあるオキ地方に暮らし、
そこでヴァンたちを受け入れる青年トマとその家族たち、
烏に魂を乗せて飛ぶことができる古老にして
<谺主>(こだまぬし)と呼ばれるスオッルなど
多彩なキャラクターが登場する。

東乎琉に忠誠を誓い、その後は
世捨て人のように暮らしているアカファ王だが、
その実けっこうしたたかに生きてるところとか、キャラの深みも充分。

そして、命令によってヴァンを追跡するうちに
次第に彼に思いを寄せるようになる<後追い狩人>のサエ、
ホッサルの助手にして実質的な妻であるミラルなど女性陣も魅力的。

やがて、"黒狼熱復活" は単なる自然現象ではなく、
その陰には、様々な勢力の陰謀・思惑・怨嗟などが
複雑に絡み合っていることが明らかになり
それに巻き込まれたヴァンとユナは、
長い長い苦難の道を歩んでいくことになる。

ファンタジーではあるけれど、医学的な描写はかなり現実に即している。
"黒狼熱復活" に至るくだりもそうだし、
いわゆる "免疫" とか "抗体" という概念に
ホッサルたちが到達していく過程も描かれる。
ちょっと進歩が早すぎる気もしなくもないが(笑)

タイトルにある「鹿の王」という言葉は
物語の途中でも何回か出てくるのだけど、
その本当の意味は最終巻の最終章で明らかになる。
そこでヴァンは、愛する者たちが平穏に暮らせる世界を取り戻すため、
ある決断を下すことになる。

それについて詳しく書くとネタバレになるのでここでは触れないけど
そのシーンを読んでいたら、涙があふれ出てきて、
文字が追えなくなってしまったことを告白しておこう。

とは言っても、決して悲しい話ではない。

これは、一度はあらゆるものすべてを失ってしまった男が
再び故郷を、仲間を、
そして家族を取り戻すまでを描いた物語なのだから。

nice!(3)  コメント(3) 

空棺の烏 [読書・ファンタジー]


「烏に単(ひとえ)は似合わない」「烏は主を選ばない」
そして「黄金(きん)の烏」と続く、
大河ファンタジー「八咫烏(やたがらす)シリーズ」の第4巻。
ちなみに「空棺」は「くうかん」と読むのだそうな。

人形(じんけい)から鳥形(ちょうけい)へと
変身できる能力を持つ人々が住まう世界、「山内(やまうち)」。
彼らは「八咫烏」と呼ばれ、
その世界を支配する者は「金烏代(きんうだい)」と称される。

第1作「単」・第2作「主」では、
やがて金烏代を嗣ぐことになる日嗣の御子(若宮)の后選びと
その裏で起こっていた次期金烏代の座を巡る暗闘が描かれた。

そして前作「黄金の烏」では、
その「八咫烏」を喰らい尽くそうとする凶悪な "大猿" が登場した。
"大猿" たちがどこから、何を目的にやってくるのかも不明だったが
どうやら「八咫烏」たちの世界の "外" から侵入してきたらしい。

作者によると、この「八咫烏シリーズ」は、もともと
烏たちと大猿たちの戦いがメインとなる予定だったらしいので、
いよいよこれからが本番なのだろう。

では、本巻はどんな位置づけなのだろう。
読み終わって思ったのは、「戦いの準備」の章だったということだ。

金烏代宗家の近衛兵にして、最精鋭部隊である「山内衆」。
その養成機関である全寮制の学校「勁草院」が舞台となる。

第二作からメインキャラを勤めている少年・雪哉が本作も主役を張る。
若宮の側近という地位を離れ、「勁草院」へ入学した雪哉だが、
学内には日嗣の御子を奉ずる若宮派と、兄宮である長束(なつか)の
巻き返しを期待する兄宮派があり、その派閥間抗争に巻き込まれていく。

学園ものだから、同級生や先輩としていろいろなキャラが登場する。

田舎育ちで庶民階級出身、おおらかな性格の茂丸、
大貴族である西家の御曹司で坊ちゃん育ちの明留(あける)、
あらゆる武術で天才的な冴えを見せるが、暗い陰をもつ千早。

お約束の "意地の悪い先輩" として登場する公近(きみちか)、その逆で
雪哉に引きずり回されるうちにすっかり後輩の面倒見役になってしまう
先輩・市柳(いちりゅう)はコメディリリーフ的な立ち位置。

そして教官たちも一筋縄ではいかない人が多い。
特に戦術理論を担当する翠寛(すいかん)は当代最高の用兵家と謳われ、
「盤上訓練」という授業を受け持っている。
これは「軍人将棋」とボードシミュレーションを組み合わせた
ウォー・ゲームみたいなもので、対戦する二人で
兵(を模した駒)を盤上に展開して軍を進め、勝敗を競うものだ。

その「盤上訓練」で、初っぱなからなぜか翠寛は
対戦相手として雪哉を指名する。
その初戦で雪哉は完敗を喫するのだが、
そのまま引っ込んでいるようでは主役は張れない。
後半には華麗なる逆襲も描かれるのだが、そのへんは読んでのお楽しみだ。
彼が「戦略家」として意外な(失礼!)才能を示すのも本書の読みどころ。

 全然関係ないけど、ここのシーンで何故か
 『スター・トレック』のコバヤシマル・テストを
 想定外の方法で突破したカークを想い出したよ。

そんな学び舎での日々を過ごしている彼らに、意外な知らせが舞い込む。
当代の金烏代である今上陛下が退位し、若宮に譲位しようとしたところ、
神官の長から「待った」がかかったのだ。
つまり、「若宮は果たして本当の "金烏" なのか」という
根本的な問題が発生していたのだ・・・

学園ものと言えば、同じ釜の飯を食っているうちに新たな友情を育んだり
人間的な成長を遂げたりというのがおきまりのパターンで、
本書もそういう要素は充分に持ち合わせているのだが
そこに雪哉はどうもあてはまらない。
だいたい「雪哉ってこんな性格だったっけ?」
「こんなに性格悪かったっけ?」って思うシーンがちらほら。

第1作はミステリとしてもよくできていた。
本作もそれに劣らず、あちこちに撒かれていた伏線が
きれいに回収され、「そうだったのか!」というラストを迎える。
雪哉に関する違和感というか疑問もここで氷解する、という仕掛けだ。

ラストシーンは、「卒業式」。学園ものなら当たり前でしょう。
見事、数々の難関を突破して「山内衆」に迎えられる卒業生たち。
「大猿を迎撃する準備」が順調に整いつつあることを示唆して「つづく」。

単行本では既に「第一部(全6巻)」が完結しているらしい。
あと2巻、「玉依姫」と「弥栄の烏」が文庫化されるのを待ってます。

nice!(3)  コメント(3) 

図書館の魔女 烏の伝言 上下 [読書・ファンタジー]


長編ファンタジー『図書館の魔女』の続編だ。

多島海に面する王国「一の谷」。
前作の主人公である<図書館の魔女>ことマツリカと、
その側近くに使える少年・キリヒトの属する国でもある。
海を挟んだ西側には「アルデシュ」、北に位置する帝国「ニザマ」。

「ニザマ」帝国の宰相・ミツクビの暗躍により、
「アルデシュ」は「一の谷」領への侵攻を企てる。
さらにミツクビは「一の谷」内部の有力者たちにも切り崩しをかけ、
野望達成の障害となるマツリカを抹殺するための刺客まで放ってきた。

ミツクビの陰謀に対抗し、「一の谷」を守るべく奮闘する
マツリカたちを描いたのが前作だった。

本書の物語は、前作の終了からさほど間がない頃に始まる。

前作のラストに於いて、国を二分する混乱に陥った「ニザマ」帝国。
非主流派に転落した者たちは、続々と国外への脱出を始めていた。

高級官僚の姫君・ユシャッパも、そんな者たちの一人。
少人数の近衛隊に守られ、雇った剛力(ごうりき)たちと共に
尾根道を越えて港町・クヴァングヮンにたどり着いた。
ここから海路で国外へ脱出するはずだった。

密かに逃亡を支援している郭(くるわ)にたどり着いた一行だが、
そこはすでに裏切り者の巣と化していた。
近衛隊の多くは命を落とし、ユシャッパは囚われの身となってしまう。

港町・クヴァングヮンには無数の運河が張り巡らされ、
干満の差によって生じる暗渠はさながら迷路のよう。
そこを根城にして暮らすのは、戦火で親を失った孤児集団「鼠」。

辛うじて生き残った近衛兵たちは、「鼠」の力を借り、
剛力たちとともに姫の奪還を目指すが・・・


近衛兵、そして剛力たちをメインにストーリーが進む。
前作同様、多くの人物が登場するが
みんなしっかり書き分けられてキャラが立ってるのはたいしたもの。

この手の「囚われのお姫様救出もの」は、
そのお姫様に魅力がないと盛り上がらないのだけど
ユシャッパは堂々の合格点だろう。

年齢は明記されないのだけど、たぶんマツリカとあまり変わらない
10代後半くらいかと思われる。
心優しいけれど気丈で、教養にあふれ、聡明で機転が利く。
下賤のものとも分け隔てなく接するなど、好感度も抜群。

例えば剛力の一人・エゴンは、まともに言葉を発することができない。
そのため仲間と離れ、もっぱら烏とともに過ごしているのだが
ユシャッパはそんなエゴンにも興味を抱き、親愛の情を示す。
そしてそれが、後半になると重要な "伏線" となって生きてくるのだ。

物語自体も堅牢な作り。
郭を牛耳る "裏切り者" たちの行動に

不審な部分もあったりと、実はあちこちに
様々な "伏線" が仕込んであり、
下巻に入るとそれらが綺麗に "回収" される。
つまり、よくできたミステリ並みに "構成" が綿密に行われていて、
ストーリーが実によく計算されている。もう脱帽です。


『図書館の魔女』の続編のはずなのに、
いつまで経ってもマツリカもキリヒトも登場しないので
フラストレーションが溜まる人もいるだろう。私もそうだった(笑)。

もっとも、「あれ?このキャラはあの人じゃないの?」ってのが
一人だけ出てくるんだけどね、それもけっこう早い時期に。

マツリカさんの登場には、下巻まで待たなければならない。
前作の記事にも書いたけど、
「博覧強記だけど傲岸不遜で偏屈者のマツリカさん」は今作でも健在だ。
彼女の毒舌を聞いているとだんだん嬉しくなってくる(えーっ)www。
すっかりマツリカさんのファンになってたんだねえ、私。

前作では「一の谷」から始まり、舞台は「ニザマ」へ移り、
さらには西大陸の奥深くまで移動していくなど
空間的なスケールが大きかったんだけど
本作では、物語はほぼ港町・クヴァングヮン内でのみ進行する。
そして全体からすればマツリカさんの登場する割合はわずかなど
「本編の続き」というよりは「外伝」的意味あいが強いかな。

でも、次作では(たぶん)マツリカとキリヒトの話を
がっつり描くのだろうし、その背景となる
「ニザマ」の混乱の様子を描いておくという意味もあったのだろう。

そして本作での新登場キャラのうち、
何人かは次作以降にも出演するのではないかな。
個人的には、ユシャッパさんにはぜひ出ていただきたい(笑)。

そういう意味では、やっぱり読み逃してはいけない作品なのだろう。

nice!(2)  コメント(2) 

炎路を行く者 -守り人作品集- [読書・ファンタジー]


炎路を行く者: 守り人作品集 (新潮文庫)

炎路を行く者: 守り人作品集 (新潮文庫)

  • 作者: 上橋 菜穂子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/12/23
  • メディア: 文庫
評価:★★★

全10巻におよぶ大河ファンタジー、『守り人』シリーズ。
その番外編、第2弾である。

「炎路の旅人」
文庫で約230ページと、ほとんど長編並みのボリューム。
主人公は本編第7巻『蒼路の旅人』から登場するヒュウゴ。
彼が戦災孤児からタルシュ帝国の密偵となるまでを描いている。
祖国であるヨゴ皇国がタルシュの侵攻によって滅亡、
皇帝の近衛兵である〈帝の盾〉であった父も戦死してしまう。
ヒュウゴ自身も命の危険にさらされたが
貧しい漁師ヨアルとその娘リュアンに匿われて生き延びる。
やがて酒場で働き始めるが、下街の不良少年たちの勢力争いに
巻き込まれ、リュアンと共に危機に陥ってしまう。
その二人を救ったのは、謎めいた商人風の男だった・・・
本編では成長した姿で登場し、タルシュ皇帝の後継を狙う
第二王子ラウルに仕えている。
一筋縄ではいかなそうなキャラではあったが、
その一端が本作で明かされる。

「十五の我には」
文庫で50ページちょっとの短編。
養父ジグロと共に用心棒稼業に勤しむ、15歳のバルサが描かれる。
ある隊商の護衛についたジグロとバルサだが、
他の護衛士たちが盗賊に内通していた。
襲撃を受けた二人は奮戦するが如何せん多勢に無勢、
バルサは深手を負ってしまう。
彼女の傷が癒えるまで、ジグロは住み込みの用心棒として
小さな宿場町に留まることにした。
そこの酒場で、バルサは二人を裏切った護衛士を見つけるが・・・
本編では初登場時にして既に30歳と、
いささか薹がたった(失礼!)主役だなあ・・・と思ったものだが
彼女のパーフェクトなソルジャーぶりを読んでみると、
この年齢設定に納得したものだ。
しかし本書のバルサは15歳。腕はともかく精神的にもまだまだ未熟で
無理して背伸びをしている様がなんとも微笑ましく、かつ痛々しい。
それを温かく支えるジグロもまた、その度量の大きさを見せる。
本編開始時には既に故人になっているジグロだが、
彼の "魂" はしっかりバルサに受けつがれているのがわかる。


うーん、やっぱり本編の続きが読みたいなあ。
ヒュウガなんて本編後の時代にこそ本格的な活躍の場がありそうだし、
バルサとタンダのその後も知りたいし、
なにより、二十歳前にして既に "名君" の片鱗を見せている
チャグムの治世を見てみたい。

長編でとは言わない(もちろん長編が出れば万々歳だが)。
短編集でもいいので、"その後" の話が読みたいなあ・・・

nice!(2)  コメント(2) 

影王の都 [読書・ファンタジー]


しばらくぶりに読書録を書くにあたって
記録を確認したら、何とこの本を読み終わったのは
もう2ヶ月も前だったよ。
うーん、けっこう内容を忘れてそうだなぁ・・・

影王の都 (創元推理文庫)

影王の都 (創元推理文庫)

  • 作者: 羽角 曜
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/03/12
  • メディア: 文庫

評価:★★★☆

第一回創元ファンタジイ新人賞選考委員特別賞受賞作。

かつて砂漠の王国に君臨した若き王は、
富に権勢、美貌さえも手にしていたが、
それにあきたらず不老不死までをも求めた。

しかしその傲慢さは神の怒りを買い、
王は現し身と正気を失って砂漠の都にただ一人幽閉され、
<影王>と呼ばれるようになった。

そして100年に一度ほど、現世から人を呼び寄せる。
呼ばれた者はそれに逆らうことはできず、
そして<影王の都>に入った者で戻ってきた者はいない・・・

ヒロインのリアノは16歳。
両親を失い、兄も家を出て天涯孤独の身の上。
ある夜、村の外れに一人で住む彼女の家を訪ねてきたのは
"口をきく髑髏" だった。

"髑髏" はリアノに告げる。
「広い世界に出るべきだ。おまえは旅立たなければならない」
「どこへ?」と問い返す彼女に "髑髏" は答える。
「行きたいところが決まっていないならば、
 私を黄金に輝く砂の大地に連れていってほしい」

しかし、"髑髏" とともに旅に出たリアノの前に
ファンミリオと名乗る若者が現れる。
彼は魔法を使って、リアノを遙かなる砂漠へと連れ去ってしまう・・・


リアノとファンミリオの本筋と並行して
<影王>に呼ばれた娘イーラと青年ヴィワン、
港町で暮らしているリアノの兄・ガレルーンの生活と
時も場所も異なる3つのストーリーが語られていく。

読んでいくうちに、多くのエピソード群を頭の中で時系列に沿って
並べ替えて整理しようとしても、これがなかなか難題なんだな。

最終的にこれらは融合して大きな物語を形成するのだけど
何がどう繋がるのか、それぞれが全体の中でどんなピースに相当するのか、
そして物語の着地点がどこにあるのかは容易に見えてこない。

そして、どちらかというと狂言回し的に思えた "髑髏" の意外な正体。
物語のあちこちで姿を見せ、この世界の鍵を握る "幻魔法師"・シド。

最終的にこれらのつながりはきれいに説明されることになる。
よくできたミステリのようでもあり、
よくできた○○○○○○○とも言えるだろう。


登場人物たちの多くは、物語の中で愛し合ったり憎み合ったりなど、
辛く苦しく切ない思いを強いられるのだけど
ラストに至るとこれらもまた見事に "解放" され、
読後感も悪くない。
エンターテインメントとしてもなかなかの出来。

新人賞受賞でデビューを飾った人だけど、
たしかにそれだけの実力はあると思う。
今後の活躍が楽しみな作家さんだ。

黄金の烏 [読書・ファンタジー]

黄金の烏 八咫烏シリーズ 3 (文春文庫)

黄金の烏 八咫烏シリーズ 3 (文春文庫)

  • 作者: 阿部 智里
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/06/10
  • メディア: 文庫

評価:★★★★

「烏に単は似合わない」「烏は主を選ばない」に続く、
大河ファンタジー「八咫烏シリーズ」の第3巻。

人形(じんけい)から鳥形(ちょうけい)へと
変身できる能力を持つ人々が住まう世界、「山内(やまうち)」。
彼らは「八咫烏」と呼ばれ、
その世界を支配する者は「金烏代(きんうだい)」と称される。

第一作「単」では、
やがて金烏代を嗣ぐことになる日嗣の御子(若宮)の后選びが、
そして第二作「主」では、
后選びの裏で並行して起こっていた、
若宮の腹違いの兄宮・長束(なつか)を奉じる一派との暗闘が描かれた。

そしてどうやら、前2作は舞台説明と登場人物紹介を兼ねた
プロローグだったらしい。おお、なんて壮大な(笑)。
もっとも、独立した長編としても十分面白かったし、
そうでなければ続巻の刊行もなかっただろう。

前作「主」では、郷士の次男坊で
若宮の側仕えとして山内に上がった少年・雪哉(ゆきや)を中心に
物語が綴られていったが、
第3作の本書でも引き続き雪哉がメインキャラを務めている。


故郷である垂氷郷へ帰っていた雪哉の前に一羽の八咫烏が現れるが、
正気を失っている彼は仲間を、そして子供を襲い始める。
そこへ現れた若宮から、「仙人蓋」という薬物が密かに広まりつつあり、
狂った八咫烏もそれに犯されていたことが判明する。

雪哉は若宮とともに「仙人蓋」の流れを追い始める。
そして辺境の村・栖合(すごう)へやってきた二人は、
住民たちを食らい尽くす "大猿" を目撃する。

村のただ一人の生存者は小梅という少女。
父親に眠り薬を盛られ、長櫃の中でぐっすり寝込んでいて
難を免れたという。
しかし彼女の父親は行方をくらませており、
"大猿" について何か鍵を握っているものと思われた。
そして彼女自身も、何かの事情を隠し持っている様子が・・・

雪哉と若宮は、「仙人蓋」と "大猿"、二つの謎を追って
"地下街"(宮廷権力の及ばない裏社会)の支配者、
"鵄"(とび)に接触しようとするが・・・


シリーズも進んできて、根幹に関わる設定もいくつか明らかになってくる。

八咫烏の頂点を占める「金烏」とはどのような存在なのか、とか。

「山内」という世界は、全くの別世界ではなく、
実は我々の暮らしている世界の "隣" というか
思ったより "近い" 場所に存在しているらしい、とか。

本書に登場する "大猿" は、今後のシリーズを通して
八咫烏の敵となる存在らしいが、本書ではまだ
どこから来たのかも、どれくらいの勢力なのかも、
そして彼らの目的も、すべてが謎である。
こちらも、おいおい明かされていくのだろう。


そして何と言っても、本シリーズは登場するキャラが魅力的。
挙げたいキャラは多いのだけど、
今回何と言っても嬉しかったのは浜木綿の再登場。
人生の浮沈を経験し、酸いも甘いもかみ分けていて、
しかも姉御肌で "漢前" なんだけど、
若宮のことを一番理解し、愛し、支えている。
つくづくいい女だなあ、と思う。

小梅ちゃんも、本作のみで終わらせるにはもったいない。
ぜひ今後も登場してもらって、
雪哉と派手に喧嘩していただきたい(笑)。


第1作では后の座を巡る女の戦い&本格ミステリ、
第2作では宮廷内の陰謀劇、
そして本作では謎の侵略者との戦いと、
見事にカラーの違う作品を読ませてくれる。

そして第4作『空棺の烏』ではなんと
「ハリー・ポッター」ばりの "学園もの" になるらしい。

 実は既に文庫版が手元にあるので、近いうちに読もうと思ってる。

作者の引き出しの多さには感心するばかりだ。
本作を書いてる時点でまだ23歳とか、もう凄すぎる。
今後、どこまで伸びるのか楽しみな作家さんだ。

英国空中学園譚 ソフロニア嬢、倫敦で恋に陥落する [読書・ファンタジー]

ソフロニア嬢、倫敦で恋に陥落する (英国空中学園譚)

ソフロニア嬢、倫敦で恋に陥落する (英国空中学園譚)

  • 作者: ゲイル キャリガー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/02/23
  • メディア: 文庫

評価:★★★☆

人類と、吸血鬼や人狼などの "異界族" が共存する
19世紀のパラレルワールド英国を舞台にした
スチームパンクなファンタジー、最終巻。

お転婆の度が過ぎて、「花嫁学校」(フィニシング・スクール)へ
入れられてしまったソフロニア・テミニック嬢。
しかし「花嫁学校」とは世を忍ぶ仮の姿、
その実態は礼儀作法のみならず
あらゆる諜報技術を仕込まれるスパイ養成学校だった・・・

前作から1年後、ソフロニアたちは最上級生となった。
本作では、シリーズ最後にして最大の戦いが描かれる。


クリスマスが近づき、兄弟校である男子校で開かれる舞踏会に
参加することになったソフロニアたち。

生徒たちが浮き立つ中、ソフロニアは
学園に空賊が潜入するのを目撃する。

賊は撃退したものの、その背後にいるのは秘密結社・"ピクルマン"。
彼らの目的は異界族の排除から、
新型水晶バルブを用いて英国中のメカを支配することへ移り、
そして今回はさらにスケールアップしているらしい。

後半では、巨大飛行船でもある学園がピクルマンと空賊に占拠され、
陰謀成就のためにロンドンを目指して移動を開始する。

ソフロニア嬢はそれを阻止すべく、単身で学園に潜入する。
しかし何と言っても多勢に無勢。
いつしか満身創痍になりながらも、学園奪回のために戦い続ける。

 突然『ダイ・ハード』が始まるんでビックリしてしまったよ。
 そんな中でも、顔についた傷跡を気にするあたり、
 やっぱり年頃の女の子だねえ。

まさに『英国空中学園譚・激闘篇』といった趣き。

そんな彼女にも、援軍が。
てっきりお飾りの学長かと思われていた
マドモアゼル・ジェラルディンの意外な活躍。
ちょっと頭のネジがゆるんでしまった吸血鬼、
ブレイスウォーブ教授も "本来の姿" で(笑)空賊たちに襲いかかる。

そして何と言っても、
今回いちばん美味しいところを持っていくのは
ソフロニアたちにとってはかつての意地悪上級生だったモニク。

今では学園を去ってウエストミンスター吸血鬼群に仕えているが
スパイとしての力量も確かで、本作終盤ではソフロニアと共に
"ピクルマン" の陰謀阻止のために共闘する。

 『ルパン三世・カリオストロの城』の峰不二子を連想したよ。

ラストでは、"ピクルマン" の組織は壊滅、
ソフロニアと同級生たちは目出度く "フィニッシュ"(卒業)を迎える。

ソープとの関係も決着し、いよいよソフロニア嬢は
プロのスパイとしての一歩を踏み出していく。

最終巻にふさわしく、画に描いたような「大団円」だ。


シリーズはこれで完結となるが、
作者は同一世界を舞台にした作品を書き続けているので
いつか、他のシリーズにソフロニアたちが顔を出すこともあるだろう。

 解説によると、既に「アレクシア女史」シリーズで
 ソフロニアらしき人物への言及があるらしいんだけど・・・

このシリーズ、読み始めたのが2月だから
わずか3ヶ月ほどのつきあいなんだけど、
彼女たちと別れるのは意外なほど淋しく感じる。

ソフロニア嬢たちの "その後" が、いつか読めることを期待してます。

英国空中学園譚 ソフロニア嬢、仮面舞踏会を密偵する [読書・ファンタジー]

ソフロニア嬢、仮面舞踏会を密偵する (英国空中学園譚)

ソフロニア嬢、仮面舞踏会を密偵する (英国空中学園譚)

  • 作者: ゲイル キャリガー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/04/22
  • メディア: 文庫
評価:★★★


人類と、吸血鬼や人狼などの "異界族" が共存する
19世紀のパラレルワールド英国を舞台にした
スチームパンクなファンタジー、第3弾。


お転婆の度が過ぎて、「花嫁学校」(フィニシング・スクール)へ
入れられてしまったお嬢さん、ソフロニア・テミニックが主役。
「花嫁学校」とは世を忍ぶ仮の姿、その実態は礼儀作法のみならず
あらゆる諜報技術を仕込まれるスパイ養成学校だった。
その中を開校以来というぶっちぎりの成績で突っ走るソフロニア嬢。
前回は入学から半年後が舞台だったが、今回はそのさらに1年後のお話。


充実した学生生活を送るソフロニアたちだが、
友人の一人・シドヒーグに "伝書バト" のメッセージが届く。


彼女の正式名はレディ・キングエア。
<英国パラソル奇譚>シリーズに登場するマコン卿の子孫で
キングエア人狼団に育てられた少女だった。


その人狼団に何か大事件が起こったらしい。
シドヒーグはそれが何かを探るために学園から姿を消してしまう。


一方、旧友の失踪に心を痛めるソフロニアにも知らせが届く。
彼女の長兄が婚約することになり、それを祝う仮面舞踏会が開かれる。
ソフロニアもそれに出席することになったのだ。


親友のディミティとともにテミニック家へ向かうソフロニア。
エスコート役は、公爵家の御曹司・フェリックス。
今回もまた、ことあるごとにソフロニアに言い寄ってくる(笑)。


そして始まった舞踏会のさなか、シドヒーグと二人の人狼が現れる。
人狼団の動揺を抑えるために、彼女はスコットランドへ向かうという。


そのとき屋敷中のメカが突然、一斉に異常を来して停止してしまう。
その騒ぎに紛れて屋敷を脱出したソフロニアたちだが・・・


一路北へ向かうソフロニアたちは、
メカの異常停止が広範囲で起こっていたこと、
そして騒ぎを引き起こしたのは何者かの陰謀であったことを知る。


人狼、吸血鬼、空賊、そして異界族排除を狙う "ピクルマン"。
彼女たちは様々な勢力の思惑がからみあう陰謀に巻き込まれていく。
飛行船、馬車、そして蒸気機関車まで駆って陸に空に大活躍。
良家の令嬢にして優秀なスパイでもあるソフロニアの冒険が始まる。


物語としては、次第に "ピクルマン" の存在が大きくなってきた。
終盤では、"ピクルマン" の幹部(たぶん)にして
フェリックスの父親でもあるゴルボーン公爵も顔を見せる。
その冷酷非情ぶりは、まさに真打ち登場という感じである。


ソフロニアを巡る二人の男性、ソープとフェリックスの鞘当ても
今回はいっそう激しさを増してくるが、どちらにも一長一短あって
さすがのソフロニア嬢でも簡単には決められないようだ。


・・・なあんて思っていたら、終盤ではまさかの展開が待っていて、
この三角関係は大きく変化を遂げそうだ。


ソフロニアの周囲でも、人生の岐路を迎えて学園を去る者が現れるし、
なにより彼女自身が、本書のラストにおいて
自らの将来をかけた "ある選択" をすることになる。
その決断は彼女に何をもたらすのか。


次巻、完結。

英国空中学園譚 ソフロニア嬢、発明の礼儀作法を学ぶ [読書・ファンタジー]

ソフロニア嬢、発明の礼儀作法を学ぶ (英国空中学園譚)

ソフロニア嬢、発明の礼儀作法を学ぶ (英国空中学園譚)

  • 作者: ゲイル キャリガー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/12/06
  • メディア: 文庫



評価:★★★

人類と、吸血鬼や人狼などの "異界族" が共存する
19世紀のパラレルワールド英国を舞台にした
スチームパンクなファンタジー、第2弾。

主人公ソフロニアは14歳。お転婆の度が過ぎて、
「花嫁学校」(フィニシング・スクール)へ入れられてしまう。
しかしそこは礼儀作法とともに、あらゆる諜報技術を仕込まれる
スパイ養成学校だった・・・というのが前作の発端。

入学から半年後、ソフロニアはある試験において
開校以来となる最高得点を叩き出す。
しかし同級生たちの嫉妬を買い、孤立してしまう。

そんなおり、クラスメイトのディミティを誘拐しようと
飛行船に乗った謎の一団が現れる。
ソフロニアの活躍により事なきを得るが、
ディミティとの仲は修復されず、謎の一味の目的もわからない。

そして巨大気球でできた空中学園は、
ふだん滞留しているダートムアを離れてロンドンへ移動を開始する。

さらに、その移動には姉妹校(兄弟校?)である
男子校の生徒たちも加わることになる。
前作でソフロニアに意味深な視線を投げてきた少年もその中に。
彼の名はフェリックス。なんとゴルボーン公爵家の御曹司だった。

ことあるごとにソフロニアに言い寄ってくるフェリックスだが
ソフロニアの心は、学園の最下層で
動力源となる "釜焚き" に従事する "煤っ子"・ソープへと傾いていく。


前作でキーアイテムだった "謎の試作品" は、
実は途方もない "発明品" だったことが分かり、
本作ではこれを巡って複数の集団がしのぎを削る。
ソフロニアと空中学園もそれに巻き込まれる形で大騒動が展開する。

前作から登場していた謎の組織 "ピクルマン" は、
どうやら "異界族" との共存を否定する人々の集まりらしい。
もちろん、それに対抗する者たちもいて、
本作では〈英国パラソル綺譚〉(アレクシア女史シリーズ)でも
登場していた吸血鬼の一族が暗躍するし、
同シリーズでのレギュラーだった「あの人」も顔出しをする。

異界族を巡る対立に端を発する発明品争奪戦、
大貴族と下層民という身分違いの少年二人の間で揺れる
アレクシアの恋と冒険が綴られていく。

クラスメイトや教師たちといった脇役たちもキャラ立ち充分で
度胸と実行力抜群のヒロインの大活躍は読んでいてとても楽しい。

全4巻のシリーズなので、本作終了時点で折り返し。
現時点での読書計画(笑)では
4月中には全巻読破のはずなんだが、さて。


前の10件 | - 読書・ファンタジー ブログトップ