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英国空中学園譚 ソフロニア嬢、空賊の秘宝を探る [読書・ファンタジー]

ソフロニア嬢、空賊の秘宝を探る (英国空中学園譚)

ソフロニア嬢、空賊の秘宝を探る (英国空中学園譚)

  • 作者: ゲイル キャリガー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/02/08
  • メディア: 文庫



評価:★★★

吸血鬼や人狼が人間たちと共存する、
パラレルワールドなヴィクトリア朝英国を舞台に、
アレクシア女史の活躍を描いた〈英国パラソル奇譚〉シリーズ。

本書はその〈英国パラソル奇譚〉の時代を
25年ほど遡った1851年に始まる。


主人公のソフロニア・テミニック嬢はお転婆盛りの14歳。
今日も屋敷の中を走り回るソフロニアは、
勢い余って来客の頭へトライフル(デザートの一種)を
盛大にぶちまけてしまい、堪忍袋の緒を切った母親によって
「花嫁学校」(フィニシング・スクール)へ入れられてしまう。

 ちなみに finishing school の意味を調べてみたんだが
 「裕福な家庭の娘が社交界へ出るための作法や教養を学ぶ私学」
 とある。

驚くべきことに、その日のうちに
学長のマドモアゼル・ジェラルディンと名乗る女性が現れ、
彼女とともに学園へ向かって出発する羽目になるソフロニア嬢。

学園へ着くまでにも、ひと波乱もふた波乱もあって、
読者を飽きさせずに畳みかけるようにイベントが発生する。

そして着いてみてまたびっくり。
タイトルにもあるけれど、この学園は
巨大な飛行船が連なってできており、空中をふわふわと漂っているのだ。

さらに、入学してみてもっとびっくり。
なんとこの学園の授業内容は礼儀作法にとどまらず、
情報の集め方、毒薬の扱い、吸血鬼への対処法、
陽動作戦術、最新武器学・・・要するに、スパイ養成学校だったのだ。
しかしソフロニアは案の定、すっかりこの学園が気に入ってしまう。

 なぜ彼女がここに放り込まれてしまったのかは
 本書の最後で明かされる。

タイトルの "空賊" とは、飛行船に乗って
ソフロニアを、そして学園を何度も襲撃してくる謎の一団のこと。
どうやら彼らは上級生のモニクがどこかに隠した
謎の "試作品" なるものを狙っているらしい。

時代こそ19世紀だが、日常生活の中に
メカ執事やメカアニマルなどの機械類が闊歩するなど
スチームパンクな科学技術が支配する世界で、
ソフロニア嬢の冒険が綴られていく。


主人公を取り巻くクラスメートも、
「学園ものならこんなキャラいるよね~」的に
ひととおり揃っていて(笑)
意地悪な上級生も、変人の教師陣もお約束(笑)。

本書は第一巻なので、学園の設定紹介、キャラの紹介、
次巻以降へ向けての伏線張りにも多くの描写が割かれている。

たとえば学園の最下層には、動力源を維持するための
"かま焚き" に従事する男の子たちがいて(なんと燃料は石炭だ!)、
その中の一人とソフロニア嬢は仲良くなる。

後半になると、学園の姉妹校(兄弟校?)である
男子校の生徒たちも登場し、その中の一人は
ソフロニアに意味深な視線を投げてくる。

今後の展開ではソフロニア嬢のラブロマンスも期待できそうだ。


〈英国パラソル奇譚〉と同一世界なので、
本書にも三人ほど共通で登場する人物がいる。
当然ながら25年前なので、若き日の姿が拝めるわけだ。
次巻以降にも、おなじみのキャラクターが登場するらしい。

〈英国パラソル奇譚〉と、直接のストーリーのつながりはないので
本書を読むに当たって〈奇譚〉シリーズを未読でも差し支えないが、
世界設定や共通するキャラの背景とかを知っていた方が
より楽しめるのは間違いないので
できたら〈奇譚〉シリーズを読んでからとりかかることをオススメする。


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はるひのの、はる [読書・ファンタジー]

はるひのの、はる (幻冬舎文庫)

はるひのの、はる (幻冬舎文庫)

  • 作者: 加納 朋子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2016/04/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

映画化もされた「ささや」シリーズの最終巻。

「ささや さら」のヒロイン・さやの息子、ユウスケが主人公。

小学生になったユウスケの前に、
ある日「はるひ」と名乗る少女が現れる。
初対面のはずなのに、なせかはるひは
ユウスケのことをよく知っているよう。

はるひはその後も、たびたびユウスケの前に姿を見せては
その都度、無理難題を押しつけるのだった。

やがて小学生から中学生となり、そして高校生になったユウスケは
入学式の直前、はるひにそっくりな少女・華(はな)に出会う・・・


読んでいると読者は最初のうち混乱するかも知れない。
詳しく書くとネタバレになるのだが
本書に描かれる世界は微妙にゆらいでいる。
過去にあったことがないことになっていたり、
死んだはずの人が生きていたり。

どうやら、SFで言うところのパラレルワールド的な
二つの世界のことが語られているらしいと見当がついてくる。

その二つの世界の関係が終盤になって明かされるのだが
その真相、そしてそれを現出させた "ある人" の想いに触れて
涙腺がゆるむ人もいるのでないかな(私がそうだった)。

 何といったらいいか。
 梶尾真治の一連の作品群に通じるものを感じる、って書いたら
 分かる人は分かるだろう。

本書をどのように読むか。
ミステリ要素もあるしファンタジー要素もあるし
もちろんSFとして解釈することも可能だ。
しかもその3つの要素がお互いに邪魔しあうことなく、
渾然一体となって、独特の雰囲気を醸し出している。

エピローグでは成人となったユウスケが描かれるが
彼をはじめ、登場人物みんなに幸福な未来が訪れる。
たまにはこんな温かい物語に身を委ねるのもいい。


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カンパニュラの銀翼 [読書・ファンタジー]

カンパニュラの銀翼 (ハヤカワ文庫JA)

カンパニュラの銀翼 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 中里友香
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/09/17
  • メディア: 文庫



評価:★★

第2回アガサ・クリスティー賞受賞作。

星の数でも分かるように、私はこの作品には辛い点をつけた。
その理由は後に述べるとして、まずは内容の紹介から。


本書は大きく I~IV の4部構成になっている。

「I」の舞台は1920年代のイギリス。
主人公はエリオットという青年。
彼は資産家の息子・アンドリューの替え玉として名門大学に通い、
アンドリューの妹で目の不自由なクリスティンに
時たま "兄" を装って会いに行く日々を送っている。
エリオットは学業の傍ら、心理学者オーグストの助手になるが、
ある日シグモンド・ヴェルティゴという謎の男が現れる・・・

「II」では時間を巻き戻し、
オーグストとシグモンドの過去の因縁が語られる。
そしてこの「II」の終盤から物語は「ミステリ」の枠を逸脱し、
予想の斜め上どころではない方向へ進み始める。
ここまで読んで一瞬考え込んでしまった。これは何だろう、って。
強いてジャンル分けすればファンタジーかな。それもホラー寄りの。

「III」では再び「I」の時間線に戻り、
ここでオーグストの "正体" というか "宿命" が明らかにされる。
それは彼と関わった者に死をもたらすという恐ろしいもの。

そして物語は、その "宿命" から逃れるべく、あることを決行する
エリオットとシグモンドを描く「IV」へと続いていく。
タイトルの意味もここに至ってようやく判明する。


とにかく、物語全体の見通しが(私にとっては)よくないこと、
キャラの行動が今一つ納得できないこと、
そのへんが評価が低い原因かな。とくにエリオット君の行動が。

いい人過ぎるというかヘタレというか。
クリスティンに対する態度が私には理解できないよ。


アガサ・クリスティーといえばミステリ、それも本格ものの大御所、
たぶん世界で5本の指に入るミステリ作家と言っても
否定する人は少ないだろう。

その名を冠する賞を受賞したのだから、
当然これはミステリだと思って読み始めたのだが・・・

まあ、ミステリの定義にもいろいろあって、
目一杯広義に捉えれば、エンターテインメント小説の
かなりの部分が含まれてしまうのは分かっている。

それでも、本書はミステリではないでしょう。
私の持っている "ミステリの枠" が狭いことも
承知しているが、それを差し引いても。
もちろん、ミステリかどうかと小説の面白さは
別次元の問題だと承知はしているが。

そもそもこの作品は、作者が何を書きたいのか何を言いたいのかが
なかなか伝わってこない。それも点が辛い理由の一つ。
それが分かるのは半ばをすぎ、終幕が近づいてからだ。
勘のいい人にはわかるのだろうか?

私はアタマが悪いので、ムズカシい話や持って回った話や
雰囲気だけで進んでいく話が苦手だったのだなあ、ってのを
本書を読んで改めて感じた。

実は深~い話で、それを理解できない私が
物語の表層しかなぞっていないのかも知れない。
その可能性は否定しない。
でも私には分からないんだから仕方がないじゃないか。
(開き直ってどうするwww)


いろいろ文句ばかり書いてるけど、独特の物語世界を展開していて
雰囲気もまたそれにふさわしいものを醸し出しているのは間違いない。

波長が合う人にとってはたまらなく快い作品なのだろうとは思う。
ただ、残念ながら私とは合わないということで。


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聖刻群龍伝 龍晴の刻 全4巻 [読書・ファンタジー]

聖刻群龍伝 - 龍睛の刻1 (C・NOVELSファンタジア)

聖刻群龍伝 - 龍睛の刻1 (C・NOVELSファンタジア)

  • 作者: 千葉 暁
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/06/24
  • メディア: 新書




聖刻群龍伝 - 龍睛の刻2 (C・NOVELSファンタジア)

聖刻群龍伝 - 龍睛の刻2 (C・NOVELSファンタジア)

  • 作者: 千葉 暁
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2014/08/22
  • メディア: 新書




聖刻群龍伝 - 龍睛の刻3 (C・NOVELSファンタジア)

聖刻群龍伝 - 龍睛の刻3 (C・NOVELSファンタジア)

  • 作者: 千葉 暁
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2015/01/23
  • メディア: 新書




聖刻群龍伝 - 龍睛の刻4 (C・NOVELSファンタジア)

聖刻群龍伝 - 龍睛の刻4 (C・NOVELSファンタジア)

  • 作者: 千葉 暁
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2016/08/18
  • メディア: 新書



評価:★★★★☆

第1巻の発売が1996年7月で、第28巻(最終巻)の発売が2016年8月。
完結までほぼ20年かかったということになる。

中断(続巻が出ない時期)が結構あったような気がするんだけど
単純計算すると8~9ヶ月に1冊出ていたことになる。

もちろんその間、『聖刻1092』等の他の作品も
並行して書いてたわけだから、
決してさぼっていたわけじゃないのは分かるんだけども。
でも20年は長かったなぁ。

物語開始時には少年の面影を残していたデュマシオンも
成長して所帯を持ち、最終章では思春期の子供を持つまでになる。
彼と同年代のキャラたちも同様だ。

大人として登場したキャラたちは
そろそろ引退を考える年齢になるなど
(おお、私と同年代じゃないか)
物語の中でも同じくらい着実に時は流れている。

 それもまた読む方にとっては楽しいんだが。

『グイン・サーガ』(栗本薫)は途中で放り出してしまったから
現在のところ、私が読んだファンタジーでは最長だろう。

とにもかくにも、全28巻での完結、おめでとうございます。

さてこの『龍晴の刻』はこの大長編の最終章である。
ざっと今までのストーリーを振り返ってみよう。

2000年前、大陸西方域に「龍の帝国」を一代で築いた「龍の王」は、
死に際して転生の秘術を施し、遙かな未来での復活をもくろんだ。

王の魂は復活に際して8つに分かれ、
それぞれ8人の人間("龍の器")に宿った。
その一人、小国イシュカークに第二公子として生まれた
デュマシオンが本編の主人公だ。

デュマシオンは国内での権力争いに生き残るため、
自分の力となってくれる人材を求めて諸国を放浪していた。
その中で、龍の王の遺産ともいうべき
"シュルティ古操兵" を手に入れたことにより、
「龍の王の後継者争い」の大本命として
歴史の表舞台に躍り出ることになる。

数多くの戦乱・陰謀・裏切り・恩讐を乗り越え、最終的には
最大のライバルであるレクミラー率いる帝国と
大陸西方域を二分して対峙するまでになる。

ここまでの戦いで、"龍の器" のうち6人までを
打ち破り、あるいは従え、残る最後の一人がレクミラー。
彼との戦いこそが "決勝戦" となるはずだったが・・・

これ以上の戦乱を望まないデュマシオンは、
愛娘スクナーをレクミラーの皇太子クロムリーに嫁がせ、宥和を図る。
レクミラーもまた病に伏して、両国の間に平穏な時が流れ始めたが・・・

というのが前章「龍虎の刻」までのあらすじ。


最終章では、当然ながらレクミラーとの決戦が描かれるかと思いきや
彼との決着は早々についてしまう。

代わって、デュマシオンの "最後の敵" となるのは、
彼の息子であるアーカディアであった。

 このあたりはアーサー王伝説がモチーフかなとも思った。
 アーサー王は謀反を起こした息子・モルドレッドと戦い、
 これを討ち取るも自らも致命傷を負い、
 アヴァロンの地で息を引き取るという悲劇的な結末を迎える。

 デュマシオンもまた悲劇的な最後を迎えるような気がして
 心配しながら読んだよ。

デュマシオンは、残忍で冷酷な暴君であった "龍の王" が復活し、
自分の体を乗っ取られることを恐れ、
強固な意志の力で "彼" を押さえ込んでいた。

自分の版図を連邦制にして自らは皇帝の座につかなかったのも、
農業・商業・工業の振興に尽くし、善政を敷いたのも、
すべては "龍の王" の二の舞にならないためであった。

しかし "龍の王" は、アーカディアを新たな "龍の器" とし、
彼の身体を乗っ取ることで "転生" を果たそうとする。

"竜の王" に支配されたアーカディアは、
新たな古操兵軍団を復活させ、
デュマシオンの正妃・サクヤーをも巻き込んで父に叛旗を翻す。

この最終章では、妻と息子を取り戻すべく "龍の王" へ挑む、
デュマシオンの最後の戦いが描かれる。

さぞかし激しい戦いになるのかな・・・と思いきや、
デュマシオンの矛先はいささか鈍りがちかなぁ。
目的は "倒す" ことではなく、"取り戻す" こと。
ある意味、もっとも困難な闘いではある。

"最後の決戦" というよりは "締め括り" の章、という感じ。
"寿命" の尽きかけた "古操兵たち" の最後の見せ場でもある。
20年にもわたって親しんできた綺羅星のようなキャラたち、
その最後の活躍もまた描かれていく。

 もっとも、「あとがき」にもあるように、
 なにぶん膨大なキャラと詳細な設定の集積であるから、
 人、モノ、すべてについて決着をつけることはそもそも無理。

作者の描いたこの物語の結末は、読んでいただくしかないが、
まずは完結まで書いていただいたこと、
読者に最後まで語りきってくれたことを感謝したい。


エピローグでは最後の戦いから十数年後が描かれる。

生き残ったキャラたちのその後、
そして、その子どもたちのことまで。
このあたりはちょっと感慨深いものがある。

もちろん、これだけではまだまだ掬い切れていないキャラや、
描ききれなかったエピソードもたくさんあるだろう。

そういうこぼれた部分も知りたいし、
デュマシオンが作り上げたこの世界の行く末を
もっと知りたいとも思う。

短編集でもいいので、ぜひ「外伝」を書いてほしいなぁ。
よろしくお願いします。


まずは20年間、お疲れ様でした。


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図書館の魔女 全四巻 [読書・ファンタジー]


図書館の魔女 第一巻 (講談社文庫)

図書館の魔女 第一巻 (講談社文庫)

  • 作者: 高田 大介
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/04/15
  • メディア: 文庫




図書館の魔女 第二巻 (講談社文庫)

図書館の魔女 第二巻 (講談社文庫)

  • 作者: 高田 大介
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/04/15
  • メディア: 文庫




図書館の魔女 第三巻 (講談社文庫)

図書館の魔女 第三巻 (講談社文庫)

  • 作者: 高田 大介
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/05/13
  • メディア: 文庫




図書館の魔女 第四巻 (講談社文庫)

図書館の魔女 第四巻 (講談社文庫)

  • 作者: 高田 大介
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/05/13
  • メディア: 文庫



評価:★★★★☆

気がつけばもう11月。
そろそろ読書感想録も再開しようと思って
読書記録を見たらびっくり。
今回の『図書館の魔女』を読んだのは8月だったよ。
3ヶ月も前のことなのでかなり忘れてる。
がんばって思い出しながら書いてみよう。


現実の世界では、「言葉は無力」な場面をしばしば見かける。
敵対勢力同士の「話し合い」が決裂あるいは中断して
武力紛争になだれ込むなんて、何度見たことか。

そしてそれはフィクションの世界でも同様。
"敵" に対しての「話し合い」や「説得」はものの役に立たず
(なかにはそれすら行われることなしに)
相手の武力侵攻を阻止するために、主人公もまた武力を手にする。

 ただ現実と異なるところは、最終的に
 "敵" とわかり合える結末を迎えることもあることか。
 (わかり合えないまま終わることも多いが)

しかし本書では、そういうネガティブに扱われがちだった「言葉の力」を
メインのテーマに取り上げていて、
当然ながら、その手のことを本業とする者を主人公に据えるという、
ファンタジーとしては珍しいというか目新しい物語をつくりだした。

「逆転の発想」であり「発想の勝利」とも言えるだろう。

 最終巻末の解説で作者の本業は言語学者とわかって、
 なるほどと思ったし納得もした。


さて、主人公がまたユニークだ。
外交交渉のための根回しに腐心し、会議においては主導権を握り、
自他の利益の最大化を目指して落とし所を探る。
なんだか老獪な政治家みたいだが、これをやってのけるのが
図書館の司書、それも年端もいかぬ美少女なのだ。
人呼んで『図書館の魔女』、彼女こそが本書のヒロインである。

 まあ、いささかライトノベル的ではあるが、
 ファンタジーならばある程度は許されるお約束だろう。
 リアリティ云々を言う人はそもそもこういう物語を読まないだろうし。

そして、従来のファンタジーとは異なり、
派手な合戦シーンなどはほぼ皆無である。
少人数での立ち回りや小規模な戦闘シーンはあるが、
全体の割合からしたらこれもわずかだろう。

その代わり、会議のシーンがやたら多い。
複数の人物が一つの部屋に集まりって
じっくりと語り合うシーンも含めたら、
文庫で1800ページを越える本書のうちのかなりの部分が
それで占められているといっていいだろう。

なら退屈なのか、というとそうではないんだなぁ。
そういうシーンが実に読み応えがある。
「ページを繰る手が止まらない」ほどスピーディな展開ではないが、
登場人物たちの丁々発止なやりとり、台詞の応酬が実に面白い。
「じっくり味わって読みたい」という気にさせる。

ちょっと前置きが長くなりすぎた。内容の紹介に入ろう。

本書には3つの国家が登場する。

多島海に面する王国「一の谷」。主人公たちの属する国でもある。
海を挟んだ西側には「アルデシュ」、北に位置する帝国「ニザマ」。

物語は、山奥の鍛冶の里に生まれ育った少年・キリヒトが
王宮の命によって故郷を離れるところから始まる。
「一ノ谷」王都にある史上最古の図書館で彼が出会ったのは、
自分とほぼ同年代の少女・マツリカ。
祖父である先代の引退に伴い、司書となった彼女は
古今東西の書物に接し、森羅万象に精通する、
さらに数多の言語を操ることすらできる天才少女だった。

彼女の役目は一介の司書にとどまらない。
水面下での各国との外交交渉を取り仕切っていて
王宮や有力政治家も彼女の言動に一目置いており
「一の谷」の政治への大きな影響力を持っていたのだ。

さらにキリヒトは知る。
"図書館の魔女"は、自らの声を持たない
(口をきくことができない)身であることを。

 戒律とかで「言葉を発するのが禁じられている」のではなく、
 身体能力としての「発声そのものができない」ようだ。
 そのあたりの事情は詳らかにされていないのだが、
 続編などで明かされるのかな?

幼い頃から手話を仕込まれてきたキリヒトは、
マツリカの手話通訳として図書館で働き始める。

折しも、アルデシュが「一の谷」領への侵攻を企てているとの
知らせがもたらされる。
裏で操るのはニザマ帝国の宰相・ミツクビ。
彼は「一の谷」の元老院議員にも切り崩しをかけ、
さらには暗殺者まで放ってきていた。

それを阻止すべくミツクビと対峙するマツリカ。
彼女の側近として仕えるキリヒトもまた、
否応なく国際謀略の世界へ引き込まれていく。


一巻から二巻にかけては比較的ゆったりとした進行だ。
(というか本書全体が割とゆったりとしてるんだけど)
国際社会での謀略と並行して、
キリヒトとマツリカを中心とした日常も描かれていく。

王宮の地下迷宮を二人で探検するシーンは
いささか冗長かなあとも思ったんだけど
ちゃんと後半の伏線にもなってるし、
回を重ねるうちに二人の "お決まりのデートコース" みたいに
なってくるのもまた面白い。

二巻の終盤、ニザマの刺客がついにマツリカの前に現れ、
絶体絶命の危機を迎えるが、ここである事実が明かされる。

そうだよねえ。ファンタジーはこうでなくっちゃ。
このあたりから俄然、読む方もピッチが上がってきた。

アルデシュ侵攻の原因は、麦の凶作にあった。
マツリカは穀倉回復の手段を提供することで戦争の回避をもくろむ。

言葉を持たぬ少女が持つ一本の筆が紡ぎ出す言葉を載せて
無数の手紙が世界の各地へ向かう。
言葉を持たぬ少女が "言葉" のみを武器に世界と渡り合う。

しかしミツクビはそれを座視することはない。

三巻では、ニザマが送り込んださらなる刺客が
彼女の "言葉" を封じようとする。
しかしマツリカはそれに屈することなく、
キリヒトとともにニザマとの交渉の場へと向かう・・・


田舎育ちで純朴なキリヒト。
博覧強記だけど傲岸不遜で偏屈者のマツリカ。
出自も性格もおよそ正反対の二人で、
最初の頃は前途多難を思わせるカップルなんだが
物語が進むにつれてしだいに心を通わせていく。

このあたりは典型的なボーイ・ミーツ・ガールな
ラブ・ストーリーにもなっている。
巻を追うに従い、次第にキリヒトに対しての
マツリカ嬢のツンデレ度が増していくのが実に微笑ましい。
本当は「純愛」って言葉もつけてあげたいんだが
マツリカ嬢が本気で嫌がりそうなのでやめておこう(笑)。

天才であり、他に代わる者のない重い使命を背負うが故に
孤独であったマツリカが、初めて得た同世代の仲間であるキリヒト。
しかも彼女に対して絶対的な忠誠を誓ってくれる。
そりゃあ "大切な人" になるでしょう。

 ここまで書いてきて、ふと『ベルばら』のオスカルとアンドレが
 頭の中をよぎってしまう私はやっぱりオジサンなんだろうなあ。

最終巻に至り、クライマックスにおける二人の "ふるまい" は、
もはや長年連れ添った熟年夫婦もかくやと思わせるほど息もピッタリ。

 文庫4冊1800ページをこえてついにここまで来たか、
 としばし感慨に耽ってしまうシーンだった。

マツリカに仕える二人の司書であるハルカゼとキリンをはじめ
魅力的なキャラも多いのだけど、もういい加減長く書いてきたので割愛。

「言語」に関する蘊蓄も計り知れないほど詰め込まれているんだけど
(しかもそれを面白く読ませるのはたいしたもの)
これも私ごときでは紹介しようにも手に余る。
このへんは「読んでみて下さい」としか言えない。


ラストでは、さらなる物語が始まることを予感させていて
実際、続編も刊行されているようだ。
さらに続巻も予定されているらしいので、
また楽しみなシリーズがひとつ増えました。


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魔性納言 妖草師 [読書・ファンタジー]

魔性納言: 妖草師 (徳間時代小説文庫)

魔性納言: 妖草師 (徳間時代小説文庫)

  • 作者: 武内 涼
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2016/02/05
  • メディア: 文庫



評価:★★★

この世に現れ、人に仇をなす"異界の凶草"を
人知れず刈り取ることを生業とする
"妖草師"・庭田重奈雄の活躍を描く、シリーズ第3作。

第1作が長編、前作は短編集。
そして本書は再び長編となり、
文庫で500ページを越える最大のボリュームとなった。

幼なじみの滝坊椿(たきのぼう・つばき)、
友人で絵師の池大雅、曾我蕭泊など
レギュラーメンバーとともに、
シリーズ最強の敵との戦いが描かれる。


重奈雄たちは、竜安寺の鏡容池で
人の生き血を吸う妖草・"水虎藻" を発見する。

"水虎藻" は重奈雄によって退治されるが、
妖草は人の心を苗床に生じることから、
強烈な野心と貪欲を持つ者が
京の町のどこかに存在することを感じ取る。
同じ頃、見目麗しい娘が神隠しに遭うという事件が続発していた。

椿の父にして将軍家華道指南役・滝坊舜海は、
椿に婿をとらせて滝坊家の後継者するべく、
紙問屋の若旦那との見合いの席を設ける。

しかしその場に、酒に酔った侍が乱入する。
一時は騒然となるが、それを鎮めたのは美しき青年公家、
中納言・茶山寺時康(さざんじ・ときやす)。

若手の公家に対して幕府への不満を焚きつけ、
倒幕の動きに繋げようという陰謀が密やかに進行していた。
そして、その企みの中核にいたのは他ならぬ時康であった。

自らも妖草を操る彼は、倒幕を越えた先に、
さらなる途方もない野望を抱いていた・・・


はっきりとは書かれてないけど、読み終わってみると
なんとなく「これで完結」という雰囲気で
続巻は書かれないような気がしてる。

重奈雄と椿の恋愛模様にも決着がつくので、
そのあたりが気になる人は必読ですね。


解説によると、この<妖草師>シリーズは
「この時代小説がすごい! 2016年版」で第1位を獲得したとのこと。

うーん、そのことについてとやかく言うつもりはないけど
時代小説のファンの方々と私とでは
小説の評価基準がずいぶん違うんだなぁ、というのは感じた。


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これは王国のかぎ [読書・ファンタジー]

今回の記事、いったんは9割方書き上げたんだけど
私のミスでデータを紛失してしまった。
Σ( ̄ロ ̄lll) ガビーン

必死に内容を思い出しながら書き直したんだけど
うーん、どう考えても最初の原稿のほうが
出来がよかったように思えるのは気のせいか・・・


 


これは王国のかぎ (角川文庫)

これは王国のかぎ (角川文庫)

  • 作者: 荻原 規子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/03/25
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

主人公・上田ひろみは中学3年生。
失恋してどん底の状態で15歳の誕生日を迎えた。
部屋で泣き疲れ、眠ってしまった彼女が目覚めた時・・・

輝く太陽、黄色い砂漠、目の前にはターバンを巻いた青年。
まさにアラビアンナイトの世界へ彼女は飛ばされていたのだ。

さらにひろみは、空を飛んだり、姿を消したり、
遠くのものを手元に引き寄せたり、
まさに魔法のような超常能力まで身につけていた。
どうやら彼女は、この世界の人々が
「魔神族(ジン)」と呼ぶ存在になってしまったらしい、

ターバン青年はハールーンと名乗り、
「船乗りになるために家出してきた」という。
右も左もわからない彼女は青年とともに港町を目指す。

しかし目的地へ着いたのもつかの間、
ハールーンを探す人たちに出会ったひろみは、
彼が王宮から逃げ出した王太子であることを知る。

首尾良く追っ手から逃れ、海へ乗り出した二人。
幾多の危機を乗り越えるうち、ハーラーンに惹かれていくひろみ。
しかし運命は非情だ。
乗っていた舟が嵐に遭遇、二人は離ればなれになってしまう。

海岸へ漂着したひろみはハールーンを探すうち、
砂漠でラシードという少年を救う。

そこでひろみは意外な事実を知らされる。
なんとラシードはハールーンの弟で、幼い時に誘拐されて以来、
自分の素性を知らぬままに生きてきたという。

ひろみはラシードとともに王都バグダットへ向かうことになる。

そこは、王の後添えに収まった王妃が、魔法の力を駆使して
自分の息子を王位に就けるべく、権謀術数を巡らせている
"お家騒動" の中心地でもあった・・・

「魔神族(ジン)」の力を身につけたひろみが
アラビアンナイトの世界を駆け抜ける。

王妃の魔力に打ち勝ってその陰謀を暴き、
ラシードを無事に王族へと復帰させ、
そして、ハーラーンと再会することができるか。

剣戟あり、魔法対決あり、純愛ロマンスあり。
ジュブナイルものとしての道具立ても充分。
15歳の女の子が遭遇した、異世界での大冒険が語られる。


辛い現実の世界から異世界に飛ばされて
一度はその世界で生きていこうとすら考えたひろみが
多くの人々と出会い、様々な経験を重ねるうちに
ラストでは、自らの意思で元の世界へ "赴く" ことを選択する。
(「帰る」ではないところが大事ね)
その心の成長もまた読みどころだろう。


wikiによると、本書は荻原規子さんの第3長編(1993年刊行)。
「勾玉三部作」とほぼ同じ頃に書かれた、初期の作品。

本書の9年後には、同じ上田ひろみをヒロインとした
(ただし作中時間では2年後、高校2年になっている)
長編「樹上のゆりかご」が書かれている。

こちらのほうも既に読み終えているので
近々感想をアップする予定。


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雪月花黙示録 [読書・ファンタジー]

雪月花黙示録 (角川文庫)

雪月花黙示録 (角川文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/02/25
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

セーラー服姿の美少女が日本刀を構えている、という
ある意味ベタだが、王道的なビジュアルの表紙。
そうだよねえ。いかにも購入意欲をそそるよねえ・・・
え? そんなのは私だけですかそうですか。

内容も、表紙のイメージそのまんま。

舞台となるのは近未来の日本なのだが
この時代の日本は二つの地域に別れている。

かつての日本の伝統に回帰し、
新たな秩序の下に生きる人々が集う "ミヤコ"。
それ以外の地域は、企業の利益と個人の快楽を追求する
帝国主義者の地域となっている。

世界の人々はこの状態の日本のことを
"ゴシック・ジャパン" と呼んでいる。

ミヤコの中心、"平常京" にある
最高学府・"光舎" に通う学生3人組が主役だ。

まずは表紙にもなっている美少女・蘇芳(すおう)。
高校1年生で剣術の達人である。
彼女の従兄弟が紫風(しふう)で、光舎の生徒会長。
名門にしてミヤコの実力者である春日家のイケメン御曹司だ。
さらに、春日家に連なる美少女剣士がもう一人。
こちらは純日本風の長い黒髪に袴姿の萌黄。
(「帝国華撃団」の真宮寺さくらみたいなルックス、
 ・・・って、ちょっと古いか?)

紫風が三期目の生徒会長当選を目指して、
選挙戦真っ最中なところから
第一話「春爛漫桃色告」(はるらんまんももいろのびら)は始まる。


もし作者名を隠して本書を読まされたら
恩田陸が書いたとは、おそらくわからないだろう。
それくらい、作風が他の作品と違う。
一言で言うと、いわゆる "ライトノベル" 風とでも言うのか・・・

いや、現代のライトノベルなるものはあまり、というか
ほとんど読んでないんだけど、それでも

立会演説会で紫風が登壇すると
「紫風さまぁーーー」って女生徒たちの黄色い歓声が上がったり

袴姿に金髪縦ロールという髪型の、身長2m白人男が
突然、蘇芳の前に現れ、剣の試合を挑んできたり、

亀型の円盤に乗って、背中に薔薇の花束を背負ったキザオくんが現れて
(その名も及川道博。もちろんあだ名はミッチー)
蘇芳の婚約者を自称するとか・・・

・・・なんてシーンがひたすら続くとねえ。

そして、全編を通じて主人公たちの敵となる、
反体制組織「伝道者」。
立会演説会の会場に現れ、分裂したゴシック・ジャパンの
改造、統一、そして統治をすることを宣言する。


上でも述べたが、恩田陸が書いたと思うとちょっとアレなんだが
内容自体は決してつまらないわけではなく、
主役の3人組を皮切りに、
登場人物のエキセントリックぶりが徹底していて
アクションシーンも適度に盛り込んであって、
読んでいて楽しいのは確か。

ただ、全七話構成なんだけど、
いちばん盛り上がるのが第六話なんだよね。
ラストの第七話に至ると、やや尻すぼみ感が。
続編の構想があるのかも知れないが、
これで終わりではいささか消化不良感が否めない。

というわけで星3つ半。
最後が華々しく盛り上がれば、星4つだったかなぁ。


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桜守兄弟封印ノート -あやかし筋の双子- [読書・ファンタジー]

桜守兄弟封印ノート ~あやかし筋の双子~ (集英社オレンジ文庫)

桜守兄弟封印ノート ~あやかし筋の双子~ (集英社オレンジ文庫)

  • 作者: 赤城 毅
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/10/20
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

新学期を迎えた星洋院大学に入学してきたのは
桜守(さくらもり)光也・音也の双子兄弟。

行動派でがさつな光也、頭脳派で上品な音也と
内面はいささか異なるものの、
外見はモデルと見まごうばかりの美形ぶりに
女生徒の注目を集めまくるが
この二人にはある秘密があった。

桜守家の血を引く者は "あやかし筋" と呼ばれ、
妖怪やら幽霊やら、この世の者ならざる怪異が "見えて" しまう。
さらには、それらの "あやかし" を "浄化" することまでも。

二人の幼なじみにして修士課程一年の栃内智佳は、
みずからの指導教員である岸田教授に双子を引き合わせる。

学内一の変人である岸田は、
さまざまな怪異事件の調査に二人を送り込む。
彼らの特殊能力を自分の研究に利用するために・・・


要するに、超絶美形の双子エクソシストの活躍を描いているのだけど
なぜか不思議なくらいワクワクしないんだなあ・・・

起こる事件も、なんとなくオチが見えてしまう内容ばかりで・・・

美形のイケメンだけど性格が悪い、ってのもよくあるパターンだし
幼なじみのお姉さんが相棒、ってのも
彼らを事件に送り込む "ボス" が、"超" がつく奇人変人、ってのも。

"よくある設定" の寄せ集めみたいで
なんだか "新しさ" を感じないんだなあ。

もちろん、この手のライトノベルは
毎月洪水のように出版されているから
"新基軸" を打ち出すのが至難の業だ、
というのはよく分かってるつもりだけど、
金を出して買ってる側からしたら、
何かしら "この作品ならでは" って要素が欲しいよねえ。

文句ばかり書いてしまって申し訳ないけど
作者は「払ったお金ぶんはきっちり楽しませる」というのが
しっかり出来る人だと思っていたし、今でもそう思ってる。

期待がある分、ハードルも高かったかな。
たまたま本書は私と相性が悪かった、ということで。


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太陽の石 [読書・ファンタジー]

太陽の石 (創元推理文庫)

太陽の石 (創元推理文庫)

  • 作者: 乾石 智子
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/08/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

デビュー作から続く《オーリエラントの魔道師》シリーズの第3作。
とは言っても、前2作とストーリー上の直接のつながりはないので
本作から読み始めても全くOK。

実際、私だって前2作の内容なんてほとんど忘れてるんだけど(^^;)
それでも支障なく読めたよ。


コンスル帝国の最北西部に住むデイスは、
村の外に捨てられていたのを拾われ、16歳になるまで
養父母の家族とともに育てられてきた。

ある日デイスは、<太陽の石>と呼ばれる
鮮緑色の宝石のついた "肩留め" を拾う。
時を同じくして、山に眠る魔道師・リンターが目覚めた。

300年前、宮廷魔道師の座を巡って
骨肉相食む戦いを繰り広げたイザーカト九兄妹。
勝利したのは、兄弟姉妹の中で最強の魔力を誇る次女・ナハティ。
ある者はナハティに殺され、またある者はナハティに降った。
そして敗れた次男・リンターは遠い辺境の地に飛ばされ、
長い眠りについていた。

兄姉たちを粛正し、圧政を布くナハティへの激しい復讐心を滾らせ、
再戦を挑むために旅立つリンター。
自らの行く末に悩んでいたデイスは、幼なじみのビュリアン、
姉のネアリイと共にリンターと同行することになる。

しかし彼らの前にナハティ配下の4人の銀戦士が現れる。
そして、デイスが背負う秘密が次第に明らかになっていく・・・


文庫で280ページほどと決して長くはないのだが、読み応えは充分。
本編中の随所に300年前のエピソードが挿入されるのだが
9人の魔道師たちの能力・性格の描き分けも達者。
もちろん現在のキャラたちも。
特にイスリル帝国の魔導師・ザナザの "惚けた味" がいいなあ。

ただ、決戦場に着くまでの道中記の部分がいささか長く感じたかな。
その分、クライマックス・シーンのページ数は少なめ。
もっとも、内容はかなり高密度に描かれてるので
物足りなく感じることはなかったけど。

肝心の兄妹喧嘩の決着だけれど・・・
ちょっと個人的に残念なところがあって
★4つにしようかと思ったんだけど、半分減量してしまいました。

まあ、私の好みの問題なので、そう思わない人も多いでしょうけど。


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