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おんみょう紅茶屋らぷさん ~式神のいるお店で、おかわりをどうぞ~ [読書・ファンタジー]


おんみょう紅茶屋らぷさん ~式神のいるお店で、おかわりをどうぞ~ (メディアワークス文庫)

おんみょう紅茶屋らぷさん ~式神のいるお店で、おかわりをどうぞ~ (メディアワークス文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/01/25
  • メディア: 文庫
評価:★★★

大学4年生の6月、就活に失敗した佐々木英子は、
吉祥寺の紅茶屋 "らぷさん" でアルバイトを始めた。
店主の本多正朝は、なんと平成の世に生き残っている陰陽師だった。
"らぷさん" を訪れた客の悩みを、
式神を駆使して解決していくシリーズの第2弾。

「第一章 真実のローズヒップ」
"らぷさん" にやってきた女子高生・美加。
吉祥寺警察署の刑事をしている父親と、
弟・勉が朝に飲むお茶を巡って大喧嘩をした。
何が問題かを調べようにも、勉は急須を綺麗に洗ってしまい、
お茶っ葉を残さない。
しかも、茶筒からは茶葉が全く減っていないことも分かった。
いったい勉はどんな茶を淹れていたのか?
何せ探偵役が陰陽師だから、途中経過は
ややファンタジーかホラーがかっているが
最後にはまっとうな "日常の謎" 系ミステリとしての真相が明かされる。
そして、たぶんシリーズを通しての悪役となる、
正朝にとっての "不倶戴天の敵" もまた姿を見せる。

「第二章 こだわりのラプサン・スーチョン」
外務省に勤務する牧原礼子は、
英国公使ホールドハースト卿を茶会に招いた。
親友の学芸員・園部里見が担当する「漱石書画展」に、
公使が所蔵する2点の絵画を借り出す交渉のためだった。
しかし公使はなぜか機嫌を損ね、早々に帰ってしまう。
里見の心中を思い悩む礼子は、"らぷさん" へと導かれてやってくるが。
毎回毎回、紅茶についての蘊蓄が延々と語られる。
本作はラプサン・スーチョンという特別な茶葉が
テーマとなっているのだから、いつにもまして蘊蓄も大増量。
でも、普段紅茶を飲む習慣のない私には、
やっぱり縁のない世界だなあ・・・と思ったりした。

「第三章 あこがれはアールグレイ」
らぷさんに突然現れた直衣姿の男。
彼こそ正朝にとっての "不倶戴天の敵" だった。
その男の呪詛によって意識を失ってしまう正朝。
万事休した英子は、正朝の姉を呼び出すが・・・
正朝とその姉の過去が明かされ、アルバイトだった英子との関係も
一歩進み始めるきっかけとなるエピソード。


うっかりするにもほどがあるが、正朝の姉さんって
作者の別シリーズでヒロインを務めてる "あの人" だったんだね。
全く気がつきませんでした(←鈍感)。
本文中ではぼかされていたんだけど、
作者による「あとがき」で明言されたので間違いない。
前巻での姉さんの描写ではあまりそう思えなかったんだけど、
この巻では確かに "あの人" っぽく描かれてる。

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ダークゾーン・上下 [読書・ファンタジー]


ダークゾーン 上 (角川文庫)

ダークゾーン 上 (角川文庫)

  • 作者: 貴志 祐介
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/12/21
  • メディア: 文庫
ダークゾーン 下 (角川文庫)

ダークゾーン 下 (角川文庫)

  • 作者: 貴志 祐介
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2017/12/21
  • メディア: 文庫
評価:★★

将棋のプロ棋士を目指す大学生・塚田裕史(ひろし)が
暗闇の中で目覚めたとき、彼は異形の怪物17体を従える
"赤の王将"(キング)と呼ばれる存在になっていた。

怪物たちも、それぞれ塚田の友人知人が転生したものであり、
その中には塚田の恋人・井口理紗の姿もあった。

不死身の "鬼土偶"(ゴーレム)、火炎を噴く "火蜥蜴"(サラマンドラ)、
空を舞う "皮翼猿"(レムール)、触れる者すべてに死をもたらす
"死の手"(リーサル・タッチ)、そして "歩兵"(ポーン)・・・
それぞれ異なる特性を持つ "軍勢" を従えた "赤の王将" の使命は、
同じく18体からなる "青の王将" の軍勢に勝利すること。

そして敵となる "青の王将" は、現実世界でも塚田と同じく
プロ棋士を目指してしのぎを削るライバル・奥本博樹だった。

戦いのフィールドとなるのは、薄明の異空間の中に浮かぶ謎の島。
なぜか長崎の「軍艦島」にそっくりの姿をしている。

戦いは駒単位で戦い、相手の駒を "殺す" と、
殺された駒はその場から消滅し、その駒は自分の "持ち駒" となる。
最終的に "王将" を殺された方が負けとなる。
勝敗がついた時点で双方の "駒数" はリセットされ、
ふたたび初期状態に戻って勝負が始まる。
戦いは七番勝負。先に四勝した方が勝利者となり、
敗北した方はこの世界から永久に消滅する。

戦いの理由も分からぬままに塚田たちは自らの生存をかけて戦いに臨む。
将棋ともチェスとも似ているようで異なり、さらには
独自のルールまで持つこのゲームで、
特殊能力を持つ "異形の怪物" を駒として操り、
ありったけの知力と駆け引きで塚田たちは勝利を目指していく・・・

章のタイトルも「第○局」となっていて、対戦の結果が綴られていく。
そして章と章の間には「断章」として、
現実世界での塚田の生活が断片的に描かれていく。

このゲーム世界と現実世界の関係は?
なぜ戦いの舞台が "軍艦島" なのか?
そして、戦わなくてはならない理由は何なのか?


この手の "ゲーム世界を舞台にした小説" は、
現代、特にライトノベルの世界ではさほど珍しくないのかも知れない。
しかし私と同年代の人なら、発端の部分の紹介を読んで
永井豪の傑作マンガ「真夜中の戦士」を連想した人も多いだろう。
実際、作中人物の台詞を借りてこの「真夜中-」への言及があるので
作者の中にも意識としてこの作品はあるのだろう。

私が本書につけた評価は★2つと低めなのだが、
その理由の大部分は主人公の造形にあるように思う。

本作は、まずはゲーム小説として楽しむのが本来なのだろうが
私はどうにも上手く乗れなかった。
まず主人公の塚田くんがあんまり強そうに見えないんだ。

彼は "ゲーム" のルールに精通しておらず(というか最初は全く知らない)、
試行錯誤を繰り返しながらルールを身につけていくのだが
「実はこんな規則があった」ってことを後から知って、
それが原因で窮地に陥ったり負けたりすることが頻発する。
いい加減「最初からちゃんと教えておけよ」って思う。

もっとも、現実世界の塚田くんもプロ棋士を目指しているものの
なかなかリーグ戦を勝ち上がれず四苦八苦。
しかも昇格の年齢制限が迫ってきているという瀬戸際にいるので
それを反映させているとも言えるが。

"断章" 部分で語られるその現実世界の塚田くんがまた
感情移入しにくい性格なんだよなあ。
まあ、このあたりの彼は二十代はじめで、自分の将来に
不安を抱えてることもあるのだろうけど、やたら自己中心的だったり、
実力が伴わないのに変なプライドだけはあったりとか
私が苦手な青春小説の主人公パターンそのままの姿なのだ。

そんな塚田くんも後半に入るとだんだん "ゲーム慣れ" してきて
奥本相手に互角の戦いを展開するようになるんだが・・・

このブログでも以前書いたことがあるが、本格ミステリならともかく
冒険小説やファンタジー系の物語では、キャラに入れ込んで読むのが
私の読み方なので、(私からみて)主役キャラに感情移入しにくい
本作のような小説は必然的に評価が辛めになってしまう。

まあ、この主人公に馴染みにくいって感じるのはあくまで私の主観。
他の人からすれば魅力的に見えるのかも知れない。

もちろん評価するべき点もある。
目次を見ると「第一局」から「第八局」まで8回の勝負が描かれている。
(七番勝負なのになぜ第八局?って疑問は、読んだら解決します)

つまり作者は、同じ出発点から8通りの展開と勝敗を描いているわけで
しかも内容はもちろんそれぞれ異なる。将棋とチェスがベースとはいえ
自ら考案したゲームのルールを駆使して多彩な展開を描いてみせる。
このあたりはホントによく考えたなあって思う。


"断章" 部分で描かれる現実世界の塚田くんの行動は、
終盤に近づくにつれてどんどん不穏な雰囲気を漂ってくる。

そして現実世界の物語はある破局に至り、
さらに「終章」では、このゲーム世界にまつわる謎に
一つの "解答" が与えられるんだが、
これがまた切ないというか救いがないというか・・・
いや、塚田くんにとってはこれがある意味での救いなのかも知れない。

全編にわたってダークな雰囲気のホラー・ファンタジーになっている。
波長が合う人にとってはたまらなく魅力的な世界なのかも知れないが、
前年ながらわたしとはちょいと合わないみたいです・・・

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アルスラーン戦記 13~16(完結) [読書・ファンタジー]


蛇王再臨 アルスラーン戦記13 (カッパ・ノベルス)

蛇王再臨 アルスラーン戦記13 (カッパ・ノベルス)

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2008/10/07
  • メディア: 新書
天鳴地動(てんめいちどう) アルスラーン戦記14 (カッパノベルス)

天鳴地動 アルスラーン戦記14 (カッパノベルス)

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/05/16
  • メディア: 新書
戦旗不倒  アルスラーン戦記15 (カッパノベルス)

戦旗不倒 アルスラーン戦記15 (カッパノベルス)

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/05/18
  • メディア: 新書
天涯無限 アルスラーン戦記 16 (カッパ・ノベルス)

天涯無限 アルスラーン戦記 16 (カッパ・ノベルス)

  • 作者: 田中芳樹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2017/12/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
大河ファンタジー・シリーズ、「アルスラーン戦記」の記事その4。
今回は第13巻から最終巻となる第16巻までを採り上げる。

前の記事に倣って初刊の発行年を掲げてみると

13巻「蛇王再臨」(2008年)、14巻「天鳴地動」(2014年)
15巻「戦旗不倒」(2016年)、16巻「天涯無限」(2017年)

13巻と14巻の間こそ6年空いてるが
ラストの3巻分は比較的短期間に刊行された。


以下に、最終巻までの内容紹介および感想もどきを書く。
致命的なネタバレはないようにしてるつもりだが
ラストの内容に一部触れているので、
これから本編を読もうと思ってる方は、
読了後に目を通されることを推奨する。


まずは完結させてもらったことについては「お疲れ様」と言っておこう。
しかし、内容の評価についてはかなり辛口にならざるを得ない。
私のように、残りの人生が逆算できる年齢になって
こういう話を読むのは正直辛いものがある。


「解放王アルスラーンの十六翼将」と言われ続けてきたが
ずっと15人のままで16人目がいなかった。
たぶん読者は○○だ、いや✕✕だろう、意外なところで△△じゃないか
なぁんて20年くらいの間、予想しまくってた(笑)と思うのだが、
13巻にしてやっと最後の一人が揃うことになる。
そして、予想が当たった人はほとんどいないんじゃないかと思う。
私自身、意外すぎてびっくりだったよ。
逆に「この人でいいの?」とも思う。
他の15人とバランスが取れているとは思えない "人選" ではないか?

そして、月というものは満月になった瞬間から欠け始めるもの。
十六翼将もまたその例に漏れず、全員揃ったのも束の間、
櫛の歯が欠けるようにぽろぽろとその数を減じていく。
およそ人間相手ならば後れをとるような者たちではないが
何せ相手は人外の魔物。
ある者は妖魔の奸計に嵌まり、またある者は天変地異に巻き込まれ、
そしてまたある者は圧倒的な妖魔の猛攻の前に
善戦虚しく刀折れ矢尽きて、その命を散らしていく。

そしてそれは十六翼将以外のキャラについても同様で
14巻以降になると、もうホントに情け容赦もなく・・・
さすが "皆殺しの田中" の二つ名は伊達ではない(おいおい)
かなりの "鬱展開" と言っていいだろう。

 最終16巻の冒頭に「主要登場人物一覧」があって
 ここには(15巻までにお亡くなりになった人も含めて)
 28人の(ザッハークも "一人" と数えてwww)名前が載っているのだが
 読了後、この中で生き残った人数を数えてみた。
 そのあまりの少なさに愕然としてしまったよ。

全16巻、31年を費やしてこの物語は完結を迎えるのだが
物語の終わり方としてこの結末はどうだろう。
おそらく大方の読者が望む方向でのエンディングには
なっていないのではないかと思う。

同じ作者の『銀河英雄伝説』を読んでいれば
作者の "皆殺し" ぶりに対して
ちょっとは "免疫" がついてるかも知れないが(笑)、
最近放送されたTVアニメや荒川弘のマンガ版からこの物語に
入ってきた読者は、いささかショックを受けるのではないかと思う。

作者はなぜこのような結末を選択したか。
その根幹には、田中芳樹という作家の "価値観" があるように思う。

この人は "君主制" というものをとことん肯定できないのだろう。
たとえフィクションの世界であっても。

『銀河-』の中でも再三、キャラの口を借りて述べてる。
「最悪の民主政治でも、最良の専制政治に勝る」と。
その "信条" は30年経ってもいささかも変わってはいないみたいだ。

ならば、
「名君であるアルスラーン王が悪の帝王を倒し、
 そのおかげでみんなは末代まで幸せに暮らしました」
なぁんてベタなエンディングを描くはずがない。

しかし、大多数の読者は作者の "理想の政治体制" を読みたいのではなく
上記のようなベタな結末を望んでるんじゃないかって思うんだが、
この作者にはそれができないのだろう。"信条" として。

 そんな結末を描こうものなら、日本中に王政賛美者が大増殖してしまう、
 なんて強迫観念でも持ってるんじゃないかって思ってしまう。

作品は第一義的には「作者のもの」であるのは間違いないが
完結まで30年も辛抱強く待っていてくれたファンのことを考えれば
半ば以上、「ファンのもの」でもあると言えるのではないか。

作者が作品にどのようなメッセージを込めようが自由だが
30年にわたってつき合って読者からすれば、
アルスラーンを始め、メインキャラたちには
凡百の作品にはない愛着を覚えていたと思う。

そういう思い入れたっぷりのキャラたちが
(読者から見れば)いささか呆気ない形でどんどん退場していく。
熱心なファンであればあるほど、この展開は受け容れがたいだろう。

 逆に言えば、続刊が出るまで時間がかかりすぎたが故に
 ファンの脳内での第二部への期待(妄想?)が過剰に大きくなり、
 作者の構想との乖離が予想以上に広がってしまった、
 と言う面はあるだろうが。


年齢から来たであろう筆力の衰えもあるだろう。
それが原因か分からないが、構成が粗いところも見受けられる。
あるいは健康面に問題があって、完結を急いだのかも知れない。
30年前、作家として絶好調の時期にこの展開を描いていたら
ストーリーは同じでも、また違った評価もあったかも知れない。

第一部が傑作であったがゆえに、第二部の展開が残念でならない。
作者は当初の予定通りの物語を描ききったのかも知れないが
その展開、そして結末を読者に納得させるだけの
ストーリーテリングの力はもはや失われていた、ということなのだろう。

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アルスラーン戦記 9~12 [読書・ファンタジー]


旌旗流転・妖雲群行 ―アルスラーン戦記(9)(10) カッパ・ノベルス

旌旗流転・妖雲群行 ―アルスラーン戦記(9)(10) カッパ・ノベルス

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2004/02/20
  • メディア: 新書
魔軍襲来 ―アルスラーン戦記(11) (カッパ・ノベルス)

魔軍襲来 ―アルスラーン戦記(11) (カッパ・ノベルス)

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2005/09/22
  • メディア: 新書
暗黒神殿 アルスラーン戦記12 (カッパ・ノベルス)

暗黒神殿 アルスラーン戦記12 (カッパ・ノベルス)

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/12/07
  • メディア: 新書
大河ファンタジー・シリーズ、「アルスラーン戦記」の記事その3。
今回は第9巻から第12巻までを採り上げる。

前の記事に倣って初刊の発行年を掲げてみると

9巻「旌旗流転」(1992年)、10巻「妖雲群行」(1999年)
11巻「魔軍襲来」(2005年)、12巻「暗黒神殿」(2006年)

9巻と10巻の間だが7年。そしてここまでが角川文庫からの刊行。
その後、光文社カッパ・ノベルスに "移籍" して
既刊分が2巻ずつ合本で再刊。
そして改めて11巻からノベルス版での刊行再開となった。
この4巻の間だけで13年もかかってるんだね。


9~10巻ではパルス侵攻を企む2国、東北のチュルク国王カルハナと
南西のミスル国王ホサイン三世、それぞれの思惑と
パルス旧王家最後の生き残りヒルメスの流浪が語られる。
そして "移籍" 後の再スタートとなった11巻では、
皆さんお待ちかねのあのキャラが再登場するんだが・・・
一方、蛇王ザッハークもまた復活に向けて胎動を始め、
ついにペシャワール城塞に妖魔の大軍勢が襲いかかる。
この時点で、おそらく大陸公路では最強のパルス軍だが
人外の魔物が相手とあって苦戦を強いられることになる。

解放王アルスラーンの治世は盤石と思われてきたが
12巻では忍びよる "落日" の予感が随所に描かれていて
読者を底知れぬ不安に陥れる(笑)。


いろいろ書きたいこともあるんだが、
ネタバレになって興を削ぐことにもなりかねないので
まとめて次回の「その4」で書くことにしよう。

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アルスラーン戦記 5~8 [読書・ファンタジー]


征馬孤影・風塵乱舞 ―アルスラーン戦記(5)(6)  カッパ・ノベルス

征馬孤影・風塵乱舞 ―アルスラーン戦記(5)(6) カッパ・ノベルス

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2003/08/21
  • メディア: 新書
王都奪還・仮面兵団 ―アルスラーン戦記(7)(8)  カッパ・ノベルス

王都奪還・仮面兵団 ―アルスラーン戦記(7)(8) カッパ・ノベルス

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2003/11/28
  • メディア: 新書
大河ファンタジー・シリーズ、「アルスラーン戦記」の記事その2。
今回は第5巻から第8巻までを採り上げる。

前の記事に倣って初刊の発行年を掲げてみると

5巻「征馬孤影」(1989年)、6巻「風塵乱舞」(1989年)
7巻「王都奪還」(1990年)、8巻「仮面兵団」(1991年)

おお、このあたりもまだまだ順調に出ていたんだねえ。
『銀河英雄伝説』も完結し、こちらに注力できた頃なのかな。
ちなみに2016年7~8月に放映されたTVアニメ第二期は
この第5巻・第6巻の部分。
第一部完結編である第7巻は未だ映像化されていない。
第二部を含めて全編がアニメ化される日は果たして訪れるのか・・・


さて物語の行方だが、

ルシタニアの侵略により王都を失ったアルスラーン一行は
パルス国内最大の残存戦力が駐屯する
東部国境ペシャワール城塞にたどり着く。

しかしここから王都に向けて進撃するには
東の隣国・シンドゥラの動向が問題。

折しもシンドゥラは王位を巡って内乱状態にあり、
アルスラーン一行はこの内戦に介入して
王子・ラジェンドラに協力、彼を王位に押し上げる立役者となる。
この功を以てラジェンドラとの同盟締結に成功するのだが
まあ要するに恩を売りつけたわけだ。

後顧の憂いをなくして「さあ、ルシタニア討伐へ向けて進撃開始!」
というところで4巻が終わる。

しかし5巻に入ってもアルスラーンの苦難は続く。

東北の遊牧民族国家・トゥラーンが侵攻してきたり、
囚われの父王アンドラゴラスがなんと脱獄に成功して
パルス軍に合流したり、その父によってアルスラーンは
南方の地へ追放されてしまったりと波瀾万丈な日々(笑)。

もっとも、彼に付き従う臣下たちはそんなことは何処吹く風とばかり、
南海の港町ギランを舞台に、王太子を王位に就けるべく
着々と準備をすすめていくのだから、たいしたものだ。

そしてルシタニア軍、アンドラゴラス率いるパルス軍、
そしてアルスラーンが新たに組織した王太子軍の三者が入り乱れて
最終決戦へと突入していく。

激しい戦いの末、ついにルシタニア軍は壊滅、
そしてアルスラーンの出生の秘密もまた明らかになる・・・

というこの第7巻「王都奪還」をもって第一部完結となる。


そして第8巻「仮面兵団」から第二部の開始である。

アルスラーンがパルス王に即位して3年後から物語は始まる。
国民からの圧倒的な支持を背景に、
18歳の若き王による新たな国造りは順調かと思われたが、
そのパルスを狙う新たな陰謀も蠢動を始める。

パルスの西南に位置する国・ミスル、
そして東北の峻険な山地にあるチュルクが相次いで侵攻してきたのだ。
この2国は3年前の動乱に加わっておらず、国力を温存していた。
そしてルシタニアのギスカール、かつての銀仮面卿ヒルメスなど、
3年前の戦いで敗北した面々もまた雪辱の機会を窺う。

新旧の敵が胎動を始め、アルスラーンとパルスの上に
新たな戦乱の気配が漂ってくる・・・


巻末には外伝「東方巡歴」を収録。
これは本編開始の数年前、黒衣の戦士ダリューンが
はるか東方の「絹の国」へと旅し、美姫と出会うというお話。
長編の序章みたいな感じなんだけど続きは書かれるのかなあ・・・

第一部と第二部の間の3年間にも、
アルスラーンの治世を覆そうという陰謀があったり
十六翼将たちにも様々なエピソードがあったみたいなんだが
このあたりの話も書いて欲しいなあ。
なんと言っても本編が終わったわけだし。

作者は未完シリーズをまだまだ抱えてるはずなんだが
とりあえず「タイタニア」と「アルスラーン」を完結させてくれたので
良しとするかな。私個人としては、これ以上は望みません(笑)。

「創龍伝」はどうするのかなー、とか言いませんから(おいおい)

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リプレイ2.14 [読書・ファンタジー]


リプレイ2.14 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

リプレイ2.14 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2013/09/05
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

ヒロイン浅野奈海は農学部の大学院生。
2月14日の朝、奈海はバレンタインチョコを持って家を出る。
彼女が思いを寄せる相手は、高校の頃からの同級生で
いまは同じゼミに在籍している本田宗輔。

長い時間を共に過ごしてきたが、告白する勇気がもてず、
奈海にとっては片想いな状態が続いていた。
この日、奈海は意を決して彼にチョコを渡すべく大学へ向かうが、
研究室で彼女が発見したのは宗輔の死体だった。

茫然自失する奈海の前に現れたのは "死神" だと名乗る青年クロト。
「過去に戻って愛する者を救う機会を与えよう」

彼女は12時間前の過去に戻り、本田の死因を突き止め、
彼を救い出すことを決意する。
しかしそれにはいくつかの制約があった。

例えば、いきなり宗輔のもとへ押しかけ、
一晩中研究室の中で一緒にいるとかの、過去の言動の流れから
大きく逸脱するような不自然な行動はとれない。
(実際、行動しようと思っても体が動かなくなる)
彼女がとれる行動には限界があるわけだ。

もう一つは、"うまくいかなかった" 場合はやり直しができるのだが、
その回数には「10回まで」という制限があること。

これだけならタイムトラベルSFの一変形なのだが、
さらに事態をややこしくするのは、
宗輔が密かに "惚れ薬" を開発していたこと。これを飲むと、
目の前にいる相手に好意を抱いてしまうというシロモノだ。

 作中ではその作用機序について、もっともらしく理屈づけられている。
 そのあたり、作者は薬学の研究者だからお手のものでしょう。

そして、奈海ちゃんにとってショックなことに
宗輔がその薬を使おうとしていた相手は奈海ではない(!)という。
さらに、完成したその "惚れ薬" が何者かによって
研究室から盗まれていたことも判明する。

基本的には奈海さんの恋の行方を巡る、ファンタジックな
ラブコメなんだが、そこに "惚れ薬" が絡むことで
ミステリ要素がぐっと高まる。

宗輔は何故死んだのか?
宗輔が惚れ薬を使おうとしていた相手は誰か?
その惚れ薬を盗んだのは誰か?
そして奈海は宗輔の命を救うことができるのか?


宗輔の姉とか、奈海の同級生たちとか後輩たちとか
この二人を取り巻く人々も個性派揃いで、
彼らの間の恋愛模様までも織り込んでドタバタ劇が進行する。

ユニークなキャラが多い中で、この作品いちばんの魅力は
やっぱりヒロインの奈海ちゃんだと思う。

奈海は、宗輔の命を救おうと涙ぐましい努力を続ける。
その相手は、自分以外の誰かを好きになっているらしいのに。

そして、彼女が求めるのは宗輔の命だけではない。

一人の運命を変えることによって、他の部分に影響が出てくる。
宗輔の命を救うことによって、他の人の運命が変わり、
新たに不幸を被ることになる者も出てくるのだ。

だから、何回もやり直す。
彼女が目指すのは、みんなが幸福になる未来。
たとえ彼女自身の思いが報われなくても。

いやあ、なんて健気な女の子だろう。
こんな人こそ幸せにならなきゃ嘘だろう。
そんな彼女のひたむきさがページをめくらせる。

何せ10回も繰り返されるので、様々なパターンの結末が訪れる。
終盤になると、なんとなくオチが見えてくる人もいるだろう。

そして本書を読む人は、その予想が当たっても外れても、
ラストでは思わずほほが緩んでしまうのではないかなぁ。

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アルスラーン戦記 1~4 [読書・ファンタジー]


王都炎上・王子二人 ―アルスラーン戦記(1)(2) (カッパ・ノベルス)

王都炎上・王子二人 ―アルスラーン戦記(1)(2) (カッパ・ノベルス)

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2003/02/21
  • メディア: 新書
落日悲歌・汗血公路 ―アルスラーン戦記(3)(4) (カッパ・ノベルス)

落日悲歌・汗血公路 ―アルスラーン戦記(3)(4) (カッパ・ノベルス)

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2003/05/21
  • メディア: 新書
『銀河英雄伝説』と並ぶ、田中芳樹の大河ファンタジー・シリーズ。
1986年の第1巻から数えて31年、
2017年12月に最終16巻が刊行され、めでたく完結となった。

その間、劇場アニメ・OVAになって(91~96年)、
同時期に漫画化もされたが
いかんせん原作の刊行が止まってしまっていずれも未完。

しかし2013年から荒川弘による漫画化が始まり、
2015年には二度目のアニメ化と人気は衰えを知らないようだ。


さて、原作は無事に最終巻まで刊行されて、
待ちわびていたファンの一人として大変喜ばしく思っているのだが
一気に読んでしまうのもなんだかもったいなくて
少しずつちまちまと読んでいるところ(笑)。

最終巻まで読んでから記事に書こうかとも思ったんだが
なんせ冊数が多いので、とりあえず4巻分ごとにまとめて
記事に書くことにした。
ちなみに15年4月~9月まで放送されたアニメ(1期)は、
この1~4巻までの内容だ。

初刊の発行年を掲げてみると
1巻「王都炎上」(1986年)、2巻「王子二人」(1987年)、
3巻「落日悲歌」(1987年)、4巻「汗血公路」(1988年)。
おお、この頃はまめに出てたんだねえ。

ちなみに1986年5月には同じ作者による『銀河英雄伝説』第7巻が刊行、
87年11月には最終巻となる第10巻が刊行されて本編は完結、
88年頃は外伝を執筆していた時期に相当する。
作者としても一躍人気作家に躍り出て、
勢いにあふれた時期だったんだろうと推測する。


さて、『アルスラーン戦記』は第一部7巻、第二部9巻からなる。
当初は第二部も7巻で14巻で完結予定だったのだが
いつの間にか2巻増えてた(笑)。まあ増える分にはいいかな。

第一部は順調に終わったのだが、
第二部に入って2巻ほど出たあたりからばったり途絶え、
数年おきに思い出したように刊行されるようになった。
平均すると4年に一巻くらいになってしまったので、
オリンピックのようにやってくるようになった(笑)。

というわけで、第一部の7巻分はもう複数回読んでいるのだが
第二部の9巻め以降は買っても読まずに積んでおいた。
「完結したらまとめて読もう」って思ってたんだが
まさかこんなに時間がかかるとはねえ(笑)。

閑話休題。内容の紹介に移ろう。


舞台は中世ペルシアに似た異世界。

大陸公路の要衝に位置するパルス王国は
剛毅の国王アンドラゴラスの統治のもとで繁栄を極め、
その国勢は盤石かとも思われていた。
しかしパルスの隣国であるマルヤム王国を滅ぼした
宗教国家ルシタニアがその矛先をパルスへ向け、侵攻を開始する。

アトロパテネの平原にルシタニア軍を迎え撃ったパルス軍だったが
敵の奸計にはまって壊滅的な大敗北を喫し、
アンドラゴラスは捕らえられてしまう。

この日、初陣を迎えていた14歳の王太子アルスラーンは
パルス随一の戦士・ダリューンに守られ、
わずか二騎で辛くも戦場を脱出する。

勢いに乗るルシタニア軍はパルスの王都エクバターナを占領、
帰るべきところを失ったアルスラーンは、
ひとまずダリューンの親友であるナルサスの元へ向かう・・・


『アルスラーン戦記』第一部は、
この王子一人、騎士一人というたった二人の戦いから幕を開ける。
ルシタニア軍の追っ手から逃れながらも、
アルスラーンのもとには少しずつ有能な家臣が集まっていき、
やがて国内の残存戦力を糾合して侵略者打倒のために挙兵、
王都の奪還とルシタニア軍との決戦を経て、
パルスの王座に就くまでが描かれる。


アルスラーンと共に立つのは最強戦士ダリューン、天才軍師ナルサス、
その侍童エラム、女神官ファランギース、放浪の楽士ギーヴ。
この5人を手始めに、後の世に "アルスラーンの十六翼将" と称される
家臣たちが巻を重ねるごとに続々と集まっていく。

人気作家だけあって筆力は抜群。キャラ立ちも完璧で
多人数が登場する場面でも、台詞を読んだだけで誰の発言か分かる。
キャラ同士による軽口と冗談と毒舌の応酬も絶品で
このへんは田中芳樹の真骨頂だろう。

圧倒的な劣勢にあっても彼らは陽気さを失わず、
主君とともに戦いの渦中へ飛び込んでいく。
この "アルスラーンと愉快な仲間たち" の活躍が
全編にわたって綴られていくのだ。

本作の人気の理由はいろいろあるだろう。
流浪の王子が国を取り戻すという王道ストーリー、
それを波瀾万丈の冒険物語に仕立て上げる構成の妙、
綺羅星のごとく登場する魅力的なキャラクターたち、
寡兵をもって大軍を打ち破る戦略・戦術の描写など
挙げればいくらでも出てきそうだ。

その中でも、最も特徴的だと思うのは主人公の造形だろう。

大国の王子に生まれながら、なぜか両親には愛されず
(そこにはある秘密があったのだが)
幼少期は乳母夫婦に預けられ、平民に混じって王宮の外で暮らす。
幸いにして養父母からは充分な愛情を注がれて育ち、
長じて王太子に冊立されて王宮内に戻っても、
その "庶民感覚" を失わずにいる。
作中に登場する14歳のアルスラーンは、そんな素直で純真な少年だ。

剣技も未熟だし、飛び抜けた知略を示すわけでもない。
「オレについてこい!」的な威勢の良さを持つわけでもない。
ある意味 "平凡" なキャラクターで
ヒロイック・ファンタジーの主役としてはかなり異色だろう。

しかし彼のもとには、なぜか有力な臣下が集まってくる。
それも王室の権威によることなく、彼自身の資質と、
自らの理想の旗を掲げることによって。

物語初期におけるアルスラーンの行動理由は
「侵略者を追い出して平和を取り戻すこと」だったが
戦いを通じて "玉座" というものの光と闇に触れ、
「王が善政を敷けば世の中の不幸を減らせる」ことを知る。
そして巻を追ううちに「良き王となり、この国を変えたい」という
思いが募っていくのだ。

アルスラーンが改革のトップに掲げるのは「奴隷制の廃止」。
これはパルスの旧弊な体制の象徴となるものだ。
それを実現するためには、自らの力を持って侵略者を追い払い、
その功績を以て守旧派の父王に改革を認めさせなければならない。

軍師ナルサスは、自分の領地で奴隷制の廃止を試みて失敗した過去を持ち、
この若い王子に新たなる国家建設を託すようになる。
他の臣下たちもアルスラーンの中に「良き王たる資質」を認め、
その理想の実現に力を貸すことを選んでいく。

まあ、簡単に言えばみんなアルスラーンのことを好きになって、
彼をもり立てようという気分になってしまうんだね。
それくらい「人望」を集める能力がある少年なんだ。

後世、"解放王" と呼ばれることになるアルスラーンと、
"十六翼将" (まだ全員集まってないけど)たちの戦いは、
まだ始まったばかりである。

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魔導の系譜 / 魔導の福音 / 魔導の矜持 [読書・ファンタジー]


魔導の系譜 (創元推理文庫)

魔導の系譜 (創元推理文庫)

  • 作者: 佐藤 さくら
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/07/21
  • メディア: 文庫
魔導の福音 (創元推理文庫)

魔導の福音 (創元推理文庫)

  • 作者: 佐藤 さくら
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/03/11
  • メディア: 文庫
魔導の矜持 (創元推理文庫)

魔導の矜持 (創元推理文庫)

  • 作者: 佐藤 さくら
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/11/13
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

第一回創元ファンタジイ新人賞で優秀賞を受賞した
『魔導の系譜』から始まった「真理の織り手」と呼ばれる
シリーズの第1巻から第3巻までである。

舞台となるのは、中世の西洋を思わせる異世界。
タイトルにある "魔導" とは、いわゆる魔法のことで
火・水・風などを操る超常の能力を指し、
その力を持つものは「魔導士」と呼ばれる。

"魔導" の力を持つかどうかは先天的に定まっており、
その力を備えたものは "普通人" の間に一定の割合で生まれてくる。
しかし、その能力者に対する扱いは国によってかなり異なる。


第1巻『魔導の系譜』の舞台となる国・ラバルタでは
魔導士は蔑みの対象となっている。たとえ高貴な家に生まれようとも、
僧院に送られてそこで一生を終えることを定められてしまう。

しかし魔導士を "武力の一つ" として評価している国王は
最高機関<鉄(くろがね)の砦>を設け、
そこに国内最高レベルの魔導士を集めて組織化していた。
腕に覚えのある魔導士たちは、人並みの扱いを手に入れるためにも
<鉄の砦>に選ばれることを目指していた。

田舎で魔導の私塾を開いている三流魔導士レオンは、
ある日<鉄の砦>からゼクスという10歳の少年を預けられる。
桁違いに優れた潜在能力を持ちながら、頑なに心を閉ざし、
魔導を学ぶことを拒否するゼクスだったが
辛抱強いレオンの指導のもと、やがてその才能を開花させていく。

7年後、ふたたび<鉄の砦>へ迎えられたゼクスだったが
そこで出会った貴族出身の魔導士・アスターとの出会いが
ゼクスの運命を大きく変えていくことになる。

さらに3年の後、ラバルタ北方のカデンツァ地方で反乱が勃発。
ゼクスとアスターを含む魔導士部隊も鎮圧のために出兵するが・・・


第2巻『魔導の福音』では、『-系譜』でのラストシーンから
6年ほど時間軸を巻き戻し、舞台もラバルタの隣国エルミーヌに移る。
この国では、生まれた子供が "魔導" の持ち主と判明すると、
速やかに "神のもとに返す"、つまり命を奪うことが習わしになっていた。

主人公となるのは地方貴族の嫡男・カレンス。
16歳になった秋、彼は王都にある王立学院への
入学生として推薦されることになった。
しかし時を同じくして妹リーンベルが "魔導" の持ち主と判明する。
妹がその命を散らすことに対して何も出来なかったカレンスは
逃げるように故郷を後にして王都へ向かう。

王立学院での生活はカレンスに充実した日々をもたらす。
親友となったアニエスは、学院始まって以来の
文武にわたる最高成績を叩き出した生徒で、実は女性であった。
本来女子の入学を想定していなかった学院だったが
その優秀さゆえ、特例によって入学を認められていたのだ。

しかし楽しい日々も永久には続かない。
21歳になったときに故郷から届いた報せは
父の危篤を知らせるものだった。
そして死を目前にした父が、帰郷したカレンスに打ち明けた "秘密"。
それは封印してきたはずの過去と向き合うことを彼に強いるのだった。

エルミーヌの国王もまた、魔導士の "戦力" としての価値を認め、
ラバルタ国内の反乱勢力への支援と引き換えに
彼らから "魔導技術" を導入することを目論むことになる。

後半になると前作のメインキャラ二人も本書の中に登場して
カレンスの運命に大きく関わっていく。


第3巻『魔導の矜持』は、カレンスの帰郷から5年後に始まる。
作中に年号が記載されているのでメインキャラの年齢を計算してみると、
ゼクスは28歳、カレンスは26歳になっている。
ちなみにレオンは42歳、なんと厄年だ(笑)。

舞台はふたたびラバルタに戻る。内乱は停戦となったものの、
国内の魔導士への迫害はいっそう厳しさを増し
各地で魔導士が襲われる事件が続発していた。

ヒロインとなるデュナンは16歳。魔導士の能力を持って生まれ、
私塾に入って技を磨いていたが、どうにも力が伸びず落ちこぼれ気味。
その私塾もまた村人に襲われ師や兄弟子たちは殺害されてしまう。
生き残った弟妹弟子3人を連れて逃亡するデュナン。

彼女ら4人を救ったのは、地方領主の庶子ノエと元騎士のガンド。
デュナンは自分たちが魔導士であることを隠し、
ノエたちと共に追っ手を逃れて旅を続けていくのだが・・・

冒頭から第1作・第2作のキャラも多数登場し、
後半では協力してデュナンたちを救うべく行動を始めることになる。


異世界ファンタジーではあるけれど、内包したテーマは意外と重い。

第一には "多数派によって虐げられる少数派" の物語だろう。

超常の力を持つが故に、その力を持たない
多数の "普通人" によって迫害される魔導士たち。

このあたりはファンタジーよりもむしろ
アメリカSFの黄金時代や、日本SFの黎明期の
超能力者(いわゆるエスパー)ものの雰囲気を感じた。

私の知る限り、「スラン」(A・E・ヴァン・ヴォークト)が嚆矢かなぁ。
その後、平井和正をはじめとして、
多くの日本人作家も超能力SFを発表してきた。
1977年には、超能力者たちが起こした反乱を描いた
「地球(テラ)へ・・・」(竹宮恵子)いう堂々の超大作まで登場した。

ちなみに、『-系譜』で起こるカデンツァ地方の反乱も、
やがて魔導士たちが安住の地を求める戦いへと変化していく。

さらに、本シリーズ中の少数派は魔導士にとどまらない。
この世界で、男性に比べて権利が制限されている女性が
自らの力を発揮する場を求めての戦いも描かれるし
特筆すべきは、本作中で重要キャラの一人が
自らを "性的少数派" だとカミングアウトすることだ。
この手の作品に(単なる賑やかしのためでなく)
LGBTが登場することは珍しいことだと思うし、
現代に書かれた作品ならではのことと言えるだろう。


第二には、自分の道を捜す者たちの物語であること。
たとえばカレンスの中には、妹を見殺しにした後悔と贖罪の意識が、
ノエの中には父の期待に応えられない自分へのコンプレックスがあり、
それが物語の中で彼らを動かす原動力となっている。

自分は何のために存在するのか? 何をするべきなのか?
この世界の中で、自分に与えられた "役割" を見つけようと
必死にあがく姿が描かれていく。

そしてそれは若者だけにとどまらない。
三流魔導士のレオンの中には、他の魔導士への嫉妬があり
元騎士のガンドは、怪我が原因で戦う気力を失ってしまっている。
しかし物語が進むうちに、自分にしか出来ないことを見つけたり
守るべきもののために再び剣をとる覚悟を固めたりしていくのだ。
挫折した大人が再び自らの矜持を取り戻す物語とも言えるだろう。

レオンとガンドには作者も愛着があるらしく
『-矜持』のあとがきで二人
に対する思い入れを語っている。


さて、シリーズを重ねるにつれて登場人物も多岐にわたり
その数も半端ではない。それなりに出番のあるキャラに限っても
両手両足の指では足りないだろう。
しかしたいしたものだと思うのは、みなキャラ立ちがはっきりしていて
その書き分けがきっちり出来ていること。

後続の巻になればなるほど、物語に絡んでくる人物も増えていくのだが
前巻までに既出のキャラのうち、必要な者を必要に応じて
過不足無く再登場させる、その交通整理ぶりも見事だ。

既刊の3巻、すべて文庫で400ページ超えというボリュームながら
上記のように筆力は申し分なく、ページを繰る手を止めさせない。
いやはやたいした新人さんである。


最初のうちは異世界の年代記か、主要キャラの半生記みたいなもので
これからかなり長く続くシリーズになるんだろうと
勝手に思っていたんだが、東京創元社のホームページによると
どうやら次巻『魔導の黎明』で完結となるらしい。

おそらく本シリーズは、魔導士が蔑まれ迫害されてきた世界が、
新しい価値観へと変化していく "歴史の転換点" を
描くものになるのだろう。

さらには、ラバルタから流出した魔導技術が
他国へと "拡散" していくことは
この世界の軍事バランスを崩すことにもつながりそうだ。
それによって新たな戦いが始まる可能性もある。

メインキャラたちの辿る運命ももちろんだが
この世界が迎える未来もまた気になる。
完結編を期待して待ちたいと思う。

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オーリエラントの魔道師たち [読書・ファンタジー]


オーリエラントの魔道師たち (創元推理文庫)

オーリエラントの魔道師たち (創元推理文庫)

  • 作者: 乾石 智子
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/06/22
  • メディア: 文庫
評価:★★★

作者は2011年にファンタジー作家としてデビュー、
"オーリエラント" と呼ばれる異世界を舞台にして
作品を発表し続けている。
そのほとんどが長編だったのだけど、初の短編集となるのが本書。

「陶工魔道師」
陶工師ヴィクトゥルスは、魔法を込めた焼き物を作る。
望みを叶えることも、人をおとしめることも・・・
彼のもとを訪れた貴族タモルスは、
立身出世を実現する焼き物を所望するが
まずは "焼き物による魔法" を証明してみせよ、と命じる。
因果応報、って言葉を感じるラスト。

「闇を抱く」
酒に溺れて家族を顧みない父に代わり、働くことを決意したオルシア。
フェデルの町へやってきた彼女は、名家の奥方・ロタヤから紹介され
機織工房を営むリアンカのもとで働き始める。
父親が連れ戻しにくることを心配するオルシアに
リアンカは紐を使った不思議な "お呪(まじな)い" を教えるのだった。
日用品と人体の一部を用いた魔法 "アルアンテス" も面白いが
男に虐げられた女たちの巡らす "裏のネットワーク" も興味深い。
"秘密結社" というほどのものではないが、
女性たちが密かに手を組んでいるというのは
男からするとなかなか脅威ではあるかな(笑)。
ちょっと「デューン」(F・ハーバート)を思いだしたりして。

「黒蓮華(こくれんか)」
コンスル帝国の兵士に村を焼き払われ、家族を失った少年は
長じて人や動物の死体を用いた魔法 "プアダン" を身につけた。
ベイルスの町の役人・アブリウス。
ある日、彼は自分の机の引き出しの中に
ネズミの目玉が放り込まれていることに気づく。
それはプアダン魔道師となった "彼" による復讐の始まりだった。
後半はちょっとミステリタッチかな。
復讐の物語なんだが、読後感は悪くない。

「魔道写本師」
本と文字を用いて行う "ギデスティン魔法" を身につけた
写本師・イスルイールは、港町ナーナで
二十数年ぶりに弟・ヨウデウスと再会する。
しかしその夜、イスルイールの家は
水の魔道師・ハインによって襲撃を受けてしまう。
後半には二人の魔道師の戦いや幻想的なシーンも織り込まれ
これぞファンタジー、という物語が展開する。


陶器、日用品、死体、書物など
作者の描く魔法には様々なバリエーションがあって
1作ごとに新しい "技" を見せてくれる。
杖1本で実現する魔法もそれはそれで楽しいが
こういうものもなかなか面白い。

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玉妖綺譚 / 玉妖綺譚2 異界の庭 [読書・ファンタジー]


玉妖綺譚 (創元推理文庫)

玉妖綺譚 (創元推理文庫)

  • 作者: 真園 めぐみ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/05/21
  • メディア: 文庫
玉妖綺譚2 (異界の庭) (創元推理文庫)

玉妖綺譚2 (異界の庭) (創元推理文庫)

  • 作者: 真園 めぐみ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/02/11
  • メディア: 文庫
評価:★★★

第1回創元ファンタジイ新人賞で優秀賞を受賞した作品とその続編。

舞台となるのは、パラレルワールドの日本と思しき世界。
我々の世界と異なっているのは"皇国大和"と称する国名だけでなく、
人の目に見えない "妖(あやかし)" が跋扈していること。

ちなみに皇国の首都は櫂都といい、
西にあった前首都から遷都されて24年めという設定。
技術レベルは、街中を馬車が走っていることから
明治時代くらいかなあと思われる。

この世界では異界と現実世界との間に
"竜卵石" と呼ばれる石が産出される。
この石は、持ち主の"気"を受けて、その中に"精霊"を宿す。
これがタイトルにある「玉妖」である。

石ごとに色やかたちが異なるように、玉妖も様々な性格の者がいる。
しかし総じて、類い希な容姿をもつ。要するに美男美女ばかりなんだね。

その玉妖と主従の契約を交わせば、
彼らを "使役" することもできるのだが
彼ら自身にも意思があり、時として主の命令に従わないこともある。
また、人間の気によって "育つ" ものでもあるため、
その性格や外見にも持ち主の影響を受けることになる。

また、竜卵石にも "格" というものが存在するようで
最高の竜卵石群は、コレクターである
難波俊之・さゆき夫妻が所持していた7個。
しかしさゆきが亡くなり、俊之が謎の失踪を遂げて
「難波コレクション」は散逸してしまう。

本書のヒロイン・高崎綾音とその姉・百合乃の姉妹は
俊之が失踪する直前に7個のうちの2個、
"くろがね" と "ほむら" を贈られていた。

しかし百合乃は玉妖であるほむらに恋してしまい(美男だからね)
現実世界に背を向けて玉妖の "郷" に閉じこもってしまう。

姉を救うために、綾音はくろがねと主従の契約を交わし
「驅妖師(くようし)」の修行を始める。
驅妖師とは、玉妖を含めて妖がらみのトラブル全般を解決する仕事だ。

長編ではあるが、実質的には
綾音とくろがねが出会う事件を描いた連作短編集だ。

俊之の甥で探偵事務所を経営する難波彬良は
コレクションの再収集を目指しており、
その共同経営者かつ驅妖師の伊上亮輔は、
やがて綾音と深く関わるようになる。

第1巻は、登場人物の紹介を兼ねながら、
"玉妖" に魅入られた人々の哀感を綴り、
綾音が百合乃を救出するまでが描かれる。

続巻では、前巻の終わりで "眠り" についてしまった
くろがねを目覚めさせるため、
綾音がその方法を探していく途中で
敵役となる驅妖師・佳奈屋、"妖" 一切に理解がない警官・皆川、
その同僚で謎めいた行動をとる女性・野田麻緒などが登場し、
俊之の失踪の理由、異界と現実世界の関係にも
何やら秘密がありそうなことが示唆され
物語はさらに続いていくことになる。


とまあ、いろいろ書いてきたんだが
今ひとつ私の好みではないかなあ。

何処がどう悪いということはないんだが
例えば美男の玉妖に恋してしまう人間の娘とか
亡くなった恋人を玉妖の姿で "再現" させようとする男とか
(玉妖は持ち主の "気" で育つから、そういうことも可能になる)
玉妖を巡る人間の姿が醜いとまではいかないけれど、
読んでいて辛いのは確か。

もちろん作者はそういう存在は否定しているし、
玉妖を "悪用" しようとする動きは
ヒロインたちによって阻止されていく。

でもねぇ、なんだろう。
つまらないわけではないんだけど心が躍らないというか。
私が求めるファンタジーの楽しさとは
ちょっと異なるテイストなんだろうなあ。

まあ、好みの問題だと思います。

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