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ライオンの棲む街 平塚おんな探偵の事件簿1 [読書・ミステリ]


ライオンの棲む街  平塚おんな探偵の事件簿1 (祥伝社文庫)

ライオンの棲む街 平塚おんな探偵の事件簿1 (祥伝社文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2016/09/14
  • メディア: 文庫
評価:★★★

本書の語り手は川島美伽(みか)、27歳の元OL。
東京で会社勤めをしていたものの仕事に疲れ恋に破れ、
職も貯金も失って故郷・平塚の実家に舞い戻ってきた。

再就職もままならない美伽のもとへ舞い込んできたFAX。
差出人は高校時代の親友、生野エルザ(しょうの・えるざ)。
誰にでも噛みつく気性の荒さから "雌ライオン" の異名を持つ女だ。
「暇ならウチの仕事を手伝え」

エルザはいつのまにか、所轄署の刑事さえ一目置く
"名探偵" となっていたのだ。
"猛獣" エルザと "猛獣使い" 美伽のコンビが
平塚で遭遇する奇妙な事件を解決していくユーモアミステリの連作。

 そういえば、昔「野生のエルザ」ってTV番組があったよなあ。
 知らない人もいると思うので書いておくと、
 "エルザ" というのはそれに登場するライオンの名前だ。
 wikiで調べたら同題の映画まであった。どちらも40年以上昔。
 ああ、何もかもみな懐かしい・・・


「第一話 女探偵は眠らない」
OLの沼田一美は、婚約者・杉浦啓太に隠れた恋人がいるのではと疑う。
依頼を受けたエルザは、杉浦が密かに借りているアパートを突き止める。
二人でそこを監視する中、部屋から女が出てきたが
エルザは尾行に失敗して見失ってしまう。
一方、部屋を訪ねた美伽は、中で杉浦の死体を発見する・・・

「第二話 彼女の爪痕のバラード」
食品会社の営業マン・山脇敏雄の恋人、北村優菜が失踪した。
優菜の母親・典子が交際中の男・高岡祐次と
旅行に行っている間に姿を消したのだ。
捜索を始めた二人だが、典子はなぜか娘の捜索に非協力的。
さらに山脇が川で水死体となって発見される・・・

「第三話 ひらつか七夕まつりの犯罪」
七夕祭りで賑わう平塚。しかし祭り会場の近くで
女子大の講師・松村栄作の刺殺死体が発見される。
容疑者として浮上したのは彼と男女の関係にあった学生・元山志穂。
しかし彼女には鉄壁のアリバイがあった。
犯行時刻にはエルザと美伽がずっと志穂を尾行していたのだから・・・

「第四話 不在証明(アリバイ)は鏡の中」
"魔女" と噂されるカリスマ占い師として有名な金剛寺綾華。
看護師・柳田良美は彩華を崇拝するあまり休職、
実家を出て彩華の屋敷に住み込んでしまったらしい。
良美の妹・美紗から姉の奪還を頼まれたエルザと美伽。
一方、ルポライター・山科徹がビルの屋上から転落死する。
彼は彩華の告発記事を準備していたらしい・・・
彩華が見せる "イリュージョン" を成立させる物理トリックが面白い。

「第五話 女探偵の密室と友情」
資産家・日高玄蔵が死亡した。現場はマンションの7階。
部屋のドアには内側からガムテープで目張りがしてあり、
窓は開いていたが、そこからの脱出は不可能。
遺体の状況から警察は自殺として処理するが、
妻・静江は殺人の疑いを捨てきれず、エルザたちに調査を依頼する・・・
密室トリックはかなり大がかり。
だけど大胆すぎるがゆえに、案外成立してしまいそうな気もする。


傍若無人で誰に対してもタメ口(ぐち)なエルザ。口も悪いが手も早い。
肉体労働専門かと思いきや、けっこうアタマも切れる。
清楚な美人キャラのはずの美伽も、彼女の前ではギャグ要員と化す。
そんな二人のコントみたいな掛け合いが楽しい。
とは言ってもミステリとしてもきちんとできていて
毎回、トリックも凝ったものを用意している。

本作はシリーズ化されていて、既に3巻目まで刊行されているとのこと。
文庫化されたら読みます(笑)。

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二歩前を歩く [読書・ミステリ]


二歩前を歩く (光文社文庫)

二歩前を歩く (光文社文庫)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/09/08
  • メディア: 文庫
評価:★★★

一見すると超常現象に思えるような状況というものが
ミステリにはよく登場する。
実際には巧妙なトリックだったり、心理的な錯覚だったりして
最終的には合理的な説明なり解釈なりが披露される。

ところが本書はいささか毛色が異なる。
例えば冒頭にある「一歩ずつ進む」はこんな話だ。


ある企業で研究員をしている "僕" は
マンションの一室で一人暮らしをしている。
部屋の中ではスリッパ履きで過ごしているが、
ある日帰宅すると、出て行くときに脱ぎ散らかしてあったはずの
スリッパがきちんと揃えられている。
それから、毎日帰宅するたびにスリッパに異変が起こる。
きちんと揃ったスリッパが、毎日少しずつ前に異動しているのだ。
あたかも歩いて部屋の奥に向かうが如く・・・

"僕" は同僚の研究員・小泉に相談するが
二人で検討した結果は、外部からの侵入の可能性はなく
スリッパはあくまでも "勝手に" 動いているとの結論に到達する。
小泉は言う。
「HOWは議論しないことにしよう。
 超常現象に理屈を求めても仕方がない。
 それより、WHYを考えよう」
"どうやって" ではなく "なぜ" スリッパは動くのか。
スリッパが動くことにはどんな意味があるのか。
あるいは、スリッパは何をしようとしているのか。
そして小泉は、ある "仮説" を語り出す・・・


超常現象の存在はそのまま認めて、その現象がもつ意味を考える。
そこからミステリとしてのオチにもっていく、というパターンだ。
超常現象そのものの謎解きは行われないが
それ以外の状況から導かれる謎の "解釈" はきちんと明かされる。

うーん、書いていてなんだかよく分からない文章だなあ。
オチをバラさずにミステリを紹介するのは難しいが
この作品集はなおさらたいへんそうだ。

たとえば上記の作品なら、スリッパの "移動" は
マンションの他の部屋では起こらず、
"僕" の部屋でのみ起こる。それはなぜか、とか。
うーん、ネタバレギリギリだったりするかな(笑)。

本書にはこのような短編が全部で6作収録されており、
いずれも小泉が "探偵役" となって "仮説" を提示していく。

「二歩前を歩く」
ある日を境に、道行く人が "僕" を避けるようになった。
童顔で背も高くないのに、前から歩いてくる人が、
なぜか驚いたようにさっと横に移動するのだ。
あたかも、自転車が突っ込んできたみたいに。
あるいは、恐いヤクザに気がついたみたいに・・・
ちなみにこの "僕" は、「一歩ずつ進む」の "僕" とは別人です。

「四方八方」
急性の白血病で愛妻・知花(ちか)を喪った岩尾。
しかし彼は仏壇も位牌も必要ないという。
なぜなら、彼が暮らす部屋の壁紙の裏には、
知花の遺髪が一面に貼り付けてあるからだという。
しかし、次第に岩尾は身体に変調を覚えるようになっていく・・・

「五ヶ月前から」
三十代半ばで独身の穂積はマンションで一人暮らし。
五ヶ月前から、家に帰ると浴室の明かりが
つけっぱなしになっていることに気づく。
出勤時にはきちんと消しているはずなのに・・・

「ナナカマド」
"わたし" は特許調査部で働く三十代独身女性。
使っている軽自動車のガソリンの残量が
いつのまにか増えるという謎の現象に遭遇している。
残量がタンクの3割を切ると、次に乗るときには
7割ほどまで補充されているのだ。
タンクの蓋に封をしておいても、なぜかしっかり増えている・・・

「九尾の狐」
総務部保険課で働く勝倉。
彼の二期上の先輩・林田理子(はやしだ・りこ)は美人で独身。
気さくな性格もあり、社の内外で人気が高い。
しかし勝倉は気づいてしまう。
彼女は長い髪を後ろでひとまとめにしたホーステール。
(ポニーテールより結び目が下で、背中に流すような髪形らしい)
その髪の房が、ときおり重力に逆らうように
ぱっくり二つに分かれてしまうことに・・・


超常現象がらみなので、オチはホラーっぽくなったり
けっこう救いのない結末の話が多い。
しかし掉尾を飾る「九尾の狐」では、出だしこそ妖怪ものみたいだが
小泉の "仮説" を聞いた勝倉が取る行動によって、
とてもハッピーでほっこりした結末を迎える。
読後感も素晴らしく、それまでの重苦しい雰囲気を吹き飛ばしてくれる。

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異次元の館の殺人 [読書・ミステリ]


異次元の館の殺人 (光文社文庫)

異次元の館の殺人 (光文社文庫)

  • 作者: 芦辺 拓
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/09/08
  • メディア: 文庫
評価:★★★

弁護士・森江春策が探偵役として活躍するシリーズの一編。

シリーズの準レギュラーとも言える検事・菊園綾子。
彼女が最も尊敬する、恩師ともいうべき
名城政人(めいじょう・まさと)検事が殺人罪で逮捕され、現在服役中。
しかし彼は無罪を主張し、再審を請求していた。
綾子は、犯行に使われたとされる毒物が、
名城に入手可能なものであったかどうかを鑑定してもらうために、
世界最大級の粒子加速器を擁する
放射光研究施設<霹靂Ⅹ>(へきれきテン)を訪れる。

 作中でも、和歌山毒入りカレー事件で使用された亜ヒ酸の鑑定に
 放射光施設SPring-8が使用されたことが言及されている。

その後、綾子は春策と共に
事件の関係者が集う西洋館『悠聖館』へ向かう。
しかしそこで二人を待っていたのは密室の中の刺殺死体。
さっそく捜査を始めた綾子は犯人の特定に至り
全員の前で推理を披露し始めるのだが・・・

折しも毒物を鑑定中だった<霹靂Ⅹ>の加速器が暴走を始め、
綾子は異次元の世界へ飛ばされてしまう・・・

飛ばされた先の世界は、一見すると何の変化も無いようだが
微妙なところで異なっている。
例えば、彼女の知る世界では「春策」と呼ばれていた弁護士は
"こちら" では「夏策」という名だったりする。

"こちら" の世界でも殺人事件は起こっており、綾子は捜査の結果
"元の世界" での推理は誤りであることに気づく。
新たに特定した犯人について、再び全員の前で推理を披露し始めると、
綾子は再び異なる世界へ飛ばされてしまうのだった・・・

どうやら彼女が誤った推理を口にするたびに
異世界に飛ばされてしまうらしい。
彼女が元の世界に戻るためには、正しい推理で
"真犯人" を見つけるしかないようだ。
しかし、飛ばされるたびに、たどりつく世界は
どんどん元の世界と異なったものに変わっていく。

果たして綾子は元の世界に戻ることはできるのか?


並行世界というかパラレルワールドをミステリに持ち込むのは
かなりリスクがありそうな気がする。
世界が異なればなんでもアリになってしまうから
世界Aで成立した推理が世界Bでは成立しないなんてことが
普通に起こりうるわけで、ヘタをすると収拾がつかなくなってしまう。

まあ、作者もその辺はよく分かっているようで
舞台を屋敷一つの中に限定して、登場人物も最小限、
経過時間も短くして事件をそのものをコンパクトにまとめて
読者が混乱しないように配慮していると思う。

そもそも何のためにこんな設定を持ち込んだのだろう?
って考えながら読んでた。
世界が変わるごとに綾子は推理をやり直すので、
基本的には "多重解決もの" の一種といえるだろうが
それだけのためにこんな大がかりな仕掛けが必要かなぁ・・・
なんて思ってたら、最後の最後に背負い投げを食らいました。
そうかあ、これがやりたかったんですねぇ・・・

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トッカン -特別国税徴収官- [読書・ミステリ]


トッカン―特別国税徴収官― (ハヤカワ文庫JA)

トッカン―特別国税徴収官― (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 高殿 円
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/05/24
  • メディア: 文庫
評価:★★★★☆

日本という国に住んでいる限り、国家に対して
税金を払い続けなければならない。
サラリーマンならば源泉徴収というかたちで給料から天引きされ、
毎月の給与明細を見て「こんなに取られてるんだぁ」と嘆くことになる。
持ち家とか自動車を持ってれば、さらにいろいろ取られる。

ところが世の中には税金を払わず、滞納している人たちがいる。
理由は様々なのだが、払わなければならないものを払っていないなら
そんな人たちに対して取り立てを行う者もまたこの世に存在する。
それが本書に登場する「徴収官」という職業だ。

主人公は新米徴収官・鈴宮深樹(みき)、25歳。
しかし職場の人たちはみな彼女のことを "ぐー子" と呼ぶ。
口下手で、言いたいことを上手く言葉にできず
「ぐっ」と呑み込んでしまうところからつけられたあだ名だ。

そしてその名付け親こそ、特別国税徴収官・鏡雅愛(まさちか)、34歳。
"トッカン" こと特別国税徴収官は、悪質な滞納案件がターゲット。
彼は国税局から京橋税務署に出向してきた "徴収のエース" であり
その豪腕ぶりで滞納者からは "死神" と怖れられる存在であり、
そしてぐー子の直属の上司でもある。

物語はぐー子の一人称で綴られていく。

冒頭、ぐー子は5年も税を滞納していながら、世田谷の豪邸に住み
外車を2台も所有しているマダム・下島絵津子に徴収をかけるが
彼女は憤怒の形相で「税金ドロボー!」と叫び、追い払いにかかる。
ぐー子は糠味噌まみれのタクアンをぶつけられ塩まで撒かれてしまう。

徴収官とは「街中のヤミ金よりもヤクザよりも嫌われる公務員」。
一方、裁判所の令状無しに捜索・差し押さえができるなど
警察を超える "国家権力" を行使できる "最強の公務員" でもある。

そこへ現れた鏡は、強硬手段をとることを宣言する。
「これより滞納金の現品徴収を行う。観念しろ!」
現品徴収とは、いわゆる "差し押さえ" のことだ。
金目のものに対して片っ端から「徴収票」を貼り付けていく。
外車、衣類、ブランド品、はては絵津子の飼い犬にまで・・・

本書は、ぐー子が鬼上司・鏡とともに滞納者たちと対決していく物語。
税務署・税務官の仕事と日常が描かれる "お仕事小説" でもあり、
そして何より、ぐー子が徴収官として、人として成長していく物語。

新宿でカフェを経営する三井晴彦、
銀座の高級クラブ<澪>のママ・下川耀子(ようこ)、
京橋で小さな町工場を夫婦で経営する大橋照夫・史子。
何せ相手は悪質な滞納者。中には海千山千の強者もいるわけで
巧妙な脱税工作を巡らしている。
もちろんポッと出の新人徴収官が相手にできるはずもないが
鬼上司の厳しい "指導" のもと、一歩ずつ徴収官として歩んでいく。

京橋税務署の同僚たちもユニーク。
ロールケーキに目がない統括官・金子長十郎、
「ニートになりたい」が口癖の釜池亨、お見合いが趣味の鍋島木綿子など
登場するキャラクターも多彩。

中盤になると、税務大学校時代の同期で
(税務官に採用になると、税務大学校で研修を受けることになる)
かつてはプロレス紛いの取っ組み合いの大ゲンカまでしでかした、
ぐー子にとっては "不倶戴天の敵" ともいえる
国税局調査官・南部千紗が登場するなど波乱の展開(笑)。

でも、なんといってもピカイチなのはヒロインのぐー子さん。
自営業だった父の "ある失敗" から、
経済的に苦しい学生時代を送ったぐー子は
"安定" を求めて公務員を目指すが、ことごとく採用試験に落ちまくり
唯一合格したのが税務官だった。
しかし、"ある失敗" の件で税務署を目の敵にする父からは
親子の縁を切られ、逃げるように実家のある神戸から上京してきた。
トッカン付きとなった今も、やることなすこと失敗ばかりで
鏡との関係も、呆れられたり貶されたりケンカしたりの毎日。

終盤近く、自らの生き方を振り返って独白するシーンがあるのだが
ここが本書の白眉だろう。詳しく書くとネタバレになるんだけど
読んでいて眼がウルウルしてきたことは書いておこう。
ずっとコミカルに描かれてきたぐー子さんにこんな感動を覚えるとは。

滞納者に対しては情け容赦ない人物として登場する鏡。
ラスト近くでは、彼が過去に起こした悲しい "事件" と、
それによって背負うことになった "業" が明かされる。
そして、厳しいだけではない別の一面を持っていることもぐー子は知る。

鏡とぐー子の間の "心の距離" も近づいていく雰囲気もあり
この二人の関係が今後どうなるのか気になるが、
本作はシリーズ化されていて現在4巻まで刊行、
3巻目までは既に文庫になっていて手元にあるので、近々読む予定。

ちなみに本作は2012年にTVドラマになっている(未見だけど)。
ぐー子は井上真央さん、鏡は北村有起哉さん。
まあそんなにかけ離れたイメージではないかな。
三井晴彦は城島茂。大橋(TV版では大島)照夫は泉谷しげる。
いかにも税金を払うのを嫌がりそうな配役(笑)だ。
下川耀子さんのパートはオミットされたみたいだね。
ぐー子の父は塩見三省。頑固な職人という役柄にぴったりか。

作者はライトノベルの世界で活躍してきた人らしいが
コミカルな雰囲気、"キャラ立ち" ばっちりな登場人物、
そして読みやすくわかりやすい文体と描写はそのあたりで培ったものか。
ここ数年は一般向けの作品も書いていて、評判もいいみたい。
しばらく追いかけてみようと思ってる。

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虹果て村の秘密 [読書・ミステリ]


虹果て村の秘密 (講談社文庫)

虹果て村の秘密 (講談社文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/08/09
  • メディア: 文庫
評価:★★★

上月秀介(こうづき・しゅうすけ)は12歳。父親は刑事。
同級生の二宮優希(ゆうき)の母はミステリ作家。
秀介の将来の夢はミステリ作家になること。優希の夢は刑事になること。

二人は、優希の母・ミサトの持つ別荘がある西畑村、
通称 "虹果て村" で夏休みを過ごすことになる。
しかし一緒に行くはずだったミサトは仕事の都合で遅れたため、
二人だけで先に村に到着、ミサトの従姉妹で
役場で働く藤沢明日香の世話になることに。

折しも虹果て村には、高速道路の建設計画が持ち上がっていて
村民は賛成派・反対派に二分された状態だった。

そんなとき、建設反対派の郷土史研究家が密室状態の中で殺される。
さらに、上陸してきた台風のために村に通じる唯一の道路が
土砂崩れで普通となり、秀介も優希も村人たちも犯人と一緒に
閉じ込められてしまう。

刑事志望とミステリ作家志望の二人は
知恵を振るって犯人の正体に迫ろうとするが・・・


講談社の「ミステリーランド」という
ジュブナイル・ミステリのブランドから刊行された作品。
殺人は起こるけれども、生々しい描写は控えめで、
それでも密室ありダイイングメッセージありと

いかにも小中学生向けのミステリー入門書、という作品。
登場人物も、いかにも凶悪な人は出てこないのだけど、
裏がありそうな人ばかり。
理解のありそうな大人のように見えて、実は・・・とか、
いかにも怪しげな風体なんだけど実は・・・て人もいるし。
まあミステリだから当たり前だけど。

とはいってもこの作者のことだから、手がかりをもとに推理を進めて
犯人を導き出す、きっちりしたミステリになってる。
登場する密室トリックも、
古参のミステリファンからすればチャチなものかも知れないが、
子供視点で考えれば充分にわくわくできるんじゃないかな。
それに、密室にしなければならなかった理由も納得できるものだ。

さて、読んでいて実は一番気になったのは、犯人でもトリックでもなく、
秀介と優希の関係だったりする(笑)。
保護者もなしに二人で旅行してるし(後から合流する予定だけどね)
普通の友人でもないが恋人同士でもないし(小学校6年だしね)
でもまあ、そこはジュブナイルですから、
そのへんはスルーしておくのがお約束(笑)なんだろう。

そして一番驚いたのは、犯人の正体でもなく虹果て村の秘密でもなく
巻末に収録された「ミステリーランド版あとがき」だった(おいおい)。
ここに書かれた作者の奥さんに関するエピソードでびっくり。
いやはや、有栖さんはなんて幸せな人なんでしょう。
ミステリ作家冥利に尽きますねぇ。

これを読んでしまうと
秀介と優希が俄然、有栖川氏と奥さんに重なって見えてくる。
もっとも、作中で切れ味鋭い推理を披露するのは優希の方で
秀介はもっぱらワトソンの役回りだけど(笑)。
あ、でもそういえば有栖川有栖はどちらのシリーズでも
ワトソン役だったよねえ・・・

これはぜひ、続編を書いて欲しいなあ。
中学生編とか大学生編とかでもいいので書き継いでもらって
成長した二人に再会したいものだ。

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福家警部補の再訪 [読書・ミステリ]


福家警部補の再訪 (創元推理文庫)

福家警部補の再訪 (創元推理文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/07/21
  • メディア: 文庫
評価:★★★

日本ではあまり見かけない "倒叙ミステリ"。
まず犯人の側から犯行の経緯が語られ、
続いて、犯人が巡らしたトリックを探偵側が突き崩していく。
往年の名作TVドラマ「刑事コロンボ」のパターンである。
若い人なら「古畑任三郎」と言った方が分かりやすいかも知れない。

その「コロンボ」の日本版とも言えるのがこの福家警部補シリーズ。
本書はその2巻目で前巻同様、4編を収録している。


「マックス号事件」
警備会社社長・原田は、零細探偵社を経営していた10年前、
フリーの調査員・直巳(なおみ)と組んで恐喝をはたらき、
巻き上げた資金を元手に会社を大きくしてきた。
最近になって直巳が口止め料を増額してきたのを機会に
彼女を排除することを決意する。
現場に選んだのは、フェリー船<マックス>。
東京沖をクルーズ中の船内で原田は直巳を殺害する。
たまたま別件の捜査のために<マックス>に乗り込んでいた
福家警部補が捜査にあたることになるが・・・
タイトルを見て、『ウルトラセブン』の第4話を連想した人。
あなたは私の同類です(笑)。

「失われた灯」
映画脚本新人賞を受賞してデビューした人気シナリオライター・藤堂。
しかし受賞作は盗作だった。
それを知る古美術商・辻から脅迫されていた藤堂は
売れない役者・三室を使って架空の誘拐事件をでっち上げて
アリバイを作り、首尾良く辻を殺害した。
さらに三室をも始末して、後顧の憂いを絶ったかに見えたが・・・

「相棒」
漫才師 "山の手のぼり" こと立石、"山の手くだり" こと内海。
二人は人気漫才コンビだったが、
立石はコンビを解散してピンでの活動を目論んでいた。
しかし相棒の内海は頑として解散を認めようとしない。
思いあまった立石は、稽古場として借りた一軒家で
話し合いをしようとするが、はずみで内海を殺してしまう・・・
ラストで、内海が解散に応じなかった理由も明らかになるが
なんとも切ない事情だったりする。

「プロジェクトブルー」
玩具の企画専門会社社長・新井は
学生時代に有名玩具の違法コピーを製造していた。
町工場を営む造形家・西村から過去の犯罪行為について
法外な口止め料を要求された新井は、
事故に見せかけて西村を殺害することに成功するが・・・
タイトルを見て、『ウルトラセブン』の第19話を連想した人。
あなたは私の同類です(笑)。
この作品では怪獣の玩具がキーアイテムになっている。
「ソフビ人形」なんて単語、久しぶりに聞いたなあ・・・


コロンボ警部(原語を直訳すると "警部補" らしいが)は
ヨレヨレのコートを着た風采の上がらない、
冴えない中年刑事の姿で犯人の油断を誘っていた。

本書で登場する福家警部補は小柄で童顔、縁なしメガネを愛用し
現場ではよく一般人に間違われ、
犯人からも警官だと信じてもらえないこともたびたび、
というキャラクター。
しかし頭脳の切れは抜群で、意外に雑学(特にオタク系)の知識が豊富で、
現場に残された物証や供述の細かい矛盾点を丹念に突いて
犯人の偽装工作を切り崩していく。
このあたりは "本家" コロンボに勝るとも劣らない。
犯人がみな、功成り名を遂げたひとかどの人物であるところも、
ラストで福家警部補にトドメを刺されたときに
慌てたり激高したりせず、静かに負けを認めるところも
本家を踏襲している。

福家警部補シリーズは過去に2度ドラマ化されている。

まず2009年に「オッカムの剃刀」(第1巻に収録)が
NHKの単発ドラマになっていて、この時の福家は永作博美さん。
これは観た。けっこうイメージに合ってるかなと思う。
ちなみにこの時の犯人は草刈正雄だったなあ。

2回目は2014年。フジテレビ系で全11回の1クール作品。
この時の福家は檀れい。
うーん、彼女に恨みがあるわけじゃないがちょいと華やかすぎないか?
あ、永作さんが地味というわけではないので念のタメ(^^;)。


シリーズ第3巻も既に文庫化されていて手元にある。
これも近々読む予定。

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屍人の時代 [読書・ミステリ]


屍人の時代 (ハルキ文庫)

屍人の時代 (ハルキ文庫)

  • 作者: 山田 正紀
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2016/09/01
  • メディア: 文庫
評価:★★★

短編集「人喰いの時代」に登場した探偵、
呪師霊太郎(しゅし・れいたろう)が遭遇する4つの事件を描いた短編集。
いずれも主な舞台は大正~昭和初期~終戦頃までの北海道&東北。

「神獣の時代」
昭和14年、根室から海路で吐裸羅(とらら)島にやってきた霊太郎は、
海岸の漁師小屋で美しい少女・カグヤと出会う。
彼女の父で漁師の長であるトガシは告げる。
「ウエンカムを捕殺した者にカグヤを与える」と。
ウエンカムとは "オホーツクの悪霊" の異名を持つ巨大なアザラシ。
名乗りを上げたのは択捉漁団の漁場監督・カワグチ、
日ソ漁業協会書記にしてクマ猟の名人・五十嵐。
カグヤはオサムという少年と将来を誓った仲だったが、
オサムはトガシの怒りを買い、島の仲間から追放されていた。
しかしオサムもまたこのとき、島に戻ってきていた。
カグヤからの申し出で、オサムもまた
ウエンカム捕殺の一員に加えられるが、なぜか霊太郎までが
「自分もその中に加えてくれ」と言い出すのだった・・・
なんだかミステリっぽくない出だしだが、
ちゃんとこのあと殺人事件が起こる。
その解決も二転三転、途中まではかなり理詰めですすむんだが、
最終的な "真相" に至ると「いくらなんでもそれはないだろう」
ま、このラストはおまけみたいなもんだと思えばいいのだけど。

「零戦の時代」
平成6年(1994年)8月、劇団員の緋口結衣子は
ある映画の主演女優を選ぶオーディションを受ける。
それは終戦直後を舞台にした零戦を巡る恋愛映画だったが、
なぜか結果の通知が来ず、連絡先とされた電話番号にかけても通じない。
さらに彼女の部屋からは連絡先を書いたメモが盗まれ、
思い余って駆け込んだ警察署では何者かに脚本まで持ち去られてしまう。
そんなとき、結衣子のところにかかってきた電話。
相手は呪師霊太郎と名乗った・・・
そして物語は昭和20年(1945年)にさかのぼり、終戦間近の
北海道を舞台に海軍航空基地で起こった事件について語られる。
そしてここにも、呪師霊太郎は登場している。
50年近い時を隔てた二つの事件をつなぐ真相を彼が解き明かすんだが
平成の部の謎解きは思わず「えーっ」って叫びそう(叫ばなかったけど)。

「啄木の時代」
大正8年(1919年)、霊太郎は函館にやってきた。
石川啄木ゆかりの歌人・宮崎郁雨について、ある調査をするために。
そして時は流れて昭和36年(1961年)、プリマ・バレリーナを目指す
榊智恵子は、大叔父の潤三から啄木にまつわる話を聞く。
ここからさらに潤三の回想は明治45年(1912年)に飛ぶ。
物語中の時系列が頻繁に前後するのでわかりにくいが、
要するに啄木の死の翌年(1913年)、
函館の海岸で発見された銃殺死体に行き着く。
啄木の歌に込められた秘密と死体の謎を縦糸に、
昭和36年に起こったある事件を横糸に絡めて
霊太郎が40年にわたる謎を解く。
詳しく書くとネタバレになりそうなんだが、
物語に絡んでくる要素が驚くほど多彩、というか
こんなところからも引っ張ってくるんだなあ、と言う印象。

「少年の時代」
昭和8年(1933年)。霊太郎は岩手県の花巻温泉に逗留していた。
北海道と東北を中心に出没する怪盗、"少年二十文銭"。
その怪盗から実業家の竹内氏に犯罪予告状が舞い込む。
氏が所有する「白鳥の涙」なるダイヤモンドを頂戴すると。
竹内氏は霊太郎にダイヤの守護を依頼するが、
"少年二十文銭" はまんまと強奪に成功してしまう。
怪盗の名が明らかに「怪人二十面相」のもじりだったり、
明らかに岩手出身の某有名人の作品をなぞった怪事件が続発したり、
終盤では列車を使った大がかりな立ち回りがあったりと
本作がいちばん虚構性が強いかと思うんだが、時代設定のせいか
あまり不自然さを感じずに読めてしまうのは作者の筆力なのか。
最後に明かされる怪盗の "真の目的" は、かなり意表を突いたもの。


すべての作品に登場する呪師霊太郎。
なぜか、どの時代にあっても風貌が全く同じなのだが、
作者は敢えてそのように描いているのだろう。
それについての説明は一切ないので、その意図は不明。

となると読者はいろいろ想像するだろう。
例えば「親子代々同じ名前を受け継いでいる」とかね。
私は「霊太郎が実はタイムトラベラーだった」ってのに一票(笑)。

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ヴェサリウスの棺 [読書・ミステリ]


ヴェサリウスの柩 (創元推理文庫)

ヴェサリウスの柩 (創元推理文庫)

  • 作者: 麻見 和史
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/05/31
  • メディア: 文庫
評価:★★☆

第18回鮎川哲也賞受賞作。

主人公は東都大学医学部解剖学研究室で助手を務める深沢千紗都(ちさと)。
学生たちによる解剖実習中、遺体から1本のチューブが摘出される。
遺体には手術跡があったことから、生前に埋め込まれたものと思われた。
そして、チューブの中に入っていた紙には
解剖学の園部教授を名指しで脅迫する文章が記されていた。

タイトルにあるヴェサリウスとは、近代解剖学の父と呼ばれた
16世紀の医学者のこと。
千紗都たちは、遺体にチューブを仕込んだ "犯人"(おそらく医師)
のことを便宜的に "ドクター・ヴェサリウス" と呼ぶことにしたのだ。

数日後、医学部で再び異変が起こる。
標本室では生きたままのマウスが液体を入れた瓶に詰められ、
その横には第二の脅迫文が。
そして廃棄物置き場には、チューブが仕込まれていた遺体が持ち出され、
そこにはドブネズミの大群に群がっていた・・・
犯人は医学部の関係者、それも園部の身近にいるのか?
助教授の野口、講師の小田島、技官の近石、事務員の梶井、
そして6人の院生たち・・・

千紗都は梶井と共に真相を突き止めるべく動き始める。
解剖される遺体は、生前に献体登録をした人たち。
千紗都たちがチューブが発見された遺体の過去を探るうち、
それを埋め込む手術をした医師・"ヴェサリウス" にたどり着くが・・・

冒頭、脅迫状を埋め込んだ遺体がその対象である園部の眼前で解剖される。
まさにピンポイントで命中したわけだが、なぜそんなことが可能なのか。
この魅力的な謎で、まずは "つかみはOK"。

一般には馴染みが薄い献体登録という仕組みや、
登録者が亡くなったときに大学が遺体を受け取りに行った際の
遺族の反応など、興味深いエピソードを交えてストーリーはすすむ。

母子家庭で育った千紗都は園部に対して父親にも似た慕情を抱いていた。
彼女が事件の真相を追って奔走する動機もそこにあるわけだが
実は彼女自身も、過去にある秘密を背負っていることが
明らかになってくる。

30歳で独身とあって、好意を示して近寄ってくる男性もいるのだが
ファザコン気味な彼女はなかなか恋愛に踏み切れない。
本作は、事件を通して彼女が "父親離れ" と "過去の自分との訣別" を
果たすまでの成長の物語とも言えるだろう。

この一連の事件を仕組んだ "ある人物" の執念は驚くべきもので
いささか常軌を逸している。
解剖学教室という舞台といい、不気味な人体模型や標本類という
道具立ても相まって、江戸川乱歩並みとまでは言わないが
かなりの猟奇性さえ感じさせる。

本格ミステリとしてはよくできていると思うので鮎川哲也賞受賞も頷ける。
だけど、題材のせいもあるかと思うんだけど、
息抜き的なシーンも少ないし、上にも書いたように
遺体を扱う研究室で展開するとなれば
どうしても鬱屈した思いに陥ってしまう。
星の数が少なめなのもそれが理由だったりする。

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長い廊下がある家 [読書・ミステリ]


長い廊下がある家 (光文社文庫)

長い廊下がある家 (光文社文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/07/10
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

臨床犯罪学者・火村英生とミステリ作家・有栖川有栖の
コンビが活躍する本格ミステリ中短編4作を収める作品集。

「長い廊下がある家」
限界集落を研究している学生・日比野は山中でのフィールドワークで
道に迷い、住人のいなくなった廃村にたどり着く。
そこで出会ったのはオカルト番組の取材に訪れた男女3人組、
編集者の市原、心霊ライターの久谷、カメラマンの砂子。
彼らはもう1人のメンバー、宮松の到着を待っていた。
彼らが取材していたのは幽霊が出ると噂の館。
その地下には長い通路があり、130m離れた別棟とつながっている。
その通路は中央に閂のついた扉があって東西に二分されていた。
そしてその扉の西側で宮松の死体が発見されるが
犯行時刻には容疑者である3人組はすべて東側の家にいて、
現場へ行くことはできなかったことが分かる・・・
最後に明らかになるトリックは "コロンブスの卵" 的で
"目から鱗が落ちる" ような思い。

「雪と金婚式」
田所雄二・安曇(あずみ)夫妻は金婚式を迎えた。
しかしその翌朝、夫婦と同居している義弟・重森が
自室で絞殺死体となって発見される。
容疑者として2人の人物が浮上するが、どちらにもアリバイが。
そして死体発見から6日後、田所雄二は階段で転倒して側頭部を打撲、
そのため転倒以前の約1年分の記憶を失ってしまう。
転倒する直前、雄二は安曇に対して「犯人の見当がついた」と語っていた。
雄二の記憶を取り戻し、犯人を指摘するために火村が取った行動は・・・
ミステリなんだけど、半世紀にわたって苦楽を共にしてきた夫婦の
"ちょっといい話" でもある。

「天空の眼」
有栖は、彼の住むマンションの隣人で
高校教師の真野沙織から相談を受ける。
卒業生の広沢星子(ほしこ)が撮ったスナップ写真に
"謎の顔" が映りこんでいたのだという。
それを「心霊写真だ」と決めつけけて広沢を怖がらせたのは、
彼女と同じゼミの支倉明徳という男子学生。
そして支倉の友人・富士野研介は
姫路郊外の廃屋の屋上から転落死していた・・・
本作では火村は有栖の回想にだけ登場し、
心霊写真と転落死をつなぐ謎を解くのはあくまで有栖。
こういう回もあるんだね。
この真野沙織さんって、時たま出てくるキャラみたいなんだが
有栖さんとは今後どうにかなるんですかね?
もっとも本シリーズは "サザエさん時空" なので
ずっと隣人のままなのかな。

「ロジカル・デスゲーム」
火村の講義に潜り込んでいたニセ学生・千舟。
彼の父が過去の未解決事件について重大な事実を知っているという。
千舟に招かれ、彼の自宅を訪れた火村だが、
それは千舟の仕掛けた罠だった。
火村は千舟から命をかけた "ゲーム" を挑まれることになるが・・・
本作は他のアンソロジーで既読。初読時は、謎解きの部分の
確率論的なところが今ひとつよく分からなかったのだけど
今回はじっくり読み込んだので前回よりは理解できたと思う(笑)。
あと、火村が仕掛けた "逆転の一手" のシーン。
マジシャン並みの "技" が必要だなあ、って印象は変わらず。

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白戸修の狼狽 [読書・ミステリ]


白戸修の狼狽 (双葉文庫)

白戸修の狼狽 (双葉文庫)

  • 作者: 大倉 崇裕
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2013/05/16
  • メディア: 文庫
評価:★★★

なぜか "中野" に行くとトラブルに巻き込まれてしまうという
不思議な "体質" をもっている主人公・白戸修。
そんな彼の出会う事件を綴ったシリーズ第二弾。

「ウォールアート」
なんとか中堅出版社への就職を果たした白戸。
模型雑誌の表紙を描いているイラストレーター・轟のところへ
届け物を言いつかるのだが、最寄りの中野駅を降りたあと
道に迷ってしまう。時は既に真夜中。
そこで白戸は、スプレーで落書きをしている謎の人物を目撃する。
そして白戸は落書き犯を見張っていた七倉という男に
犯人と思われて捕まってしまうのだった・・・

「ベストスタッフ」
就職して三ヶ月。やっと訪れた休日なのに、
大学時代の先輩・仙道に呼び出された白戸。
中野にある新日本会館で開かれる、アイドル・雛美(ひなみ)紀子の
コンサートのステージ設営に無理矢理駆り出されてしまったのだった。
そして、スタッフの間にはある噂が。
雛美紀子を狙うストーカーがコンサートの妨害を企んでいるらしい。
その噂を裏付けるように、準備中にもトラブルが起こって・・・

「タップ」
中野の駅前でポーチを拾った白戸。そこに現れた女性・諸刃冴子は
「そのポーチには盗聴電波が出ている」と告げる。
二人はそのままポーチの持ち主・柳沢由美のマンションへ向かう。
由美の部屋で二人はさらに盗聴器を発見するが・・・
ここから先は予想のつかない展開の連続なんだが、
ラストはちょっぴりほっこりする。

「ラリー」
白戸が中野駅ですれ違った男は定期入れを落とした。
拾った白戸は男を追いかけるが、なぜか相手は悲鳴を上げて逃げていく。
そこへ現れた男・宇田川は、白戸にアルバイトを持ちかける。
それは複数のグループが都内を巡る、謎の "ラリー" だった。
宇田川は現在一位。そして、他のグループが
宇田川と白戸を標的に次々と襲ってくるのだった・・・
ラリーの賞品もユニークだが、この価値が分かる人は少なそう。
そしてもちろん、宇田川の意外な "目的" に気づく白戸くんだった。

「ベストスタッフ2 オリキ」
仙道から再びアルバイトへ無理矢理駆り出されてしまった白戸。
こんどは男性アイドルグループのコンサートの警備だ。
一回目のコンサートのラスト、興奮する観客を押し止めていた仙道は
負傷して病院送りになってしまう。
コンサートの客である君川結花と知り合った白戸は、
彼女の話から仙道の負傷は何者かの陰謀であった可能性に気づく・・・
私はこの手のアイドルコンサートやロック系のコンサートに
行ったことがないんだが、イベントの裏側の描写もけっこうあって
意外な仕組みが分かったりするのも面白いところ。
今回のゲストの結花さんは最優秀助演女優賞なみの大活躍。


白戸くんは毎回毎回、四苦八苦する羽目になるのだけど、
だからといって他人を恨むことのないお人好しな性格。
そしてなぜか洞察力は鋭く、トラブルに振り回されているうちに
いつの間にかその裏に潜む事情を見抜いてしまう。
そんな主人公の穏やかな性格故か、どの物語も
収まるところに収まっていい案配の結末を迎える。

いやあ、やっぱり最後は人間性の問題になるのだね。

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