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天帝の愛でたまう孤島 [読書・ミステリ]

天帝の愛でたまう孤島 (幻冬舎文庫)

天帝の愛でたまう孤島 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/02/06
  • メディア: 文庫

評価:★★★

勁草館高校吹奏楽部員・古野まほろを主人公とした
ミステリ・シリーズ第3弾。

前作『天帝のつかわせる御矢』で、
戦果渦巻く満州帝国から脱出したものの
乗り込んだ列車内での連続殺人事件に見舞われたまほろ君。

それを解決して、命からがら日本へ帰り着いたが、
彼に安息の日々は訪れないのであった(笑)。

勁草館高校吹奏楽部と生徒会は、合同して文化祭で演劇を行うことに。
その通し稽古のための合宿地として選ばれたのは
勁草館高校が存在する愛知県姫山市の
はるか南方海上に位置する絶海の孤島・天愛島。

まほろ以下吹奏楽部員5名、生徒会役員4名、そして顧問教師1名。
総計10名が島で唯一の建物・天愛館に入ったときから
惨劇の幕が上がる。

上演予定のミステリ劇に登場する怪人・『死神仮面』が現れ、
メンバーを次々と惨殺していく。
しかもすべての犯行現場が密室だった。

孤島もののお約束(?)どおり、本土との通信手段は破壊され、
おりしも迫りくる台風による暴風雨で交通手段も途絶。
絶対的に孤立した舞台で、彼らは生き残るためにあがき続ける。
しかし、殺人鬼は彼らの中にいるのだ・・・


このシリーズは毎回とんでもなく長いのが特徴。
本書も文庫で700ページ近い厚さを誇る(?)。

なんでこんなに長いのかというと、その理由の一つは
登場人物たちの会話が多いこと。
とにかくこいつら、よく喋るんだ(笑)。

海外文学/古典からの引用あり、有名なアニメの台詞あり、
男女の痴話喧嘩あり、とぼけたギャグあり。
実際このあたりをバサッと切れば
厚さは半分くらいになるんじゃないか。

とは言っても、この膨大な台詞のやりとりがこの作品、
ひいてはこのシリーズ独特の雰囲気を形作っているのも事実。

そして何より、この雑多な言葉の羅列の中に、
さりげなく重要な手がかりや伏線が仕込まれているのだから油断できない。
まあミステリとしては当たり前なんだろうけど。
「木を隠すなら森の中」ならぬ
「言葉を隠すなら会話の中」というわけだ。

だからミステリとして読もうとするなら、
多少の面倒くささは我慢して、この長大な文章を
読み飛ばすわけにはいかないんだよねえ・・・

密室トリックに関しては、読者が見破ることはまず不可能。
実際、明かされてみると唖然としてしまう。

作者もその辺は自覚していて、
終盤近くに挟まれる "読者への挑戦" でも
トリックについては解決条件に含まれず、
「犯人は誰か」のみが問われる。

そして "解決篇" で明かされる推理では、
たった一つの手がかりから論理を展開させて、犯人の指摘へいたる。

 このあたりは、有栖川有栖の『孤島パズル』への
 オマージュなのかも知れない。

でも、これだけならこんな700ページも要らないよなあ・・・
って思っていたら、そのあとにもう一段の大仕掛けが用意してあった。


しかし、この "真相" はどうだろう。

ミステリとしてなら "あり" だとは思う。
むしろ、意外性に溢れて秀逸な "オチ" だろう。

ただ、"物語" としてはどうか。
これは人によって評価が分かれると思うが
私はあんまり好きになれないなあ・・・


このへんを深く突っ込むとネタバレになるので
もうこれ以上触れないけど、ミステリに対して、
何よりも "魅力的な謎と驚きにあふれた解決" を求める人なら、
本書は充分に満足できると思う。


ということは、私はミステリに対して何を求めてるのかなあ。
きっと "謎解きと驚き" に加えて、"物語" としての収まりの良さ、
みたいなものを欲しがってるのだろうなあ。

でもそれって、たぶんとっても欲張りなことなんだろうなあ・・・

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曲がった蝶番 [読書・ミステリ]

曲がった蝶番【新訳版】 (創元推理文庫)

曲がった蝶番【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: ジョン・ディクスン・カー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/12/20
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

創元推理文庫の改訳新装版シリーズ。
名探偵ギディオン・フェル博士が活躍する長編としては9作目。


ジョン・ファーンリーは英国貴族の次男坊だったが、
放蕩が過ぎて15歳の時にアメリカへと追い払われてしまった。

しかし25年後、兄の死に伴い爵位と領地を継ぐべく
ケント州マリンフォード村へ帰ってきた。

ジョンは幼なじみのモリーと結婚し、すべては順風満帆かと思われたが
その1年後、「我こそは本物のジョン・ファーンリーだ」
と名乗る人物が現れた。

その男、パトリック・ゴアは語る。
25年前の渡米の際に乗り込んだタイタニック号(!)で出会った二人は、
その場でお互いの身分を入れ替えたのだと言う。
かの船が沈没したその夜に・・・

15歳の頃のジョンをよく知るかつての家庭教師を呼び寄せ、
真偽を判別する決定的な証拠が明らかにされようとした時、
ジョンが不可解な死を遂げる。
複数の目撃者のもと、周囲に誰もいない状況で
喉を切り裂かれていたのだ・・・


創元推理文庫の新装版の表紙はちょっと不気味なんだが
これは "自動人形" だ。
からくり仕掛けで楽器を弾いたりチェスを指したりと
驚くべき "性能" を示したもので、
先代(ジョンの父)が大枚はたいて買い込み、
ファーンリー家の屋敷の屋根裏部屋に安置してあったもの。
中盤でこれが登場したあたりから、ぐっと事件の怪奇性が増してくる。
"真相" にも少なからず関わってくるアイテムだ。

あと、意味深なタイトルなんだけど、
これは物語が2/3ほど進行したあたりで出てくる言葉。
この「曲がった蝶番」が、どこの何を表してるのかは
最終章までお預けだ(笑)。

本作はカーお得意の "不可能犯罪もの"。
明かされる真相は実に大胆で驚くべきものなんだけど
実際、どれくらいバレないものなのかはちょっと疑問。

 発表当時はともかく、現代で同じネタを使ったら
 (いろんな意味で)けっこう物議を醸すような気もする。

それを補って余りあるのは、カーのストーリーテリングの巧みさ。
ジョンが本物か否か、自殺なのか他殺なのか、
二転三転するストーリーは読者を飽きさせない。

終盤近くになっても、「これで決まり」かと思わせておいて
さらにひっくり返して見せたりと、もう作者に翻弄されっぱなし。

そして最終章では、真犯人の独白が綴られるんだけど
雰囲気も文体も一転して、"物語" としての本書の面白さが堪能できる。


密室と不可能犯罪の巨匠と言われているけど、それだけに留まらない。
犯人の意外性も充分だし、なにより物語として面白い。
ガーはやっぱり大好きな作家だ。


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雨の日のきみに恋して [読書・ミステリ]

雨の日のきみに恋をして (双葉文庫)

雨の日のきみに恋をして (双葉文庫)

  • 作者: 松尾 由美
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2016/10/13
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

主人公の沼田渉(わたる)は30歳の独身サラリーマン。
キャリアウーマンの叔母がロサンゼルスへ赴任することになり、
その間、空室となった彼女のマンションで暮らすことになる。

引っ越しが済んでひと月ほど経った、9月の末の雨が降る夜、
渉は部屋の中で女性の声を聴く。

その声は自らを小田切千波と名乗り、
3年前にこのマンションで死んで幽霊となったのだという。


千波は語る。

このマンションの3年前の持ち主はデザイナーの守山薫。
妻のある身でありながら、多くの女性と浮名を流す男だった。

千波もまた彼に憧れる一人で、
守山がマンションを出て愛人と暮らしている間、
彼に求められるままに留守番役を引き受けていた。

そんな生活を続けて3ヶ月、
千波に "あること" が起こり、彼女は自殺を決意した。

しかし決行する直前、千波は思いとどまる。
ところが、そこに現れた何者かがその状況を利用して
千波を殺害したのだという。

彼女自身は "犯人" の顔を目撃しておらず、
"真相" が分からないゆえに自らの死を納得できないまま、
現世に留まっているらしい。

千波は、渉に自分の死の真相を探ってくれるように頼むのだが・・・


渉は "幽霊" の証言をもとに、真相を探り始める。
当時の千波の上司・望月や同僚だった女性・武井、
マンションの管理人だった渡辺、
"事件" の捜査をした刑事・曽我部、
守山の助手だった倉岡・・・

渉は千波と関わった多くの人と会い、話を聞いて
真相解明に努めるものの、一向に犯人の目星はつかない。
しかしその代わりに、守山とその妻の間の
"ある事情" が明らかになってくる・・・


ミステリとしてはけっこう良くできているとは思う。
少ない "容疑者" の中で、最終的に明らかになる "犯人" には
それなりの意外性もある。

それ以外にも、手紙に秘めた "暗号" とか、
"被害者フェチ"(笑)なオタク刑事とか、
面白く読ませる要素も盛り込んである。


でも、上に書いたように本書の評価はあまり高くない。
その理由をいくつか挙げてみる。、

まず、"ヒロイン" である千波さんが今ひとつ好きになれない。
幼い時に両親が亡くなり、親戚の家に身を寄せて苦労したりとか
同情すべき点は多々あるにしろ、
ろくでもない男にばかり引っかかっている。
"事件" のことも自業自得と言ってしまっては可哀想だが
多分に彼女の "脇の甘さ" が招いたことじゃないかなぁ。
そのあたりが、彼女に対して素直に感情移入しにくいところ。

 まあ、頭の固いオジサンの言うことですから。
 若い人や女性からしたら、また違って見えるのかも知れないけど。

あと、「事実」が明らかになって行くにつれて
千波の姿が少しずつ見えてくる(それも足から上に向かってとか)
って展開は、やや品がないと思うんだがどうだろう。

見えてくるのは良いとして、
下半身しか(もちろん服を着てるが)見えない女性の身体を前にして
心穏やかでない渉くんというのもねえ・・・
面白がる人もいると思うけど、私は好きになれないなあ・・・

裏表紙の惹句には「奇跡の恋を描いたラブストーリー」ってあるけど
そもそもこの二人の関係は "恋" なのか?
読んでいてそのあたりもちょっと疑問。

 まあそれを言ったら、人間と幽霊が
 恋仲になれるのかという話になってしまうし、
 たぶん "恋" の定義も人それぞれなんだろうけど。

「ラブストーリー」と銘打つ以上は、主役カップルに対して
読者がどれだけ感情移入できるかが評価を左右すると思うんだけど
本作についてはそこが今ひとつ弱い気がしてる。


というわけで、ミステリとしては星3つ、
ラブストーリーとしては星2つ。
総合して星2つ半、ってことで。


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Symphony 漆黒の交響曲 ミステリー傑作選 [読書・ミステリ]

Symphony 漆黒の交響曲 ミステリー傑作選 (講談社文庫)

Symphony 漆黒の交響曲 ミステリー傑作選 (講談社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/04/15
  • メディア: 文庫



評価:★★★

1年間に発表された短編ミステリから選ばれた作品を
2分冊で刊行しているシリーズ。

本書は2012年に発表された作品から選ばれた12篇のうち、
6篇を収録している。残りの6篇を収録した
「Esprit 機知と企みの競演」も手元にあるので近々読む予定。


「暗い越流」若竹七海
 自ら運転する自動車を暴走させて5人を死亡させ、
 23人を重軽傷に至らしめた凶悪殺人犯・磯崎。
 死刑が確定した獄中の彼に対して、
 『山本優子』と名乗る人物がファンレターを送ってきた。
 出版社で嘱託として働く "私" は、
 送り主の素性調査を請け負うことになる。
 単なる "死刑囚グルーピー" を捜すだけかと思われたが
 そこから意外な展開に巻き込まれ、意表を突くラストが待っている。
 この発端からこの結末は想像できないだろう。
 第66回日本推理作家協会賞短編部門受賞なのも頷ける。

「本と謎の日々」有栖川有栖
 <華谷堂書店>で働く女子大生アルバイト・詩織。
 彼女の周囲で起こる、本を巡る不思議な出来事の数々。
 それを鮮やかに解き明かすのは店長・浅井だった。
 有栖川有栖が書く "日常の謎" ミステリとは珍しいが
 分かってみれば「あるある」なことばかりで、すとんと腑に落ちる。

「ゆるやかな自殺」貴志祐介
 暴力団組員・野々垣は、目の上のこぶだった若頭・岡崎を
 自殺を装って殺害する。しかし、野々垣の手下である
 チンピラ・三夫が真相に気づいたらしい・・・
 厳重な密室の中にいた被害者をどうやって殺したのか。
 防犯コンサルタント・榎本が探偵役を務めるシリーズの一編。
 トリックだけ見たら、立派なバカミスなんだよなぁ・・・

「悲しみの子」七河迦南
 国際結婚した夫婦・宏とアンナは離婚することになった。
 別れに際して引き取られていく子どもを巡る物語なのだが
 ラストに至ると意外な事実が明らかになる。
 人が死ぬミステリではないのだけど、
 幼い子どもが苦しむ話は読んでいて胸が痛むなあ・・・

「青葉の盤」宮内悠介
 碁盤師(碁盤を作る職人)・吉井利仙(りせん)は、
 碁盤用の榧(かや)の木を求めて山口の山中に分け入るが、
 そこで出会ったのは伝説の碁盤師・黒澤昭雄の一人娘、逸美。
 父の後を継いで碁盤を作り続ける逸美が語る、父の事故死の様子。
 利仙はそこに秘められた真実を探り出す・・・
 SF畑の人かと思ったけどミステリも達者。
 連城三紀彦の「花葬シリーズ」っぽい雰囲気もちょっぴり。
 囲碁のルールはさっぱり分からないけど、
 碁盤を巡る蘊蓄もとても興味深く読めた。

「心を掬う」柚月裕子
 投函した郵便物が届かない、という申し出が相次ぎ、
 米崎地検の検察官・佐方は調査に乗り出す。
 やがて、中央郵便局の職員・田所が局内で
 封書から現金を抜き取っている疑いが浮上する。
 決定的な証拠をつかむため、佐方はある行動に出るが・・・
 捜査のためとはいえ「そこまでやる」とは天晴れ。
 知らぬ存ぜぬとシラを切りまくっていた田所が、
 佐方のかけた罠にはまって "落ちる" シーンは痛快だ。


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バチカン奇跡調査官 血と薔薇と十字架 [読書・ミステリ]

バチカン奇跡調査官  血と薔薇と十字架 (角川ホラー文庫)

バチカン奇跡調査官  血と薔薇と十字架 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 藤木 稟
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/10/25
  • メディア: 文庫



評価:★★★

カソリックの総本山、バチカン市国。
世界中から寄せられてくる "奇跡" に対して
その真偽を判別する調査機関『聖徒の座』。

そこに所属する「奇跡調査官」である
天才科学者の平賀と、その相棒で
古文書の読解と暗号解読の達人・ロベルト。
この神父二人の活躍を描くシリーズの第5作。


イギリスでの "奇跡" 調査の帰路、二人を乗せた車が
ホールデングスという田舎町にさしかかったところで
行く手に謎の青白い火の玉が現れる。

車は横転し、ロベルトは負傷した平賀を抱えて脱出、
助けを求めて近くの教会へ駆け込む。

そこで彼が見たものは、柩に納められた女性の屍体が
今まさに死から甦ろうとしている瞬間だった。
彼女は一週間前、自室で首筋から血を吸われて死んでいたのを
家族に発見されていたのだ。

この事件を皮切りに、"吸血鬼" の実在が
伝説として語り継がれてきた田舎町で、
次々に "吸血鬼" の被害者が現れる。

常人を遙かに超えた身体能力を示し、
狼や蝙蝠に変身しての神出鬼没の跳梁ぶりを見せつける。

土砂崩れによって外部と隔絶されてしまった町で、
地元の名士にして、代々この町の町長を務めてきた
ルーク家に滞在することになった二人は、
先客であるルーマニアの吸血鬼研究家・タリチャアヌ教授とともに
町を覆う吸血鬼の脅威に立ち向かうことになる・・・


私は「ホラーは苦手」と常々このブログで公言してるんだけど
「角川ホラー文庫」から出ているこのシリーズを読んでいるのは
一見して "奇跡" に思われるような "奇っ怪なこと" が
平賀とロベルトによって科学的・合理的に解き明かされていくのが
とても興味深くて面白いと感じられるから。

 いわば現代版「怪奇大作戦」みたいなものだと思ってる。
 (いつもながら例えが古いねぇ。若い人はきっと知らないよ・・・)

そして今回のテーマは "吸血鬼"。
たぶんホラーの世界では横綱級のキャラクターが
本作では堂々の主役を張る。

 舞台となるホールデングスの町には、
 『吸血鬼ドラキュラ』の作者ブラム・ストーカーも
 かつて訪れたことがある、って設定まで用意されていて
 "創業家"(笑)へのリスペクトも怠りない。

出てくる怪奇現象も枚挙にいとまがない。
屍者の甦りを始めとして、平賀とロベルトの前に展開するのは
およそ常人には不可能な事象の数々。

これらの "奇跡" の数々に合理的な説明を与えるのは
無理じゃないかなあ・・・って読んでる時は正直思ったけど
ラストまで来てみると、意外なまでに解き明かされていてびっくり。

「いくらなんでもこれは無理だろう」と思われる現象にまで
きっちりと説明が割かれているのは流石だ。

もっとも、かなりのこじつけや強引さを感じる部分も
ないわけではないが、総じてみれば良くできていると思う。

最終ページまで読み終えた時、99%までは解き明かされても
残り1%に、人知の及ばぬ "超常の領域" を残すあたりも上手だ。


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絶海ジェイル Kの悲劇’94 [読書・ミステリ]

絶海ジェイル Kの悲劇’94 (光文社文庫)

絶海ジェイル Kの悲劇’94 (光文社文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2014/01/09
  • メディア: 文庫



評価:★★★

「群衆リドル」につづく、
東京帝国大学生・八重洲家康と渡辺夕佳が活躍するシリーズ第2作。

めでたく帝国大学に合格、家康の後輩になれた夕佳。
しかし未だに家康との距離は縮まらない。

そんなとき、家康のもとへある報せがもたらされる。
天才的ピアニストでありながら、太平洋戦争中に赤化華族として収監、
獄死したと伝えられてきた祖父・清康が生きているという。

祖父に会うために三浦半島のはるか南方海上に浮かぶ
古尊島(ふりそんとう)へ渡る家康と夕佳。

そこは軍事機密として地図から抹消され、
厳重な監視構造をもつ監獄の廃墟だけが残る島だった。

 ちなみにタイトルにある "ジェイル" とは「刑務所」(jail)のこと。
 てことは、古尊とは prison のもじりか。

ところが二人は、そこで待っていた "ある集団" に捕らえられ、
意外な事実を聞かされることになる。

大戦末期の1944年、清康はこの絶海の孤島にある監獄から
囚人仲間と共に脱出し、姿を消した。
仲間たちは終戦後、罪状が消滅して日本社会に復帰したが
清康のみが行方不明のままだという。

"ある集団" によって、祖父たちと同ように監獄に放り込まれた家康は
50年前の脱獄計画の再現を強要される。
"ある集団" もまた、脱獄方法を知りたがっていたのだ。

家康と同じように捕らえられてきた "囚人仲間" は4人。
一週間ごとに一人ずつ命を奪い、
最後には家康自身を殺すと脅迫される。

タイムリミットが迫る中、生き延びるためには、
祖父が行った "脱獄" を再現しなければならないが・・・


本書のミステリとしての眼目は、
「50年前に清康が行った脱獄の方法とは?」

前作と同じく、「読者への挑戦状」が挿入される。
「清康がとった脱獄方法を特定するに足る事実の提示を終えた」との
宣言のもと、解決篇へ突入するのだが・・・

いやあ、前作でも密室トリックのところで「えーっ」って思ったが
今回はその3倍くらい声を上げてしまいそう(上げなかったけどwww)。

 これ、論理的に考えて当たる人がいるとはとうてい思えないし
 もっと言えば、当てずっぽうでさえ的中させる人がいるんだろうか。

説明が進むうちに、さまざまな可能性が次々に排除され、
最後には細い糸1本ほどの方法しか残らないのはいいとしよう。

しかしその残った1本の糸を切らないように伝っていくには
超人的な能力と信じがたいほどの幸運と、
たったひとつの失敗も許されない完璧さが前提になるのではないか。

例えば、脱獄するには A→B→C→D→E と
5段階のステップが必要だとしよう。

それぞれの成功率が50%としても、
5つの段階を踏むと成功率は3%そこそこにまで低下する。

ましてや解決篇で語られる方法の各ステップの成功率は
それぞれ10%もなさそうなものばかり。
(私の感覚では全く不可能に思えるものも含まれてるけどね)
5つの段階を経たら成功率は0.001%、10万回に1回の成功だ。

 ちなみに、解決篇で示される脱獄方法のステップは
 5段階どころではなく、とんでもなく複雑だ。

読んでいて驚いたけれど、作者は臆面もなく堂々と開陳を続けるので
腹を立てることも忘れてしまったよ(笑)。

実現性とかリアリティなんてものは欠片もなさそうに見えるのだけど
ここまで徹底していれば立派なものなのかも知れない。
実際、読んでいて呆れたけど、"面白い" のも確か。

ミステリとして読むんじゃなくて、壮大なホラ話を聴くつもりで。
細かいところは気にしないで、おおらかな心で(笑)で臨むこと。
それが本書の正しい読み方だろう。

間違っても、脱獄方法を
真面目に推理しようとしてはいけない(おいおい)。


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黒死荘の殺人 [読書・ミステリ]

黒死荘の殺人 (創元推理文庫)

黒死荘の殺人 (創元推理文庫)

  • 作者: カーター・ディクスン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/07/27
  • メディア: 文庫



評価:★★★

創元推理文庫の改訳新装版シリーズ。

1977年にはハヤカワ・ミステリ文庫で
「プレーグ・コートの殺人」というタイトルで出版された作品だ。

1977年といえば何せ40年近い昔。読んだかどうか記憶が定かでない。
実際、今回読んでみても全く記憶が甦ってこないので、
ひょっとしたら未読なのかも知れない。

邦訳されたディクスン・カー(カーター・ディクスン)の作品は
たいてい読んでるはずなんだが
77~86年頃の私は専らSFにはまってたので、
読み逃していた可能性も充分にある。

本書はカーター・ディクスン名義の第2作にして、
探偵役のH・Mことヘンリ・メリヴェール卿が登場する第1作。


17世紀にタイバーン刑場で絞刑吏だったルイス・プレージは、
当時大流行していたペストに冒され。それが原因で死に追いやられた。
恨みを残して死んだ彼の亡骸が埋められた屋敷は
「黒死荘」と呼ばれるようになった。

時は流れて20世紀、屋敷を手に入れた実業家ジェームズ・ハリディが
謎の拳銃自殺を遂げ、その弟ディーンが
黒死荘の現当主となったところから物語は始まる。

 横溝正史の「八つ墓村」みたいな発端だ。

ロンドン博物館から短剣が一本盗まれる。それはかつて
ルイス・プレージが所有していた特殊な形状のものだった。

折しも黒死荘では、胡散臭い心霊学者ダーワースによる
降霊会が開かれようとしていた。
ディーンは友人のケン・ブレークと
ロンドン警視庁のマスターズ警部に立ち会いを求める。

しかし降霊会のさなか、
当のダーワースが血まみれの死体で発見される。

現場は堅固な石室。窓には鉄格子、
分厚い木製のドアには内側から堅牢な閂(かんぬき)。
石室の周囲に足跡はなく、死体の傍らに転がる凶器は、
博物館から盗まれたルイス・プレージの短剣だった・・・

難航する捜査に、ケン・ブレークはかつての上司である
陸軍省情報部長ヘンリ・メリヴェールの助力を求めるが・・・


これぞ密室、といわんばかりのシチュエーション。

いわゆる "古典的名作" というもので、
終盤に明らかになる密室トリックはかなり "有名" なもの。
しばしば密室を扱った作品で言及されることもあるくらい
よく知られたものなのだけど、"初出" はこの作品だったんだね。

我々にはポピュラーでも、80年前の発表当時では
とても斬新で、強烈な印象を読者に与えただろうな、とは想像がつく。

 ちなみに横溝正史がこの作品にインスパイアされて
 「本陣殺人事件」を書いた、ってのは有名な話らしい。


しかし、密室だけで終わらないのが巨匠の巨匠たる所以。
真犯人は実に意外で「やられた!」感があるんだけど、
振り返ってみればたしかに伏線はきちんと張ってある。

さらに本作では、真犯人の正体に
もうひとひねり加えてあるという二段構えの構成。

ただ、そこまでいくとちょっとやり過ぎな感も。
当時ならともかく、現代の視点で考えると
いささか無理が過ぎるようにも思うし。

作品全体に対しても、本格ミステリの "お約束" を
ちょっと逸脱していると感じる人もいるんじゃないかなぁ。

本書の評価が今ひとつ高くないのもそのあたりが理由。


いずれにしても、いかにも本格ミステリらしい
"幽霊屋敷" を舞台にした作品で、
この手の "雰囲気" が好きな人にはたまらないと思う。
私も大好きだ。

密室ものが好きなら一度は読んでおくべき作品だろう。


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九月の恋と出会うまで [読書・ミステリ]

九月の恋と出会うまで (双葉文庫)

九月の恋と出会うまで (双葉文庫)

  • 作者: 松尾 由美
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2016/02/10
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

旅行代理店で働くOL・北村志穂は
2階建てで4部屋しかない小さなマンションへ引っ越した。

1階にはオーケストラ奏者の男性と女医さん、
2階には志穂、そしてさえないサラリーマン・平野。

ある夜、志穂はマンションの壁にあるエアコン用の穴から
男性の声が聞こえてくることに気づく。
穴はあってもエアコンは設置していないので、
外のベランダには何もないし当然ながら誰の姿もない。

"声" は "マンションの隣人の平野" であると名乗るが
現在の平野ではなく "1年後の世界を生きている平野" だという。

"平野" は今後1週間の新聞朝刊の見出しを挙げるが
それがことごとく的中し、志穂は "平野" が
未来の世界から語りかけてきたことを信じるようになる。

出だしはこのようにSF的なシチュエーションから始まる。
裏表紙の惹句には「時空を越えた奇跡のラブストーリー」とある。
昨今、時間を絡めたラブストーリーは流行っているみたいだが
本書は2007年に書かれたもの。

"1年後の平野" は志穂にある頼み事をする。
それは毎週水曜日(志穂の定休日)に、"現在の平野" の後を追い、
その1日の行動を記録すること。
そして "現在の平野" とはなるべく接触しないこと。

とりあえず引きうけた志穂だが、
外回りの営業職をしている平野の行動は平凡そのもの。
しかしときおり見せる不審な行動が気になるが・・・

志穂は "1年後の平野" に、尾行の目的を問うが
彼は言を左右にして理由を明かしてはくれない。

混乱を避けるために、1年後の平野を "シラノ" と
呼称することを決めた志穂だが
"シラノ" との会話を重ねるうちに、
次第に彼に惹かれるものを感じていく。

ここまで読んでくると、志穂とシラノとのラブ・ストーリーなんだな、
と思われるかもしれないが、なかなかそう単純ではないのだ。

平野の尾行を始めて三回目の水曜日。
志穂はその日に限って途中で彼を見失ってしまい、
がっかりしてマンションの自室へ帰るのだが・・・

ここから物語は様相を変え、意外な方向へ転がり出していく。


シラノが命じた尾行の理由とは?
尾行されてる最中の平野がときおり見せる謎の行動とは?

さらに、あることがきっかけで志穂は根本的な疑問を持つ。
シラノは本当に "1年後の平野" なのか? と。

そして、志穂の恋の行方は?

設定こそSFだし、ファンタジー要素もある。
後半に入ると、物語の着地点がなかなか見えずに
やきもきすることになるが、
ラストでは様々な謎が綺麗に解かれて納得の結末を迎える。

梶尾真治やロバート・F・ヤングを持ち出すまでもなく
時間ものとラブストーリーは相性が良い。
本書はそれにミステリ要素を加えて、最後まで読者を楽しませてくれる。


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群衆リドル Yの悲劇'93 [読書・ミステリ]

群衆リドル Yの悲劇’93 (光文社文庫)

群衆リドル Yの悲劇’93 (光文社文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/08/07
  • メディア: 文庫



評価:★★★

本書の語り手は、東京帝国大学を目指して浪人中の渡辺夕佳(ゆか)。

帝国大学といっても戦前の話ではない。
本書の舞台はパラレルワールドの日本。
太平洋戦争は負けたみたいだが日本は未だに「帝国」で、
陸海軍も健在。ついでに「満州国」まで生き残っている。

作者はいくつものシリーズを持っているが、基本的には
みなこの同一世界を舞台にしているらしい。
夕佳も、『天帝』シリーズでの主役・古野まほろの後輩として
勁草館高校吹奏楽部のメンバーに名を連ねている。


センター試験も近づいた年の暮れ、彼女のもとへ招待状が届く。
「外務省大臣官房儀典長」名義で、「新・迎賓館」へ招くという。
何かの間違いかと思った夕佳だが、招待状は本物。

しかし不安を覚える夕佳は、かねてから憧れていた
高校時代の先輩・八重洲家康(やえす・いえやす)に同行を求める。
孤高の天才ピアニストにして帝国大学2年生の彼は、
巻末の "古野ワールド相関図"(笑)によると、古野まほろとは親友らしい。
この家康くんが、本シリーズの探偵役である。

そんな二人が訪れたのは、長野と群馬の県境に近い山中に建つ
壮麗な西洋館、「夢路邸」だった。
二人を迎えたのは、7人の先客。
大学教授、助教授、金融機関の支店長、私立探偵、女子高生、
新聞社の論説委員、大臣官房儀典長。
しかも全員、招待主の異なる手紙を受け取っていた。

「何者かが意図的に呼び出した」8人+家康くん。
これが西洋館に集まったすべて。

そこに突然、鬼面の女が現れ、
彼ら彼女らが過去に犯した罪を告発する。
その直後、鬼女は死亡してしまうが
ここから次々と客たちに死が訪れる。

折しも降り出した豪雪に閉ざされた屋敷内で、
マザーグースの童謡『ロンドン橋』に見立てた
凄惨な殺人劇が繰り広げられていく。
銃殺、爆殺、刺殺、斬殺・・・

当然ながら犯行が進むごとに生存者は減っていく。
残った者の中に犯人はいるのか、それとも・・・


そして屋敷のサロンには、招待客を模した市松人形が
8体用意してあったが、客が一人死ぬたびに、一体ずつ減っていく。
まさに『そして誰もいなくなった』の再現。

集められたメンバーに共通する理由(ミッシングリンク)はあるのか?
殺人現場も密室あり不可能犯罪ありと
本格ミステリのガジェットがてんこ盛り。
「読者への挑戦状」まで挿入されてる(それも2カ所に)
という念の入りよう。


そして、作者による「真相に至る手がかりはすべて開示された」
との宣言のもと、解決編に突入するわけだが、
読み終わってみてどうにもすっきりしない思いが残る。

確かに犯人指摘のための手がかりはかなり初期の段階から
結構あからさまに仕込まれているのはたいしたもの。
(私も読んでいて「あれ?」と思ったところがあった。
 そこをもっと突き詰めていけば少なくとも犯人には気づけただろう)

問題は犯行手段だね。
密室トリックや不可能殺人の謎も当然ながら解明されるのだけど
これ、自力でわかった人っているのかな?
もしわかったとしたら、よほどのひねくれ者か
病的なまでのミステリマニアだと思うよ・・・

とにかく意外すぎる。
「その発想はなかった」とか「予想の斜め上」とかのレベルではない。
種明かしされてみても、「そうだったのか!」より
「えーっ、そんなのありぃ?」って
叫んでしまいそう(叫ばなかったけどwww)。
まあ、古典的作品の中に前例があると言えばあるのだけど。

 これ、人によっては怒り出す人が居るんじゃないかなあ・・・

まだミッシングリンクの解明の方が理解しやすいかな。
そしてこれが犯人の動機にも繋がるんだけど
これも被害者の側からすれば "理不尽" としか言い様がない。

難易度から言えば
  犯人 < ミッシングリンク(動機) < 犯行方法(トリック)
の順に難しくなる。


この人の作品を読むのはこれで3作目だけど、
いつも思うのは作者のアタマの切れ味が半端ないことと
それについていけない自分のアタマの鈍さ。

本書は、キャラ立ちばっちりの夕佳&家康の "痴話喧嘩" を
ライトノベル的に楽しみつつ、
迫るシリアルキラーから逃れられるかどうか
ハラハラしながら読むのが正しいのだろう。

間違っても密室トリックを見破ろうなんて思ってはいけない(笑)。


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帽子収集狂事件 [読書・ミステリ]

帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)

帽子収集狂事件【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: ジョン・ディクスン・カー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2011/03/24
  • メディア: 文庫



評価:★★★

霧深いロンドンの町で続発する帽子盗難事件。
人々はこの怪盗を《いかれ帽子屋》と呼んでいた。

ポオの未発表原稿を盗まれた古書収集家、
サー・ウィリアム・ビットンもまた
《いかれ帽子屋》にシルクハットを盗まれた被害者だった。

ウィリアムがポオの原稿盗難について
名探偵フェル博士に相談を持ち込んでいたとき、
ウィリアムの甥でフリーランス記者のフィリップが
ロンドン塔の逆賊門で他殺体となって発見される。
その死体には、ウィリアムのもとから盗まれた
シルクハットが被せられていた・・・


本作で登場するのは、パリの予審判事バンコランに代わって
名探偵ギデオン・フェル博士。

悪魔的に性格が悪そうな(笑)バンコランと違い、
ずんぐりした巨漢で赤ら顔に山賊髭、
体型通りにビールが大好きなキャラクターはとても親しみやすい。
本書はフェル博士が活躍する長編第2作である。

ストーリーが進むにつれて、被害者の女性関係をはじめ
さまざまな秘密が明らかにされていくなど、
中盤をダレさせずに読者の興味をつないでいく。
そしてその展開の中に伏線をうま~く紛れ込ませてる。
このあたりはさすがに匠の技。

裏表紙の惹句には「驚天動地の大トリック」って書いてあるが
これはちょっと大げさかなぁ。
発表当時はともかく、本格ミステリが大量に発表されている
現代日本の目で見ると、さほど驚くほどでもない気がする。
(でも、見破れないんだよね・・・www)
しかし、これを補完・補強する小技がいくつか組み合わされていて
合わせ技で「一本! お見事!」って感じかな。

本作も密室や不可能犯罪ではない。
死体が発見された場所は開放空間なんだけど
(冒頭に現場付近の見取り図が載ってる)
深~いロンドンの霧がすべてを覆い隠してしまっていて
何がどう起こったのかは誰もわからない。
いかにも "本格ミステリ" な雰囲気あふれる作品だ。


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