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眼球堂の殺人 ~The Book~ [読書・ミステリ]


眼球堂の殺人 ~The Book~ (講談社文庫)

眼球堂の殺人 ~The Book~ (講談社文庫)

  • 作者: 周木 律
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/09/15
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

第47回メフィスト賞受賞作。

放浪の数学者・十和田只人(とわだ・ただひこ)が招かれたのは
建築学者・驫木煬(とどろき・よう)が莫大な私財を投じて築いた
巨大建造物・"眼球堂" 。

只人は、駆け出しのルポライター・陸奥藍子(むつ・あいこ)と共に
人里離れた山中に建つ異形の"館"へと向かう。

彼らと共に招かれたのは
精神医学者・深浦征二、芸術家・三沢雪、
編集者の造道(つくりみち)静香、物理学者の南部耕一郎、
そして政治家の黒石克彦。

各界を代表するような人々を集め、驫木は言い放つ、
「建築学は、あらゆる学問に対して優位にある」のだと。
それを証明するためにこの"眼球堂"を建設したのだと。

しかし翌日の朝、驫木の死体が発見される。
高さ10mに及ぶ尖塔の先端に串刺しとなって。

1カ所しかない建物の出入り口はロックされ、何人も出入りは不可能。
密閉空間に閉じ込められた彼らをさらなる惨劇が襲っていく・・・


ある意味典型的なクルーズド・サークルもので
死者が出るたびに容疑者が減っていく・・・というパターン。
しかし、メフィスト賞を受けただけあって、
定番の展開に新たな切り口を見せてくれる。
メイントリックだけを見れば、某有名作品に前例があるのだけど
それが実現できるのもこの "眼球堂" だからこそ。

館ものミステリのお約束として "眼球堂" の見取り図が挿入される。
でも、この手の図面がトリックの解明や
犯人指摘の手がかりとかにつながることは滅多にない(笑)。
しかし、ラストの謎解きの場面では
この図面は大きな意味を示すようになるんだが・・・
普通の人は気がつかないよねえ(笑)。
まあこれでバレるようならメフィスト賞は貰えないだろうし。

只人はエキセントリックな言動で藍子を振り回すのだが、
探偵役としてはある意味定番の設定。

 ちなみにタイトルにある「The Book」というのは
 只人が生涯をかけて捜している書物の名。
 それはこの世に無数に存在する定理のすべてが載っているという書。
 定理の数は無限なので、ページ数も無限という
 いささか常軌を逸した "目標" なのだが
 本人は真面目に取り組んでいるようである。

当然ながら、最後は彼の推理によって
犯人もトリックも暴かれるんだけど・・・
最後の最後にもう一段のうっちゃりが待っている。

うーん、私はこのオチはあまり好きじゃないなあ・・・
確かに、伏線もしっかり張ってあったんだけどねぇ・・・

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星読島に星は流れた [読書・ミステリ]


星読島に星は流れた (創元推理文庫)

星読島に星は流れた (創元推理文庫)

  • 作者: 久住 四季
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/08/31
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

天文学者サラ・ローウェル博士は、
彼女が所有するボストン沖に浮かぶ孤島、
《星読島》(ほしよみじま・スターゲイザーズアイランド)で
毎年、天体観測会を開いていた。

この島にはなぜか数年に1回という超高頻度で隕石が落ちてくるという。
そしてその隕石は観測会の参加者の一人にプレゼントされるのだ。
そのため毎年、参加希望者が殺到していた。

観測会に応募していた医師・加藤盤(ばん)は、
高倍率を突破して島に招待されることになる。

参加者は彼を含めて7名。
サラ博士の教え子でNASA職員のエリス・バーナード、
日系アメリカ人で情報工学博士号を持つ天才少女、
美宙(みそら)・シュタイナー、
隕石回収業者のコール・マッカーシー、
ニートのデイヴィッド・グロウ、
スミソニアン博物館職員のアレク・クレイトン博士、
陰鬱な雰囲気を漂わせる女性、サレナ・カーペンタリア。

もし隕石が見つかったら、誰に贈られるかはサラ博士の胸三寸。
隕石の大きさによってはひと財産になるため、参加者の間には緊張が走る。
そんな中で迎えた滞在3日目の朝、参加者の一人が死体で発見される・・・


孤島という非日常の世界を舞台にしたクローズド・サークルもの。
大向こうを唸らせるような派手な作品ではないけれど
きっちりつくられた本格ミステリ、という雰囲気。

孤島という変化の少ない舞台なのだけど
視点人物となる加藤のもつ悲劇的な過去をはじめ、
登場するキャラそれぞれが抱えた複雑な事情が
物語の進行とともに明かされていき、単調になりがちな展開を救って
終盤へ向けての興味をつないでいく。

エピローグでは、事件解決後に生き残った人々が
再び日常の世界へ戻ったあとの生活が語られる。
ここのエピソードでちょっぴりほっとさせてくれるので、
読後感は悪くない。

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神様の裏の顔 [読書・ミステリ]


神様の裏の顔 (角川文庫)

神様の裏の顔 (角川文庫)

  • 作者: 藤崎 翔
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/08/25
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

第34回横溝正史ミステリ大賞受賞作。

生涯にわたり、中学校の教師として理想の教育を追い求めた藤井誠造。
定年退職後も恵まれない子供たちを支援するNPOに参加し、
さらには自分の家の広い庭に退職金を元手にアパートを建設、
赤字すれすれの安い家賃で提供するなど
周囲の誰からも尊敬され、感謝される人であった。

「神様のような人」
そんなふうにまで評された誠造が逝去し、しめやかに通夜が行われる。

彼の人生に関わった様々な人々が参列し、「神様」との思い出を振り返る。
教え子の斎木直光、元同僚の根岸義法(よしのり)、
誠造の隣家の主婦・香村広子、
教え子でかつ誠造のアパートの店子である鮎川茉希(まき)。
同じく店子である売れないお笑い芸人・寺島悠。
喪主は誠造の娘で小学校教師の晴美、そしてその妹・友美。

誠造の遺影を見ながら思い出される "記憶"。
しかしその中には不審な事件が続発していた。
斎木の同級生の投身自殺、根岸の息子の交通事故、
広子の夫が命を落とした事故は通り魔殺人が疑われ、
茉希の部屋では盗聴器が見つかり、
そして晴美の教え子が受けた暴行事件・・・

弔問客同士で誠造の思い出を語り合ううちに、
不審な事件は "ある疑惑" へと変貌していく。
すなわち、「神様」と慕われた誠造は、
実は「悪魔」のような凶悪犯罪者だったのではないか?

"探偵役" となるのはお笑い芸人の寺島。
この中ではいちばん誠造との関わりが薄いのだが
そのぶん第三者的な立場から "事件" を見ることができ、
新たな解釈を示していく。

さて、誠造が本当に「神様」だったのか「悪魔」だったのかは
読んでのお楽しみ。
これ以上書くとネタバレになりそうなんだが、
物語は一筋縄ではいかず、二転三転していくことは書いておこう。


この人、すごい才能があると思う。
この作品は普通の小説と異なり、登場人物それぞれの一人称での述懐が
断片的に羅列されていくかたちで進行していくのだけど、
その中で "聖人君子" が "疑惑の人" へと変貌していく過程、
そしてその疑惑が "解明" されていく過程、
さらにラストの "驚き" までが不自然さのない流れで示されていく。
この構成力はホントたいしたもの。

デビュー作でこれだけのものを書ききってしまうんだから只者ではない。
作者は元お笑い芸人(ネタ担当)で、
しかもコントネタを得意としていたそうなので
それが生かされているのかも知れない。
あちこちにくすりと笑わせる描写が挟まれるのも "芸風" か(笑)。

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忘れ物が届きます [読書・ミステリ]


忘れ物が届きます (光文社文庫)

忘れ物が届きます (光文社文庫)

  • 作者: 大崎 梢
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/08/09
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

"記憶" をテーマにした短編集。とはいっても
各編それぞれ独立していて共通な登場人物とかは存在しない。

タイトルにある「忘れ物」とは、過去の記憶を掘り起こし、
そこに新たな解釈が施されたときに明らかになる
"真実" のことを指しているのだろう。

「沙羅の実」
主人公の小日向弘司(こひなた・ひろし)は不動産会社の営業マン。
顧客宅を訪問したところ、そこの主である森は元小学校の教員で
小学生時代の弘司のことを覚えているという。
昔話を語り合ううちに、話題は20年前の事件のことに移っていく。
当時6年生だった弘司は、謎の手紙におびき出されて行方不明になり、
翌日の朝に河川敷の物置小屋で見つかったのだ。
そしてこの拉致事件があった夜、弘司の同級生・佐々木の父親が
不審な事故死を遂げていたのだ・・・
森が語る事件の "真相" で決着がつくかと思いきや、
さらにそのあとにもうひと捻り。

「君の歌」
高校の卒業式を終えた芳樹は、下校の途中で同級生の高崎に出会う。
高崎は芳樹に対して、なぜか3年前に彼の母校である中学校で起こった
ある "事件" について語り出す。
当時3年生だった女生徒が友人のメモで美術準備室に呼び出され、
そこで何者かに襲われて怪我をしたのだ。
犯人として疑われたのは3人組の不良生徒たち。
彼らは犯行を否定するが、3人組以外に
現場に出入りできる者はいなかったのだ。
密室状態からの犯人消失の謎を "解き明かす" 芳樹なのだが、
そもそも高崎は、なぜ出身中学校の異なる芳樹に対して
この事件の話をしたのか?
最後に明かされる意外な事実もそこに絡んでくる。

「雪の糸」
喫茶店の語り合うカップル、祥吾と晴香(はるか)は、
1年半にわたる同棲生活を解消して別れることを決めたところ。
二人は半年前の春の思い出話をしていたが
やがて祥吾は花見の夜、職場の先輩・谷本からの
不可解な頼み事を思い出す・・・
二人の会話を聞いていた店員・比呂美がその謎を解き明かす。
谷本の抱えた意外な事情に驚くと同時にちょっと同情。

「おとなりの」
住宅街・桂ヶ丘に暮らす小島邦夫。
近所の床屋の主人・立川と話をしているうちに
話題は10年前の事件になった。
同じ住宅街で侵入強盗があり、その家では人が一人亡くなっていた。
そして立川は、事件のあった日の昼、
邦夫の長男・准一(当時は高校生)の姿を見かけたのだという。
現場にはレンタルショップの会員証が落ちていて、
それが準一のものだったことから、警察から容疑者扱いされたが、
邦夫の隣家の奥さんがアリバイを証言してくれて事なきを得ていた。
准一は実は犯人だったのか?
もしそうなら隣家の奥さんはなぜ偽証したのか?
高校生にもなれば、男の子は親父と話なんかしないよねぇ、
とか自分のことを思い出しながら読んだよ。

「野バラの庭へ」
ヒロイン・中根香留(かおる)は企画会社の新米社員。
彼女は資産家の未亡人・外山志保子に逢うことになる。
73歳の志保子は個人的な回想録の作成を希望していたのだ。
鎌倉の外山邸へ通う香留は、志保子の記憶を書き留め続ける。
60年前の昭和30年、志保子は不思議な人間消失事件に遭遇していた。
当時23歳だった志保子の兄・宗太郎は、
21歳の女子大生・神坂統子(こうさか・とうこ)に恋していた。
実業家だった双方の家も政略結婚として歓迎し、
二人の縁談を進めようとしていた。しかし結納も近づいたある日、
鎌倉の家で開かれたパーティー会場から統子は姿を消し、
そのまま失踪してしまったのだった。
建物の出入り口は衆人環視の中にあり、統子の姿を目撃した者はいない。
いくたびか志保子のもとへ足を運んで話を聞き、
まもなく記録が終わろうという頃。
香留は志保子が亡くなったという知らせを受ける・・・
このあと、"事件" の様相を一変させる展開があり、
密室状態の屋敷からの人間消失の謎解きがあり、
60年の時を超えて現れる "真犯人"、
そして迎える "解決" まで一気に進む。
充分に長編のネタにもなりそうなんだけど、
出し惜しみしないで注ぎ込んでくる。

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いつもが消えた日 お蔦さんの神楽坂日記 [読書・ミステリ]


いつもが消えた日 (お蔦さんの神楽坂日記) (創元推理文庫)

いつもが消えた日 (お蔦さんの神楽坂日記) (創元推理文庫)

  • 作者: 西條 奈加
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/08/20
  • メディア: 文庫
評価:★★★

主人公・滝本望は中学3年生。両親の仕事の都合で、
神楽坂で祖母の津多代と二人暮らしをしている。
津多代はみんなから "お蔦さん" と呼ばれている。
これは彼女の芸名で、祖父と結婚するまでは
神楽坂で芸者をしていたのだ。
粋で鯔背なお蔦さんだが、ときおり鋭い洞察力を示す。

神楽坂の街で起こる様々な "事件" をお蔦さんが解決していく
<お蔦さんの神楽坂日記>シリーズの第2弾。
日常の謎系の短編集として始まったはずのシリーズなんだが、
2巻目にして長編、かついささか日常とは離れた不穏な事件が勃発する。


その日、料理が得意な望は幼なじみの木下洋平、同級生の森彰彦、
後輩の金森有斗(ゆうと)を招いて夕食を振る舞った。
しかしその夜、有斗を残して彼の家族3人(両親と姉)が失踪する。
しかも家の中には大きな血溜まりまで。

有斗の父は45歳にして住宅会社の取締役についており
年収は1000万を超えているという。
しかし息子の有斗はサッカーのクラブチームにも入れず、
所有していた自家用車も売却するなど
なぜか経済的には困窮していたらしい。さらに親類とも絶縁状態。

やがてDNA鑑定の結果から血痕は有斗一家のものではないことが判明、
失踪事件には家族以外の何者かが関わっていたことに。

一時的に有斗を預かることになったお蔦さんだが、
望と有斗の前にやくざ者のような男たちが現れて・・・


有斗と彼の一家は様々な逆風にさらされる。
叔母夫婦は有斗を預かることを拒否し、
マスコミはスキャンダラスに報道し、
学友たちは心ない噂を口にする。

一方、お蔦さんをはじめとするご近所ご町内の人々は
団結して有斗を守っていく。

一家失踪の謎を追うミステリなのだが、
事件に関わった人々の人間模様もまた大きな要素を占めている。

事件の背後には、有斗の父親の過去が絡んでいて、
終盤で明らかになるそれは周囲、とくに有斗にとっては
大きな衝撃となるのだけど、それでもなお
前向きで生きていこうとする彼の姿に救われる。


全体的に重苦しい雰囲気の展開が続くのだけど、
その中にあって一服の清涼剤とも言えるのが
望のガールフレンド、石井楓ちゃん。
落ち込む有斗を励ますために、望といっしょに
三人デートを企画するなんて、いい娘さんじゃないか。

残念ながら登場シーンが少ないんだが、
中学3年生で高校受験を控えてるのでは致し方ないね。
ちなみに望たちは中高一貫校に通っているので受験がない
(だから事件に関わっていられる)。

望は楓ちゃんにべた惚れで、彼女の方も満更でもなさそうな様子なので、
このカップルの先行きも楽しみだ。

おそらく次巻では二人とも高校生になるので、
揃って活躍するシーンも出てくるのではないかな。

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顔のない肖像画 [読書・ミステリ]


顔のない肖像画 (実業之日本社文庫)

顔のない肖像画 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 連城三紀彦
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2016/08/03
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

作者は2013年に逝去されたが、最近になって再刊が相次いでいる。
本書もその一つ。初刊は1993年である。


「瀆(けが)された目」
入院中の築田静子は、病室で医師・村木にレイプされたと訴え出た。
村木は冤罪を主張するが、静子の妹・雪子は姉を信じて動き出す。
関係者の証言を連ねるかたちで進んでいき、
ラストでは意外な陰謀が明らかに。

「美しい針」
カウンセラーの "私" は、36歳の女性患者から、
彼女が12歳の時に受けた性的体験を聞き出すが・・・
いささかエロチックな展開で、いったいどうなるんだろうと思ったが
ラストでは思いっきり背負い投げを食らう(笑)

「路上の闇」
深夜、広告会社で部長職にある山岸は帰宅のためにタクシーを拾う。
そこでカーラジオから流れてきたのは
複数のタクシーを襲った連続強盗犯が逃走中、というニュース。
折しも山岸は愛人と別れ話の修羅場を終えたばかり。
手首に怪我をしてコートの下は血だらけだった。
そしてどうやらタクシーの運転手は、
山岸のことを強盗と勘違いしているらしい・・・
ブラックなコメディの雰囲気で、最後のオチまでコントみたいだ。

「ぼくを見つけて」
その日警視庁にかかってきた電話は、
小学生くらいの男の子の声で「イシグロケンイチ」と名乗る。
そして「ボクはユーカイされている」と続けるのだった。
男の子が告げた電話番号は、医師・石黒修平の自宅のもの。
彼の一人息子・健一は9年前に誘拐され、死体で発見されていた・・・
うーん、確かにこれも誘拐には違いない。

「夜のもうひとつの顔」
平田雪絵が経営する画廊で働く葉子は、
雪絵の夫・紳作と不倫関係にある。
雪絵が伊豆に出かけた夜、紳作から呼び出された葉子は
突然別れ話を切り出され、思わず彼を殺してしまう。
自宅へ帰り着いた葉子のもとへ、帰宅した雪絵から
「家に夫の死体がある」との連絡が入り、
葉子は再び現場へ戻ることになるが・・・
死体を前にして、自分から容疑をそらすために
なんとか雪絵を誘導しようとする葉子。
この二人の女の対決が本編の読みどころなんだが・・・女って恐い(笑)。
しかしストーリーは二転三転、ラストはウルトラCみたいな離れ業。

「孤独な関係」
アラサーOLの野木冴子は、ある日遊園地で
上司の白井部長の一家と出会う。
そこで懇意となった白井の妻から、冴子はある頼み事をされる。
夫の浮気相手が、冴子の職場にいるらしい。
冴子以外の6人の女性職員の中から
浮気相手を見つけてほしいのだという・・・
ラストで明らかになる "愛人" の正体は・・・気持ちは分かるなあ。
ちょっとした度胸と金があれば・・・って私も思わなくもない(笑)。
ちなみに冴子自身が愛人だった、ってオチではないので年のタメ。

「顔のない肖像画」
美大生・旗野康彦は画家・荻生仙太郎の未亡人からある依頼をされる。
近々、荻生の絵のコレクター・弥沢俊輔が、
所蔵するコレクション32点を一斉に競売にかける。
康彦にそのオークションに参加し、
ある作品を競り落として欲しいというのだ。
弥沢は萩生の前妻の父親で、ある理由から萩生を憎んでおり、
萩生の遺族は競売に参加させないのだという。
依頼を受けてオークションに望んだ康彦だが、
次々に競り落とされる様子を見ているうちにある疑問を抱き始める・・・
終盤で物語がひっくり返る構成は見事だと思うけど
そこで明らかになる萩生の "絶筆" となった作品は・・・
ちょいと捻りすぎな感がするなあ。

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水底の棘 法医昆虫学捜査官 [読書・ミステリ]


水底の棘 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)

水底の棘 法医昆虫学捜査官 (講談社文庫)

  • 作者: 川瀬 七緒
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/08/11
  • メディア: 文庫
評価:★★★

「法医昆虫学とは法医学・科学捜査の一分野であり、
 死体を摂食するハエなどの昆虫が、
 人間の死体の上に形成する生物群集の構成や、
 構成種の発育段階、摂食活動が行われている部位などから、
 死後の経過時間や死因などを推定する学問のことである。」

上の文はwikiからの引用。
しっかり項目があるくらいだからちゃんとした学問なんだが
アメリカが先進的で裁判の証拠にもなるくらい信頼性があるみたい。
翻って日本ではまだまだ発展途上の分野らしい。

本シリーズの主人公・赤堀涼子は、
そんな日本で法医昆虫学を確立させるべく、
日夜捕虫網を振り回して研究に没頭する博士号を持つ昆虫学者。
ちなみに36歳独身、小柄で童顔(笑)。

第三作となる本書では、
涼子自身が死体の第一発見者となるところから始まる。


大量に発生したユスリカの駆除に協力するため、
東京湾の荒川河口近くの河川敷にやってきた涼子。
そこの中州で見つけたのは男の死体。
死んでかなり時間が経ったらしくウジや動物に食い荒らされていた。

解剖の所見では絞殺された後、川に捨てられて
河口に流れ着いたと思われたが
涼子は殺害現場について全く異なる見解を示す。

彼女とタッグを組むのは岩楯祐也警部補。
最初は捜査本部で持て余されていた涼子のお守り役を押しつけられて
いやいや相手をしていたのだが、
やがて涼子の示す知見に一目置くようになり、
いまでは協力して捜査に当たるようになっている。

被害者の身元特定の手がかりは、所持していた特殊なドライバー、
そして腕にあった入れ墨の痕跡らしきもののみ。

昆虫オタクが白衣を着て歩いているような涼子、
彼女に全面的な信頼を寄せ、地道な捜査を続ける岩楯。

乏しい物証から身元確認は難航するが、
涼子と岩楯はお互いがつかんだ情報を交換しながら真実に迫っていく。
二人で一組の探偵役と言えるだろう。

この二人以外にも、
何かあると猛烈にノートに書き込むメモ魔の刑事・鰐川宗吾、
解剖所見で涼子と真っ向から対立するエリート解剖医・九条和人、
その助手で密かに涼子に協力する石黒由美など、サブキャラも多彩。


前2作もそうだが、このシリーズは
事件 → 容疑者 → 捜査 → 手がかり → 犯人逮捕 という
いわゆるミステリの定型からは逸脱している。

本作においては、被害者の身元と犯行現場がまずわからない。
そして物語の終盤近くまで、この2つの探索行で占められているのだ。
でも、この過程をけっこう面白く読ませる。
キャラの魅力もあるし、昆虫の生態関係の蘊蓄も興味深いし、
刑事たちが足で稼ぐ捜査ぶりもいい。
そして、この2つが判明した時点で、犯人はもうすぐそこにいるのだ。

前2作ではラスト近くで突然、命がけのサスペンス劇になるんだが
本作もまた然り。誰がどんな危機に陥るかは読んでのお楽しみ。

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静かな炎天 [読書・ミステリ]


静かな炎天 (文春文庫)

静かな炎天 (文春文庫)

  • 作者: 若竹 七海
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2016/08/04
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

前作「さよならの手口」に続く、
女探偵・葉村晶(はむら・あきら)の活躍を描くシリーズ。
調布のシェアハウスに住み、書店のアルバイト店員をしながら
本職の探偵業に勤しんでいる。
そんな彼女が巻き込まれた事件を描いた6編を収録している。

「青い影 七月」
出勤途中の葉村は、交差点での事故に遭遇する。
停車中のバスを含む車列にダンプカーが突っ込んだのだ。
混乱する現場の中、彼女は事故車の中から
ハンドバックを盗んで逃走する女を目撃する。
数日後、警察に呼び出された葉村は、
事故で娘を亡くした門脇という女性に引き合わせられる。
彼女の娘が持っていたはずのハンドバッグが見つからないという・・・

「静かな炎天 八月」
ひき逃げで依頼人の息子に重傷を負わせた男・袋田の
素行調査を請け負う葉村。しかし調査を始めた直後に
袋田が飲酒運転するところを録画に成功。
続けて入った依頼は、音信不通の従姉妹の探索。
ところがこれもたちまち解決。
続けざまにどんどん入ってくる依頼に、
ふと不審なものを感じる葉村だが。
脈絡のない事件の連続のように見えて、実は・・・
いやあこれはよくできてる。

「熱海ブライトン・ロック 九月」
大人気作家・設楽創(したら・そう)が23歳の若さで失踪して35年。
最近になって復刊が相次ぎ、再評価されるようになってきた。
葉村は、設楽創特集を組むことになった雑誌の編集者から
失踪の謎を調査することを依頼される。
手がかりは失踪直前の設楽の日記に残された5人の名前のみ。

「副島さんは言っている 十月」
書店でバイト中の葉村にかかってきた電話は、
かつて所属していた探偵事務所時代の同僚・村木。
大至急、ホシノクルミなる女の子とを調べて欲しいという。
返事をする前に電話は切れたがその直後、
星野久留美という女性が殺されたとのニュースが流れる・・・
本作で一番のドタバタコメディ。

「血の凶作 十一月」
三鷹のアパートが火事になり、焼死体で発見された男・"角田"。
しかし彼の戸籍謄本は、人気作家・角田のものだった。
作家の角田から、15年にわたって他人の戸籍を使っていた
"角田" の正体を探るよう依頼された葉村だが。
コミカルな展開から、ラストはちょっとしんみり。

「聖夜プラス1 十二月」
葉山の働く書店では、クリスマスの深夜に
ミステリ本のオークションを開催する。
今年の目玉となるのは、元外交官・園田が所有する
ギャビン・ライアルの『深夜プラス1』原書初版サイン本。
本を引き取るために葉村は園田邸へ向かうことになるが
連絡の手違いにより、都内を転々と引き回される。
さらには行く先々で届け物を言付かったりと
なかなか帰り着くことができない。
オークション開始時間は刻々と迫ってくるが・・・


物語が進行するにつれてどんどん難題が発生し、
雪だるま式に自体が複雑化していくが、あることがきっかけで
それらが雪崩式に綺麗さっぱり解決してしまう・・・という構成を、
とっても達者に書き切ってしまうのが若竹七海さん。
「静かな-」「副島さん-」「聖夜-」の3編はそれが顕著。
とくに表題になっている「静かな-」は傑作だ。

サザエさん時空と異なり、葉村晶は時代とともにしっかり年をとる。
初登場時に20代だった彼女も本書では40代。
四捨五入すればおそらく半世紀になろうと思われる。
「怪我の治りは遅くなり」「走れば膝を痛め」「腹筋すれば腹がつる」
さらには四十肩にまで悩まされるなんて、どうにも笑えない独白が続く。
私も寄る年波で同じような身体の変調を抱えているし、
10年程前には肩を痛めて塗炭の苦しみを味わったりもしたので
とても他人事に思えない。

口を開けばぼやきと愚痴ばかりなんだが、
それでも、くじけずに前向きに生きている。
身の不運をブツブツ呟きながら調査に勤しむ様子には
そこはかとないユーモアも感じられる。
前作のように命の危険を感じるような羽目にはならなくても、
犯人に殴られて気を失うこともあったりして
波瀾万丈な人生は相変わらずだ。
退屈とはほど遠い人生なのも間違いないが・・・

人並みな幸せをつかんで平穏な生活に入って欲しいなあという
気持ちもあるんだが本編を読む限り、それはかなり無理っぽい(笑)。
やっぱり彼女は事件の中でこそ輝くのだろう。
続巻を願うと言うことはとりもなおさず、
彼女のさらなる受難を願うということなんだが・・・(笑)

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技師は数字を愛しすぎた [読書・ミステリ]


技師は数字を愛しすぎた【新版】 (創元推理文庫)

技師は数字を愛しすぎた【新版】 (創元推理文庫)

  • 作者: ボワロ&ナルスジャック
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/04/27
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

フランスのミステリって馴染みがないんだよねえ。

一時期、メグレ警視シリーズを読もうと思った時期もあったんだけど
読み始める前に挫折したし(おいおい)。
愛川欽也がやってたTVドラマ「東京メグレ警視」シリーズ(1978年)は
1~2本見たはずなんだが、内容はさっぱり記憶にない(笑)。

さて、本書はそのフランス・ミステリの傑作として有名で
私でも名前だけは知っていた。邦訳が出たのは50年くらい前なんだが、
6年ほど前に創元推理文庫で新版として再刊されてる。


舞台となるのはパリ郊外の原子力関連施設。さすが原発推進国。

昼休みが終わり、職場へ帰ってきた二人の技師ルナルドーとベリアール。
技師用の別館へ向かう彼らが聞いたのは男の悲鳴、そして一発の銃声。

建物の2階へ上がった二人が見たものは、技師長ソルビエの射殺死体。
現場となった部屋に人影はなく、そこへ向かう通路には技師二人、
部屋の窓の下は警備員がおり、誰も現場から逃げた者はいない。

そして現場の金庫の扉が開けられ、重さ20kgもの
核燃料チューブが消えていた。
パリ市内を核汚染するのに充分な放射性物質だ。

 文中には核爆発も可能と書いてあるんだが
 流石にそんなことはないだろう・・・と思いたいが
 なにせ本書の発表は1958年だからねえ。

スパイの仕業かとも思われ、司法警察が捜査を開始するが、
現場が完全な密室状態だったことが改めて確認されるだけ。
そして姿なき犯人による銃撃事件はさらに続いていく・・・

捜査の責任者となるのはパリ司法警察の警部マルイユ。
いわゆる名探偵ではなく、錯綜する事態に翻弄されるままに
捜査に従事する。ミステリ世界では "凡人" に近いだろう。

なんでこんなキャラクターを設定したんだろうって思いながら
読んでたんだが、本書は密室を扱ったミステリでありながら、
それよりは登場人物たちの人間模様に焦点が当たってるように思う。

マルイユ警部も関係者に対し、"容疑者" として扱うような
強圧的な態度をとることもなく、時に協力して
真相に迫ろうと試行錯誤していく。

詳しく書くとネタバレになるんだけど、
この警部の姿勢がラストの展開に関わっていくので、
読み終わってみれば納得の設定ではある。

"凡人" と書いたけど、決して無能ではなく、
終盤近くになって得られるたった一つの手がかりから
密室トリックの解明に成功するなど
ちゃんと探偵としての役目を果たすあたり、充分に有能ではある。

作中で用いられるいくつかのトリックもさほど無理がなく
充分に納得のいく作り。

フランスのミステリをこれ一冊で語ってはいけないんだろうが
英米のミステリとはちょっと色合いが異なるのはよく分かった。

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鍵のかかった部屋 [読書・ミステリ]


鍵のかかった部屋 (角川文庫)

鍵のかかった部屋 (角川文庫)

  • 作者: 貴志 祐介
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2012/04/25
  • メディア: 文庫
評価:★★★

防犯コンサルタント・榎本径(けい)と
弁護士の青砥(あおと)純子のコンビが密室事件に挑むシリーズ。
本書は短編4作を収録している。

「佇む男」
葬儀会社の社長・大石が奥多摩の山荘で死んでいるのが発見される。
死体のあった部屋も、玄関も勝手口も窓もすべて施錠された密室状態。
しかも死体は部屋のドアの前に座るような体勢で位置していて、
ドアからの出入りは不可能。さらに死体の背後には白い幕が張られ、
テーブルには自筆の遺書が置かれていた。
しかし自殺とは思えない司法書士の日下部は、
青砥と榎本に調査を依頼するが・・・
本作の中ではいちばん実現できそうなトリックかな。
オーソドックスと言ってはヘンだが、本作ではいちばん
密室トリックと犯人指摘のロジックがうまくつながった作品かと思う

「鍵のかかった部屋」
窃盗で服役していた会田は、5年ぶりに
姉の再婚相手・高澤と姉の遺児である大樹と美樹のもとを訪れる。
しかしその日、引きこもり状態だった大樹が自室で死亡する。
部屋は内側から目張りされ、中で練炭が炊かれていた・・・
すごく理詰めで構成された密室トリックなんだけど
普通の家ではムリっぽい気がするんだよなあ。
それよりは、自らも更生しようとあがきながらも、
甥姪のことを気遣う会田くんがいい人過ぎて泣ける。

「歪んだ箱」
高校教師・杉崎は結婚を控えており、マイホームを建てた。
しかし頼んだ工務店の社長・竹本は悪徳業者だった。
手抜き工事の結果、床は傾き天井からは雨漏り、ドアは閉まらない。
無料での補修を断り、逆に脅迫してくる竹本を杉崎は殺してしまう。
そしてその死体は、杉崎の新築の家のリビングで発見されるが
そこは建物の歪みのために出入り不可能な部屋になっていた。
いやあこのトリックは面白すぎる。
実際の犯行の様子を想像してみると立派なバカミスなんだが
そういうネタでも堂々と書き切ってしまうところがスゴいんだろうな。

「密室劇場」
アンソロジーで既読。
劇団『土性骨』の上演中、舞台横の楽屋で殺人事件が起こる。
現場の出入り口はロビーの売店側と舞台側の2カ所のみ。
売店側の出口は衆人環視の中にあり、出入りした者は皆無。
もう片方の舞台では劇が上演中だった・・・
この短編だけ作者が違うんじゃないかってくらい雰囲気が違う。
ふざけた芸名ばかりのアングラ劇団を舞台にした
ドタバタユーモアミステリになってる。
そして、このトリックは盲点だなあ。
でも、案外成功してしまうんじゃないかって思わせる。
そういう風に書けるところがうまいんだろうな。


弁護士って賢い人のはずなんだが、本書で登場する青砥純子さんは
密室についてのトンチンカンな謎解きを披露する "ボケ" 担当。
榎本がそこに冷静なツッコミを入れるというのがお約束の展開。

本シリーズは大野智&戸田恵梨香でドラマ化されたみたいだね。
戸田恵梨香の青砥純子は私のイメージに近いけど
クールな榎本役に大野君はちょっと合わないかなあ・・・

榎本は本職は泥棒じゃないかって疑いまである曲者キャラだからねえ。
大野君ご本人には恨みはないんだが(タレントとしては好きなんだよ)。
ああ、「密室劇場」に登場する榎本だけは、大野君でもOKだと思う。

wikiによるとドラマ自体はけっこう評判が良かったみたい。
原作が溜まれば、またドラマ化されるのかな?

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