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漫才刑事 [読書・ミステリ]


漫才刑事 (実業之日本社文庫)

漫才刑事 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 田中 啓文
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2016/10/06
  • メディア: 文庫

評価:★★★


腰元興業所属の若手漫才コンビ、「くるぷよ」。
最近伸びてきたとの評判通り、今日もけっこう笑いをとる。

大阪をホームグラウンドにする彼らに
東京進出&TV出演の話も出てくるが
コンビの片割れ・"くるくるのケン" はなぜかその話に難色を示す。

実は彼には別の顔があったのだ。
大阪府警難波署の刑事・高山一郎。
それが彼のもう一つの顔。
相方である "ぷよぷよのプン" にさえ知られていない。

舞台用のぶ厚いメーキャップに隠され、同僚の刑事たちもまた
ケンの "もう一つの仕事" に気づいていない。

お笑いと刑事、どちらも "天職" と考えるケン。
なんとかその両立を目指して奮闘する毎日だが
なぜか彼の周囲では芸人を巻き込んだ事件が続発する・・・


「第一話 ふたつの顔を持つ男」
大ベテランのピン芸人・びっくり太郎が、演芸ホールの楽屋で
首を絞められて意識不明になっているところを発見される。
すぐさまホールは封鎖されたので犯人はまだ中にいると思われた。
たまたまホールに出演していた「くるぷよ」。
ケンは、仲間に悟られないように事件の解決に協力するが・・・
登場人物紹介と、ケンの名探偵ぶりが描かれる。
そして難波署員の中でただ一人、交通課の婦警・城崎ゆう子だけが
ケンの "正体" に気づいてしまう。

「第二話 着ぐるみを着た死体」
今日の「くるぷよ」の仕事は、着ぐるみを着て
演芸ホールの前の路上で宣伝すること。
特別ゲストはスリムドッカンブラザーズ。
スリム健四郎とドッカン大作の二人による大人気漫才コンビだ。
この二人も着ぐるみ姿で宣伝に参加したのだが
スリム健四郎が、彼が入っているはずの着ぐるみの中から姿を消し、
ドッカン大作が入っていたはずの着ぐるみの中から
死体となって発見される・・・
「中身がない着ぐるみが歩く」&「人間消失」トリックはなかなか。
ユーモアミステリなんだけど、そういうところは手を抜いてない。

「第三話 おでんと老人ホーム」
老人ホームでの営業にやってきた「くるぷよ」。
一緒に出演するのは上方演芸界最年長の
亀潟喜寿とその娘・喜美子の漫才コンビ。
しかし、漫才中に喜寿が心筋梗塞を起こし、死亡してしまう。
その様子にケンは不審なものを感じるが・・・
本筋には全く関係ないけど、
ロックバンドを組んでシャウトしまくるご老人たちがいい。
こんな高齢者は本当にいそうだし、私もこんな老後を迎えたいなあ。

「第四話 人形に殺された男」
TV局の楽屋で、腹話術師の縦縞ボストンが刺殺死体で発見される。
現場は密室状態で、死体の傍らには
ナイフを持った腹話術用の人形が座っていた。
ボストンは常々、この人形について語っていた。
「この人形には魂が宿っとるんや。
 最近俺に対して反抗的で、時々『殺してやる』って叫ぶんや」
いささか無理がありそうな気もするが、
この状況ならあり得るかもな~って思わせる密室トリック。

「第五話 漫才師大量消失事件」
お笑い新人グランプリ「N-マン」に出場した「くるぷよ」。
順調に一回戦・二回戦を突破し、三回戦を迎える。
何とか勤務を抜けて会場に到着したケンだが
10組参加するはずが、会場に現れたのは「くるぷよ」ともう一組だけ。
8組の漫才師がどこかに消えてしまったのか・・・
今回、「くるぷよ」のライバルとして現れる漫才コンビ「格差社会」。
 ネタ担当が京大理学部卒という超高学歴とか、
 どこぞにそんな漫才師がいたような。
今回、いよいよ署内の同僚刑事にバレそうな展開に。

「第六話 漫才刑事最後の事件」
腰元興行の擁する最大の劇場・なんばキング座への
出演が決まった「くるぷよ」。
しかし、出演中の一週間は昼夜ともに拘束されてしまう。
ケンは苦肉の策として城崎ゆう子と "偽装結婚" し、
一週間の新婚旅行休暇をとる。
順調に舞台をこなす「くるぷよ」だが、公演の終盤で大事件が起こる。
芸人の青海ドノバンが、観客の中にいたゆう子に
拳銃を突きつけて人質に取り、
刑務所に服役中の相方・三田村ギャラリーの釈放を要求したのだ。
ガンで余命三ヶ月となったドノバンは、
最後にギャラリー相手に漫才がしたいのだという。
 真面目なドノバンと破滅型芸人でトラブルメーカーのギャラリー。
 そんなコンビが昔いたような気がするが。
なんば署の署員が舞台を取り囲む中、
ゆう子を救うためにケンがとった行動は・・・
漫才刑事・完結編である。
芸人と刑事、ケンはどちらを選ぶのか。それとも・・・


舞台が上方演芸界とあっては、いやがおうでも
ユーモアミステリにならざるを得ないよねえ。
登場するのも、みな芸人らしく濃いキャラばかり。
私は生まれも育ちも関東なので、上方の芸人さんはさっぱりなんだけど
関西の人ならモデルになった芸人さんを予想できるのかな?

個人的には "大食い女王" なみの食欲と胃袋をもち
ヘタなお笑い芸人よりウケをとる城崎ゆう子さんがお気に入り。

動機もトリックも "芸" がらみのものばかり。
とは言っても、「実際の芸人世界は本書の通りではありません」と
作者があとがきで断っている(笑)。
でもまあ、そんなことを気にせずに楽しめばいいと思う。

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ぐるりよざ殺人事件 セーラー服と黙示録 [読書・ミステリ]


ぐるりよざ殺人事件  セーラー服と黙示録 (角川文庫)

ぐるりよざ殺人事件 セーラー服と黙示録 (角川文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/01/23
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

バチカン市国が三河湾に浮かぶ人工島に建設し、
事実上の治外法権の下にある聖アリスガワ女学校。
しかしこの学校の実体は、なんと探偵養成学校なのだ。

この世界には『探偵士』という国家資格があり、
最高学府には「探偵学部」なんてものまで存在するのだから。
だからこの学校には、通常の授業科目以外に宗教系の科目はもちろん
探偵に必要な素養を学ぶ科目も多々設定されている。


本書は前作『セーラー服と黙示録』に続く第2作。
ちなみに「ぐるりよざ」とは、
グロリオーサ(ラテン語で「グレゴリオ聖歌」)を
日本のキリシタンが歌い継ぐうちに訛ってできた言葉だそうな。


時は1991年の5月、アリスガワ女学校は春季研修旅行を迎えた。
1~3年までの全校生徒180人を縦割りにして30班に分け、
班ごとに異なる場所で4日間を過ごし、
与えられた課題をこなすというもの。

本シリーズの主役である3人娘、
2年生の島津今日子・古野みづき・葉月茉莉衣も
1年生の八十桐八重子(やそぎり・やえこ)と杏樹恵美(あんじゅ・めぐみ)、
3年生の原磯晴美(はらいそ・はるみ)と木佐橋ユキ(きさはし・ゆき)
とともに研修場所である愛知県富山村へ向かう。

 ちなみに、通常6人編成(1・2・3年が各2名ずつ)のはずの班が、
 彼女らだけ何故か7人になっているのだが
 そこには学校側のある "思惑" が存在する。
 でもこれを書くと長くなるので割愛(笑)。

しかし彼女らを乗せたバスの運転手が謎の死を遂げ、
続けて7人も意識を失ってしまう。

そして彼女たちが目覚めたのは謎の "隠れ里"、
「鬱墓村」(うつはかむら)だった。

そこは厳しい断崖に囲まれた盆地で、外部と完全に隔絶された世界。
戦後46年経っているにもかかわらず、
総計108人の村民全員が終戦を知らないくらい徹底的に隔離されている。
もちろん電話もテレビもラジオもない。1991年だからネットもない。

ここはかつて隠れキリシタンが暮らした村で、
村民たちは今でも「キリスト教の "十戒" を厳しく遵守する」という
敬虔なカトリック信者たちなのだ。
すなわち、「偽証をしてはいけない」つまり「嘘をつけない」。
これは建前ではなく、ここの村人たちは
本当にこの戒律を守って生きている。
つまりこの村は、いわゆる「正直族」だけが住む地なのだ。

しかし今日子たち7人が村に現れた日から、
連続見立て殺人の幕が切って落とされる。
"十戒" にはもちろん「汝、殺す無かれ」という項目もある。
この「正直族」の村にあって
戒律を破っている(破ることができる)者はだれか。

村人たちの疑惑の目は当然のことながら
今日子たち外部の者に向けられる。
彼女たちは自分の身の潔白を示すためにも
事件の真相を探らなければならなくなる。
そして同時に、外部への脱出する方法も模索し始めるのだが・・・

戦前の時代を思わせるような風習・慣習に縛られた「鬱墓村」には
戦国時代に6人の落武者が黄金を携えて現れたという伝説が残る。
絶対的な権力を握る村長を務めるのは双子の老婆で、
半ば気が触れていると思われている修道女「焙煎の尼」が出没する。
そして中盤から登場するのだが、村の地下には巨大な洞窟が・・・

横溝正史の「八つ墓村」の雰囲気そのまんまの舞台で起こる
連続殺人事件に巻き込まれた女子高生たちの運命や如何に・・・?


第1作「セーラー服と黙示録」では、
主役の3人は2年生で季節は12月。
本作では同じ2年生ながら5月の出来事で、
つまり前作よりも時系列的には半年ほど前の話だ。

前作の記事の時、
「これはシリーズの設定を説明するための作品ではないか」
と書いたのだけど、時系列的にも
実は本書が第1作として構想されていたような気がする。


とにかく外部と完全に分離された世界で起こる事件で、
そこには「鬱墓村ルール」とも呼ぶべき "規則" が存在し、
村人たちはそのルールの下に生きている。
そういう意味では、一種のSFでありファンタジーに近い。
しかしその "規則" は厳然と存在し、
謎解きも犯人の指摘も、その "規則" に則って行われる。

米澤穂信の『折れた竜骨』もまた
ファンタジー世界を舞台にしたミステリだったが、
あれを横溝正史の世界に置き換えたもの、と言えるかも知れない。


文庫で700ページという堂々のボリューム。
その中で謎解き部分は170ページを占める。
<ホワイダニット>の茉莉衣、
<ハウダニット>のみづき、
そして<フーダニット>の今日子。
3人娘の推理が炸裂するクライマックスは
まさにページを繰る手が止まらない。

3人の推理によって、この村の "真実" が暴かれていくところは
まさに圧巻のひと言しかない。
これでもかこれでもかとぶち込まれてくる「鬱墓村」の全貌。
700ページの厚さを、この密度で描ききるなんて
つくづく古野まほろは天才だと思うよ・・・

そして、そもそも3人をこの村へ送り込んだのは
アリスガワ女学校の上層部だ。
彼らの最終的な目的に3人がどう関わってくるのかは未だ不明だが
それは次巻以降で語られるのかも知れない。

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バチカン奇跡調査官 独房の探偵 [読書・ミステリ]


バチカン奇跡調査官  独房の探偵 (角川ホラー文庫)

バチカン奇跡調査官 独房の探偵 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 藤木 稟
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/06/20
  • メディア: 文庫
評価:★★★

カソリックの総本山、バチカン市国。
世界中から寄せられてくる "奇跡" 発見の報に対して
その真偽を判別する調査機関『聖徒の座』。

そこに所属する「奇跡調査官」である
天才科学者の平賀と、その相棒で
古文書の読解と暗号解読の達人・ロベルト。
この神父二人の活躍を描く第11弾。
シリーズでは2冊目の短編集になる。

「シンフォニア 天使の囁き」
文庫で100ページ弱と、かなりのボリュームの短編。
平賀の弟・良太は悪性骨肉腫と診断され、
余命は二年あまりと告げられる。
諦めきれない家族は、良太を小児がん治療に実績のある
ドイツのバーデン病院に入院させる。
一緒に闘病を続けている子どもたちを "見送る" ことが続き、
死者のために祈り続ける良太は、
病院の図書室で一冊のノートを見つけるが・・・
基本はホラーなんだが、今回はちょっとした "因縁" が描かれる。
既刊の短編集を読んでないとわかりづらいかと思うけど
逆に、読んでいると早々とネタが割れてしまうかも知れない。
でもまあそれも、作者の想定内かな。
とは言っても、子どもが苦しむ話は辛いなあ。

「ペテロの椅子 天国の鍵」
『終末の聖母』事件の冒頭、法王が異例の "辞任" をした。
表向きはバチカン銀行を巡るスキャンダルによる引責だったが
本作ではその "真相" が語られる。
平賀とロベルトの上司であるサウロ大司教が登場。
法王は、唯一人心を許せる存在としてサウロを選び、
苦悩する心情を語るが、サウロは驚くべき事実を明かす・・・

「魔女のスープ」
1700年に行われた魔女裁判の記録を分析していたロベルトは、
"魔女のスープ" なるもののレシピを発見する。
これは一体如何なるものなのか。
"スープ" の謎を解明することを思い立ったロベルトは
魔女の住居があったサンマリノ共和国の村へと向かう。
しかしそこにはエリーナという変わり者の作家が住んでおり、
ロベルトは彼女とともにレシピの再現を始める。やがて平賀も合流し
三人で完成させた "スープ" の試飲が始まるが・・・
ホラーのはずなのにやや脱力系のオチが楽しい一編。

「独房の探偵」
文庫で130ページと、本書中で最長を誇る中編。
天才的な頭脳を持つ犯罪者、ローレン・ディルーカは
刑務所内の特殊房に収監されていた。
ある日、彼のもとを一人の男が訪れる。彼の名はアメデオ。
国家治安警察特捜部の人間で、密かにローレンの力を借りて、
過去にいくつもの難事件を解決していた。
今回彼が持ち込んだのは、幽霊屋敷と呼ばれる建物内で起こった密室殺人。
捜査へ協力する条件としてローレンが示したのは
精神病棟に入院している女性・フィオナを捜査に加えること。

彼女はかつてプロファイラーとして活躍していた。
独房の "探偵" と、心を病む "助手" という
異色すぎるチームが難事件に挑む。
とは言っても、ローレンは刑務所の外でいくつもの企業を経営し
自由に動かせる人材も資源も豊富に持っているという
およそ "安楽椅子探偵" とはほど遠い存在だが。
しかし、最終的にローレン自身は独房から一歩も出ずに
事件を解決してしまうのだからたいしたものだ。
暴露される真相も充分に意外なもので、
本格ミステリとしてもよくできてる。

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殺人者と恐喝者 [読書・ミステリ]


美貌の若妻ヴィッキー・フェインは、
ある日、自宅にある安楽椅子の隙間から
「ポリー」と縫い取りのあるハンカチを発見する。

時を同じくして、居候している叔父・ヒューバートが
彼女の夫・アーサーに示す態度が変わり始める。
部屋や食事の内容に注文をつけ、金の無心を重ねるようになったのだ。

ヒューバートを問い詰めたヴィッキーは驚きべき事実を知る。
アーサーが、愛人ポリー・アレンを自宅に呼び入れて殺害していたのだ。

内部にそんな葛藤を抱えながらも、フェイン家は
友人知人たちを招いて晩餐会を開くことになる。

招待されたのはヴィッキーの友人アン・ブラウニング。
精神分析医のリチャード・リッチ博士。そして
密かにヴィッキーに想いを寄せる工兵大尉フランク・シャープレス。

その席上、"催眠術の真贋" について
リッチ博士とフランクの間で口論が起こり、
その結果、翌日の夜にもう一度全員がフェイン家に集まり、
博士が「催眠術の実演」を行うことになった。

被術者(催眠術をかけられる相手)に選ばれたのはヴィッキー。
そしてその「実演」の最中、衝撃的な殺人が実行されてしまう・・・

折しも近隣の屋敷に滞在して、自叙伝の口述筆記をしていた
ヘンリ・メリヴェール卿が捜査に当たることになる。


正直言って、メインのトリックはダサい。
現代の目で見たら噴飯物かも知れない。
怒り出す人もいるかも知れない。
でも解説にもあるように、本作が発表されたのは80年近い昔。
当時としては充分に意外で斬新なトリックだったのだと思う。

しかし、本書のキモはここではない。
毎回書いてきてるけど、密室や不可能状況ばかり有名な作家さんで
本作も一種の "不可能犯罪" なんだが、それはあくまでも
犯人を隠すための一要素にしか過ぎない。

実際、カーの作品では
「容疑者は少ないのに犯人が最後まで分からない」
という展開が多い。

本書でもまた然り。最後に明かされる真相で
「えーっ、そうだったのか!」と気持ちよくだまされてしまうのだ。
トリックの問題なんか気にならなくなるくらい。

そのあたりの「テクニック」については、本書の解説で
麻耶雄嵩氏が詳細に書いてる。
流石に現役の本格推理作家さんだけあって
微に入り細を穿つように説明してくれる。

これを読むと、トリックもストーリーもラブロマンス要素も
全部ひっくるめて「犯人について読者をミスリードさせる」ために
存在しているのがよく分かる。

巻末の「解説」ってよくあるけど、
ここまでほんとに "解説" してくれた例は珍しいかも(笑)。

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THE 密室 [読書・ミステリ]


「密室もの」はいまでも本格ミステリの中で魅力的なジャンルだと思う。
だからこそ、古今東西の作家さんが競って密室トリックを考案してきた。
本書は、そんな「密室もの」に特化したアンソロジーになっている。

でも、今回は現役バリバリと言うよりは功成り名を上げた大家の作品、
ていう感じかな。収録作の作家さん7人のうち
既に5人が鬼籍に入られ、存命の方は2名のみ。
しかも現役で作品を発表されているのはそのうちの一人だけ。


「犯罪の場」飛鳥高
大学の土木工学科で教鞭を執る木村博士。
そこの実験室で大学院生・管(すが)が死亡する。
現場の隣の研究室には木村博士をはじめ学生2人と助手2人がいたが
実験室には人の出入りができず、密室状態だった。
文庫で30ページほどの掌編で、トリックと犯人は
けっこう早めに見当がついてしまう。
というか、こんなアンソロジーを読むような人で
これ分からない人はいないでしょう(笑)。

「白い密室」鮎川哲也
医大生・佐藤キミ子は、ゼミ担当の座間教授の自宅を訪ねるが
中から出てきたのは雑誌編集長の峯。そして書斎には教授の刺殺死体が。
折しも雪が降り止んだ直後で、
現場には峯とキミ子の靴跡しかなかった・・・
貿易商にして名探偵の星影龍三が活躍する一編。
鮎川哲也ってアリバイ崩しのイメージが強いけど
こういう本格ミステリのガジェットを前面に据えた作品も
けっこう書いてるんだよね。

「球形の楽園」泡坂妻夫
"さそりの殿様" との異名を持つ富豪・四谷乱筆は、
極度の乗り物恐怖症で、外出を極度に嫌っていた。
それが高じて、彼は山の中腹にカプセル型のシェルターを建設、
その中に籠もって暮らすようになった。
そして、外部からは開けることができないそのカプセルの中で、
四谷氏の他殺死体が発見される・・・
名探偵・亜愛一郎が活躍するシリーズの一編。
トリックもいいが登場するキャラクターがみんなとぼけていて
ユーモアあふれる雰囲気がいい。

「不透明な密室」折原一
密室フェチの黒星警部が活躍するシリーズの一編。
建設会社社長・清川の死体が密室状態の執務室で発見される。
自殺かと思われたが、黒星警部は密室殺人と信じて疑わない・・・
ユーモアミステリなのだけど、
オチを読むと立派なバカミスだったりする(褒めてます)。
折原一って、基本的に読まずにスルーしてしまう作家さんなんだけど
この黒星警部シリーズだけは読んでる。
ちなみに、本書中で唯一の現役作家さん。

「梨の花」陳舜臣
大学の文化史研究所に勤務する浅野は、所内で何者かに刃物で襲われる。
現場は内部から施錠された建物だったが、犯人の姿はない。
浅野は婚約者の芙美子とともに真相を探り始めるが・・・
うーん、このオチはどうだろうか。
こんな×××で命を狙われたらたまらないが
犯人からしたら切実だったんだろうなあ・・・

「降霊術」山村正夫
陶芸家の蒔室(まきむろ)の死体が、密室状態の土蔵の中で発見された。
彼は生前、「家族の中に自分を殺そうとしている者がいる」と言っていた。
真相が明かされるラストは、密度が半端なく濃い。
密室トリックなんてどっかへ吹っ飛んで行ってしまうくらいの
強烈なインパクトがある。文庫で50ページ弱とは思えないほど。

「ストリーカーが死んだ」山村美紗
"ストリーキング" という単語、若い人は知ってるかなあ。
裸で公道等を走り回ることを指す。けっこう昔に流行った現象だ。
タイトルの "ストリーカー" とは、まさに "裸で走る人" のことだ。
全裸で舗道を走る女性を発見した刑事・千種(ちぐさ)。
取り押さえたものの、彼女は直後に死亡する。
どうやら青酸カリを服用していたらしい。
彼女はなぜ、裸で走ったのか。そしていつ毒物を摂取したのか。
そして事切れる直前に言った「電話ボックスに」とは何を意味するのか。
さらに明らかになったのは、彼女が衆人環視のマンションの一室から、
誰にも見られずに脱出していたこと。
突き止めた真犯人から、動かぬ証拠を手に入れる千種の手並みが鮮やか。

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クラーク巴里探偵録 [読書・ミステリ]


クラーク巴里探偵録 (幻冬舎文庫)

クラーク巴里探偵録 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 三木 笙子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/02/06
  • メディア: 文庫
評価:★★★

時は日露戦争が終結して間もない頃、
山中晴彦はヨーロッパを巡業中の曲芸一座に転がり込んだ。
家事一切を引き受けることを条件に
一座の敏腕番頭・片桐孝介と同居をはじめることに。
そんな二人が、パリを舞台に起こる事件を解決するべく
奔走する姿を描く連作ミステリ。
探偵役が孝介で、晴彦はワトソンの役回りだ。

「第1話 幽霊屋敷(メゾンアンテー)」
一座の座長に、贔屓筋から相談を持ち込まれる。
座長に頼まれた晴彦と孝介とは、資産家であるデュボア氏の屋敷へ。
息子ジュリアンの部屋に幽霊が出るという。
バラバラと物を叩きつけるような音がして目覚めると
部屋の中に無数の小石が散らばっていた・・・

「第2話 凱旋門と松と恋」
日本大使館員の本多が住んでいる下宿のマダム・クラリスが
妙な男につきまとわれているという。男の正体に迫るため、
美しき未亡人クラリスの過去について調査を始めた晴彦と孝介は、
彼女の夫を看取った医師が死亡していたことを知る。

「第3話 オペラ座の怪人」
晴彦に「面白いものを見せてやる」といって孝介が案内したのは
アパートの3階にある舞台美術家ガルニエ氏の部屋だった。
そのアパートで10万フランの現金盗難事件が起こる。
しかし入り口には二人がいたため、犯人の逃げ場はなかったはずだが
建物の中に犯人の姿は見当たらない・・・

「第4話 東方の護符」
晴彦がヨーロッパに来て孝介に接近したのには、ある目的があった。
第1話から第3話にかけて少しずつそれが明かされてきて
この最終話で決着を見るのだが、晴彦は基本的に善人なので、
密かに孝介を裏切っていることに良心の呵責を常に感じ続けていた。
約束された報酬と孝介との友情。その間で板挟みになり苦しむ晴彦。
そしてすべての "事情" を知った孝介がとった行動は・・・

ミステリではあるが、メインとなるのは
パリに住む人々の暮らしぶりであったりする。
多彩な登場人物の言動を通して、当時の "花の都" の様子が描かれる。

そしてなにより晴彦と孝介。共に積み重ねた時間と、
事件を解決してきた経験が二人の絆を紡いでいく。
いつ見ても不機嫌そうな孝介だが、内に秘めた優しさと強さが
最終的に晴彦を救うことになる。

ラストシーンで晴彦はパリを去り、日本へ帰ることになるが
後日、再びパリに戻ってくることが示唆されて終わる。
つまり、二人の探偵譚は今後も続くということだ。


そして、続編である『露西亜の時間旅行者 クラーク巴里探偵録2』も
既に刊行されており、実は手元に持っている。
これも近々読む予定。

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バチカン奇跡調査官 原罪無き使徒達 [読書・ミステリ]


バチカン奇跡調査官 原罪無き使徒達 (角川ホラー文庫)

バチカン奇跡調査官 原罪無き使徒達 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 藤木 稟
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/03/25
  • メディア: 文庫
評価:★★★

カソリックの総本山、バチカン市国。
世界中から寄せられてくる "奇跡" 発見の報に対して
その真偽を判別する調査機関『聖徒の座』。

そこに所属する「奇跡調査官」である
天才科学者の平賀と、その相棒で
古文書の読解と暗号解読の達人・ロベルト。
この神父二人の活躍を描くシリーズの第10弾。
長編としては9作目になる。


今度の舞台は日本、九州は天草だ。

海洋冒険家ロビンソンの乗るヨットは
太平洋を黒潮に乗って北上し、日本へ向かっていた。
しかしフィリピン沖で突如発生した巨大台風に巻き込まれて
ヨットは沈み、彼は海に投げ出される。
陸に向かって泳ぎながらも死を覚悟した彼の前に奇跡が現れる。
漆黒の海上にキリストの姿が現れたのだ。
奇跡に導かれて陸地にたどり着いた彼は
気を失う直前、黒髪をなびかせた天使を目撃する・・・

その二日後、ロビンソンのたどり着いた無人島に
大雪が降り、天空に巨大な十字架が浮かび上がった。
季節は7月、現地は30度近い気温だったにもかかわらず。

奇跡の報告を受けたバチカンは平賀とロベルトを九州・熊本へ派遣した。
地元イエズス会の神父たちと合流した二人は調査を開始するが
奇跡が起こったとされる無人島・神島には、
それ以外にも様々な怪異が目撃されていることが判明する。

この地には隠れキシリタンの信仰が
人知れず今なお生き残っており、さらには
"キリシタンの財宝" の在りかを示す暗号までも伝えられているという。


今回もなかなか壮大な "奇跡" を設定したものだ。
闇に光るキリスト像、天空に浮かぶ十字架、真夏に降る大雪・・・

ラストではもちろん "謎解き" があるのだが
いささか強引かつ無理がありそうな解釈も。
"大雪" なんてかなり偶然の要素が大きいし。

でもそれがあまり気にならなくなってきたのは
ここまでシリーズを読んできたせいか。

ま、この程度で腹を立てるような人は
そもそもここまでついてこない(笑)だろうし、
作者がどんどんぶち込んでくる意外な "仕掛け" を
笑いながら「すごいすごい」って楽しめる人が残ってるんだろう。

本シリーズを読むときはアタマを柔らかくして臨みましょう。
壮大かつスーパー伝奇なホラ話を楽しんだもの勝ちです。

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僕の光り輝く世界 [読書・ミステリ]


僕の光輝く世界 (講談社文庫)

僕の光輝く世界 (講談社文庫)

  • 作者: 山本 弘
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/03/15
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

SF作家としては星雲賞も受賞しているベテランである山本弘。
今回はミステリだけれど、
特殊な設定を取り入れたなかなかユニークな作品になってる。。

「第一話 黄金仮面は笑う」
主人公のオタク少年・高根沢光輝(こうき)は、
進学先の高校でいじめに遭い、橋から突き落とされてしまう。
後頭部を負傷した彼は、"アントン症候群" を発症する。
これは、失明してしまったにもかかわらず、
本人には通常通りに外部が "見える" ように知覚される症状のこと。
つまり彼の "視野" に映ってる "世界" は、
彼の脳が "つくりだした" ものになってしまったのだ。


"アントン症候群" というのは実在するものらしい(wikiにも載ってる)。
実際の患者さんの症状が本書の通りなのかはちょっと分からないが。

しかし本書のキモは、光輝の一人称で語られることだろう。
つまり彼の語る内容は、彼の "視野" で知覚されたことなので
本当のところはわからない。実際は全く異なることもあり得る。

例えば、光輝は搬送された病院で神無月夕(かんなづき・ゆう)という
"美少女" と出会うが、彼女の容姿もまた彼の脳がつくりだしたもの。
彼女が本当に "美少女" なのかはわからないわけだ。

つまり、彼は故意にではなく「間違った事実」を
語ってしまうことがあるわけで、いわば
故意ではない "叙述トリック" が成立してしまうということになる。

もっとも、この事実は第一話の早い段階で明かされるし、
その後の展開でも彼が "自分に見える世界" と "現実の世界" の
ギャップに戸惑う姿が何度も描写される。

むしろこの落差によって起こるハプニングやコミカルなシーンも
本書の楽しみの一つだろう。このへんはSF作家の本領だ。

ミステリとして見た場合、
「語り」に描かれたことと「現実」とが異なる可能性があることは
冒頭から分かっていることなので、
それを頭の中において読んでいるんだけど、それにもかかわらす
最後にうまく引っかかってしまったりする。
うーん、流石は山本弘。

本書は非情に特殊な状況下での物語なのだが
特殊状況なりのルールがしっかりとあり、
そのルールに則って推理が展開され、解決に至る。
見ようによってはSFミステリの一種とも言えるだろう。


「第二話 少女は壁に消える」
夕とつきあい始めた光輝は、彼女を自宅に招く。
しかしそこへ突然光輝の姉が帰宅してきて・・・

「第三話 世界は夏の朝に終わる」
光輝の姉が高校時代の友人たちとの飲み会に出かけてしまった。
一人残った光輝だが、その夜に発生した大地震によって
姉が帰宅できなくなり、光輝はひとりぼっちになってしまうが・・・

「第四話 幽霊はわらべ歌をささやく」
光輝と組んで作家になりたいといいだした夕。
二人は伝手を辿り、同じ町内に住む
ミステリ作家・鰍沢将(かじかざわ・しょう)に会いに行く。
弟子入りをせがむ二人に鰍沢は条件を示す。
書きかけの小説『七地蔵島殺人事件』の原稿を見せ、
この小説の真相を当ててみろ、というのだが・・・
横溝正史ばりの世界が展開する作中作『七地蔵-』もお楽しみ。

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セーラー服と黙示録 [読書・ミステリ]


セーラー服と黙示録 (角川文庫)

セーラー服と黙示録 (角川文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/09/24
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

物語が展開される聖アリスガワ女学校は、
三河湾に浮かぶ孤島に建設されたカトリック系の女子高校だ。

本書は同じ作者の『天帝』シリーズなどと同じ
いわゆるパラレルワールドの日本を舞台とする。

実際、登場人物の一人である古野みづきは
『天帝』シリーズの主人公・古野まほろの妹である。

しかし聖アリスガワ女学校の実体は、普通の学校ではない。
なんと探偵養成学校なのだ。
この世界には『探偵士』という国家資格があり、
最高学府には「探偵学部」なんてものまで存在するのだから。

だからこの学校は、通常の授業科目以外に宗教系の科目はもちろん
探偵に必要な素養を学ぶ科目も多々設定されているのだ。

文部科学省から怒られないのかと思いきや、
なんとこの学校はヴァチカン市国が直々に設立したもので
なんと学園のある島は事実上の治外法権になっているという
トンデモナイ設定になってる(笑)。

なんでヴァチカンが探偵養成?と思うかも知れないが
実は学園設立の裏にはある目的があるのだ・・・


物語の語り手は高校2年生の島津今日子。
島津公爵家一族の端くれに連なる身である。
今日子の友人として登場する葉月茉莉衣、
そして古野みづきを加えた3人が探偵役となる。

時は12月、クリスマスを前に定期試験(3年生にとっては卒業試験)が
終わり、その結果が発表される。

そして、3年生の試験結果に今日子たちは驚く。
今まで常にトップを独走してきた三枝美保が二位になり、
万年二位だった紙谷伸子が首位を奪ったのだ。

そして美保と伸子は、上位二人だけに与えられる
「特別試験」に臨むことになるのだが、
その試験の最中、二人は密室状態下で殺害されてしまう・・・


文庫で330ページほどの作品なんだが
死体発見が200ページほど進んだあたりとかなり遅い。
それは、上にも書いたが学校の置かれた状況があまりにも特殊で、
しかもカリキュラムも特殊、当然教員も特殊、試験内容も特殊。
でてくるキャラクターもまた特殊な人たちばかりなので
そのあたりを説明したり紹介したりしているうちに
これくらい経ってしまうのだ(笑)。

もっともそこは達者な作者なので、
殺人に至るまでの部分も飽きさせることなく、面白く読ませるが。

事件が発生してからは、なぜか今日子たち3人が
謎解きをする羽目になるのだが
今日子は<フーダニット>、茉莉衣は<ホワイダニット>、
そしてみづきは<ハウダニット>と、それぞれ得意分野を持ち、
分担して真相に迫っていく過程も面白い。


しかしラストで明かされる真相は・・・。
たいていの人は「いくらなんでもこれはないだろう」
って思うだろうなあ・・・。

ただまあ、あまり腹が立たないのは不思議だが、
そこに至るまでの状況が特殊すぎて
感覚がおかしくなっていたからかも知れない(笑)。


このシリーズ、こんなふうなのが続くのなら困るなあ
・・・って思ったんだが、第2作を読んだら少し評価が変わった。

第2作は「ぐるりよざ殺人事件」といって
なんと文庫で700ページ近い大作。
この作品は、本作に輪をかけて特殊な状況下で事件が起こるんだが
その背後には、本作で登場した設定が大きなウエイトを占めている。

つまり、第1作である本書は「シリーズ全体の設定を説明する」のが
最大の目的なのかも知れないのだ。

「ぐるりよざ殺人事件」を第1作にすると、設定説明を含めて
1000ページくらいになってしまうからね(笑)。

それを回避するために、設定説明の部分を分離し、
作品として形にするために新たに殺人事件を付け加えて
一本の長編に仕上げたんじゃないか、って勝手に思っている。

そして、あまりにも "意外" な真相を提示することで
このシリーズが "普通のミステリ" ではない、ってことを
読者に印象づけているのではないかな。

そして「ぐるりよざ殺人事件」は、
それだけのことをするに値する出来になっていると思う。
こちらもそのうち記事に書く予定。

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かくして殺人へ [読書・ミステリ]


かくして殺人へ (創元推理文庫)

かくして殺人へ (創元推理文庫)

  • 作者: カーター・ディクスン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/01/28
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

ヒロインは牧師の娘モニカ・スタントン。
生まれ育った村をほとんど出ることもなく22歳になった彼女は、
こっそり小説を書き上げ、出版社に持ち込んだ。

その処女作は大ヒットを飛ばし、映画化の話まで持ちあがるが
そのことを家族に知られ、村を飛び出してしまう。
内容が、牧師の娘にしてはあまりにも "はしたない" 話で
それを知った伯母に責められたからだ。

モニカはロンドン近郊の映画スタジオにやってきた。
彼女の作品を映画化するプロデューサーに会い、
その脚本を書かせてもらおうと思ったのだ。
しかし彼女に与えられた仕事は、他人の作品の脚色だった。

不本意ながら執筆をはじめた彼女は、なぜか命を狙われるようになる。
スタジオの中のセットで硫酸をかけられそうになったり
銃で撃たれたり(もちろん外れるんだが)。

モニカと共に働いている探偵小説作家ウィリアム・カートライト。
密かに彼女に惚れ込んでいたウィリアムは、犯人を見つけるために
名探偵ヘンリ・メリヴェール卿(H・M)に会いに行くが・・・


今回はタイトル通り、なかなか殺人事件が起きない。
もし起きたらその時点でヒロインが死んでしまうからね(笑)。

犯人あてミステリなので、もちろん「誰が」がメインなのだけど
怪しい人物はたくさんいる。
映画会社の社長、プロデューサー、監督、助監督、女優、脚本家・・・
芸能の世界に生きてる方々は、洋の東西を問わず
エキセントリックな性格の人が多いようで・・・

時はまさに第二次大戦の真っ最中(本書の発表は1940年)。
夜には爆撃に備えて灯火管制も敷かれるという非常時の中で
殺人に手を染めようという人物が跳梁するわけだ。
さらには、スタジオ内にドイツ軍のスパイがいるんじゃないという
噂まで出回るようになり、事態は混迷していく。

そして毎回のことだが、ラブコメ要素も楽しい。
出会った時の第一印象はお互いに最悪だったモニカとウィリアム。
この二人の仲がなかなか進行しそうでしないところもうまい展開だ。

こんなふうに、常に何か新しいことが起こっていって
読者を最後まで飽きさせない。
ストーリー・テラーの腕前については定評のあるカーだからね。

そしてラストにおけるH・Mの謎解きで
もつれた糸がするすると解けていく。
とくに、モニカがスタジオにやって来た早々から
大きな伏線が張られていたことが明かされると、思わず
「えー、あそこで!」と叫んでしまいそう(叫ばなかったけどww)。
そしてそれが彼女が狙われる理由にもつながっていく。

今回は密室はないけれど、不可能犯罪はしっかりある。
中盤過ぎで、誰も手を触れなかったはずの煙草の箱の中に
毒入り煙草が混入されるという事件が起こるのだ。
この謎解きもお楽しみ。

コミカルに見えるシーンにもしっかり手がかりが隠されてるんで
ホントに油断がならない。とにかく読んで楽しいミステリだ。

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