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SF JACK [読書・SF]

SF JACK (角川文庫)

SF JACK (角川文庫)

  • 作者: 新井 素子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/02/25
  • メディア: 文庫



評価:★★★

「日本SF作家クラブ50周年記念出版」として刊行された
全編書き下ろしアンソロジーの文庫化。

単行本時には瀬名秀明の作品も入っていたらしいが文庫版では削除。
瀬名氏は、単行本の刊行時に日本SF作家クラブ会長だったけど
その後会長職を辞し、同時に日本SF作家クラブも退会してしまった。

 その辺の経緯は、ネットを漁るといろいろ書かれてるけど
 所詮、噂話の域を出ないので真相は不明。

瀬名氏の作品が削除されてる理由がそれなのかは分からないが。

日本のSFは一時期の冬の時代を乗り越え、
再び活況を呈しつつあるらしいが、出版不況はSFも直撃してる。
「SFマガジン」も隔月刊になってしまったしねえ・・・


「神星伝」冲方丁
 東京創元社の年刊ベストSFアンソロジーで既読。
 遠未来の太陽系を舞台にして、さまざまなSFガジェットで
 過剰なまでに装飾されているけど、ストーリーだけを追えば
 ある日突然侵入してきた外敵に対し、主人公の少年が
 幼なじみの少女に導かれ、封印されていた巨大ロボットを覚醒させて
 世界と少女を守るべく出撃していく・・・
 描かれているのは主人公の鬱屈した思い、母との死別、
 ボーイ・ミーツ・ガール、そして自らの出生の秘密を知ったことで
 平穏な日々は終わり、少年に旅立ちの時が訪れる。
 時と場所は変わっても物語の王道展開は不変ということか。
 大河ロボットアニメの初回1時間スペシャルみたいで
 ぜひ続きを読みたくなる。冲方さん、いつか書いてください。

「黒猫ラ・モールの歴史観と意見」吉川良太郎
 ギロチンで切断され、井戸に放り込まれた生首と
 人語を解する黒猫が、滅んだ人類について語り合う話。
 うーん、よくわかりません。

「楽園(パラディスス)」上田早夕里
 憲治が愛していた女性・宏美が交通事故で死亡した。
 残された宏美のライフログをすべて
 "メモリアル・アバター" に読み込ませ、
 宏美の疑似人格を作り出して会話を続ける憲治だが・・・
 VRの進歩イコール人類の進歩ではないねぇ。
 過去に囚われたままの人間もでてきそうだ。

「チャンナン」今野敏
 沖縄空手の伝承者である "俺" が迷い込んだ奇妙な世界。
 1970年代によく見たような話だなあ。
 日本SF50年周年の記念出版で
 こういう話を堂々と書いてしまうというのも
 ある意味度胸があるのかなあ。

「別の世界は可能かもしれない」山田正紀
 これも1970年代なら「ミュータント・マウスの反乱」なのだろうけど
 2010年代に山田正紀が書くとこうなる、ってことか。
 大長編の序章みたいなのだけど、続きが読みたいような
 読みたくないような・・・(笑)。

「草食の楽園」小林泰三
 漂流している宇宙船がたどり着いたのは、"忘れられたコロニー"。
 そこは非武装無抵抗の人々(つまり "草食系" ってこと?)
 が暮らす、争いのない "楽園" だった。
 しかしそこに凶悪な "盗賊" が現れて・・・
 結局、人類は理想的には生きられない、ってことなのか。

「リアリストたち」山本弘
 食事や運動どころかセックスさえもVR世界で体験できる世界。
 人々はみな生身の体験を "忌避" して生きるようになっていた。
 しかしごく一部だが、「リアリスト」と呼ばれる
 "生身の生活" を送る者たちもいた。
 VR世界で暮らす主人公の "私" は、そんなリアリストの一人と
 "生身" で会うことになるが・・・
 これも21世紀ならではのSFか。
 内容も、今なら「えーっ」て驚くけど、
 10年後は笑えないかもしれないなぁ。

「あの懐かしい蝉の声は」新井素子
 人類のほとんどが "第六感" を持つようになった世界。
 "第六感" とは、生身のまま
 ネット上の電子データにアクセスできる能力のこと。
 (スマホがアタマの中に入ってるようなものか)
 生まれつき "第六感" を持たないため、
 "障害者" として扱われてきた主人公は、
 外科手術によってそれを手に入れるが・・・
 これも、何年か後にはチップを体内に埋め込んで
 網膜上に直接映像を投影するとかの技術革新で
 実現してしまうんじゃないかな・・・
 そのとき、世界はどのように変化して見えるのだろう。

「宇宙縫合」堀晃
 この10年間の記憶を失った "私" の前に現れた刑事。
 彼らが示した写真には、"私" の死体が写っていた・・・
 久しぶりの堀晃。ハードSFってのも読まなくなって久しい。
 1980年代の頃は、こういう作品もかなり "出回ってた" ような。

「さよならの儀式」宮部みゆき
 「神星伝」と同じく東京創元社の年刊ベストSFアンソロジーで既読。
 耐用年数を遙かに超えた家庭用ロボットと、
 すっかり情が移った使用主との涙の別れを描く感動物語・・・
 と思わせておいて、逆転の背負い投げ一本。

「陰態の家」夢枕獏
 "妖異祓い" を生業にする傀儡(くぐつ)屋・多々良陣内が
 "妖怪屋敷" に巣くうあやかしに挑む話。
 夢枕獏ってSF作家というより
 バイオレンス・ホラー・アクション作家というイメージ。
 本作もSFではなくてホラーだなあ。
 夢枕獏に文句があるわけではないし、ホラーを貶すつもりもないけど、
 仮にも「日本SF50周年記念アンソロジー」のトリが
 これというのはいかがなものかなぁ。
 SFというジャンルの間口の広さを示したかったのかも知れないけど
 他の10篇が、程度の差はあれ「いかにもSF」な作品だっただけに
 ここはあえてSF色の強いものが欲しかった気も。


「楽園(パラディスス)」「リアリストたち」「あの懐かしい蝉の声は」
と、本書にはIT技術の進歩がテーマの作品が3作収録されてる。
これも時代なのだろうけど、
揃いも揃ってどれも明るい未来でないのはなぜだろう。

技術革新が早すぎて、10年後もわからない未来に対して
みんな不安なのかなあ・・・私も不安だけどね(笑)。


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折り紙衛星の伝説 年刊日本SF傑作選 [読書・SF]

折り紙衛星の伝説 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

折り紙衛星の伝説 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/06/29
  • メディア: 文庫



評価:★★★

2014年に発表されたSF短編から選ばれた17編と、
第6回創元SF短編賞受賞作1編を収める。
今年は、けっこう楽しめたのが多かったかなあ。

○面白く読めたもの 6編

「10万人のテリー」長谷敏司
 人類に害をなす超高度AIの攻撃から社会を守る、
 IAIA(国際人工知能機構)のエージェント・紅蛍(ホンイン)の
 活躍を描くSFアクション。
 こういう分かりやすいのが好きなんだ。

「雷鳴」星野之宣
 安定の星野之宣。恐竜の体に秘められた "謎" を描く。
 昔、同じ題名のマンガ書いてたような。内容は全然違うけど。

「折り紙衛星の伝説」理山貞二
 SFの楽しさを思い出させてくれる作品。

「スピアボーイ」草上仁
 カウ(牛)ならぬ、"スピア" という宇宙生物の群を世話する男たち。
 まんま西部劇です。

「わたしを数える」高島雄哉
 SF版「番町皿屋敷」。
 電脳化された仮想空間で、皿を数え続けるAIお菊さんの話。
 この発想はすごい。

「イージー・エスケープ」オキシタケヒコ
 "逃がし屋"・イージィが活躍するスペースオペラ。
 今風な味付けがよくできてる。


○いまひとつかなあ・・・8編

「猿が出る」下永聖高
 ある日、"僕" の目の前に猿が現れる。
 そしてそれは "僕" にしか見えないらしい。
 筒井康隆が書きそうな不条理劇だけどだんだんSFっっぽくなる。
 私はこの手の話は好きでないみたい。

「再生」堀晃
 入院した経験がある人(私もそうだが)なら、他人事に思えない話。
 病院に縁がない若い人なら楽しく読めるかも知れないけど、
 私くらいの年齢になるとねえ・・・

「ホーム列車」田丸雅智
 ショートショート。あまりにバカバカしい発想なんだけど
 それがいいんだろうな。

「薄ければ薄いほど」宮内悠介
 終末期の患者を集めたホスピスで取材する
 "わたし" が出会う患者たち。
 長年の闘病の末に父親を見送った身には
 いささか考えさせられる内容ではある。
 ただ、疑似科学に頼る治療はやっぱり許されない。

「教室」矢部嵩
 狂った教室のカオスな授業風景。
 これも初期の筒井康隆が書きそうな作品ではある。

「一蓮托生(R・×・ラ×ァ×ィ)」伴名練
 超常の力を持つ双子の女の子が暴れ回るんだけど
 "萌え" 要素はナシ。

「緊急自爆装置」三崎亜紀
 個人が自爆装置を持ち歩き、必要に応じて(?)自爆する世界。
 これも筒井康隆が書きそう。
 筒井康隆ってつくづくスゴい作家だったんだね。

「加奈の失踪」諸星大二郎
 ラストまで読むと分かるけど、脱力ものの実験作。
 これもSFなんだから、SFって間口が広いジャンルだよねえ。


○すみません、よくわかりません 3編

「φ」円城塔
 やってることはわかるんだけど、
 それがさっぱり面白く感じられない。
 やっぱこの人とは相性が悪いみたい。

「「恐怖の谷」から「恍惚の峰」へ ~ その政策的応用」遠藤慎一
 「恐怖の谷」っていってもホームズじゃありません。
 言いたいことはわかるんだけど、それが面白く感じられない。
 論文形式ってのは凝ってるだけど。

「環刑錮」酉島伝法
 生理的にダメ。身体が受け付けません。


第6回創元SF短編賞受賞作
「神々の歩法」宮澤伊織
 突然、超常の "力" を得て、世界に破壊と殺戮をもたらした男。
 彼を倒すため、12人の特殊部隊が潜入する。
 "燃え" も "萌え" も入ってて、
 本書の中ではいちばん分かりやすく(笑)、かつ楽しい。
 「新しいものがない」っていう選評には同意するが、
 エンターテインメントとしては充分な出来。
 大河ドラマの序章みたいで、続きが読みたくなる。


序文によると、2007年発行の第1巻「虚構機関」の頃と比べると、
短編SFの発表数が増えてきて、どうやら "冬の時代" は脱した模様。

新人もたくさんデビューしてるみたいだけど、
さすがに追いかけきれない。
そういう意味では本書は貴重だね。


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ウルトラマンF [読書・SF]

ウルトラマンF (TSUBURAYA×HAYAKAWA UNIVERSE)

ウルトラマンF (TSUBURAYA×HAYAKAWA UNIVERSE)

  • 作者: 小林泰三
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/07/07
  • メディア: 単行本



評価:★★★★

「TSUBURA×HAYAKAWA UNIVERSE」
と銘打たれたコラボ・シリーズの第3弾。

まずは時代背景から。

ウルトラマンがゼットンとの戦いを終え、地球を去って1年。

世界各国は、ウルトラマンの不在を埋めるべく、
異星人や怪獣に対抗する戦力を拡充していた。
ウルトラ警備隊(地球防衛軍)の設立の準備も進んでいる。

つまり "『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』の間の時代" に
この物語は設定されているのだ。

国連軍所属の科学者・インペイシャントは、
巨大昆虫怪獣から取り出した "血清" を用いて
人間を巨大化させる「巨人兵」の研究をしていたが、
未だ成功していなかった。

科学特捜隊は、今でも通常兵器による怪獣駆除を行っていたが、
一方でかつてウルトラマンだった男・早田の
身体の秘密を探る実験も続けていた。

さらには、異星人のもたらした超技術・メテオールを応用した
対怪獣兵器の研究までもすすめていた。

 放送当時はカタカナ表記だった "ハヤタ" だが、
 本書では早田進(はやた・しん)として登場する。
 これ、最初は作者の独自設定かと思ったんだけど
 この文章を書くためにwikiを見てたら
 後付けながら、映画『甦れ!ウルトラマン』(1996年)で
 漢字表記&フルネームが設定されていたんだね。
 他の登場人物も皆、この映画の設定に沿って表記されている。

しかし、早田に与えられる過酷な実験を看過できなくなった
富士明子隊員は、それを中止させようとして事故に遭遇、
自らの体が巨大化してしまう。

それは、かつてメフィラス星人によって
巨大化させられた姿と同じだった。
(TV放映第33話「禁じられた言葉」でのエピソード)

幸い巨大化は短時間で元に戻ったものの、
明子の身体を調べた井手は、巨大化を制御するシステムが
彼女の中にいつのまにか構築されていたことに驚愕する。

 本来、不可能である巨大化をうまく(それらしく)
 理屈づけて説明する下りはとてもよくできている。
 さすがは名作『AΩ』(アルファ・オメガ)の作者だ。

国連軍そしてインペイシャントは、
科学特捜隊に対して研究成果の引き渡しと
国連軍との共同研究・共同作戦を要求してきた。

不本意ながらもこれを受け入れる科学特捜隊。
しかしそんな彼らの前に次々と怪獣たちが来襲する。

そしてその戦いのさなか、巨大な炎に包まれる明子。
しかし彼女は、渦巻く炎の中から
白く美しい巨体をまとって現れるのだった・・・


さて、本書の主役は誰かと問われたらちょっと考えてしまう。

早田はもう、ウルトラマンではないし、
ウルトラマンと融合していた期間の記憶もない。
身分こそ隊員のままだが、実質は "研究対象" なので、
もちろん現場にも出てこれない。

明子は、いろいろな偶然が重なって
"ウルトラマンの力" を手に入れてしまうが、
どちらかというと状況に流されるまま
戦わざるを得ない羽目になっていく役回りで、
主役と言い切るにはちょいと抵抗がある。

個人的には、登場シーンおよび台詞の多さ、
ストーリー上の役回りからいうと
主役は井手隊員じゃないかなあと思う。

ウルトラマンなき世界で、ウルトラマンの力を求める人間たち。
それも純粋な防衛のためではなく、
思惑・陰謀・策略がその根底にはある。
その中で苦悩する井手の姿も読み所の一つではある。

明子との仲も、こんだけいろいろなことが起これば
恋愛関係になってもおかしくないだろう、とも思うんだが
井手にとって明子はあくまでも大事な仲間で、それ以上ではない。

そしてそれは明子の側も同じ。
早田に対してはやや思い入れがありそうだが、
それでも "仲間を超えた関係" にはならない。
このあたりは、TVシリーズの設定を踏襲しているのだろう。

村松隊長の台詞を読んでると
小林昭二氏の声で脳内再生されるのがちょっと悲しいが。

出番が少ない早田も終盤ではちゃんと登場して物語を締める。

物語が進行するに連れて、
どんどん人間から遠ざかっていく明子嬢。
もう彼女に平穏な "普通の女の子" としての日々は
帰ってこないのか?
ちゃんとお嫁にいけるのか?(笑)

読んでいると、だんだん年頃の娘を持つ父親の心境になってしまうが
ラストに至り、作者は広げた大風呂敷をきれいに畳んでみせる。
その "畳みぶり" も読みどころだ。


細かいところでは、
科学特捜隊の嵐隊員とウルトラ警備隊のフルハシ隊員には
(どちらも毒蝮三太夫が演じている)
実は意外な関係が隠されていたりと
(たぶんこのへんは作者のお遊び)
ウルトラシリーズをずっと見てきた人からすると、
うれしい小ネタがたくさんある。

ウルトラシリーズのファンの人、かつてファンだった人、
どちらにも楽しい読書の時間を約束してくれる本だ。


最後に余計なことを。

最初にタイトルを見たとき、「F」って何だろうって思った。
Flash かと思ったがそれじゃイナズマンだし(笑)  ←古いねぇ
Female かなとも思ったんだけど、
やっぱり順当に Fuji Akiko の「F」なんだろなあ。


さらに余計なこと。

下世話なことだが、明子嬢が巨大化したとき、
彼女の着ていた服はどうなったんだろう?
って疑問に思った人はいませんか。
私は思いましたよ(おいおい)。

じゃ、どうなっているのか?
気になる人は読みましょう(笑)

一つだけ言っておくと、よい子のみなさんは
そんなことを気にしてはいけないのですよ(笑)


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オービタル・クラウド 上下 [読書・SF]

オービタル・クラウド 上 (ハヤカワ文庫JA)

オービタル・クラウド 上 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 藤井太洋
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/05/10
  • メディア: 文庫




オービタル・クラウド 下 (ハヤカワ文庫JA)

オービタル・クラウド 下 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 藤井太洋
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/05/10
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

時に2020年12月。

 順当にいけば東京オリンピックも終了している(はず)。

主人公の一人・木村和海(かずみ)はフリーランスのWeb制作者。
渋谷のシェアオフィスで、流れ星の発生を予測するWebサイト
<メテオ・ニュース>を運営している。
そしてもう一人は沼田明利(あかり)。
彼女もフリーランスのITエンジニアで、
和海とおなじシェアオフィスで働いている。

和海は、各国のロケットの追跡もしていた。
打ち上げで生じたスペースデブリもまた
流れ星の "もと" になるからだ。
ある日、彼はイランが打ち上げた
ロケットブースターの2段目<サフィール3>が
大気圏内に落下することなく、高度を上げ続けていることに気づく。

折しも、著名な起業家ロニー・スマークは、
自ら立ち上げた民間宇宙ツアーのPRイベントとして、
娘とともにISS(国際宇宙ステーション)へ向かおうとしていた。

明利の協力を得て、<サフィール3>の軌道を解析した和海は、
宇宙空間を舞台にした壮大なテロの可能性に気づく。

この "スペーステロ" の首謀者は、
かつてJAXA(宇宙航空研究開発機構)の職員だった白石蝶羽(あげは)。
北朝鮮の後ろ盾で実行するこの作戦で、
彼は自らの "ある野望" を実現しようとしていた・・・

日本政府、JAXA、そしてCIA、アメリカ空軍、etc
様々な組織の様々なキャラクターが登場する。

その中にあって、
和海と明利はこのテロ計画にいち早く気づいたことで
図らずも計画阻止のキーパーソンとして活躍することになる。

本書にはジェームズ・ボンドのようなスーパーヒーローは登場しない。
科学者も軍人も諜報員も、その道のエキスパートではあるけれど
一人でこの事件を解決できるような活躍はしないし、できない。

主役の二人も、普通のIT技術者だ。
もちろん、自ら銃を持って戦ったりしないが
その代わり、彼らの本分である思考力と技術を存分に発揮して
国際的なテロ計画に立ち向かう。

しかし、蝶羽の計画はカンペキで、
クライマックスでは、テロの完遂まで目前に迫る。
絶体絶命の危機かと思われたときに、
和海が繰り出す "一手" が本書の白眉だ。

「そうか、その手があったか!」
読んでいて思わず叫びそうになったよ(叫ばなかったけどwww)

まさに "起死回生" のアイデアで、
このあたりのストーリー展開には唸らされた。

これだけでも本書は読む価値があると断言してしまおう。


今回、テログループが "悪用" した "発明" も、
使いようによっては限りない未来を開く夢のツールとなりうる。

「科学技術は、使う人の心によって幸福も不幸ももたらす」

昔から使い古され、言い尽くされてきたテーマだけど
現代科学文明の最前線における事象とテクノロジーの
オンパレードだったこの物語が、
すべてが終わったエピローグにおいて、この言葉に帰着する。

私くらいの年代にとっては、それが
ちょっとホッとするものを感じさせるのでした。


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小説 君の名は。 [読書・SF]


小説 君の名は。 (角川文庫)

小説 君の名は。 (角川文庫)

  • 作者: 新海 誠
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/メディアファクトリー
  • 発売日: 2016/06/18
  • メディア: 文庫



いま、巷で話題の映画を
監督自らの書き下ろしでノベライズしたもの。

文庫で250ページほどで、しかも
内容はほぼ映画の内容をなぞっているので
映画を観た人ならば、いろいろなシーンを頭の中に甦らせながら
すいすいと読めてしまうだろう。
映画にあって小説にないシーンはちらほらありそうな気もするが
小説にあって映画にないシーンはほとんどないんじゃないかなあ。

活字で書いてあるぶん、
台詞で聞き落としたところが再確認できて
より理解できるようにはなってるとは思う。

この映画を観た知人が漏らしていた
「面白かったんだけど、○○○が分かりにくかった」
(ネタバレ防止のため伏せ字)って言ってたけど
その疑問もたぶん解けるだろう。
映画を観て、もしも疑問を感じるところがあったら、
その全部ではないがかなりの部分は解決するかも?

しかし本作は、映画の答え合わせのための小説ではもちろんない。
小説ならではの良さももちろん兼ね備えている。

小説版では瀧の一人称と三葉の一人称が交互に進行する。
映像では表情や仕草でしか示されない二人の内面や心理描写も、
文章で、言葉で描かれるのだ。
これはやはり活字のいいところだろう。
この監督は映像が本業のはずなのに、文章も達者だ。

とくに終盤、三葉が駆けるシーンが特筆もの。
彼女は疲労困憊、満身創痍になりながらも、走り続ける。
走りながら、彼女の中をさまざまな思いが駆け巡る。
自分のこと、"彼" のこと、そして "自分たち" のこと。
もう一度 "彼" と巡り会うために、自分は走っているのだと。

章のタイトルがまたいい。
「うつくしく、もがく」
まさに、運命の人に再会するために若い二人が
必死に "もがく" さまが綴られる。
そんな君たちに、映画館では泣かされたんだよねえ・・・

このあたり、映画のシーンとオーバーラップして
再びこみ上げてくるものを感じた。
いやはや、新海監督は映像もすばらしいが文章も絶品だ。


個人的には、映画など映像作品のノベライズは
映像で表現された以外の情報を
(登場人物の過去とか、裏設定とか、エピソードの追加とか)
じっくりと書き込んでもらって、
質/量ともに読み応えのあるものがいいと思っている。

だけど、今作に限ってはあれこれ足さずに
映画の内容をすっきりとまとめた今回の作りは正解だと思う。

まあ、「もうちょっと説明してくれよ」って
思うところもなくはないんだが
観客/読者の想像に任せる部分を残しているぶん、
余韻があっていいような気がする。

たとえば私の想像だと
(たぶん、映画を観た人の大半はおんなじ想像をしたと思うんだけど)
かつて三葉の両親の間にも、
三葉と瀧のような入れ替わりがあったんじゃないか・・・
もしそうならば、終盤の展開もすんなりと腑に落ちるんだよね。

ま、そこまで詮索するのは野暮ですかねぇ・・・


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UFOはもう来ない [読書・SF]

UFOはもう来ない (PHP文芸文庫)

UFOはもう来ない (PHP文芸文庫)

  • 作者: 山本 弘
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2016/03/09
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

地球は監視されていた。
自らを<スターファインダー>と呼ぶ異星生命体によって。
そして今、彼らはある "決断" をしようとしていた。

TVディレクターの大迫、ADの明日辺、源田、
そしてカメラマンの薪家の4人組は
怪しげな番組をでっち上げて日銭を稼いでいる。
彼らは在野のUFO研究家・木縞千里を誘い、
新興宗教団体DSIを取材するために大阪へやってきていた。

そのころ、観察のため地球上空へきていた
<スターファインダー>の一人(一体?)・ペイルブルーの乗った宇宙船が
スペースデブリの直撃によって京都の山中へ不時着してしまう。
彼女(?)はそこに居合わせた小学生3人組、
雄飛(ゆうひ)・英(ひで)・幸太(こうた)に見つかり、保護(?)される。

3人は大迫たちに連絡を入れ、助力を仰ごうとするが
その寸前、異星人の存在を知った
DSIの教祖・龍彫蔵人(りゅうぼり・くらんど)の一味によって
ペイルブルーは拉致されてしまう。

かくして小学生たちと大迫たちは
囚われの異星人を奪還すべく、立ち上がるが・・・

ストーリーはいたってシンプルながら、
本書は文庫で750ページ近い厚さを誇る。
何でそんなに分厚いのかというと、
UFOにまつわる様々なネタに関する蘊蓄がハンパないのである。
もともと「トンデモ似非科学」に造詣の深い作者のこと、
例えばUFO写真の真贋ひとつとっても延々と語ってみせる。
こういう要素は、悪くとれば物語の流れを分断してしまうのだけど
この "脱線" がまためっぽう面白いんだなあ・・・

新興宗教も出てくるが、
人はなぜ、「明らかに胡散臭い」と思われるものでも
信じてしまうのか。
このあたりも作者はいろいろ書いてる。このへんも必読だと思う。

この蘊蓄部分をそっくりなくしてしまえば、
本書はこの半分の厚さに収まると思うんだけど、
それでは本書の魅力は半減してしまうだろう。
「似非科学批判」の入門書としても最適なところも
本書の "売り" だろう。


主役となる異星生命体<スターファインダー>の立ち位置は、
「未発達の文明には不介入、行うのは観察のみ」
恒星間航行を可能にした彼らからすれば、
人類は未開の蛮族であり恐怖の対象ですらあったりする。

物語が進むにつれて、人類の価値観とは相容れない生態、
そして彼らが下そうとしていた "決断" の内容が明らかになるが
それを知った主人公たちの行動もまた読みどころ。
このあたりも「ファースト・コンタクト」ものとして良くできてる。


基本的には「山本弘版ET」なのだけど、ラストの展開に至って、
クラークの「幼年期の終わり」をも彷彿とさせる作品へ変貌する。

UFO or 異星人の存在を信じるか信じないか、
人それぞれだとは思うけど
この世に「UFO」という言葉が存在している以上、
一度は読んでおいて損はない本だと思う。


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大帝の剣 全4巻 [読書・SF]

本書から、4月下旬読了分に突入(笑)。


大帝の剣 (1) (角川文庫)

大帝の剣 (1) (角川文庫)

  • 作者: 夢枕 獏
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/01/23
  • メディア: 文庫




大帝の剣 (2) (角川文庫)

大帝の剣 (2) (角川文庫)

  • 作者: 夢枕 獏
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/01/23
  • メディア: 文庫




大帝の剣 (3) (角川文庫)

大帝の剣 (3) (角川文庫)

  • 作者: 夢枕 獏
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/03/25
  • メディア: 文庫




大帝の剣 (4) (角川文庫)

大帝の剣 (4) (角川文庫)

  • 作者: 夢枕 獏
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/03/25
  • メディア: 文庫



評価:★★★

文庫4巻で総計2100ページあまり。
執筆期間も長く、第1部「天魔降臨編」の刊行が1989年。
完結編となる第8部「聖魔地獄編」の刊行が2012年。
なんと足かけ24年くらいかかっている。
もちろん長い中断期間を挟んでいるけど。

本書の存在自体は知っていたけど、
今まで手にしなかったのは未完だったから。

 大長編の場合、続巻の刊行を待ってその都度読むより
 全巻完結してから一気読みする方が好きなので。

今回、角川文庫からまとめて文庫化されたのを機に読んでみた。


時代は大坂夏の陣から23年、徳川の治世。

主人公は身の丈2メートルを超える堂々たる肉体に
巨大な長剣を背負った、その名は万(よろず)源九郎。

 織田信長の全盛期に、献上された黒人がいたが
 彼が日本で為した子(つまりハーフ)という設定である。

気ままな旅の途上にある源九郎だが、
ある山中で赤い簪を拾ったことから物語が動き出す。

簪の持ち主である娘・舞(まい)は豊臣秀頼の血を継ぐ身。
彼女は真田の忍びたちに護られながら、江戸を目指していた。

 ちなみに彼女の護衛を務める忍びの名は才蔵と申(さる)。

しかしながら、舞には徳川の世で生きる場所はない。
彼女の存在を察知した伊賀忍群が彼女を襲う。

逃げる彼女の一行が、ある山中で出会ったのは
天空より舞い降り、強烈な光を放つ "船"。
それに乗っていたのは異星人のラン。
ランもまた、母星の勢力から追われる身であった。

ランは地球人である舞の肉体に憑依することになり、
"舞=ラン" は、地球人からも異星人からも
追われる身となってしまう。

"舞=ラン" を護って戦う道を選んだ源九郎、
舞を追う伊賀者、ランを追う異星人たち。
不思議な三つ巴の戦いが始まる。


これがおおまかなストーリーなんだけど、
ここに多彩なゲストが参戦してくる。

山田風太郎ばりの超絶な忍術を駆使する伊賀の一派、土蜘蛛衆。
真田忍びの総帥は、夏の陣で死んだはずの真田幸村。
島原の乱から生き延びた天草四郎。
そして天草四郎抹殺の密命を帯びた宮本武蔵。
なぜか死の淵から甦った佐々木小次郎。
そして事態の推移を高みから見つめる柳生十兵衛。
地球人に憑依した異星人たちも、驚異的な再生能力を誇り、
不死身の刺客として源九郎たちの前に立ちはだかる。

驚くべきことに、執筆に24年もかかっているのに
作品中の時間はごく短い。たぶん1週間くらい。
舞と源九郎が江戸へ向かう途中、美濃あたりの山中で
延々と物語が語られるのだ。

それも真田忍びvs土蜘蛛衆とか
天草四郎vs武蔵とか武蔵vs小次郎とか
要するにいろいろな対決が次々と起こり、超絶の技の応酬が描かれる。
読者を飽きさせないのはいいのだけど、気がつけば
肝心の源九郎があんまり活躍してないような・・・

私はこの作品を「ヒロイック・ファンタジー」だと思って読んでたので
源九郎が大剣を振るってばったばったと敵をなぎ倒すシーンが
たくさんあるものだと思ってたけど
意外とそんなシーンは少ない。
この作品の評価が今ひとつなのもそこが原因のひとつ。

異星人たちも実は太古の時代から地球に飛来しており
ずっと地球に潜んでいた異星人も存在する。
源九郎の持つ大剣も、オリハルコンなる特殊な物質で出来た
"三種の神器" の一つであることが明かされる。
この "神器" の争奪戦も後半の物語のテーマとなっている。

江戸へ向かう舞の "目的" は何だったの? て思うところも。
だいたい真田幸村が舞を江戸に呼んで
何かをさせるつもりだったのが、もともとの発端だったはず・・・


えっと、文句ばっかり書いているようだけど
決して本書はつまらなくない。むしろ面白い。
個々のシーンはとても良く出来ているしハラハラするし
読んでいて楽しいのは間違いない。

だけど、最後まで読んでみたら
なんとなく消化不良感が残るんだよねえ・・・
それはやっぱり、全体を通じたストーリーが
よく分からないまま終わってしまうからだろう(^^;)

途中までは山田風太郎的な剣豪/忍者小説なんだけど
終盤に来ると今度はかなりSF色が濃くなってくる。
それまでにもちょくちょくそれっぽい伏線は張ってあったんだけど、
"山田風太郎" のまま最後まで押し切ってしまった方が
すっきりして良かったようにも思う。

とはいっても、
20年越しくらいの作品が完結して、それを一気読みできて、
それなりに楽しめたのだから、よしとしようかな。


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機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)11 不死鳥狩り [読書・SF]

機動戦士ガンダムUC (11) 不死鳥狩り (カドカワコミックス・エース)

機動戦士ガンダムUC (11) 不死鳥狩り (カドカワコミックス・エース)

  • 作者: 福井 晴敏
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/03/23
  • メディア: コミック



評価:★★★☆

1988年公開の映画「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」。
宇宙世紀0093における "シャアの反乱" を描き、
アムロとシャアの戦いに決着がついた。

その3年後、宇宙世紀0096を舞台に描かれた新しいガンダムが
福井晴敏氏による「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」。
このブログにも感想の記事をアップした。

小説は全10巻で完結し、それを原作としたOVAシリーズも全7巻で完結、
現在はOVAを再編集したものがTVアニメとして放映されているらしい。

 終盤で、やや尻すぼみ感のあった小説と異なり、
 OVA版はかなり見応えのある映像に加えて、
 原作とは一部異なる展開もあり、私は充分楽しませてもらった。


この本を購入したのは、お茶の水の三省堂。
3月末にかみさんと出かけた折に見つけた。
「11巻」とあるので、「おーっ、続編が出たのか!」って思ったけど
実は番外編にあたる中編を2作収めたものだった。

 もっとも、帯に「また何かが始まりそうだ」(by福井晴敏)なんて
 書いてあるので、そのうちほんとに続編が始まるのかも知れない。

この本、4月2日に読み終わっていたのに、
まもなく6月になろうというこの時に
ちまちま記事を書いてるのはどうしてだ・・・・


「戦後の戦争」
 宇宙世紀0094。
 機密情報を持ち出した連邦軍士官を追うダグザ少佐、
 ネオ・ジオンによる襲撃事件を調査するブライトなど、
 UC本編のキャラたちも多く登場し、
 アナハイムが開発した試作MS「シナンジュ」が
 フル・フロンタルによって強奪される事件を描く。
 「逆襲のシャア」の1年後を舞台に、
 「ユニコーン」の前日譚が綴られる。

「不死鳥狩り」
 連邦軍MSパイロットのヨナは、戦場で幼なじみのリタの姿を追う。
 同じ孤児院で育ち、ネオ・ジオン所属の養父母に引き取られていった
 彼女は、RX-O(ユニコーンガンダム)の3番機〈フェネクス〉の
 パイロットとなっていたのだ・・・
 「ユニコーン」本編の終盤、
 《ネェル・アーガマ》とネオ・ジオンによる
 最終決戦の直前に行われた、連邦軍による秘密作戦を描く。


発売が、福井氏が「ヤマト2202」のスタッフであることが
発表されたのとほぼ同時期なのは、まあ偶然だろう。

「ガンダム」といい、「キャプテンハーロック」といい、
「ヤマト」といい、最近の福井氏は、
長い歴史を持つ作品の "リブート" 役を務めることが
多くなってきたような。

オールCG版「キャプテンハーロック」はあまりにもアレだったが、
「ユニコーン」にしても賛否の声はあるようだ。
まあ、100人のガンダムファンがいれば
「俺のガンダム」も100通りあるんだろうからねえ。
2199の時も思ったが、リメイクやリブートをする人はたいへんだ。

でも、福井氏の手による「ヤマト」には、
けっこう期待してる自分がいる。がんばってほしいなあ。


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夜の底は柔らかな幻 上下 [読書・SF]

夜の底は柔らかな幻 上 (文春文庫)

夜の底は柔らかな幻 上 (文春文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/11/10
  • メディア: 文庫




夜の底は柔らかな幻 下 (文春文庫)

夜の底は柔らかな幻 下 (文春文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/11/10
  • メディア: 文庫



評価:★★★

舞台となるのは、パラレルワールドの日本。

サイコキネシスなどのいわゆる「超能力」を持つ者が
一般市民の中に多数存在する世界。
彼らは "在色者" と呼ばれ、"能力" を使った犯罪もまた多発している。

私たちの世界で高知県に当たる地域は、
<途鎖(とさ)国>という治外法権区域となっており、
日本の国家権力の及ばぬ "独立国" として入国が厳しく制限されている。

<途鎖国>に生まれ育ち、自らも在色者であるヒロイン・有元美邦は
身分を隠し、14年ぶりに故郷へ潜入する。

彼女の目的は、今はテロリストと化したかつての夫・神山を殺すこと。
しかし入国早々、彼女の前に立ちふさがったのは隻眼の男・葛城。
入国管理局次長である彼もまた、美邦とは因縁浅からぬ過去があった。

入国後の美邦の前には、一癖も二癖もある人物が次々と登場する。
美邦にとって在色者としての恩師だった屋島風塵、
彼女の親友だった医師・須藤みつき、
<途鎖国>の刑事・善法(ぜんぽう)、
ヨーロッパ帰りの殺人狂・青柳、
そして正体不明の謎の男・黒塚・・・

彼らもまた、それぞれの思惑を持って
<途鎖国>の山奥に潜む神山の元へと向かっていくのだが・・・


在色者同士が、"能力" を使って戦うシーンはけっこうハードで
往年の少年マンガを彷彿とさせる。
並行して、登場人物たちの過去のつながりや
抱えた事情も次第に明らかになっていき、
そのへんはさすがに恩田陸らしくうまく興味をつないで読ませる。

実際、下巻の途中までは私の評価は「星3つ半」あるいは
終盤の盛り上がりによっては「星4つ」もいくかな、
って思っていたんだけども・・・・

 これから本書を読もう、という方に忠告。
 下巻にある巻末解説(大森望)は読まないでおきましょう。
 読むのならぜひ読了後に・・・
 以下の文章は、解説の内容に触れてます。


「竜頭蛇尾」とまでは言わないが、
途中までの勢いに見合うラストだったかというとかなり微妙。
そう感じてしまう原因のひとつは大森望氏の解説にあったりする(笑)。

下巻の巻末解説で大森望氏が
「(ラストでは)平井和正『幻魔大戦』や大友克洋『童夢』に匹敵する
 一大サイキック・アクションが展開する」
なんて書いてるのは罪だと思うよ。
こんな風に煽られたら、いやでも期待してしまうじゃないか。

で、その結果は・・・いかに恩田陸が小説巧者でも
『幻魔大戦』を向こうに回しては分が悪すぎるよねえ・・・


ラストで明らかになるSFとしてのネタも、
そんなにびっくりするほどのことでもないように思う。
むしろ伝奇SFとしてはよくあるパターンではないかなあ。

それを「驚天動地のどんでん返し」なんて書くのは
もう贔屓の引き倒しじゃないかなあ・・・


 解説を書く人は作品を褒めなければならないんだろうけど・・・
 舞台が大森氏の故郷でもある高知なんで
 よっぽど嬉しかったんだろうなあ、というのは読んでてわかるが(笑)。


解説のことばかりあげつらってしまったけど、
私がいちばん不満なのは、クライマックスでの美邦の行動。
何を考えてああなったのか・・・少なくとも私には理解できない。

 ただ単に私のアタマが悪いだけかも知れんが。

続編を書く予定でもあるのかな・・・とも思ったけど
それにしたって、とりあえず文庫で上下巻、
合計で800ページ近い大長編なんだから、
それにふさわしい幕切れであってほしかったなあ・・・

というわけで、下巻の途中までは
「星3つ半」か「星4つ」かも、って思ってたんだけど、
終盤の息切れで「星3つ」になっちゃいました。

なんだか文句ばっかり書いてしまったけど、
下巻の途中まではホント面白かったんだよ。


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怨讐星域 全3巻 [読書・SF]

怨讐星域Ⅰ ノアズ・アーク (ハヤカワ文庫JA)

怨讐星域Ⅰ ノアズ・アーク (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 梶尾 真治
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/05/22
  • メディア: 文庫




怨讐星域Ⅱ ニューエデン (ハヤカワ文庫JA)

怨讐星域Ⅱ ニューエデン (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 梶尾 真治
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/05/22
  • メディア: 文庫




怨讐星域Ⅲ 約束の地 (ハヤカワ文庫 JA カ 2-16)

怨讐星域Ⅲ 約束の地 (ハヤカワ文庫 JA カ 2-16)

  • 作者: 梶尾 真治
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/05/22
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

近い将来、太陽フレアが膨張し、
地球に住む人類が滅亡することが判明した。

合衆国大統領・アジソンと、巨大財閥グループの指導者たちは
密かに巨大宇宙船『ノアズ・アーク』を建造し、
選ばれた3万人の人々と共に地球を脱出した。

彼らは船内で世代交代をしながら新天地を目指す。
目的地は172光年彼方の恒星系にある地球型惑星・エデン。

一方、滅亡の地に残された人々は、
アジソンと『ノアズ・アーク』を呪うしかなかった。

しかし、皮肉にもアジソンの娘・ナタリーの恋人だった学生イアンは
物質を空間転移させる技術の開発に成功し、
人々はそれを用いての決死の脱出に運命をかける。
転移先の座標もまた、惑星・エデンだった。

総人口の7割近い者が空間転移で地球を去ったが、
転移に成功した者はごくわずかだった。
その一握りの生存者たちにも次々と苦難が降りかかる。

技術レベルは狩猟生活時代にまで退行し、
凶暴な土着生物の襲来に脅えて暮らす日々。

彼らを支えたのは、自分たちを見捨てた者への怒り。
『ノアズ・アークに報復を!』
数百年後に現れるであろう "裏切り者" たちへの復讐を誓い、
子々孫々に渡り、彼らの "暴挙" を語り伝えていく・・・


物語は、二つに別れた人類の歴史を、連作短編の形式で描いていく。
地球で、宇宙空間で、そして惑星エデンで繰り広げられる
様々なドラマが全31編、文庫で総計1200ページに収められている。
雑誌・SFマガジンに、年に3~4作ずつ、
10年にわたって掲載された大作SFだ。

いくつか紹介してみよう。

いちばん気に入ったのはこれ。

「ハッピーエンド」
 看護師の妙(たえ)は、入院患者の世話をやめる決心がつかず、
 地球に残留することを選んだ。
 人口の激減した故郷で働いていたある日、
 妙は高校時代に憧れていた先輩・謙治に出会う。
 彼もまた地球に残っていたのだ。
 残留した人々がつくったコミュニティの中で、
 妙と謙治は様々な人間模様に出会い、
 やがて二人はある "決意" をする。
 純情なラブ・ストーリーなんだけど、
 二人の将来に待つ運命を考えると、切なさも極まってくる。

他にも印象的な話はたくさんある。短編の名手らしく、
それぞれ趣向を凝らした作品が揃っているけど、3つだけ挙げるなら

「閉塞の時代」は、『ノアズ・アーク』内に昆虫が存在しないこと
(昆虫を積み込む余裕も必要性もなかったため)
がテーマのユーモア溢れるドタバタ劇。

「減速の蹉跌」は、『ノアズ・アーク』が旅程の中間点にさしかかり、
加速から減速へ転じるエピソード。これもなかなか感動的。

「76分間の少女」は、
地球からエデンに向かって空間転移したはずの少女が、
なぜか『ノアズ・アーク』内に現れてしまう話。これも泣ける。


終盤では、いよいよ二つの人類の "接触" が描かれる。

『ノアズ・アーク』では世代が進み、次第にエデンが近づいてくる。
船内では上陸用シャトルの建造が始まっていた。

一方エデンでは、20世紀末くらいのレベルまで科学技術が復興、
人々は安定な生活を手に入れていた。

しかし、「『ノアズ・アーク』への報復」を掲げる
狂信的な指導者・アンデルスが首長に就き、
市民の皆兵化と軍拡が進められていた。

そしていよいよエデンの衛星軌道上に
『ノアズ・アーク』が到着した時、
彼らに巨大な "災厄" が降りかかってくる・・・


この壮大で長大な物語をどう締めくくるか。
かつての地球上のように、二つの勢力は "戦い" を選ぶのか、
それとも・・・・・

読みながらいろいろ考えた。

いちばんすんなりと丸く収めるには、
『ノアズ・アーク』とエデンの人々が
協力しないと乗り越えられないような "困難" を
設定することだろうなー、なんて思ったてんだが・・・

梶尾真治が選んだのは、
"現実的" で "オーソドックス" な結末。
SF小説で "現実的" というのも変だが、納得できる収め方ではある。

派手なスペクタクルを期待した人には
ちょっと物足りないかも知れないが
(私も最初そう思ったけど)
読み終わって少し時間が経ってみたら、
これがいちばんよい結末に思えてきたよ。


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