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18の奇妙な物語 街角の書店 [読書・その他]

街角の書店 (18の奇妙な物語) (創元推理文庫)

街角の書店 (18の奇妙な物語) (創元推理文庫)

  • 作者: フレドリック・ブラウン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/05/29
  • メディア: 文庫



評価:★★

SFにもミステリにも分類不能な
"奇妙な味" と呼ばれる作品を集めたアンソロジー。
読んでみて思ったが、私の好みに合う作品は少なかったなあ。
以下に題名と作者だけ紹介。それからひと言コメント。

「肥満翼賛クラブ」ジョン・アンソニー・ウェスト
 藤子・F・不二雄の短編に似たネタがあったような。

「ディケンズを愛した男」イーヴリン・ウォー
 ホラーというか怖い話。

「お告げ」シャーリィ・ジャクスン
 コメディですかね。

「アルフレッドの方舟」ジャック・ヴァンス
 面白いやら悲しいやら。

「おもちゃ」ハーヴィー・ジェイコブズ
 ファンタジーかなあ。

「赤い心臓と青い薔薇」ミルドレッド・クリンガーマン
 よくわからないんだけどたぶんホラー。

「姉の夫」ロナルド・ダンカン
 怪談。

「遭遇」ケイト・ウィルヘルム
 たぶんホラー。アメリカのTVドラマにありそう。

「ナックルズ」カート・クラーク
 よくわからないんだけどたぶんホラー。

「試金石」テリー・カー
 よくわからないんだけどたぶんホラー。

「お隣の男の子」チャド・オリヴァー
 たぶん、間違いなくホラー。

「古屋敷」フレドリック・ブラウン
 よくわかりません。たぶん私のアタマが悪いせい。

「M街七番地の出来事」ジョン・スタインベック
 昔これと似たようなアメリカ製のTVドラマを見たような。

「ボルジアの手」ロジャー・ゼラズニイ
 このオチの話って、数年に一回くらい目にするような。

「アダムズ氏の邪悪の園」フリッツ・ライバー
 往年の特撮ドラマ「怪奇大作戦」の一編みたい。

「大瀑布」ハリー・ハリスン
 よくわからないが幻想的。

「旅の途中」ブリット・シュヴァイツァー
 これ、誰か漫画化しないかなあ。インパクトたっぷりになるよ。 

「街角の書店」ネルスン・ボンド
 これも藤子・F・不二雄の短編にありそう。
 これがいちばんSFっぽかったりして。


編者は"奇妙な味"って言うけど、
私からしたらみんなホラーみたいなもんだなぁ(笑)

とにかく、読んでる最中に気持ち悪くなるか、
読んだ後に気持ち悪さが残るかのどちらか、って作品ばかり。

うーん、こんなアンソロジーができるくらいだから
ニーズはあるんでしょうねえ。
世の中にはこういう作品の好きな人もいるということですね・・・


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ヒア・カムズ・ザ・サン [読書・その他]

ヒア・カムズ・ザ・サン (新潮文庫)

ヒア・カムズ・ザ・サン (新潮文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/09/28
  • メディア: 文庫



評価:★★★

本書はいささか変わった成立過程があったらしい。

 真也は30歳。出版社で編集の仕事をしている。
 彼は幼い頃から、品物や場所に残された、人間の記憶が見えた。
 強い記憶は鮮やかに。何年経っても、鮮やかに。
 ある日、真也は会社の同僚のカオルとともに成田空港へ行く。
 カオルの父が、アメリカから20年ぶりに帰国したのだ。
 父は、ハリウッドで映画の仕事をしていると言う。
 しかし、真也の目には、全く違う景色が見えた・・・

この「あらすじ」から、小説と演劇という
二つの物語をつくる試みが行われたという。
そのうち、小説版の担当をしたのが本書の著者・有川浩だ。

そして、本書にはもう一つ、
「Parallel」と副題のついた同名の小説も収められている。
これは、有川氏が演劇版を見て想を得た物語とのことで、
基本設定・登場人物を同じくしながら異なる内容を展開している。

主人公がサイコメトラー的な超能力を持つがゆえに
SF寄りな雰囲気になるかと思いきや、そこはやはり有川浩。
超常の要素は控えめに、
あくまで人間ドラマ主体のストーリーを紡いでみせた。


便宜的に「小説版」と「パラレル版」としよう。

展開としての大きな違いは2つ。

ひとつは、真也とカオルの関係。
小説版での二人は同期入社の友人関係。
(もっとも、ゆくゆくは恋仲になりそうな描写もある)
パラレル版では結婚まで秒読みに迫った恋人同士として登場する。

そしてもう一つはカオルの父の設定。
シナリオライターとしての成功を夢見て
妻子を捨ててアメリカに渡ったのは同じながら
小説版では大作映画の脚本家として華々しい凱旋を飾る。
パラレル版では・・・これは読んでのお楽しみだろう。


小説のタッチもかなり異なる。
どちらもカオルの父の秘密が明かされるのは同じながら
小説版の終盤では、真也が(超能力の助けもあるが)
カオルの父に迫り、意外な "事情" が明らかになる。
このあたりの真也くんは "名探偵" みたいである。
有川浩ってミステリもいけるんじゃね? なんて思ったよ(笑)
一方、パラレル版では、有川浩お得意の人情噺的な展開を見せる。

その名の通り、パラレルワールドのような二つの物語。
個人的にはパラレル版の方が、より有川らしくて好きだけど
小説版も捨てがたいなぁ・・・


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県庁おもてなし課 [読書・その他]

県庁おもてなし課 (角川文庫)

県庁おもてなし課 (角川文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2013/04/05
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

高知県庁に誕生した「おもてなし課」。
主人公は入庁3年目にしてここへ配属された若手職員・掛水史貴。

観光立県を目指し、観光客を文字通り「おもてなし」して
県内の観光産業を盛り立てよう・・・
というコンセプトは立派だが、具体的に何をしたらいいのか?

まず最初に取り組んだのは地元出身の有名人に観光大使を依頼し、
割引特典付きの名刺を各所にばらまいてもらおう・・・というアイデア。

しかし、割引対象になった施設の了解を取るところからもうたいへん。
割引によって生じる損失分の補填がどうとか
縦割り行政の壁やらで、とにかく話が前に進まない。

やっとのことで企画を通し、動き出したものの
今度は観光大使を引き受けてくれた
若手人気作家・吉門喬介(よしかど・きょうすけ)から
ダメ出しの嵐を食らう。

いちいち理にかなっていて、
「おもてなし課」の "お役所体質" を痛烈に批判する
吉門の指摘の数々に、掛水は圧倒される。

しかし、掛水の方もそれだけでは終われない。
「おもてなし課」は窮余の一策として、
吉門を課のアドバイザーとして迎え入れることにする。

それに対して彼が挙げた条件は2つ。

(1)外部から若い女のスタッフを1名入れること

これは、総務部にアルバイトで来ていた
明神多紀(みょうじん・たき)という、
吉門の挙げた条件通りの逸材を発見したことで解決。

(2)かつて高知県庁内で唱えられた『パンダ誘致論』を調べること

20年前、高知県の観光産業振興のために
『パンダを高知県へ誘致する!』とぶち上げたのは、
当時の観光部職員だった清遠和政(きよとう・かずまさ)。
しかし彼の主張は県庁の "お役所体質" を打ち破れず、
閑職に回された後に退職へと至る。
現在は民宿経営の傍ら観光コンサルタントで生計を立てているという。

清遠は、いまもなお途方もないスケールでの観光立県構想を抱いていた。

吉門と清遠という2人の強力な "助っ人" を得た「おもてなし課」は、
県庁の "お役所" "ぬるま湯" 体質を打ち破り、
高知県が観光客であふれる未来を呼び寄せることができるのか・・・?

「おもてなし課」の奮闘を縦軸に、
掛水と吉門、多紀と清遠の娘・佐和の4人を巡る恋愛模様を横軸に、
涙と笑いの物語が展開する。


いやあ、有川浩はホントにスゴい。

冒頭の吉門と「おもてなし課」のエピソードは、
実際に有川浩が高知県の観光大使を
引き受けたときの実話がベースらしい。
そのへんもちゃっかり小説のネタにしてしまうんだからたいしたもの。

代表作である『図書館戦争』シリーズや『自衛隊三部作』も、
恋愛要素だけにとどまらず、大きなテーマとストーリーを持っていた。

本書も、"地方創生" という古くて新しいテーマで
堂々とエンターテインメント長編を一冊書いてしてしまうんだから。
しかも、しっかりLOVEも散りばめて。

本書に描かれる「おもてなし課」の奮闘はまだ端緒についたばかり。
実際の、そして現在の高知県の観光産業がどうなっているのかは
寡聞にして私は知らないし(巻末にちょっと載ってるけどね)、
また本書に描かれた "処方箋" が最良なのかもわからない。
(小説だからうまくいくんだろ、って反論ももちろんあるだろう)
ましてや他県でこれと同じことができるとも思えない。

でも、かつて全国一律、各自治体に1億円配ったり、
バブル時代にハコモノを大量に作っても地方は再生しなかった。

根源的には、その土地に暮らす人々が知恵を集め、アイデアを練り、
行政がそれをバックアップしていくしかないのだろうとも思う。


さて、有川浩作品の特徴として、
「カッコいいおっさんが多い」というのが挙げられる。

「三匹のおっさん」なんていうそのものズバリの作品もあるが
本書でもパンダ誘致論者・清遠和政が実にカッコいい。
肝が据わっていてハッタリもかます。でも思考は緻密で計画性も十分。
組織を外れて、一匹狼でも十分に世間を渡っていけるが
妻と娘のことでは人並みに悩む・・・とかね。

目立たないけど掛水の上司、下元課長もいい味だしてる。
地道な根回しも淡々とこなし、部下に能力を発揮させる場を用意する。

私はとうてい清遠みたいにはなれそうもないが、
できれば下元みたいなオッサンにはなりたかったなあ・・・

毎度のことだけど、ページを繰るのが実に楽しい。
そんな読書の時間を与えてくれる本作は一押しの快作だ。


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プリティが多すぎる [読書・その他]

プリティが多すぎる (文春文庫 お 58-2)

プリティが多すぎる (文春文庫 お 58-2)

  • 作者: 大崎 梢
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/10/10
  • メディア: 文庫



評価:★★★

「俺はこんなことをやるためにこの会社(業界)に入ったんじゃねえ!」
社会人なら誰でも一度はこんな思いを持ったことがあるだろう。

大学時代の同期生の中にも、
入社後2~3年で辞めてしまった奴が複数いる。
(仕事の内容だけが原因ではないと思うが)

運良く、望み通りの職種に就けたとしても、
永久にそのままとは限らない。
特にサラリーマンなら、人事異動は避けられないからだ。

いままでの経歴・経験とはかけ離れた仕事をあてがわれることもある。
部署の異動は無いまでも、
とても自分に向いているとは思えないミッションを
振られることだって往々にしてある。
私自身、今までの仕事人生で何度かそういう場面に遭遇してきた。
だからといってイヤとは言えないのが宮仕えのつらいところだが。

 もっとも、会社の方にも
 「その社員(そして会社)の将来のために、
  いろいろな部署を経験させておく」
 という思惑があるのはわかるが。

 ちなみに、辞めてしまった同期生たちは
 その後、ちゃんと新しい仕事に就いたけどね。
 その中の一人は、驚くなかれ、いま大学教授になってる。
 彼の場合は本当に仕事と能力が見合ってなかったのかも知れんが。

そう言えば、私が最初に配属された職場にも、
同じようなことを言って去っていった人がいたなあ・・・
あの人は同業他社に行ったはず。今頃どうしてるんだろう。

閑話休題。


本書の主人公・新見佳孝くんは
総合出版社・千石社で働く26歳の若手編集者。

文芸書部門への異動を熱望していたにも関わらず、
配属先となったのは少女向けファッション雑誌『ピピン』。
読者層は中学生女子。キャッチコピーはずばり「女の子はPが好き」

私はこの手の雑誌には全く縁がないのでよくわからないが
作中の描写によれば、中学生女子が喜ぶような
フリルやリボン付きの服とか鞄とか帽子とかがメインで、
そしてそれを身にまとったカワイイ女子中学生読者モデルの写真で
全ページが埋め尽くされているような雑誌らしい。

「俺はこんな雑誌をつくるために編集者になったんじゃねえ!」
とは思うものの、いつの日か文芸書担当になって
ベストセラーを出すことを夢見つつ、
畑違いの世界に放り込まれた新見君の苦闘の日々が始まる。

右も左もわからない新見君の、勘違いやら偏見が巻き起こす失敗の連続と、
それによって少しずつ成長していく姿が描かれる
"お仕事小説" なのだけれど、さらに驚かされるのは、
登場する女子中学生モデルたち。

『ピピン』の編集部の先輩やカメラマン、スタイリストは
子供向けだからと言って一切手抜きはしない。
プロなんだから当たり前なのではあるが、
年端もいかない女の子たちもまた、
モデルとしてのプロ意識はたいしたもの。
10歳以上も年下の彼女らから、
たびたび "この業界" のことを教えられる新見君でもあった。

しかし超高倍率の選考を突破して首尾よく読者モデルの座を射止め、
同期生との人気争いに勝利しても、彼女らの地位は安泰ではないのだ。
高校生になればモデルも "卒業" になってしまう。
さらに上の世代向けの雑誌モデルを目指すもの、
アイドルや女優への転向を目指すものなど、
芸能界でのサバイバルも厳しい。
しかしそんな世界をたくましく生き抜いていく
彼女らの姿もまた読みどころ。

もっとも、彼女らの必死さもわかるのだけど、
それでもなお、中学生や高校生の時代って、
もっと他にやるべきことがあるんじゃないかなぁ・・・
なぁんて思う私は頭の固いジイサンなんだろうねえ。

ラスト近くになっても相変わらずトラブルを引き起こす新見君は
『ピピン』編集者としてはまだまだ駆け出しなんだろうけど
この経験は決して無駄にはならないはず。
(というか、そう思わなけりゃやってられんわなあ)。


余談だが、ラスト近くになって新見の先輩として
文芸担当編集者の工藤が登場する。
先日感想を挙げた『クローバー・レイン』の主役を務めた彼だ。

残念ながら『クローバー』がらみのネタは
いっさい投下されなかったんだけど
(だって、あのラストのその後が気になるじゃないか!)
解説によると、工藤と新見が競演している短編も書かれているらしい。
いつの日かそのあたりを知ることもできるのかなぁ。


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クローバー・レイン [読書・その他]

([お]13-1)クローバー・レイン (ポプラ文庫)

([お]13-1)クローバー・レイン (ポプラ文庫)

  • 作者: 大崎 梢
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2014/08/05
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

現在、文学系の新人賞は小さいのまで含めれば数百もあると聞く。
在野の作家志望の方々はこぞってそれに応募しているのだろう。
今も昔も作家になるのは難しい。
そして、作家であり続けることはもっと難しい。

出版不況と言われ、「本が売れない」と言われていても、
毎月、洪水のように本が出ていることが不思議ではあった。
でも出版社もいろいろ苦労していることが、本書を読むとよくわかる。


前置きが長くなってしまった。

本書の主人公、工藤彰彦は大手出版社・千石社に勤務する若手編集者。
他社の主催する新人賞の受賞パーティに出席した彰彦は
酔いつぶれたベテラン作家・家永嘉人を介抱する羽目になる。

家永をタクシーで家まで送った彰彦は、
そこで彼の書いた新作長編の原稿を目にする。

『シロツメクサの頃』と題され、
夜間中学を舞台にしたその長編を一読した彰彦は
すっかり惚れ込んでしまい、その場で千石社での出版を打診する。

家永は了承したものの、あまり浮かない顔つき。
デビューして二十数年、最近は目立ったヒットもない。
そんな家永にとって、
新作長編を出版することがどんなに大変なことなのか
まだこの時の彰彦にはわかっていなかったのだ・・・

原稿を預かり、会社に持ち帰った彰彦。
編集長への必死の訴えにもかかわらず、
『シロツメクサの頃』出版の企画は通らない。
さらに、社の出版スケジュールは先の先まで詰まっていて、
落ち目の作家の新作をねじ込むことは容易ではない。
このままでは、家永嘉人の作家としての起死回生の傑作が
誰の目にも触れずに埋もれてしまう・・・

さらに、もう一つの問題があった。
『シロツメクサの頃』の一節には、
家永の娘・冬実の書いた詩が引用されていた。
それも実に効果的に。
出版するには、彼女の同意を得なければならない。

彰彦は、父親と別居している冬実に会いに行くが
彼女はなぜか詩の掲載を拒む。
そこには、他人には窺い知れない父と娘の確執があった。

会社の上層部に働きかけて出版を実現するべく奔走する彰彦。
それと並行して、冬実へのアプローチを続けていくうちに
彰彦は一人の女性としての彼女に惹かれていく・・・


読みどころは、もちろん出版社内の彰彦の苦闘ぶり。
出版界の事情が垣間見える "お仕事小説" として面白く読める。

さらに後半に入ると、
彰彦と冬実の恋愛模様の行方のほうに物語の主体が移っていく。
"一粒で二度美味しい"(←古いねえ)ではないが
ラブストーリーとしても最後まで読者の興味を引き続けてゆく。

いやあ、大崎梢はホント上手である。

最後に個人的な感傷を少しばかり述べる。

終盤に至り、冬実の "ある事情" が明らかになったときから、
私は物語を冷静に読み進めることができなくなってしまった。
そのあたりの理由を事細かに書くことは控えるけれども
息苦しいくらい切ない思いが私の心を駆け巡っていたこと、
これだけは記しておこう。


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フリーター、家を買う [読書・その他]

フリーター、家を買う。 (幻冬舎文庫)

フリーター、家を買う。 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2012/08/02
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

就職した会社の新人研修に嫌気がさし、
3ヶ月で辞めてしまった誠司。
以来1年近くフリーター暮らしを続けていた。

当然、父の誠一とは大喧嘩の日々。
好きなマンガとゲームとPCに囲まれてのうのうと過ごす誠司は、
夫と息子の間でオロオロするばかりだった母が
少しずつ精神に変調を来していったことに気づかずにいた。

名古屋の医師に嫁いでいた姉・亜矢子が里帰りし、
彼女の口から母親の現状を聞いた誠司は驚愕する。

冒頭40~50ページにかけて描かれる、亜矢子と誠一の対決が
まず序盤最大のクライマックスだろう。
自分の都合だけを考え、誠意の欠片もない誠一に対して
亜矢子がぶつける言葉の数々が途轍もなく重い。
20年以上にもわたって絶え間ないストレスに晒されてきた寿美子は
誠司のフリーター化をきっかけに心の平衡が崩れ、
すっかり "壊れて" しまっていたのだ。

 このあたり、読んでいて正直つらい。
 有川浩作品には珍しく、重苦しいシーンが続く。
 しかしこれも、中盤以降の展開への、必要な "タメ" だ。

寿美子のストレスの原因の多くを占めているのが
いま住んでいる家(というか近所の人々の目)だった。
誠司は、なるべく早く引っ越しをすることを決意する。

物語は、ここから大きく動き始める。
土木会社でバイトをしながら、本気になって就職活動を始める誠司。
様々な人と出会い、それによって少しずつ彼は変わっていく。

 土木会社で働くおっさんたちもいい味出してるが、
 何と言ってもバイト先での上司である作業長がいい。
 誠司の性格や思考を見抜き、的確なアドバイスを与えて導いていく。
 「頼れる大人」であり「若者を育てる上司」の見本のような人物だ。
 いつもながら、有川浩の描くおっさんはカッコいい。
 実際には、こんな人物はそうそういないだろうが・・・

気ままなフリーターだった青年が、
真剣に仕事と人生に向き合い、成長していく。

息子の成長を目の当たりにして、
妻の病から逃避しようとしていた誠一もまた少しずつ変わっていく。
一度は壊れてしまった "家族" の、再生への歩みが始まる。


序盤のダメ人間から、中盤以降で正社員になってからは
打って変わったように "できる男" に変身してしまう誠司は
いささかご愛敬で、ご都合主義的な感じもしなくはないが
エンターテインメントのさじ加減としては正解だろう。

終盤にはロマンスの花まで咲いてしまうとか
もう大盤振る舞いのサービス満点ぶりで、
序盤の暗雲が嘘のように楽しく読み進められる。

「すべて解決、めでたしめでたし」となるわけではないが
希望に溢れるエンディングで読後感は爽快だ。


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私と踊って [読書・その他]

私と踊って (新潮文庫)

私と踊って (新潮文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/04/30
  • メディア: 文庫



評価:★★

文庫で300ページちょっとの中に19編収めてある。
ミステリ、SF、ホラーその他と多くのジャンルに渡る
ショート・ストーリー集なのだが、
この文章を書き始めてみて、はたと困った。

短編集の場合は、いちばん印象に残った作品とか
出来がよいと思える作品を挙げていくのだけど
本書に限っては何も思いつかないのだ。

記録によるとちょうど一月前の2/24に読み終わってるんだけど
その時既に星2つをつけてるので
内容を忘れたということでもないのだろう。

「恩田陸という作家は、私にとって当たり外れが激しい」
というのは、このブログでも前にも書いたことがあるんだけど、
本書は私にとって "外れ" だったのでしょう。

長い物語の1シーンだけ切り取ったようなものとか
オチがよく分からないものとかが多くて、
"これ" と言える作品に巡り会えなかったようです。

 唯一の例外は巻末に載った「交信」。
 東京創元社の年刊SF傑作選で既読だったんだけど
 探査機「はやぶさ」帰還を記念して書かれたもの。
 初読の時は感動で眼がウルウルしてしまった。
 文庫でわずか1ページの作品なんだけどね。

実は今、長編「夜の底はやわらかい幻」を読んでるんだけど
こちらはとても面白く読ませてもらってる。
こっちの方は "当たり" なんだろうね。


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三匹のおっさん ふたたび [読書・その他]

三匹のおっさん ふたたび (新潮文庫)

三匹のおっさん ふたたび (新潮文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/01/28
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

「三匹のおっさん」待望の(?)続編。

定年退職後、嘱託でゲーセンの経理を担当する剣道の達人・キヨ、
居酒屋経営を息子夫婦に任せて悠々自適の柔道家・シゲ、
町工場を経営しながら一人娘を育ててきたハイテク男・ノリ。

この三人にキヨの孫・祐希と
ノリの娘・早苗の高校生カップルが加わって
ご町内にはびこる悪を懲らしめていく・


巻頭にはイラストレーターの須藤真澄氏の
8ページに及ぶキャラ紹介漫画がついているので
前作から間が開いてしまった人も
すんなり作品世界に入っていけるだろう。


「第一話」
キヨの一人息子である健児の嫁・貴子。
精肉店でパート勤めを始めたがやることなすことドジばかり。
そんな中、パート仲間の育代と親しくなるが・・・

「第二話」
孫に絵本を買おうと『ブックスいわき』を訪れたシゲは、
子どもの万引きグループに遭遇する。
被害に苦しむ町の書店のために三匹が立ち上がる。

「第三話」
ノリのもとへ、妹の幹代が再婚話を持ってくる。
相手の満佐子は、かつて三人組の夜回りのおかげで
難を逃れたことがあった。
満更でもないノリの様子に、早苗は複雑な思いを抱く・・・

「第四話」
キヨがつとめるゲーセンの敷地に、ゴミを不法投棄する者が現れた。
中学生グループの仕業と踏んだ三人組は
祐希とともに張り込みをするが・・・

「第五話」
商店街の活性化のために神社の祭りの復活を思いついたのは
シゲの息子・康生。
しかし壊れた神輿の修理だけでも100万円かかるという。
商店会の若者らとともに、寄進集めに町内を奔走するのだが・・・

「第六話」
町内でぼや騒ぎが立て続けに起きたが、
なんと三匹とは別の "おっさん三人組" が現れ、
居丈高な態度で町内を練り歩く。
"偽物"たちの態度に不安を覚える三匹だったが・・・


前作では還暦三人組と孫世代の祐希・早苗が中心だったが
本書第一話ではキヨの息子夫婦(健児・貴子)、
第五話ではシゲの息子・康生と
彼らの子ども世代にもスポットを当てている。

祐希もますますいい男になってきたし、
早苗も祐希の母・貴子にすっかり気に入られて。
ノリさんは寂しいだろうが、彼にも
もう一花咲かせる将来が暗示されてるし。

前巻「三匹のおっさん」第一話は、
キヨが長年主宰してきた剣道教室を閉めるところから始まったが
本書「ふたたび」の最終話では、
剣道教室を再開するキヨを描いて終わる。
一周回ってすべてが丸く収まって、まさに大団円。

きれいに収まったのだけど、これで完結かと思うとやはり寂しい。
いつの日か、「三匹のおっさん Part.III」が読めることを期待したい。


ラブコメ&SF&ミリタリーから始まった作者だけど
いつの間に還暦のおじさんのたちの心意気と悲哀まで描くようになって
ホント引き出しの多い作家になってきたなあ。


巻末にはボーナストラック短編
「好きだよと言えずに初恋は」(って村下孝三かよ)
が収録されてる。
前巻第五話に登場した早苗の同級生・潤子の
小学校時代の思い出が綴られる。
読み終わった後、ちょっとネットを検索したら、
この短編に出てくる男の子は
長編「植物図鑑」にも登場しているとのこと。
これも手元にあるので、近々読む予定。


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三匹のおっさん [読書・その他]

三匹のおっさん (文春文庫)

三匹のおっさん (文春文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/03/09
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

若い頃は「還暦」なんて、遙か彼方のことだと思っていたのだけど
気がつけばもう目の前に迫っている。時の流れは早い。

精神的には若い頃のまんまのつもりだが
(逆に言えば成長してないってことか)
身体は着実に衰えてきてる。
眼はぼやけるし歯は痛いし、あちこちに "ガタ" がきてる。
でも「気だけは若い」んだよねえ。

だから、本書の三人組の心境はよく分かる。
私だって赤いちゃんちゃんこを贈られたらムッとするだろうし、
電車で席を譲られても素直に喜べないだろう。
まだまだ "現役" だって言いたい。

閑話休題。


サラリーマンの傍ら剣道教室を主宰していたキヨ(清一)。
妻と切り盛りしていた居酒屋を息子夫婦に任せたシゲ(重雄)。
小さな町工場を経営するやもめの技術屋ノリ(則夫)。
還暦を迎えた幼なじみ3人組だが、まだまだ老け込むに早いとばかりに
夜な夜な町内を見回る自警団を始める。
いわば "ご近所様限定の正義の味方" だ。
彼らが出くわすのは、ご町内の善男善女を悩ませる "悪党ども"。
三匹の侍ならぬ三匹のオッサンが颯爽と悪を懲らしめる。


「第一話」
 会社を定年退職したキヨは、嘱託として
 町内にあるゲームセンターの経理責任者となる。
 しかし、あまりの杜撰な金銭管理に唖然となるが、
 そこにはさらに"ある事情"があった・・・

「第二話」
 町内に痴漢が出没していた。
 三人組も痴漢を一人捕まえたが、どうやら便乗犯らしい。
 そんなある日、キヨの孫の高校生・祐希はバイトの帰りに
 女子高生が暴漢に襲われるところに遭遇する。
 彼女はノリの娘・早苗だった・・・

「第三話」
 シゲの妻・登美子の前に現れたロマンスグレーの男は
 小学校時代の同級生・広野と名乗った。
 思いがけない出会いにときめく登美子だったが・・・

「第四話」
 キヨのもとに剣道教室の生徒だった中学生・昴(すばる)が現れる。
 中学校で飼っているカモたちに危害を加えている者がいるという。
 卒業生である祐希と早苗、そして三匹が解決に乗り出すが・・・

「第五話」
 痴漢事件以来、祐希といい雰囲気になっていた早苗。
 しかしある日、祐希を見かけた早苗の同級生・潤子から
 「彼を紹介して」と頼まれる。些細な行き違いから
 祐希は潤子とつき合うことを承知するが、
 彼女はある "トラブル" に巻き込まれていた・・・

「第六話」
 商店街の一角、空いた店舗に入ったのは催眠商法の業者。
 町内の人々を狙って客引きの真っ最中。
 被害を未然に防ぐべく、三匹は客を装って店に潜入するが・・・


メインとなるのは還暦三人組だが、彼らに絡む若者世代の代表が
キヨの孫・祐希とノリの娘・早苗だ。

息子夫婦とは今ひとつそりが合わないキヨだが
なぜか祐希とは妙にウマが合うようで、
三人組の活躍のほとんどに祐希は絡んでくる。

見かけこそチャラ男だが、一本芯が通っていて本質的には真面目。
善悪の区別もきちんと判断できて勉強もそこそこやっている。
(続編で明らかになるが、公立大学を受験しようというくらいだから
 成績もそんなに悪くないはず)
口は悪いが内心では祖父であるキヨを尊敬している。

まあちょっとできすぎなくらいで
「こんな孫がいたらいいなあ」って思わせる好青年である。

できすぎと言えば早苗ちゃんだ。
母親を早くに亡くしたために、幼い頃から家事全般を切り盛りし、
炊事洗濯なんでもこなす。それでいて
気立てはよく、父親思いの優しい娘に育った。
まさにオジサンキラーを画に描いたみたいな子で
「こんな娘がいたらなあ」とか
「息子の嫁に欲しい」とか思う人もいるだろう。

祐希と早苗のラブコメシーンは、
さすが当代随一のラブストーリー作家の面目躍如。
この二人を主役にしても長編が一本書けそうである。


還暦を迎えたおっさんたちが、
町内にはびこる "悪" をたたきのめす。
中学生や高校生の遭遇した事件も見事に解決し、
孫世代から尊敬の目で見られる。
どちらも願ってもなかなか実現できないことだ。
ある意味 "熟年世代の願望充足小説" でもあるのだろう。
しかしそこは達者な有川浩のこと。
おっさんの "かっこよさ" を、嫌らしくならずに描き出している。
実際、私はとても楽しんで読ませてもらった。

本書には続編「三匹のおっさん ふたたび」がある。
実はこっちの方も読了しているのだけど
もし本シリーズを未読の人がいたら、
この2冊は間をあまり開けずに読んだほうが楽しめると思う。
本書の「第六話」のラストの状況が
そのまま続編の「第一話」冒頭につながっているので。

もっとも、本書を読んだ人なら
言われなくても続編を読みたくなると思うけど。


あと、どうでもいい話なんだが
「三匹のおっさん」は文春文庫、
「ふたたび」は新潮文庫なのはなぜ?
文藝春秋とケンカでもしましたか有川さん?

と思ってたら、今度は2冊とも講談社文庫から出てたよ。
10年20年経って復刊する時に違う出版社からってのはよくあるけど
まだ出て3~4年だよねえ。
いったいどうなってるんでしょう・・・


有川浩脚本集 もう一つのシアター! [読書・その他]

有川浩脚本集 もう一つのシアター! (メディアワークス文庫)

有川浩脚本集 もう一つのシアター! (メディアワークス文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: アスキーメディアワークス
  • 発売日: 2011/05/25
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

主人公・春川巧(たくみ)は、小劇団「シアターフラッグ」の主宰。
しかし赤字続きの劇団は300万円の借金を抱え、解散の危機に。
万策尽きた巧は、兄の司(つかさ)に泣きつく。

彼ら兄弟の父親は、演劇にのめり込むあまり妻子と別れ、
貧困のうちに病死していた。

そのような経緯から、弟の演劇活動を認めない兄だったが、
いくつかの条件と引き替えに借金の肩代わりを引き受ける。

どんぶり勘定だった劇団の経理を、今後は司が仕切ること。
貸した300万を2年で返済すること。
返済には、劇団が上げた収益のみを認める。
2年で返済しきれないのならば、劇団は即刻解散せよ・・・

かくして"鉄血宰相"・春川司のもと、「シアターフラッグ」は
2年後のタイムリミットに向けて、劇団存続を賭けた大奮闘へ・・・


というのが、小説「シアター!」シリーズの基本設定。
現在続編「シアター!2」まで刊行され、次巻の「3」で完結の予定。


本書は、この「シアター!」を原作に、
実在の劇団「theater劇団子」(シアトルゲキダンゴ)のために
作者自ら書き下ろした脚本を書籍化したものだ。
実際、2011年1月に上演されている。

内容は小説そのものを舞台化したものではなく、
設定をそのまま使って新しいエピソードを描いた、
いわば「番外編」になっている。


「シアターフラッグ」に、地方都市の高校から学校公演の依頼が入る。
司も含めて、喜び勇んで出向いてきた劇団員の面々だが、
リハーサル開始前から次々にトラブルに見舞われる。
準備した小道具がゴミと間違えて捨てられてしまうとか
舞台セットが運送業者の手配違いで開演までに届かないとか
舞台のパンフレットがすり替えられるとか。
トラブルの背後には何者かの "悪意" があるらしい。
しかし開演時間は刻々と迫ってきていた・・・


ドラマや映画の脚本というのは現場で撮影しているうちに
変わっていくことがよくあるって聞くけど、演劇の場合も同様のようだ。

この舞台の脚本も、稽古中に変わった部分もあれば、
演出家のアイデアで変更された部分、
さらには役者さんからのフィードバックがあったりして、
実際の上演までに変化していった。本書にはその最終形が収めてある。
どう変わっていったかの経緯も【註】としてかなり詳しく記してあり、
この「変化していく様子」を追っていくのもまた楽しい。
まさに「舞台」というのは "生き物" なのだなあと実感する。

たぶん、違う劇団・違う役者・違う演出者がつくり上げれば
また違う形になるだろうし、またそうでなければいけないのだろう。

巻末には作者と俳優との対談が2つ掲載されている。
1つは「シアターフラッグ」を招いた高校の教員として出演した
大和田伸也氏。なんと大御所じゃないか。
もう1つは春川司を演じた阿部丈二氏。こちらは舞台メインの方らしい。
どちらも密度の濃い話が詰まっていて読み応え充分。


脚本集なんだけど、小説に劣らずとても面白かった。さすが有川浩。
とは言っても、思い起こせば「シアター!2」からもう5年。
もうそろそろ「3」を書いて下さいよ、有川さん。


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