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アリス殺人事件 不思議の国のアリス ミステリーアンソロジー [読書・ミステリ]


アリス殺人事件: 不思議の国のアリス ミステリーアンソロジー (河出文庫)

アリス殺人事件: 不思議の国のアリス ミステリーアンソロジー (河出文庫)

  • 作者: 有栖川 有栖
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/06/07
  • メディア: 文庫
評価:★★

『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』をテーマに書かれた
6つの短編を集めたミステリ・アンソロジー。

とは言っても、各作家さんがそれぞれ別個に別媒体に発表したものを
集めたもので、『アリス』をテーマに競作したわけではない。

どういう基準で集めたのかはよく分からないけど
明確に『アリス』を感じる作品は少ないように思う。
解説にはいろいろ書いてあるんだけど、いささかこじつけ気味に
『アリス』と関連付けたような作品もあるような。

もっとも、一番大事なのは
収録作品がミステリとしてよく出来ているかどうかだ。


「ジャバウォッキー」有栖川有栖
火村助教授のもとへかかってきた一本の電話。
賭けてきた相手は山沖一世。工学部の学生だったときに
傷害事件を起こしたが、神経症を患っていたことから無罪となった。
拘置所で接見した火村のことを覚えていたらしい。
彼は何らかの犯罪を起こすことを仄めかす。
山沖が口にする、何の脈絡もないように思える単語の羅列から、
火村は彼の居所を推理しようとするが・・・

「白い騎士は歌う」宮部みゆき
蓮見探偵事務所を訪れた女性・宇野友恵。
彼女の弟・敏彦が強盗殺人を起こし、逃走中だという。
友恵の依頼は敏彦を捜すことではなく、犯行の動機を知ること。
蓮見所長の娘・加代と、引退した元警察犬・マサのコンビが
活躍する連作の一編で、犬であるマサの一人称で進行する。
宮部みゆきの初期の作品で、この頃の彼女は
こういう "素直な" ミステリを書いてたんだねえ。

「DYING MESSAGE 《Y》」篠田真由美
ある夜、高校二年生の蒼は同級生のヒロとともに聖ルカ学院を訪れる。
ヒロがネットで知り合った少女・Emiと会うためだ。
しかし学園内にある宣教師館で、Emiは何者かに殺害される。
そして2年後、宣教師館の取り壊しが決まったことを知った蒼は
ふたたび聖ルカ学院を訪れる。犯人と対決するために。
建築探偵桜井京介シリーズの番外編で、
レギュラーキャラクターの一人である蒼(あお)くんが主役で
かつ探偵役も務める、スピンオフ作の一編。
タイトルにもあるように、もともと『Yの悲劇』をモチーフにした
競作アンソロジーの収録作からの転載。
"アリス要素" も出てくるけど、"Y要素" のほうがかなり多め。

「言語と密室のコンポジション」柄刀一
宇佐美護博士は、ある日突然異世界に迷い込んでしまう。
頭が考えたことが現実化する世界で起こった殺人事件を
宇佐美博士は解きほぐすことができるのか・・・
うーん、こういうメタ的な設定を持ち込んだミステリって苦手です。

「不在のお茶会」山口雅也
いずことも知れない不思議な空間に集められたのは
植物学者、作家、精神科医。
どうやら彼らは16歳の少女・アリスを殺した者を
見つけるために呼ばれたらしいのだが・・・
これも上の「言語のー」と同様、よく分かりません。

「鏡迷宮」北原尚彦
オペレッタ『鏡の国のアリス』の幕が開いたとき、
主演を務めていたあたしは、
本物の『鏡の国』へと入り込んでしまっていた。
そこには作者のドジスン教授(ルイス・キャロル)まで現れて・・・
いやあ、これこそ "アリス・ミステリ" だと言われれば
その通りなのだけど、私の好みに合うかというとそれはまた別問題。


本書の評価が低いのは、前半の三作が
原典『アリス』との関連の度合いはともかく
ミステリとしては良く出来ているのに対し、
後半のファンタジー要素を取り入れた三作が
今ひとつ私の好みに合致しないせい。

ファンタジー要素が悪いわけではないけれど、
その世界でのお約束ごとのもとにその世界ならではの解決を示し、
なおかつ読者を十分に納得させるのは、至難の業なのだと思う。

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