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ガブリエルの猟犬 クラッシャージョウ13 [読書・SF]


ガブリエルの猟犬 (クラッシャージョウ13)

ガブリエルの猟犬 (クラッシャージョウ13)

  • 作者: 高千穂 遙
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/09/08
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

22世紀初頭に超光速(ワープ)航法を手にした人類は、
広く銀河に植民地を築き、版図を広げていった。
惑星改造などの任務を請け負ったのは、"クラッシャー" と呼ばれる
宇宙活動のスペシャリストたち。
非合法なこと以外は、どんな仕事でも引き受ける "何でも屋" だ。
数あるクラッシャーたちの中でもAAA級の評価を誇る、
クラッシャージョウとそのチームの活躍を描くスペースオペラ、
その最新作にして第13作。

前作『美神の饗宴』において、
銀河に巣くう犯罪組織やテロリストたちが
個人の技量においても、所有する兵器の性能においても
クラッシャーのそれを上回りつつあることを痛感したジョウは
1年間の "休職期間" を得て、
個人の交戦能力の向上と装備の更新に努めてきた。

 ジョウの世界もまた『サザエさん時空』(笑)の支配下にあると
 思ってたから、1年経っても大きな変化はないと思ってた。
 実際、彼らの外見や性格に変化があるわけではないし。
 でも、作中でのジョウの年齢が19歳から20歳になってたので
 時間はしっかり経ってることがわかった(笑)。ということは、
 彼は19歳の1年間で長編12冊分の仕事をしたということだね。

そして、"休職明け" の小手調べとして
カジノシップのハイジャック事件を解決したジョウのチームに、
新たな依頼が舞い込んできた。依頼者はカジノシップの親会社である
ゼラクト・ホールディングスのCEO、オルフェイス。

31年前、古代金貨を満載した貨物船が宇宙海賊に襲われた。
積み荷を強奪した海賊船は連合宇宙軍に追われ、
金貨とともに惑星フェアリーズガーデンへ不時着した。

しかしその惑星は、かつて地下資源を巡って
2つの惑星国家が戦争を起こした地だった。
双方ともに、AIを備えた無人兵器群を惑星に持ち込んだが
やがて兵器群は暴走を始め、自己進化を続けながら
お互いを殲滅するべく戦争を続けていて
人間が足を踏み入れることが出来ない危険な惑星となっていた。

無人兵器は "ガブリエルの猟犬"(悪霊と化した犬) と
呼ばれるようになり、何度か軍隊による掃討が試みられてきたが
全て失敗に終わっていた。

そんな "地獄の惑星" から古代金貨を完全回収するのが今回の依頼。
きわめて危険な任務だがジョウは受ける。
合法な仕事ならなんでも請け負う。それがクラッシャーだからだ。

しかしフェアリーズガーデンに着いた彼らを待っていたのは
前作にも登場した双子の美女・鈴鈴と蘭蘭。

さらに巨大犯罪組織ルーシファの親衛隊、
そして超絶的な格闘体術を誇る "亀獣(きじゅう)"、イ・ユウも
フェアリーガーデンに現れる。

"猟犬" が支配する惑星上で、古代金貨を巡って
クラッシャー、竜の一族、宇宙海賊、そして "超人" と
五つの勢力による戦いが展開する。


前作でいささか影の薄かったクラッシャーたちだが
1年間の "立て直し期間" を経て、準備万端の再登場だ。

今回読んでいて思ったのは、作者のストイックさ。

この手の小説の常として、登場人物の "背負った業(ごう)" とか
"戦う理由" とか、キャラ間の "愛憎" とかに描写が割かれるもの。
しかし、このシリーズはもともとその手のシーンが少ない。

 それはジュブナイルから始まったせいかも知れないし、
 作者の持ち味なのかも知れないが。

それが本書では必要最小限にまで切り詰められていて、
そのぶん、戦闘シーンにリソースが割かれている。
メカアクション主体のクラッシャーvs猟犬戦、親衛隊vs猟犬戦。
しかもクラッシャーと親衛隊では、猟犬に対して
繰り出す兵器を変えて差別化するという念の入りよう。

そして、カンフーに似た技の応酬が主体の
双子vs亀獣の格闘戦も "分厚く" 描かれ、
多彩な戦いが楽しめるSFアクション小説に徹している。

まさに「どこを切ってもスペースオペラ」な作品になっている。
難しいことを考えず、とにかく楽しい読書の時間を得たいなら
オススメの一冊になっていると思う。

後半になると、次作への伏線も張られてくるなど "引き" も怠りない。

第1巻から数えて今年で40周年になる作品だが
いまだ新作が楽しめるという希有なシリーズ。
高千穂さん、次巻も期待してます。

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