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恋するタイムマシン 穗瑞沙羅華の課外活動 [読書・SF]

恋するタイムマシン 穂瑞沙羅華の課外活動 (ハルキ文庫)

恋するタイムマシン 穂瑞沙羅華の課外活動 (ハルキ文庫)

  • 作者: 機本伸司
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2016/03/11
  • メディア: 文庫

評価:★★★☆

主人公は、人工授精によって誕生した
天才少女・穂瑞沙羅華(ほみず・さらか)。

幼少時より天才ぶりを遺憾なく発揮してきたが
思うところあって、現在は "普通の女子高生" として生活している。

もう一人の主役は、沙羅華嬢が設計した量子コンピュータを使って
業務を展開しているネオ・ピグマリオン社の社員、綿貫くん。
彼の仕事は沙羅華嬢の "お守り役"。

天才美少女・沙羅華さんの大活躍、というよりは
凡人代表みたいな青年・綿貫くんが彼女に振り回される
"苦労話" が綴られた(笑)シリーズも、本作で5作め。


今回、沙羅華と綿貫くんに持ち込まれた依頼は、
若手物理学者・両備幸一の進めている研究を阻止してほしいというもの。

彼の研究テーマは「ダークマター」だが、それは表向きで
実はワームホールの人工的な生成を目指していた。

研究者というものは、成果を出せないでいると
いずれその地位を失ってしまうというシビアな世界。
なかなか結果を残せないでいた両備くんは、誰も手を付けていない
人工ワームホールの研究で一発逆転を狙っていたのだ。

粒子加速器 "むげん" (設計者は沙羅華)での実験を申請していた
両備くんに沙羅華と綿貫くんは会いに行くが、
そこで驚くべきことを聞かされる。

両備くんの研究の、真の目的は「タイムマシンの建造」だったのだ。

あまりにも途方もない目標に、綿貫くんは唖然とするが、
沙羅華は両備と "時間" について議論を戦わせるうちに、
次第に彼の研究に興味を惹かれていく。
そこには、彼女が本来目指していたTOEとの関連もあった。

 ちなみにTOEとは Theory of Everything のこと。
 日本語では「万物の理論」とか「超大統一理論」と呼ばれる。
 自然界に存在する4つの力、
 すなわち電磁気力・弱い相互作用・強い相互作用・重力を
 統一的に記述する理論(統一場理論)のこと。

後半に入ると、なんと沙羅華は
両備くんとワームホールの共同研究に乗り出すことになる。
彼女の伝手で、研究の出資者まで見つけ出し、
あとは人工ワームホールの生成に成功すればOK。

しかし、本当にタイムマシンの建造は可能なのか・・・?


今回のメインキャストとなる両備くん。
彼なりに "研究への熱意" はあふれているけれど、その内実は
タイムマシンで一躍名を挙げたいという "野心" と、
今さら後には引けず、このままでは終われないという "意地"。

その両備くんに最後まで付き従っている助手の柳葉亜樹さん。
将来の展望が見えない両備くんを支えつつも、自らの行く末に悩む。
故郷の両親からは、縁談があるから早く帰ってこいとの催促が。
想いを寄せる両備くんのためにがんばってきたけれど、
そろそろ潮時かなあとも思う今日この頃・・・

そして、後半になって登場する研究出資者のティム。
かなりの高齢ながら、研究の現場までやってきて
いろいろと口を出すのだが、そのはしばしに思わせぶりな言葉が・・・

彼の正体が本作後半の大きな "謎" になるのだけど、
いやあ、これは読んでのお楽しみですねぇ。


今回のテーマはずばり「恋愛」。
表面的には、両備くんと亜樹さんの恋愛の行方が描かれるのだけど
沙羅華さんにとっては、苦手な(笑)テーマだろう。

今まで、自らの出自に苦しんだり、家族との軋轢に悩んだりと
恋愛にまで行き着く前の段階でいろいろあった。
それらを乗り越えるたびに少しずつ成長してはきたが、
まだまだ彼女に普通の恋愛は無理っぽい。

何せ、「いちばんの興味の対象はTOE」だったからねぇ。
でも初期の頃の、恋愛そのものが視野に入ってこなかった状態から
今作では、ちょっぴり「人を愛する」ってことについて
悩むようになったんだから、たいへんな進歩かも知れない。

そんな中、相変わらず沙羅華から相手にされない綿貫くん。
さっぱり成長していないキャラにも見えるんだけど
なぜか周囲の人々からは「沙羅華のお守り役」としては高評価のようで
本作では、ある人物から "望外なまでの言葉" をもらってしまうんだが
どんなことを言われたかは、これも読んでのお楽しみだね。


なんてことを書いていたら、シリーズ最新作がつい先日に刊行された。
タイトルは「卒業のカノン 穂積沙羅華の課外活動」。
なんと裏表紙の惹句に「シリーズ、ついに完結!」とある。

おお、ついにフィナーレなんですねえ。
はたして沙羅華と綿貫くんの明日はどっちだ?

これも近々読む予定。


最後に余計なことを。

前々作「究極のドグマ」、前作「彼女の狂詩曲」、そして本作は
沙羅華嬢が高校3年生の夏、それも7月から8月にかけて起こっている。
いやあ、密度の濃い夏休みを過ごしてますねえ、沙羅華さん。

余計なことその2。

本作中で某キャラが口にした台詞がツボにはまった。
「毒を喰らわば沙羅華まで」
思わず笑ってしまいました。

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