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天帝のみぎわなる鳳翔 [読書・ミステリ]

天帝のみぎわなる鳳翔 (幻冬舎文庫)

天帝のみぎわなる鳳翔 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/12/04
  • メディア: 文庫

評価:★★★★

勁草館高校吹奏楽部員・古野まほろを主人公とした
ミステリ・シリーズ第4弾。

前作『天帝の愛でたまう孤島』で
凄惨な連続殺人事件に遭遇し、
そのあまりにも過酷な "真相" に心が折れ、
(と言うか、彼は事件のたびに「失意のどん底」に落ちるんだがwww)
最終章で勁草館高校のある姫山市から
いずこかへ旅立った(拉致された?)まほろくん。


その彼が姿を現したのは、なんと
大日本帝国海軍・第二艦隊旗艦にして
戦後の日本にとって、ようやく所有することが叶った
正規空母・『駿河』の艦上だった。

 本シリーズが舞台にしているのはパラレルワールドの日本。
 太平洋戦争には敗れたものの、日本は未だに「帝国」で陸海軍も健在。

 ちなみに『鳳翔』とは、1922年に竣工した
 日本海軍最初の正規空母の名称である。

 そして、これも健在な「満州帝国」は
 前々作『天帝のつかわせる御矢』以来、
 東西に別れて内戦の真っ只中という状況。
 しかし本作の時点で「西満州」こと「満州社会主義人民共和国」が
 圧倒的優勢になりつつあった。

全長290mに及ぶ巨大空母『駿河』、最新鋭イージス艦『金剛』、
そして随伴する駆逐艦群を含む第二艦隊は、
「満州帝国」海軍最後の生き残りであるイージス艦『済遠』とともに
台湾への "親善訪問" 航海の途上にある。

18歳の高校生であるはずのまほろくんは、
"儀典参謀・古野まほろ軍楽少佐(25歳)" という偽りの身分で
第二艦隊司令部に潜入していたのだ。

彼を送り込んだのは『-御矢』事件で知遇を得た皇族・華頂宮博利王。
海軍少将にして軍令部次長でもある彼は、
第二艦隊内部に不穏な動きがあることを察知していた。

すなわち、「満州は日本の生命線である」との主張から
『駿河』内で反乱を敢行、第二艦隊の指揮権を奪い、
そして東シナ海を北上したのちは
満州帝国の内戦に介入し、「西満州」へ痛撃を加える。

内務省所属の紙谷警部とともに
『駿河』に乗り込んだまほろくんに与えられた使命は、
陰謀の首魁をつきとめ、反乱を未然に防ぐこと。

 「一介の高校生にそんなことできるんかい?」
 って疑問も湧いてくるが、読んでいけば
 そのへんは "それなり" にフォローされてる(笑)。

ミリタリー・サスペンス風な出だしだけど、
本作は基本的にはミステリなので、しっかり事件も起こる。

第二艦隊司令長官、参謀長、『駿河』艦長、同副長。
国内からの来賓として軍需産業の社長令息、製薬会社の会長令嬢。
海外からは、"鉄の女" こと前大英帝国首相、
米国大使館筆頭駐在武官、仏海軍軍令部作戦課長、
そして事実上日本の庇護下にある『済遠』の艦長。

彼らが一堂に会した昼餐会で毒殺事件が発生するのだ。

やっぱりミステリだったな~と安心した(?)のも束の間、
中盤から物語は想像を絶する展開を見せる。


突如『済遠』が "満州解放人民戦線" を名乗るテロ集団に占拠され、
その攻撃によって『金剛』のイージス機能が無力化されてしまう。
続けて、密かに艦隊を監視・尾行していた潜水艦『春潮』が撃沈される。

そして、"神の盾(イージス)" を失った第二艦隊へむけて
対艦ミサイル「ハープーン」が降り注ぐ。
そしてその弾頭には、あの "禁断の兵器" が・・・

 もう『亡国のイージス』なんてレベルではない。
 もはや架空戦記モードである。

 文庫の裏表紙の惹句に
 「本格ミステリ史上初の3000人殺し」とあるが
 これが誇張でも何でもないのだから恐れ入る。
 (だって第二艦隊は総員で2940人いるのだ。)

しかもなおかつ、ミステリも中断しないのだから驚き。

壊滅的打撃を受け、航行能力を失った『駿河』、
そのCIC(戦闘指揮所)で生き残った一握りの者たちの間で、さらに事件が続く。
密室状態の中で艦隊司令の死体が発見されるのだ。

終盤では、『駿河』の軍事機密を狙う中国人民海軍が迫ってくる中、
シリーズキャラクターの意外な登場もあって
物語はさらにモードチェンジし、「伝奇SF」へと変貌していく。


いやはや、このシリーズはとにかく長いんだけど
本作は今のところ最長で、文庫で800ページ近い。

それもそのはず、上に述べたように内容が盛りだくさんで
特に中盤以後はたたみかけるような怒濤の展開。

「ミステリ+架空戦記+伝奇SF」という
日本の本格ミステリ史上で類例の無い作品であることは間違いないし
大長編にも関わらず、途中でダレることなく最後まで読ませる。

 物語の着地点が全く見えないものだから、
 読んでいる間中、ハラハラしっぱなしである。
 まあシリーズものだから、少なくとも
 まほろくんは生き残るんだろうなぁ・・・とは思うんだけどね(笑)。

ミステリとしては、このシリーズお馴染みの多重解決シーンも健在。
複数の "探偵たち" の推理合戦も読みどころ。

そして、登場する兵器の描写も、壮絶な戦闘シーンも、
このジャンルがメインの作家さんかと思わせるほど。
架空戦記としても、堂々たる書きっぷりを見せる。

 冗談抜きで福井晴敏とタメが張れるんではないかな。

伝奇SF要素は、本シリーズの当初から
作品世界の根底にあるものなので、これも堂に入ったもの。


3つの要素を取り込み、しかもそれらがバラバラではなく
有機的に絡み合ってしっかり一つの物語を構成している。
そしてどれも中途半端になっていないのは
やはり800ページという "物量" がものを言っているのだろう(笑)。

このシリーズ、いままで「無駄に長い」と
思わないわけでもなかったんだけど(笑)、
本作に限っては、この長さは納得でした。

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