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ユダの窓 [読書・ミステリ]

ユダの窓 (創元推理文庫)

ユダの窓 (創元推理文庫)

  • 作者: カーター・ディクスン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/07/29
  • メディア: 文庫

評価:★★★★

創元推理文庫の改版新訳シリーズの一編。

密室、そして不可能犯罪の巨匠、ジョン・ディクスン・カーが
別名義、カーター・ディクスンで発表した
名探偵ヘンリー・メリヴェール卿が活躍する長編第7作。


ジェームズは、結婚の許しを得るために
恋人メアリの父親・エイヴォリーのもとを訪れる。

書斎に通され、勧められた酒を口にしたジュームズは
間もなく意識を失ってしまう。

そして、目覚めたジェームズが見たものは
胸に矢を突き立てられて絶命しているエイヴォリーの姿だった。

書斎は密室状態にあり、酒瓶もコップも姿を消し、
エイヴォリーに刺さった矢にはジェームスの指紋が。

逮捕、そして起訴されたジェームズの公判が開かれる。
圧倒的なまでに不利な状況に置かれた被告人だが
その弁護を買って出たのは、H・Mことヘンリ・メリヴェール卿だった。

敗色濃厚な中、なぜかH・Mは被告の無罪を確信しているようだが・・・


「ユダの窓」という作品は密室ものの古典的名作だが
得てしてその密室トリックばかり有名になっているところがある。
実際、私も本作を初読したとき、既にトリックは知っていた。

しかし本書はトリックのみの作品ではもちろんない。
だってトリック知ってて読んでてても、犯人分からないし(笑)。

今回じっくりと読んで思ったのは、やっぱりカーの
ストーリー・テラーとしての非凡さ。

序章と終章を除いて、ほぼ全編法廷場面が続く。
さまざまな人物が証人として出廷し、証言していく。
それを巡り、法務長官(検察側)とH・Mの丁々発止のやりとり。
そして登場人物たちの意外な "真実" が暴かれていく。

被害者エイヴォリーが生前に見せていた謎の行動。
エイヴォリーの弟・スペンサーは公判中に失踪してしまう。
そして被告人の恋人・メアリが抱えていた秘密が明らかになり、
極めつけはジェームズの従兄弟であるレジナルドの
見事なまでの外道っぷり。こいつは助演男優賞ものだ(笑)。

人物の動きの少ない法廷シーンが続くが、新展開が続々と起こり、
全くダレずに読者の興味をつなぎ、ページをどんどんめくらせる。

終盤に至り、ジェームズを陥れるべく張り巡らされた奸計を
ことごとく突き崩していくH・Mの弁論は痛快だ。

さらには密室トリックまで暴かれるが、ここではまだ犯人は分からず、
それが明らかになるのは法廷シーンの最終ページ。
ほんとに良くできた構成だ。

終章で語られるH・Mの謎解きを読んでいると
意外なまでにシンプルな推理で犯人に到達できるのだけど
読んでいる間は全く気づかないんだよねぇ。
まあ、そこがプロなんだろうけど。


本書は密室ものとして有名だけど
法廷ミステリとしても出色の出来だ。
そして、何と言っても物語として面白い。
最近読んでる改版新訳シリーズの中でもトップクラスだと思う。

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