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Esprit 機知と企みの競演 ミステリー傑作選 [読書・ミステリ]

Esprit 機知と企みの競演 ミステリー傑作選 (講談社文庫)

Esprit 機知と企みの競演 ミステリー傑作選 (講談社文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/11/15
  • メディア: 文庫

評価:★★★

「探偵・竹花と命の電話」藤田宜永
 主人公は61歳の私立探偵・竹花。
 引き受けていた家出人捜索が解決した夜、
 事務所に若い男から電話がかかってくる。
 仕事もなく友人もいない。両親も亡くなって天涯孤独。
 淡々と相手をする竹花だったが、青年は毎日のようにかけてくる。
 やがて会話の中で自殺を仄めかすようになるに至り、
 竹花は青年の居場所を探り始めるが・・・
 最後はミステリ的なオチがつくが、
 竹花の、人生の酸いも甘いもかみ分けた対応ぶりが実にいい。
 いぶし銀とはこのことか。

「青い絹の人形」岸田るり子
 謎めいたプロローグから始まり、本編に入ると舞台は一転する。
 主人公のゆかりは、大学准教授の父と
 その再婚相手・美咲との3人でパリへ旅行に来ていた。
 しかしバッグに入れておいたはずのパスポートが紛失する。
 そこへ日本大使館から連絡が入り、
 パスポートを拾って届けた者がいるという。
 その人物に会いに行ったゆかりは驚愕の事実を知る・・・
 そしてエピローグにいたり、すべてのピースがかっちりと決まって
 切れ味鋭い結末を迎える。
 サスペンス・ミステリのお手本みたいな作品だ。
 どこかのTV局で二時間ドラマにしないかなぁ。

「機巧のイヴ」乾緑郎
 江戸時代を思わせる世界を舞台にしたSFミステリ。
 昆虫や鳥を、機械仕掛けで複製する幕府精錬方手伝・久蔵。
 いわばロボット職人だ。その出来映えは、
 本物と全く見分けがつかないほど。
 江川仁左衛門は久蔵へ、ある依頼をする。
 遊女・羽鳥とうり二つの機巧人形を作って欲しい、と。
 書き下ろしSFアンソロジー「NOVA」で既読。
 SFミステリならではの "オチ" が
 その時はあまり好きになれなかった。
 でも今回、ミステリのアンソロジーの中で再読してみたら、
 けっこういけると思った。

「父の葬式」天弥涼
 短編集で既読。
 造り酒屋を営む父・米造が亡くなり、葬儀を行うことになったが
 息を引き取る直前、彼が「喪主」として指名したのは、
 父の元で杜氏として修行する長男・賢一郎ではなく、
 デザイナーになるために米造と大喧嘩し、
 家を飛び出した次男・雄二郎だった。
 突然の "無茶振り" に、戸惑うばかりの雄二郎だったが・・・
 私も去年、父の葬儀で喪主をしたので
 雄二郎くんの苦労はよく分かる(笑)。
 「遺言書の開封」なんてのにも立ち会ってしまったし。
 こんなのはミステリの世界にしかないと思ってて、
 まさか自分の人生で起こるとは全く予想もしていなかったよ。
 幸い、遺産を巡って相続人たちが殺し合うようなこともなく(笑)、
 至極ノーマルな内容で、それでいてちょっぴりアレンジが効いていて
 父が周囲の想像以上に家族のことを慮っていたのを知って驚き、
 少なからず感動してしまったものだ。
 閑話休題。
 この短編では、非常識と思われるような父の遺言で一悶着起こるけれど
 最後は丸く収まって、米造さんはしてやったり、だろうなあ。

「妄執」曽根圭介
 "僕" の友人、一馬は会社をクビになって以来、
 30歳の今日まで引きこもり生活を続けている。
 しかし一馬は、かつて自分がストーカー行為をしていた女性・文恵を
 未だに監視しており、彼女が婚約者とともに新しい店を出すことを知る。
 次第にエスカレートする一馬の行動と並行して、
 "僕" 自身にまつわる物語も綴られていって、
 ラストの "破局" へ向けて収斂していく。
 うーん、この手の話は好きではありません。

「宗像くんと万年筆事件」中田永一
 本作は日本推理作家協会賞短編部門で次点だったという。
 (受賞は若竹七海「暗い越流」。『Symphony 漆黒の交響曲』に収録)
 "私" が小学6年生の時、その事件は起こった。
 クラスメイトが持ってきた万年筆がなくなってしまったのだ。
 そしてその万年筆が "私" のランドセルから見つかった。
 犯人とされた "私" はクラスからいじめに遭い、
 担任が "私" を見る目も厳しくなった。
 しかしその中で一人、宗像くんだけは信じてくれた。
 クラスメイトを廻って情報を集め、担任に申し出る。
 「山本さん("私" のこと)は万年筆を盗ってません。
  僕はそのことを説明できます」
 クラス全員の前で、"私" の無罪を立証するべく
 奮闘する宗像くんだが・・・
 ラストで、高校生になった "私" が当時を振り返るシーンが切ない。
 実際のところ、いじめに対抗して戦ってくれる友人なんて
 そうそういるとは思えない。
 フィクションならではの展開なのだろうけど、この話は心温まる。
 いつの日か、宗像くんと "私" が再会する話も描いてくれないかなあ。
 ちなみに「中田永一」は、「乙一」氏のペンネームの一つだとのこと。

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