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天帝の愛でたまう孤島 [読書・ミステリ]

天帝の愛でたまう孤島 (幻冬舎文庫)

天帝の愛でたまう孤島 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/02/06
  • メディア: 文庫

評価:★★★

勁草館高校吹奏楽部員・古野まほろを主人公とした
ミステリ・シリーズ第3弾。

前作『天帝のつかわせる御矢』で、
戦果渦巻く満州帝国から脱出したものの
乗り込んだ列車内での連続殺人事件に見舞われたまほろ君。

それを解決して、命からがら日本へ帰り着いたが、
彼に安息の日々は訪れないのであった(笑)。

勁草館高校吹奏楽部と生徒会は、合同して文化祭で演劇を行うことに。
その通し稽古のための合宿地として選ばれたのは
勁草館高校が存在する愛知県姫山市の
はるか南方海上に位置する絶海の孤島・天愛島。

まほろ以下吹奏楽部員5名、生徒会役員4名、そして顧問教師1名。
総計10名が島で唯一の建物・天愛館に入ったときから
惨劇の幕が上がる。

上演予定のミステリ劇に登場する怪人・『死神仮面』が現れ、
メンバーを次々と惨殺していく。
しかもすべての犯行現場が密室だった。

孤島もののお約束(?)どおり、本土との通信手段は破壊され、
おりしも迫りくる台風による暴風雨で交通手段も途絶。
絶対的に孤立した舞台で、彼らは生き残るためにあがき続ける。
しかし、殺人鬼は彼らの中にいるのだ・・・


このシリーズは毎回とんでもなく長いのが特徴。
本書も文庫で700ページ近い厚さを誇る(?)。

なんでこんなに長いのかというと、その理由の一つは
登場人物たちの会話が多いこと。
とにかくこいつら、よく喋るんだ(笑)。

海外文学/古典からの引用あり、有名なアニメの台詞あり、
男女の痴話喧嘩あり、とぼけたギャグあり。
実際このあたりをバサッと切れば
厚さは半分くらいになるんじゃないか。

とは言っても、この膨大な台詞のやりとりがこの作品、
ひいてはこのシリーズ独特の雰囲気を形作っているのも事実。

そして何より、この雑多な言葉の羅列の中に、
さりげなく重要な手がかりや伏線が仕込まれているのだから油断できない。
まあミステリとしては当たり前なんだろうけど。
「木を隠すなら森の中」ならぬ
「言葉を隠すなら会話の中」というわけだ。

だからミステリとして読もうとするなら、
多少の面倒くささは我慢して、この長大な文章を
読み飛ばすわけにはいかないんだよねえ・・・

密室トリックに関しては、読者が見破ることはまず不可能。
実際、明かされてみると唖然としてしまう。

作者もその辺は自覚していて、
終盤近くに挟まれる "読者への挑戦" でも
トリックについては解決条件に含まれず、
「犯人は誰か」のみが問われる。

そして "解決篇" で明かされる推理では、
たった一つの手がかりから論理を展開させて、犯人の指摘へいたる。

 このあたりは、有栖川有栖の『孤島パズル』への
 オマージュなのかも知れない。

でも、これだけならこんな700ページも要らないよなあ・・・
って思っていたら、そのあとにもう一段の大仕掛けが用意してあった。


しかし、この "真相" はどうだろう。

ミステリとしてなら "あり" だとは思う。
むしろ、意外性に溢れて秀逸な "オチ" だろう。

ただ、"物語" としてはどうか。
これは人によって評価が分かれると思うが
私はあんまり好きになれないなあ・・・


このへんを深く突っ込むとネタバレになるので
もうこれ以上触れないけど、ミステリに対して、
何よりも "魅力的な謎と驚きにあふれた解決" を求める人なら、
本書は充分に満足できると思う。


ということは、私はミステリに対して何を求めてるのかなあ。
きっと "謎解きと驚き" に加えて、"物語" としての収まりの良さ、
みたいなものを欲しがってるのだろうなあ。

でもそれって、たぶんとっても欲張りなことなんだろうなあ・・・