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群衆リドル Yの悲劇'93 [読書・ミステリ]

群衆リドル Yの悲劇’93 (光文社文庫)

群衆リドル Yの悲劇’93 (光文社文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/08/07
  • メディア: 文庫



評価:★★★

本書の語り手は、東京帝国大学を目指して浪人中の渡辺夕佳(ゆか)。

帝国大学といっても戦前の話ではない。
本書の舞台はパラレルワールドの日本。
太平洋戦争は負けたみたいだが日本は未だに「帝国」で、
陸海軍も健在。ついでに「満州国」まで生き残っている。

作者はいくつものシリーズを持っているが、基本的には
みなこの同一世界を舞台にしているらしい。
夕佳も、『天帝』シリーズでの主役・古野まほろの後輩として
勁草館高校吹奏楽部のメンバーに名を連ねている。


センター試験も近づいた年の暮れ、彼女のもとへ招待状が届く。
「外務省大臣官房儀典長」名義で、「新・迎賓館」へ招くという。
何かの間違いかと思った夕佳だが、招待状は本物。

しかし不安を覚える夕佳は、かねてから憧れていた
高校時代の先輩・八重洲家康(やえす・いえやす)に同行を求める。
孤高の天才ピアニストにして帝国大学2年生の彼は、
巻末の "古野ワールド相関図"(笑)によると、古野まほろとは親友らしい。
この家康くんが、本シリーズの探偵役である。

そんな二人が訪れたのは、長野と群馬の県境に近い山中に建つ
壮麗な西洋館、「夢路邸」だった。
二人を迎えたのは、7人の先客。
大学教授、助教授、金融機関の支店長、私立探偵、女子高生、
新聞社の論説委員、大臣官房儀典長。
しかも全員、招待主の異なる手紙を受け取っていた。

「何者かが意図的に呼び出した」8人+家康くん。
これが西洋館に集まったすべて。

そこに突然、鬼面の女が現れ、
彼ら彼女らが過去に犯した罪を告発する。
その直後、鬼女は死亡してしまうが
ここから次々と客たちに死が訪れる。

折しも降り出した豪雪に閉ざされた屋敷内で、
マザーグースの童謡『ロンドン橋』に見立てた
凄惨な殺人劇が繰り広げられていく。
銃殺、爆殺、刺殺、斬殺・・・

当然ながら犯行が進むごとに生存者は減っていく。
残った者の中に犯人はいるのか、それとも・・・


そして屋敷のサロンには、招待客を模した市松人形が
8体用意してあったが、客が一人死ぬたびに、一体ずつ減っていく。
まさに『そして誰もいなくなった』の再現。

集められたメンバーに共通する理由(ミッシングリンク)はあるのか?
殺人現場も密室あり不可能犯罪ありと
本格ミステリのガジェットがてんこ盛り。
「読者への挑戦状」まで挿入されてる(それも2カ所に)
という念の入りよう。


そして、作者による「真相に至る手がかりはすべて開示された」
との宣言のもと、解決編に突入するわけだが、
読み終わってみてどうにもすっきりしない思いが残る。

確かに犯人指摘のための手がかりはかなり初期の段階から
結構あからさまに仕込まれているのはたいしたもの。
(私も読んでいて「あれ?」と思ったところがあった。
 そこをもっと突き詰めていけば少なくとも犯人には気づけただろう)

問題は犯行手段だね。
密室トリックや不可能殺人の謎も当然ながら解明されるのだけど
これ、自力でわかった人っているのかな?
もしわかったとしたら、よほどのひねくれ者か
病的なまでのミステリマニアだと思うよ・・・

とにかく意外すぎる。
「その発想はなかった」とか「予想の斜め上」とかのレベルではない。
種明かしされてみても、「そうだったのか!」より
「えーっ、そんなのありぃ?」って
叫んでしまいそう(叫ばなかったけどwww)。
まあ、古典的作品の中に前例があると言えばあるのだけど。

 これ、人によっては怒り出す人が居るんじゃないかなあ・・・

まだミッシングリンクの解明の方が理解しやすいかな。
そしてこれが犯人の動機にも繋がるんだけど
これも被害者の側からすれば "理不尽" としか言い様がない。

難易度から言えば
  犯人 < ミッシングリンク(動機) < 犯行方法(トリック)
の順に難しくなる。


この人の作品を読むのはこれで3作目だけど、
いつも思うのは作者のアタマの切れ味が半端ないことと
それについていけない自分のアタマの鈍さ。

本書は、キャラ立ちばっちりの夕佳&家康の "痴話喧嘩" を
ライトノベル的に楽しみつつ、
迫るシリアルキラーから逃れられるかどうか
ハラハラしながら読むのが正しいのだろう。

間違っても密室トリックを見破ろうなんて思ってはいけない(笑)。


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