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はるひのの、はる [読書・ファンタジー]

はるひのの、はる (幻冬舎文庫)

はるひのの、はる (幻冬舎文庫)

  • 作者: 加納 朋子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2016/04/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

映画化もされた「ささや」シリーズの最終巻。

「ささや さら」のヒロイン・さやの息子、ユウスケが主人公。

小学生になったユウスケの前に、
ある日「はるひ」と名乗る少女が現れる。
初対面のはずなのに、なせかはるひは
ユウスケのことをよく知っているよう。

はるひはその後も、たびたびユウスケの前に姿を見せては
その都度、無理難題を押しつけるのだった。

やがて小学生から中学生となり、そして高校生になったユウスケは
入学式の直前、はるひにそっくりな少女・華(はな)に出会う・・・


読んでいると読者は最初のうち混乱するかも知れない。
詳しく書くとネタバレになるのだが
本書に描かれる世界は微妙にゆらいでいる。
過去にあったことがないことになっていたり、
死んだはずの人が生きていたり。

どうやら、SFで言うところのパラレルワールド的な
二つの世界のことが語られているらしいと見当がついてくる。

その二つの世界の関係が終盤になって明かされるのだが
その真相、そしてそれを現出させた "ある人" の想いに触れて
涙腺がゆるむ人もいるのでないかな(私がそうだった)。

 何といったらいいか。
 梶尾真治の一連の作品群に通じるものを感じる、って書いたら
 分かる人は分かるだろう。

本書をどのように読むか。
ミステリ要素もあるしファンタジー要素もあるし
もちろんSFとして解釈することも可能だ。
しかもその3つの要素がお互いに邪魔しあうことなく、
渾然一体となって、独特の雰囲気を醸し出している。

エピローグでは成人となったユウスケが描かれるが
彼をはじめ、登場人物みんなに幸福な未来が訪れる。
たまにはこんな温かい物語に身を委ねるのもいい。


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折り紙衛星の伝説 年刊日本SF傑作選 [読書・SF]

折り紙衛星の伝説 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

折り紙衛星の伝説 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/06/29
  • メディア: 文庫



評価:★★★

2014年に発表されたSF短編から選ばれた17編と、
第6回創元SF短編賞受賞作1編を収める。
今年は、けっこう楽しめたのが多かったかなあ。

○面白く読めたもの 6編

「10万人のテリー」長谷敏司
 人類に害をなす超高度AIの攻撃から社会を守る、
 IAIA(国際人工知能機構)のエージェント・紅蛍(ホンイン)の
 活躍を描くSFアクション。
 こういう分かりやすいのが好きなんだ。

「雷鳴」星野之宣
 安定の星野之宣。恐竜の体に秘められた "謎" を描く。
 昔、同じ題名のマンガ書いてたような。内容は全然違うけど。

「折り紙衛星の伝説」理山貞二
 SFの楽しさを思い出させてくれる作品。

「スピアボーイ」草上仁
 カウ(牛)ならぬ、"スピア" という宇宙生物の群を世話する男たち。
 まんま西部劇です。

「わたしを数える」高島雄哉
 SF版「番町皿屋敷」。
 電脳化された仮想空間で、皿を数え続けるAIお菊さんの話。
 この発想はすごい。

「イージー・エスケープ」オキシタケヒコ
 "逃がし屋"・イージィが活躍するスペースオペラ。
 今風な味付けがよくできてる。


○いまひとつかなあ・・・8編

「猿が出る」下永聖高
 ある日、"僕" の目の前に猿が現れる。
 そしてそれは "僕" にしか見えないらしい。
 筒井康隆が書きそうな不条理劇だけどだんだんSFっっぽくなる。
 私はこの手の話は好きでないみたい。

「再生」堀晃
 入院した経験がある人(私もそうだが)なら、他人事に思えない話。
 病院に縁がない若い人なら楽しく読めるかも知れないけど、
 私くらいの年齢になるとねえ・・・

「ホーム列車」田丸雅智
 ショートショート。あまりにバカバカしい発想なんだけど
 それがいいんだろうな。

「薄ければ薄いほど」宮内悠介
 終末期の患者を集めたホスピスで取材する
 "わたし" が出会う患者たち。
 長年の闘病の末に父親を見送った身には
 いささか考えさせられる内容ではある。
 ただ、疑似科学に頼る治療はやっぱり許されない。

「教室」矢部嵩
 狂った教室のカオスな授業風景。
 これも初期の筒井康隆が書きそうな作品ではある。

「一蓮托生(R・×・ラ×ァ×ィ)」伴名練
 超常の力を持つ双子の女の子が暴れ回るんだけど
 "萌え" 要素はナシ。

「緊急自爆装置」三崎亜紀
 個人が自爆装置を持ち歩き、必要に応じて(?)自爆する世界。
 これも筒井康隆が書きそう。
 筒井康隆ってつくづくスゴい作家だったんだね。

「加奈の失踪」諸星大二郎
 ラストまで読むと分かるけど、脱力ものの実験作。
 これもSFなんだから、SFって間口が広いジャンルだよねえ。


○すみません、よくわかりません 3編

「φ」円城塔
 やってることはわかるんだけど、
 それがさっぱり面白く感じられない。
 やっぱこの人とは相性が悪いみたい。

「「恐怖の谷」から「恍惚の峰」へ ~ その政策的応用」遠藤慎一
 「恐怖の谷」っていってもホームズじゃありません。
 言いたいことはわかるんだけど、それが面白く感じられない。
 論文形式ってのは凝ってるだけど。

「環刑錮」酉島伝法
 生理的にダメ。身体が受け付けません。


第6回創元SF短編賞受賞作
「神々の歩法」宮澤伊織
 突然、超常の "力" を得て、世界に破壊と殺戮をもたらした男。
 彼を倒すため、12人の特殊部隊が潜入する。
 "燃え" も "萌え" も入ってて、
 本書の中ではいちばん分かりやすく(笑)、かつ楽しい。
 「新しいものがない」っていう選評には同意するが、
 エンターテインメントとしては充分な出来。
 大河ドラマの序章みたいで、続きが読みたくなる。


序文によると、2007年発行の第1巻「虚構機関」の頃と比べると、
短編SFの発表数が増えてきて、どうやら "冬の時代" は脱した模様。

新人もたくさんデビューしてるみたいだけど、
さすがに追いかけきれない。
そういう意味では本書は貴重だね。


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天帝のはしたなき果実 [読書・ミステリ]

天帝のはしたなき果実 (幻冬舎文庫)

天帝のはしたなき果実 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2011/10/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

誤解を恐れずにざっくり言ってしまえば、
ある高校で起こった殺人事件の謎を、
吹奏楽部のメンバーが警察に頼らずに
自分たちの推理で解決しようとする物語、である。

それがなんで文庫で750ページという作品になってしまうかと言えば
いろいろな "味付け" が過剰なまでにぶっ込まれているから。

まずは吹奏楽部の面々がとにかく曲者ぞろい。
ライトノベルには往々にしてある設定なのかも知れないが
天才、オタク、武道の達人、美少女、お姉、ロリ(笑)と取りそろえ、
それに加えて(いろいろな意味で) "病んでる" 人も多い(笑)。

そしてまた彼らが饒舌なこと夥しい。
内容は神話や文学作品の引用から、
アニメ(メインはガンダムとヤマトかな)の名台詞、
さらには痴話喧嘩まで。
高尚から低俗まで、硬軟折り混ぜてよくまあこれだけ出てくるもんだ。

当然だが男女共学の高校なのでカップルも何組も出てくるし
惚れたはれたエ○チしたしない云々の話題にも事欠かない。
けっこう露骨な単語まで飛び出してきておじさんはビックリだよ。

高校生を主役にした作品では当たり前なのかも知れないが
とにかくこましゃくれた "ガキども" ばかりである。
もちろん大人も、数は少ないながら一癖も二癖もあるキャラばかり。

舞台設定もぶっとびだ。
西暦こそ1990年だが、この世界はパラレルワールドの日本。
太平洋戦争には負けたみたいだが陸海軍は未だ存続し、
国名にも「帝国」が入ってるみたいだし、
なんと「満州国」まで存続しているらしい。

カオスとしか言いようがないくらい、とんでもない世界設定なんだが、
奇をてらってやってるわけではなく、ちゃんと意味がある。
読んでいるうちに、事件の背景やら犯人の正体やらの根底に
"この世界" が絡んでいることが分かってくるので、
広義のSFミステリとも言える。

前置きが長すぎた。内容の紹介に入ろう。


主人公は勁草館(けいそうかん)高校の吹奏楽部員、古野まほろ。
作者と同名の彼の一人称で本書は語られていく。

古野の親友で生徒会長の奥平靖昌が校内で斬首死体となって発見される。
彼は、勁草館高校の敷地内にある4体の像を調べていた。
どうやら勁草館には、秘められた "謎" があるらしい。

そして全国大会出場をかけた吹奏楽コンクールの会場で、
第二の殺人が発生する。
死体を発見した吹奏楽部の面々は、ある理由から
警察の介入前に犯人を突き止めようとディスカッションを始める。

一人一人が推理を述べあうんだけど
この推理合戦の部分だけで160ページくらいある。

そして犯人が明らかになってからのラスト80ページは、
雰囲気が一転し、ダークなファンタジーめいた世界が延々と綴られる。


登場人物の台詞や劇中に出てくる事物の実に多彩なことから、
作者が文学・歴史ついて博覧強記の人だということが窺われる。
洪水のようなルビ(ちょっとした言葉にも振られてる)といい、
英語、フランス語、ドイツ語、さらには日本の古語まで駆使する文章といい、
作者が語学についても尋常でなく造詣が深いこともよくわかった。
そして、この長さを破綻させずに書ききってしまうことから
尋常でない頭脳の持ち主であることもよくわかる。

とにかく作者が "スゴい" 人なのは分かるんだけど
読んでいるほうはいささか疲れる(笑)。
読みにくくも感じたけど、これは慣れないせいかも知れない。

 この本に取りかかったのが昨年12月の初め。
 読み終わったのが新年1月の初め。およそひと月かかってる。
 もっとも、途中で仕事が忙しくなってきて
 2週間くらい放置していた期間も含まれるんだけど。

おかげで、伏線のかなりの部分を忘れた状態で
解決編を読むという羽目になってしまった。
そういう意味では、きちんと評価できているかといえば
ちょっと疑わしいんだけど(おいおい)。

ミステリとしても物語としても、
よく考えたら「?」なところもけっこうある気もするんだが、
上に書いたように、これでもかこれでもかとばかりに押し寄せる
怒濤の情報攻撃に押し流されて、
多少の疑問なんてどこかへ消し飛んでいってしまうんだな。

本書はシリーズ化されていて続巻も出ている。
しばらくつきあってみるつもり。


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不機嫌なスピッツの公式(マイルール) [読書・ミステリ]

不機嫌なスピッツの公式 (富士見L文庫)

不機嫌なスピッツの公式 (富士見L文庫)

  • 作者: 三沢 陽一
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/富士見書房
  • 発売日: 2015/07/15
  • メディア: 文庫



評価:★★

本書の記事で、やっと昨年読了分の終了となる。
ここ3週間ほど、記事を書くのに一生懸命で
ほとんど本が読めないという本末転倒な状態が続いてきた。

新年に入ってから読了した4冊分がまだ残ってるんだけど
これからはぼちぼちいこうかな。

閑話休題。


『致死量未満の殺人』で第2回アガサ・クリスティー賞を受賞した
三沢陽一氏の描く、"日常の謎" 系ライトノベル・ミステリ。

"スピッツ" とは、ヒロインにして探偵役となる女子高生のあだ名。
余部坂瑠璃(よべさか・るり)っていう少女マンガのキャラみたいな
すてきな本名があるのだが、ショートカットの髪型に
女性っぽくない体型(お察しください)、
さらにはぶっきらぼうな物言いと、男子にしか見えない。

 表紙のイラストで右側にいる、
 ヘッドホンを首にかけたのがたぶん彼女。
 なぜスピッツというのかは本編を読みましょう。

その相方にして語り手でもあるのが
同級生の相良素生(さがら・そお)くん。

二人の元に "事件" を持ち込むのは
新聞部の美人部長・妃友里(きさき・ゆり)。
それがなぜか学内の恋愛がらみのものばかり。


「紅茶と恋愛」
 学内新聞の読者から相談の手紙が寄せられる。
 投稿者の御堂五月がバイトをしている喫茶店に
 常連で現れる大学生。彼に想いを寄せた五月だが、
 ある日彼は、出された紅茶に全く口をつけずに帰ってしまう。
 それが二度続いたことから原因を突き止めたいと思うようになる。
 いやあでもこのオチはちょっと・・・かなあ。

「涙の映画券」
 深山花月(かげつ)に恋をしている畠山雄平。
 しかし、花月から映画のチケットを渡された雄平は
 その日以来、引きこもりになってしまった・・・
 このオチもコロンブスの卵と言えばそうなのだけど。

「ばいばい、ライブラリー」
 スピッツが惚れ込み、強引に学校の図書館に購入させた本。
 しかし、その本を伝言メモの交換に使っている者がいる。
 しかもそれは二人組で、内容はラブレターのようだ。
 メールもLINEもあるこのご時世に、
 わざわざ紙のメモを交換するのはなぜか。
 真相の半分はなんとなく見当がつくが残り半分が問題。
 これもまあ心理的盲点ではあるかな。


各話とも文庫で約80ページあるんだけど、
ミステリのネタとしては、この長さを持たせるのはちょっと苦しそう。
半分の40ページでも充分に思える。

それを補っているのが主役二人の掛け合い。
高校生の男女とくれば恋人同士か、
恋仲になりかけ、ってパターンがくると思いきや、
"ヒロイン" のスピッツがおよそ "女の子" らしさが皆無で、
相方の素生くんも、彼女にそういうものを期待していない。

だって、ひと部屋に二人きりでこもって一晩過ごしても
カードゲームで夜明かししてそれっきり。
スピッツのお母さんも全く心配していない。
(まあ素生くんが信頼されている、ってことなのだろうが)
カップルではなく、単に悪友同士という感じ。

本書がシリーズ化されて続巻が出るのなら、
この二人の関係はどうなるのだろう。
スピッツ嬢がデレる瞬間というのも見てみたいが
案外変わらないまま、ずーっといってしまう気も(笑)。


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真夏の方程式 [読書・ミステリ]

真夏の方程式 (文春文庫)

真夏の方程式 (文春文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/05/10
  • メディア: ペーパーバック



評価:★★★★

物理学者・湯川学ぶが活躍する「ガリレオ」シリーズの
第6作にして長編第3作。

両親の仕事の都合で、夏休みを海辺の町・玻璃(はり)ヶ浦にある
伯母一家が経営する旅館『緑岩荘』(ろくがんそう)で
過ごすことになった少年・柄崎(えさき)恭平。

折しも玻璃が浦は揺れ動いていた。
沖合60kmの海底で熱水鉱床が発見され、
一帯の海域は鉱床の商業化を目指す候補地に挙げられたのだ。

過疎に悩む地域にとって振興のきっかけになると期待する人々。
しかし自然保護の観点から反対運動も始まっていた。

恭平の伯母夫婦の一人娘・川畑成実(なるみ)もまた
反対派のグループに参加していた。

そして湯川もまた玻璃が浦の地を訪れる。
DESMEC(海底金属鉱物資源機構)が開く現地説明会に
スタッフの一人として参加するためだ。

『録岩荘』に宿をとった湯川だが、
翌朝、同じ宿泊客の一人・塚原が死体で発見される。
最初は事故が疑われるが、死因が特定されるにいたり、
殺人と判明する。

塚原は元刑事で、かつて玻璃が浦に縁のある男を
殺人事件の犯人として逮捕していた。

湯川は警視庁の草薙と協力して塚原の過去の事件を探り始めるが・・・


犯人はかなり早い段階から読者には分かってしまうが
それもこのシリーズのおきまりの展開ではある。

『聖女の救済』では徹底して How(犯行方法) にこだわっていたが
本書では Why(動機) がメインとなる。

犯行のトリックだけなら短編レベルのネタのようにも思われるが
犯人が殺人に至るまでの過去の因縁話が重厚で、読みでがある。

さらに開発と自然保護を巡る玻璃が浦の人々の葛藤も
ページを多く割いているが、単なる物語の味付けではなく
事件の背景に少なからず関わりがあることがわかってくる。

恭平の宿題であるところの「夏休みの自由研究」のために
湯川と二人でペットボトルロケットを作って
打ち上げに興じているところはなかなか微笑ましい。

 湯川くんもけっこう子煩悩じゃないか。

これも、一件ストーリーと関係が無いエピソードのように見えて
実はラストで効果的に絡んでくる。

文庫で460ページと決して短くはない作品なんだけど
密度の濃い展開が続いて飽きさせない。

ハイテク技術や複雑なメカニズムを駆使した、
大がかりな物理トリックこそ用いられていないが、
物理学者・湯川の登場する物語として
読者の期待に充分応える出来になってると思う。


ミステリとして出来には全く関係ないことなんだが
本書で「開発と自然保護」が取り上げられている。

作中における湯川の立場は全くのフラットと言っていい。
「程度の差はあれ、自然破壊を伴わない開発はない」
「できることできないこと、分かること分からないことは
 積極的にすべて情報公開するべき」

反対派のリーダーとして登場する人物が
いささか感情的で、かつ利己的に描かれているので
読者は彼に対して反感を抱きがちになるだろうが
作者は自然保護運動自体を否定しているわけではないだろう。

はじめから賛成・反対ありきではなく、
事実と論理的思考によって妥協点を探る話し合いをするべきで
感情や建前での対立は何ももたらさない。

本書は、まず第一義的に殺人事件を扱ったミステリなのだが、
それに加えて、作者は上記のことを伝えたかったのだろう。

まあ、分かっていてもなかなか実現は難しいことだろうけどね。
理想論と言われればそれまでだし・・・

それでも、できればミステリファン以外の人たちにも
幅広く読まれてほしいなぁ・・・ってちょっと思った。


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髑髏城 [読書・ミステリ]

髑髏城【新訳版】 (創元推理文庫)

髑髏城【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: ジョン・ディクスン・カー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/11/28
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

創元推理文庫から、新訳になって
続々と復刊されているシリーズの一編。
うれしさと懐かしさで買い込んでしまった。

事件の舞台となる "髑髏城" とは、
ドイツのライン河畔にそびえる古城。
建物の造作が、人間の頭蓋骨のように見えるところから
この名がある。

かつて城の所有者だった魔術師・マリーガーは
走行中の列車から姿を消し、数日後に遺体で発見された。

その17年後、城を譲り受けた俳優のアリソンが、
火だるまになって城の胸郭から落下して死亡するという
凄惨な事件が起こる。

アリソンは、髑髏城の対岸に屋敷を構えていた。
捜査のために訪れたパリの予審判事・バンコランは、
そこで一癖も二癖もありそうな滞在客たちに出会う。
果たして犯人はこの中にいるのか?
そして17年前の事件との関連は?

さらにはベルリン警察の捜査官であるアルンハイム男爵も現れ、
バンコランに対して激しい対抗意識を見せるのだった。


アリソンの屋敷から "髑髏城" へ行くには
船で川を渡らなければならないことから、
被害者であるアリソンの移動、さらには犯人の移動方法に
何らかのトリックがあるのかな・・・と思わせるのだが、
それについてはかなり早い時期に "ある仕掛け" が明かされる。

だから本作はカーお得意の "密室" ものや
いわゆる "不可能犯罪" ものには当てはまらない。

じゃ、出来が今ひとつかいうと、とんでもない。

詳しく書くとネタバレになってしまうのだが、
この "仕掛け" がらみで判明する、ある "手がかり" がある。
ここから出発して推理を重ねることで
するすると絡んだ糸がきれいにほどけて、
犯人に結びつくあたりは読んでいていささか興奮した。

 例が適切かどうかわからないが、このとき連想したのは
 有栖川有栖の「孤島パズル」終盤の謎解き部分だった。
 読んだことのある人なら、
 ここの素晴らしさはよくご存じだと思うが。

"密室の巨匠" と言われているカーだけど、
こういう緻密なパズラーも書ける人なんだね。
まあそうでなければ "巨匠" とは呼ばれないだろうけど(笑)。


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ぐるぐる猿と歌う鳥 [読書・ミステリ]

ぐるぐる猿と歌う鳥 (講談社文庫)

ぐるぐる猿と歌う鳥 (講談社文庫)

  • 作者: 加納 朋子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/12/13
  • メディア: 文庫



評価:★★★

講談社のジュブナイル・ミステリ・シリーズである
「ミステリーランド」叢書の一冊。

本書は三話構成で
「第一話 ぐるぐる猿と歌う鳥」
「第二話 図書室の暗号」
「第三話 社宅のユーレイ」
となっている。


表題作にもなっている「第一話」を簡単に紹介してみる。

小学5年生の高見森(しん)は無鉄砲。
滑り台のてっぺんから飛び降りて骨折したり
たき火をしたくて公園の木を一本黒焦げにしたり。

そんな彼が父の転勤に伴って
社宅のある北九州の町へやってきた。

引っ越してきた夜、どこからともなく聞こえてきた
口笛の音に誘われて屋根の上に登った森は、
隣に住む同級生・佐久間心(しん)と謎の少年・パックと出会う。

翌朝、転校先の小学校へ初登校する森。
しかし、なぜか学校の中にはパックの姿はなかった。

 パックというのは子供だけに見える妖精か何かで
 これはそういうファンタジーなのかな・・・って
 思ってしまうが、読み進めるうちに
 どうやらそうではないらしいことがわかってくる。

主人公たちが住む社宅は、同じ大きさの平屋の家が整然と並んでいる。
森が小学校の体育館の屋根の上から社宅を眺めると、
さながらモザイク画のように見えるらしい。

その社宅の屋根をキャンバスに見立てたのか、
何者かが巨大な猿の絵を描いた。
それがナスカの地上絵のように尻尾がぐるぐる渦を巻いてるので
森たちは "ぐるぐる猿" と名付けたのだ。

一体誰が、何のためにこんな "絵" を描いたのか?


森、心、パック以外にも、
鼻っ柱の強い美少女・十時(ととき)あや、
男ばかりの竹本五兄弟とか個性的なキャラクターが登場し、
"ぐるぐる猿" をはじめ、彼らの周りで起こる
不思議な事件がつづられていく。

悪戯好きな子どもたちの日常も充分に面白いのだけど、
ミステリ的な仕掛けもしっかり仕込んである。

本編に先立つ「プロローグ」では、
幼稚園だった頃の森が体験した "ある事件" が語られているんだけど、
本編の終盤ではその意外な真相も明かされる。
このあたり、さすがはミステリ作家・加納朋子だ。

そして不思議な少年・パックの抱える "事情" も明らかにされるのだが
これは本書の中では解決しないまま終わる。

解説でも述べられているが、作者は本編の続編を書く構想があるらしい。
作者の考える "解決" を是非読んでみたいし、
もうちょっと成長した森や心やあやにも会ってみたい。
楽しみに待ちましょう。


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アルカトラズ幻想 上下 [読書・ミステリ]

アルカトラズ幻想 上 (文春文庫)

アルカトラズ幻想 上 (文春文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/03/10
  • メディア: 文庫




アルカトラズ幻想 下 (文春文庫)

アルカトラズ幻想 下 (文春文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/03/10
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

文庫で上下巻合わせて約700ページの大長編。
全体は4部構成になっている。
ちなみに御手洗も吉敷も登場しないノン・シリーズもの。

第1部「意図不明の猟奇」
 1939年、ワシントンDCで娼婦が殺害される。
 遺体は下腹部が切り裂かれ、下半身の臓器が外部へ露出していた。
 やがて第二の被害者も出て連続殺人事件へと発展していく。

第2部「重力論文」
 一人の大学院生が発表した
 「重力の "変化" が原因で恐竜が滅亡した」
 という論文を入手した捜査陣は、そこに殺人事件との関連を読み取り、
 著者・バーナードを逮捕する。

ここで上巻が終わり、下巻へと続く。

第3部「アルカトラズ」
 裁判で有罪となったバーナードは、
 サンフランシスコ湾内の孤島にある
 アルカトラズ刑務所へ収監されるが、
 そこで囚人仲間の脱走計画に荷担させられてしまう。
 そして決行の日、脱走の最中にバーナードは
 刑務所の "地下" に存在する不思議な世界へ迷い込んでしまう。

第4部「パンプキン王国」
 "地下世界" で暮らし始めたバーナードの出会う、
 さまざまな "物事" が綴られていくのだが・・・


エピローグは2001年に時代が移る。
バーナードの不思議な体験の真相、
彼が辿った数奇な運命、そして足かけ60年以上にわたる
"歴史の陰に隠された秘話" が明かされる。

物語としては充分に面白いと思う。
幻想的な謎と怪奇の世界が、きちんと説明されていくのは
島田作品の特徴だが、さすがに何度も読まされてくると
なんとなくネタの見当がつくようになった(笑)。

バーナードが迷い込んだ世界も、読んでいくと
「ああ、あそこだ」って分かってくる。

 私に分かるくらいだから、ほとんどの人が気づくと思うんだが。

ただ、バーナードがどういうわけで
アルカトラズから "あそこ" まで "移動" したかは
さすがに謎解きを待たなければならないけど。


ちょっと不満なのは、読み終わってみると
700ページというこの長さが必要だったのか、
いささか疑問に思えてくること。


これから下はネタバレになるので未読の方はご注意を。

結論を言えば、上巻の存在意義が薄いような気が。

第1部で登場した刑事をはじめとする登場人物。
被害者の周辺の人々など、それなりに思わせぶりな描写もある。
ところが、これが全くと言っていいほど
ラストの "謎解き" に絡んでこないんだなぁ。

好きな作家さんの長編だから、けっこう一生懸命に
第1部から真面目に(笑)読んでたのが
なんだか無駄になったみたいで、ちょっとがっかり。
だって第1部って230ページくらいあるんだよ。上巻の約2/3だ。

さらに、第2部の論文の中身も面白いんだけど
(独立した短編SFとしても成立しそう)
役割としては捜査陣とバーナードをつなげるためだけのもの。

終盤の謎解きの対象は、もっぱら第3部と第4部の内容に偏ってる。

つまり、極端なことを言えば上巻がなくても、
本書はミステリとして成立してしまうんじゃないだろうか?

上巻が約340ページあるけど、これ100ページくらいに縮めて
500ページ弱くらいにした方がすっきりするような気も。


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ハートブレイク・レストラン ふたたび & さよなら ハートブレイク・レストラン [読書・ミステリ]

ハートブレイク・レストラン ふたたび (光文社文庫)

ハートブレイク・レストラン ふたたび (光文社文庫)

  • 作者: 松尾 由美
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/06/11
  • メディア: 文庫




さよならハートブレイク・レストラン (光文社文庫)

さよならハートブレイク・レストラン (光文社文庫)

  • 作者: 松尾 由美
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/05/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★

フリーライターの寺坂真以がしばしば仕事場にしている
ファミリーレストランには、お婆ちゃんの幽霊が住み着いている。

真以を含めて特定の人にしか見えないハルお婆ちゃんの幽霊。
しかし実は素晴らしい洞察力を持っていて、
真以のもとに持ち込まれる不思議な事件の謎を
たちどころに解き明かしてしまう "安楽椅子探偵" でもあった。

「隅の老人」ならぬこの「隅のお婆ちゃん」の探偵譚というわけだ。

・・・という設定の "日常の謎" 系連作ミステリの第2巻&最終巻。

「ふたたび」には6編。

 「大げさなペンケースの問題」
 「無防備なヘラクレスの問題」
 「レインコートと笑窪の問題」
 「編み棒とコーヒーカップの問題」
 「不透明なロックグラスの問題」
 「宅配便と猫の問題」

「さよなら」には5編。

 「果物のある部屋の問題」
 「予約のとりやすい店の問題」
 「油絵と宇宙人の問題」
 「嘘つき装置と真実の問題」
 「ボストンバッグと切符の問題」

第1巻で真以は地元所轄書の刑事・南野と恋仲になる。
仕事に追われてなかなか二人は会えないでいたが
第2巻の冒頭で南野が警視庁に異動することになり、
距離が遠のいてしまうことにいささかガッカリの真以さんだ。

そして南野の後任として女性刑事・小椋が登場、
さらに彼女がファミリーレストランの店長・山田とも
浅からぬ縁で結ばれていたことが明らかになる。

真以&南野、小椋&山田、それぞれの恋模様の展開も読みどころ。

第3巻のラストでひとまずストーリーとしてはひと区切りなので
おそらくこれで完結になるのだろうけど
ハルさんの名推理とお別れというのは淋しいなあ。

終わってみて思うのは、ヒロインの真以さんの人柄がいいこと。
誠実でひたむきで、出しゃばりすぎないところが好きだなあ。
こんな娘さんが幸せをつかむのは、読んでいて心地よい。


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18の奇妙な物語 街角の書店 [読書・その他]

街角の書店 (18の奇妙な物語) (創元推理文庫)

街角の書店 (18の奇妙な物語) (創元推理文庫)

  • 作者: フレドリック・ブラウン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/05/29
  • メディア: 文庫



評価:★★

SFにもミステリにも分類不能な
"奇妙な味" と呼ばれる作品を集めたアンソロジー。
読んでみて思ったが、私の好みに合う作品は少なかったなあ。
以下に題名と作者だけ紹介。それからひと言コメント。

「肥満翼賛クラブ」ジョン・アンソニー・ウェスト
 藤子・F・不二雄の短編に似たネタがあったような。

「ディケンズを愛した男」イーヴリン・ウォー
 ホラーというか怖い話。

「お告げ」シャーリィ・ジャクスン
 コメディですかね。

「アルフレッドの方舟」ジャック・ヴァンス
 面白いやら悲しいやら。

「おもちゃ」ハーヴィー・ジェイコブズ
 ファンタジーかなあ。

「赤い心臓と青い薔薇」ミルドレッド・クリンガーマン
 よくわからないんだけどたぶんホラー。

「姉の夫」ロナルド・ダンカン
 怪談。

「遭遇」ケイト・ウィルヘルム
 たぶんホラー。アメリカのTVドラマにありそう。

「ナックルズ」カート・クラーク
 よくわからないんだけどたぶんホラー。

「試金石」テリー・カー
 よくわからないんだけどたぶんホラー。

「お隣の男の子」チャド・オリヴァー
 たぶん、間違いなくホラー。

「古屋敷」フレドリック・ブラウン
 よくわかりません。たぶん私のアタマが悪いせい。

「M街七番地の出来事」ジョン・スタインベック
 昔これと似たようなアメリカ製のTVドラマを見たような。

「ボルジアの手」ロジャー・ゼラズニイ
 このオチの話って、数年に一回くらい目にするような。

「アダムズ氏の邪悪の園」フリッツ・ライバー
 往年の特撮ドラマ「怪奇大作戦」の一編みたい。

「大瀑布」ハリー・ハリスン
 よくわからないが幻想的。

「旅の途中」ブリット・シュヴァイツァー
 これ、誰か漫画化しないかなあ。インパクトたっぷりになるよ。 

「街角の書店」ネルスン・ボンド
 これも藤子・F・不二雄の短編にありそう。
 これがいちばんSFっぽかったりして。


編者は"奇妙な味"って言うけど、
私からしたらみんなホラーみたいなもんだなぁ(笑)

とにかく、読んでる最中に気持ち悪くなるか、
読んだ後に気持ち悪さが残るかのどちらか、って作品ばかり。

うーん、こんなアンソロジーができるくらいだから
ニーズはあるんでしょうねえ。
世の中にはこういう作品の好きな人もいるということですね・・・


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