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届け物はまだ手の中に [読書・ミステリ]

届け物はまだ手の中に (光文社文庫)

届け物はまだ手の中に (光文社文庫)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/10/08
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

楡井和樹と設楽宏一は、小学校時代に陰湿ないじめに遭っていた。
自殺さえ考えた二人を救ってくれたのは恩師・益子だった。

高校そして大学へと進んだ二人に、悲報がもたらされる。
命の恩人ともいうべき益子が、通り魔に殺されたのだ。
しかし、犯人として逮捕された男・江藤は、
裁判で無罪判決を受ける。犯行時に心神耗弱状態と判断されたのだ。

「司法は当てにならない」
そう考えた二人は、自らの手で
江藤に正義の鉄槌を下すことを決意する。

しかし、大学時代に同級生と結婚し、
同時にベンチャー企業を立ち上げた設楽は
実業家として成功、裕福な資産家となって
いつしか復讐の心を忘れていった。

一方、大学卒業後に公務員となった楡井は、
一人で復讐の機会を虎視眈々と狙っていた。

そしてついに江藤の殺害に成功するが、
楡井の復讐はまだ完結しない。
裏切り者の設楽に、江藤殺害の事実を突きつけるまでは。

物語は、楡井が江藤殺害の証拠となる、ある "もの" を持って
設楽の暮らす豪邸を訪れるところから始まる。

楡井は、設楽の妻・さち子、妹の真澄、そして秘書の遠野嬢と
三人の美女から歓待されるが、肝心の設楽が姿を現さない。
仕事でずっと書斎に籠もっているというが、
どうやらそれだけが理由ではないらしい。

その日はたまたま4歳になる設楽の息子の誕生パーティー。
それにもかかわらず、姿を見せない設楽。
一体彼に何が起こっているのか?

楡井は、三人の美女との会話を通して、
彼女らが "共謀" して隠しているらしい事情を探ろうとするが・・・


石持浅海は、"特殊状況下のミステリ" を
いくつも産み出しているけれど、
今回もまた意表を突く展開で驚く。

楡井は警察から逃げ切ろうなんて気はさらさらなく、
設楽に、ある "もの" を突きつけて
一言なじれば気が済む、はずだったのだが・・・

設楽を待っている間に、設楽の息子・大樹に
すっかり懐かれてしまったり、
幼なじみでもある真澄との間が
なんだかいい雰囲気になってきたりと
彼の方にもいろいろな変化が現れる。


読者は、いったいどういう風に着地するのか
皆目見当がつかないまま最終章を迎えるだろう。

そして明らかになる設楽の秘密と、楡井&三美女との決着。

よく「意外な結末」なんて言葉があるけれど、
この作品のラストにこそ、この言葉はふさわしいと思う。

いやあ、この展開には脱帽しました。
何て言ったらいいんだろう。
これ、ひょっとしてハッピーエンド(?)なのかなぁ。


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怪盗ニック全仕事2 [読書・ミステリ]

怪盗ニック全仕事(2) (創元推理文庫)

怪盗ニック全仕事(2) (創元推理文庫)

  • 作者: エドワード・D・ホック
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/08/29
  • メディア: 文庫



評価:★★★

短編ミステリの名手である作者が残した
「怪盗ニック」シリーズは全87編。
そのうちの何割かは邦訳され、日本独自編集の短編集も出ていたが
この「全仕事」は、87編すべてを発表順に全6巻にまとめるもの。
本書はその第2弾で、1972~77年にかけて発表された15編を収録。

ニック・ヴェルヴェットは一風変わった泥棒。
彼が盗むのは貴金属や宝石の類いではない。
"価値がないもの" や "誰も盗もうと思わないもの" に限るのだ。

本書でも映画の没フィルム、古いサーカスのポスター、
アパートのダスターシュートに投げ込まれたゴミなど
およそ価値がありそうもないものの依頼が続く。

しかも今回の作品集には
「何も盗まないように頼まれる話」とか
「ニック自身が盗まれてしまう話」とか、
"変化球" ものも含まれている。


一見して価値がないように見えても、
依頼人は少なくない額の報酬を払っている。
ニックの要求する額は、通常で2万ドル。危険なものは3万ドル。

 70年代の為替相場がどうなってたか記憶にないのだが
 長い間続いた1ドル=360円の固定相場が終わり、
 (今ちょっとネットで検索したら)
 70年代半ばは1ドル=250円前後だったらしい。

ということは日本円にして500万~750万も払ってるわけで、
「それだけの金を払っても手に入れたい」理由が
ストーリーの根幹になる。

もちろん、盗み出す方法そのものが
メインのアイデアになっている作品も多いけどね。

一作当たりの長さが文庫で30ページ前後と、
短編にしても短めなので、アイデアとオチの切れ味で勝負。

面白いんだけど、この手のものばかりだとやっぱり飽きるかなあ。
まあ、年に1冊というペースは正解だと思う。


ちょっとwikiで見てみたら、作者は
生涯で短編ミステリを900編くらい書いてるらしい。
アイデアを900も考えるなんて気が遠くなりそうである。
いやー、スゴい人っているもんなんだねぇ。


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 [読書・ミステリ]

光 (光文社文庫)

光 (光文社文庫)

  • 作者: 道尾 秀介
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/08/06
  • メディア: 文庫



評価:★★★

本作の語り手である利一は小学4年生。
同級生の慎司、宏樹、清孝、そして
慎司の2歳年上の姉・悦子も加わった5人が、
夏休みの始まりから翌春までの間に過ごした
"少年の日々" が綴られている。

「長編」と銘打たれてはいるが、実際は
各章ごとにストーリーに区切りがある連作短編集になっている。
そして各章の合間には、成長した「わたし」による
短い回想が挟まれている。

「第一章 夏の光」
 野良犬のワンダが行方不明になり、
 殺されたのではないかと噂になるが、
 宏樹の父が撮った写真がもとで清孝に容疑がかけられる・・・

「第二章 女恋湖の人魚」
 女恋(めごい)湖には、かつて巨大な鯉がいたという。
 鯉は若い女性に姿を変え、
 村の若者とのあいだに人魚が生まれたと伝えられる。
 伝説の鯉を探しに湖を訪れた利一たちは、
 "人魚伝説の洞窟" を発見するが・・・

「第三章 ウィ・ワァ・アンモナイツ」
 暴風雨によって土砂崩れが起き、
 家から登校できなくなった慎司と悦子は、
 しばらくの間、利一の家に泊まることになる。
 そして、利一と慎司は、宏樹の鼻を明かすために
 アンモナイト化石の偽物を作り始める・・・

「第四章 冬の光」
 清孝の祖母が入院した。
 遠くの病院に転院したら、清孝も転校になるかも知れない。
 清孝と祖母を慰めるために、
 利一たちは "あるもの" を探し始める・・・

「第五章 アンモナイツ・アゲイン」
 利一たちは、市会議員の息子・劉生(りゅうせい)と知り合う。
 清孝への餞別として、利一たちは
 アンモナイトの化石を贈ろうとするが、
 化石の掘れる場所は既に開発の手が入っていた。
 そんな彼らに流星は「化石のある場所を知っている」という・・・

「第六章 夢の入口と監禁」
「最終章 夢の途中と脱出」
 この二章は前後編になっている。
 劉生が姿を消した。心配した利一たち5人は
 行方を追ううち、雑木林の中で彼を見つける。
 「実は "狂言誘拐" だった」と劉生は打ち明けるが、
 そこに現れた男たちに5人は捕らえられてしまう・・・


第一章がいちばんミステリっぽい雰囲気があるが、
第二章以降は彼ら小学生たちの日常の中で起こる出来事。
どちらかというと微笑ましい部類の話が続く。

ラスト二章で一気にサスペンスが高まり、
小学生6人が経験した "命をかけた大冒険" が描かれる。

読者は郷愁の思いとともに、しばしの間
"子供の時間" に戻ることになるだろう。

とはいっても、そこは道尾秀介のこと。
全体的にミステリらしさは希薄だなあと思って読んでたんだけど
実は作品全体にある "仕掛け" が施してあり、
最後はちょっとしたサプライズが待っている。


ミステリ読みとしては恥ずかしい話だが、作品の扉ページに
「市里修太」という作家の『時間(とき)の光』という作品から
抜粋された文章が掲載されているんだけど、
解説の大林宣彦氏(映画監督)の文章を読むまで
このページの意味に気づかなかった。
つくづく私のアタマはボケてるなあ・・・


あと、全く余計なことだけど、大林氏の解説文は本書の内容を、
無理矢理に自分の思想信条のほうへ結びつけているみたいに読める。
ちょっぴり "我田引水" じゃないですかねぇ、大林さん。


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ふたりの距離の概算 [読書・ミステリ]

ふたりの距離の概算 (角川文庫)

ふたりの距離の概算 (角川文庫)

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/06/22
  • メディア: 文庫



評価:★★★

作者の出世作である<古典部>シリーズ、第5巻。
もっと巻数が出ていたような気もしてたけど、まだ5冊なんだね。

神山高校古典部のメンバーである
奉太郎、える、里志、摩耶花の4人は無事2年生に進級、
物語は5月末に行われる長距離走大会が舞台となる。

そのコースは、学校を出発して周囲20kmをぐるりと廻るもの。
奉太郎もクラスメイトと共に走るが、彼にはもう一つ目的があった。

古典部に仮入部した新入生の大日向友子。
えるたち2年生ともすぐに馴染んだように見えたのだが
ある日、意味不明の言葉とともに、入部はしないと宣言する。

この長距離走大会の日が、新入部締め切り日にもなっている。
何としても今日中に、大日向の入部拒否の理由をつきとめたい。

渋滞を避けるべく、クラスごとに時間をあけて出発する。
そのため、先頭から最後尾までが非情に長い。

奉太郎の後方に摩耶花、その後にえる。
1年生の大日向はさらにその後。
運営を司る総務委員の里志は、
自転車でコースのあちこちを走り回っている。

摩耶花・える・大日向に話を聞くため、奉太郎はわざと
ゆっくり走る(もともと奉太郎は速く走る気は無いがwww)。
そうすれば、後ろの三人が
次々に奉太郎に追いついてくるというわけだ。

表題『ふたりの距離の概算』は、奉太郎が、
後ろから来る3人との距離を頭の中で暗算するところから来ている。

長距離走大会での奉太郎の走りっぷり(さぼりっぷり?)と、
大日向の仮入部から今までの経緯が交互に描かれながら
ストーリーは進行していく。


もちろん最後には大日向の入部しない理由が明らかになるのだが、
ネタとしては短編でも充分なような気もする。

でも、それぞれ個性的な古典部のキャラの面白さと、
マラソンを走りながら関係者に事情を聞いて
謎を解いていくというシチュエーションの斬新さで
最後までダレずに読めてしまう。
このあたりはとても達者です。さすが。

「このミステリーがスゴい!」で二年連続1位になったりと
最近評価が高まってきていて、
たぶん執筆依頼も増えてるんだろうと推測する。
でもそのせいか、このシリーズや<小市民>シリーズなどの
ライト(必ずしもそうでないところもあるけど)な学園ミステリの
新作にとんとご無沙汰である。

一般向けのミステリも好きなんだけど、
こちらの方も忘れずにお願いしたいものだ。


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『宇宙戦艦ヤマト2』と『終戦のローレライ』 [アニメーション]

※長文注意!

先日の『ヤマト2202』関連の記事の中で、
『終戦のローレライ』の伊507と、
『ヤマト2』でのヤマトが
ダブって見えた、って書いたんだが、
つらつら考えてみるにこの2つの作品、
意外と共通点がありそうな気がしてきたので
ちょっと思いつくままにずらずら書いてみた。

まとまらない文章なんだけど(それはいつものことだ)
とりあえず載せてみる。
ご用とお急ぎでない方は、ヒマな時にでもご笑覧下さい。

こんなに長く書くつもりは毛頭なかったんだけど
・・・どうしてこうなった?


いちおう断っておくと、『さらば宇宙戦艦ヤマト』以降、
私は「ヤマト」という作品に対して
やや屈折した見方をするようになってしまった。
(このあたりも4年前くらいの記事に書いたような気がする。)

『ヤマト2』もリアルタイムで全話視聴したけれど、
Part.1ほどの熱意を持って観たとは言い難い。
まあ簡単に言えば思い入れの度合いが
かなり小さくなったのは否定しない。

だからというわけではないが、
作品についての記憶違いや勘違いも多いと思うので
そのあたりはご勘弁願いたい。なにぶん昔のことなので。

『ヤマト2202』のシリーズ構成・脚本を担当する、
福井晴敏氏が書いた長編小説『終戦のローレライ』。
出版は2002年なので、読んだのはもう14年近い昔になる。
原稿用紙2800枚、単行本で上下巻、文庫で全4巻という
大長編なので、それ以後は部分的に読み返したところはあっても、
全編を通して再読したことはない。
したがって、こちらの記憶もあやふやなので間違い等もあるかと思う。

以下の文章では、『ヤマト2』の終盤の展開はもちろん、
『終戦のローレライ』のネタも盛大にバラしていることを
予めお断りしておく。

これから『ヤマト2』を見ようと思っている方、
これから『終戦のローレライ』を読もうと思っている方は
以下の文章は読まないことを推奨する。


では、両者に共通する要素を挙げていってみよう。

以下の文章では、『ヤマト2』は「2」、
『終戦のローレライ』は「終戦」と表記する。


(1)出航目的は「探索」

「2」では、宇宙の彼方からの謎のメッセージに応え、
その発信源に向けてヤマトは出発した。その目的は
発信者と接触して、メッセージの真意を問うため。

「終戦」では、ナチスドイツが開発したものの、
日本に向かう途中で海中に投棄された "新兵器"、
ローレライ・システムを見つけ出し、回収するため。


(2)見つけたものは "女性"、しかも超能力者

ヤマトが発見したのは、惑星テレザートの唯一の生存者・テレサ。
彼女は、惑星ひとつを滅亡に追い込むほどの "力" を持っていた。
劇中では "反物質を操る力" と称されているだけで
具体的な説明はなかったが、私は個人的には
「物質・反物質を相互に変換する能力」と解釈している。

伊507が発見したのは、ローレライ・システムの中枢である
小型特殊潜航艇ナーバル。そしてその中にいたのは
システムの "核" となる少女・パウラ。
彼女はナチスが行った投薬による人種改造実験の結果、
水を媒介にした強力な感知能力を得ていた。


(3)世話係と恋仲に(笑)

「2」では、テレサは事前に彼女と通信を通じて
接触を保っていた島と次第に惹かれあうようになっていく。

「終戦」では、パウラを発見した少年兵・折笠征人が
そのまま彼女の世話係となり、次第に心を通わせていく。


(4)自己犠牲

テレサは、彗星帝国との戦いにおいて2度、身を挺している。
一度目はテレザート星ごと自爆して白色彗星の足止めをし、
二度目は ヤマトvs都市帝国 の最終決戦において、
自らの命をもって超巨大戦艦を葬り去った。

パウラもまた、自らすすんでその身を犠牲にしようとした。
一度目は伊507が2隻の米国潜水艦に追撃された時、
二度目はテニアン島での最終決戦へ赴く途中で。
彼女の場合は肉体的な死ではなく、"精神的な死" を選ぶことによって
ローレライ・システムを "完璧" なものとすることを目論んだのだが、
いずれも折笠が反対し、また絹見艦長の同意も得られなかったため
実現せずに終わるが、誰よりも
彼女の兄であるフリッツ少尉がそれを許さなかっただろう。


(5)単艦での突入

「2」終盤で、ヤマトは単艦で彗星帝国の都市帝国に挑む。
地球防衛艦隊は、それ以前に白色彗星およびその前衛艦隊との戦いで
全滅しており、戦闘可能なのはヤマトのみであった。

「終戦」では、伊507が単艦で敵地へ突入する。
時に昭和20年8月12日。連合艦隊は既に壊滅し、
原爆を搭載したB29が発進するタイムリミットまでに、
飛行場があるテニアン島へ到着可能な戦闘艦艇は、
伊507のみだった。

ちなみに、都市帝国には超巨大戦艦という "奥の手" があったわけだが、
40隻におよぶ大艦隊で伊507を待ち受けていた米国海軍もまた
"幽霊艦隊"(ゴースト・フリート)という "奥の手" を隠し持っていた。

ヤマトは超巨大戦艦相手になすすべがなかったが、
伊507は全く怯むことなく果敢に戦い抜き、これを突破していく。


(6)命令違反

彗星帝国よりの降伏勧告を受諾した地球連邦政府に叛旗を翻し、
徹底抗戦を選択したヤマトはもちろん「反逆者」である。
ヤマト世界の軍規がどうなっているかは不明だが、
普通に考えればヤマトの乗組員たちは反逆罪に問われ、
最悪の場合は極刑もあり得たのではないだろうか。
最終的に彗星帝国の脅威が去ったことでうやむやになったみたいで
続編の「新たなる旅立ち」でも彼らが罪に問われた描写はないけど。

伊507もまた、テニアン島への攻撃は司令部からの命令ではなく、
あくまで有志による行動だと絹見艦長は乗組員たちに明言する。
あわせて「諸君は艦を下りる自由を有している」と告げ、
実際に少なくない数の乗組員が下艦している。

「2」にはこのようなシーンはない。正式な命令がないままに、
およそ生還が期しがたい死地へ赴くわけだから、
乗組員に選択の機会を与えて然るべきだと思っていた。
それがなかったことも「2」に対する不満の一つだったので
「終戦」でしっかりこれを描いてくれたことは嬉しかった。


(7)生還

「終戦」での決戦の終盤、折笠とパウラは
戦場から脱出し、生還するよう絹見艦長より命令される。
二人は当初それを拒否するが、
艦長、そしてフリッツの説得を受け、戦場を離脱していく。
そして伊507は、原爆搭載機の発進阻止に向けた
最後の戦いへ向かうことになる。

「2」では、自らの命とヤマトをもって
彗星帝国の超巨大戦艦と差し違えることを選んだ古代だが、
テレサの説得を受けて思いとどまる。
これによって主要キャラは生き残ったものの、
テレサ一人が犠牲になることによって救われるという結末となった。


長々と書いてきてしまったが、要するに
福井晴敏氏が書いた『終戦のローレライ』という作品には、
"ヤマト2成分" がかなりの濃度で含まれているような気がする、
ということ。

最初は「これだけ共通点がある」ってつもりで書いてたんだけど
できあがったものを読み返してみると、
同じようなシチュエーションでもかなり違う展開をしているようで、
思ったほど似ていないようだ(笑)。


福井晴敏氏は、ヤマト世代ではなくガンダム世代で、
富野由悠季監督の熱烈なファンであることは周知の事実だ。
彼の作品には随所にガンダムの影響あるいはオマージュが散見される。

「終戦」でも、"ガンダム要素" はいくつか散見される。

メインのネタであるローレライ・システム、
あるいはその "核" たるパウラの感知能力に、
ガンダムのニュータイプを想起する人は多いだろうし、
物語の黒幕であり、日本をいっぺん根底から破壊し尽くし、
焦土からの再興を目指す浅倉大佐に
「アクシズ落とし」を図ったシャアの面影を見る人もいるだろう。

「終戦」の4年後に出版された「op.ローズダスト」では、
"ガンダム要素" はさらに顕著だ。

以前、このブログの記事にも書いたけど
主要キャラである丹波朋希・入江一功・堀部三佳の3人の関係は
アムロ・シャア・ララァの相似形だし、
ラストで倒壊する高層ビルから朋希が脱出するシーンに
ファースト・ガンダムの最終回を重ねた人も多いだろう。


そんな作品を書いてきた福井氏が、
「ヤマト2」&「さらば」のリメイクである
『ヤマト2202』において脚本・シリーズ構成を担当する。

最初は驚いたけど、こうやって書いてきてみると
案外ハマっているような気もしてきた。
ガンダム世代の彼が "ヤマト" という素材をどう料理するかも
興味深いところではある。


「2199」の時にも書いたけど、
100人のヤマトファンがいれば、100の「俺ヤマト」がある。
誰がどうリメイクしようと、
100人全員の支持が得られるなんてことはありえない。
必ず誰かがどこかに文句を言うことだろう。

ましてや「2」そして「さらば」である。
ハードルの高さは「イスカンダル編」の比ではないだろう。
たぶん私も文句を言うだろうし(笑)。

ならば、変におもねることなく、
「福井ヤマト」なり、「羽原ヤマト」なりを
ぶれずに最後まで押し通していただきたいと思う。

「2199」だって、最後まで「出渕ヤマト」を貫いたんだから。


まあ、実際にフタを開けてみないと何とも言えないのだけど、
(ここのところ毎回書いてるが)
過度の期待はせず、かといって悲観もせず、
淡々と公開を待ちましょう。


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ロマンス [読書・ミステリ]

ロマンス (文春文庫)

ロマンス (文春文庫)

  • 作者: 柳 広司
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/11/08
  • メディア: 文庫



評価:★★

時は昭和の初め。具体的な年号は描写されずに進むのだが
太平洋戦争開始までさほど遠くない時代と思われる。

実はラストでこの物語が何年の出来事なのかは分かるのだけど。

主人公・麻倉清彬子爵は、ロシア人の血を引くクォーター。
家族でパリに暮らしていたが、両親が交通事故で客死、
大伯父・周防に引き取られて帰国し、麻倉子爵家を継いだ。
しかし27歳になった今も結婚もせずに遊び歩いていた。

ある日、清彬は親友の多岐川嘉人に呼び出されて
上野のカフェーへ出向く。
見知らぬ男の刺殺死体と出くわして、
殺人容疑をかけられていた嘉人を機転を利かせて救うが
反体制活動を取り締まる特高(特別高等警察)の刑事・黒崎が現れ、
捜査への協力要請をしてくる。

さらに、男子のいない今上天皇に側室を持たせる動きがあり、
嘉人の妹・万里子がその候補に挙がっているという・・・

清彬はかつて万里子への求婚を思い立ったが、
彼女の父である多岐川伯爵に拒絶されたことがあった。

折しも、共産主義活動に参加した容疑で、
女子学習院に通う良家の子女たちが大量に摘発されるが
その中に万里子の姿もあった・・・


基本的には男を刺殺した犯人を巡るミステリではあるのだけど
華族に生まれながらも外国の血を引くが故に
日本の貴族社会に受け入れてもらえない、
清彬の孤独が物語のメイン部分を占めている。

庶民の暮らしにも軍隊にも入ることができず、
日本の中に身の置き所を持たない彼は、
終盤になって、ある "行動" を決意するのだが・・・

タイトルこそ「ロマンス」だが、
ロマンティックな雰囲気は欠片もない。
ラストに明らかになる万里子の "真意" も含めて。

事件の真相はたしかに意外なもので、
ミステリとしてはとてもよくできていると思う。

でも、私がつけた星の数を見てもらえばわかるのだけど
とにかく重くて暗くて救いのない話で、
どうにも好きになれませんでした。


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吉野太平記 上下 [読書・歴史/時代小説]

吉野太平記〈上〉 (時代小説文庫)

吉野太平記〈上〉 (時代小説文庫)

  • 作者: 武内 涼
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2015/12
  • メディア: 文庫




吉野太平記〈下〉 (時代小説文庫)

吉野太平記〈下〉 (時代小説文庫)

  • 作者: 武内 涼
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2015/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

足利尊氏が室町に幕府を開いてからおよそ100年。

大覚寺統を報じる一派、いわゆる後南朝は、
いまだ吉野の地にこもり、幕府そして北朝への抵抗を続けていた。

1443年に起きた禁闕(きんけつ)の変で、
三種の神器の一つ・勾玉を奪取した後南朝側は、
大覚寺統の末裔・自天王を「帝」と仰ぎ、反撃を開始した。

戦乱を防ぎ、皇統をふたたび一つにする糸口を探るべく、
近衛関白は後南朝内部の和平派との接触を図る。
その使者に選ばれたのは
将軍・足利義政の妻である日野富子の妹、幸子であった。

その護衛を命ぜられたのは忍軍村雲党の棟梁・村雲兵庫。
幕府に不満を抱く貧乏公家の娘に扮した幸子とともに、
敵地である吉野の山地奥深くへと分け入っていく。

しかし、幕府の実権を握る伊勢守貞親は、
後南朝勢力の根絶を狙って、戸隠忍軍による別働隊を送り込む・・・


読んでいて思いだしたのは、著者のデビュー作「戦都の陰陽師」。
ヒロインがある目的を持って敵地に乗り込んでいく、
忍者のチームが護衛につき、その頭領に想いを寄せていく、
ストーリーのほとんどが深い山中で進んでいく、など
共通するモチーフも多い。

ただ、このブログで「戦都の陰陽師」を採り上げた時、
けっこう文句を書いたんだよねぇ。

「護衛の忍者たちの内面描写が少ない」とか
「山の中を逃げ回ってるシーンが長い」とか
「もっと戦闘シーンをじっくりと」とか・・・

でも今回は大丈夫。

護衛のメンバーを、兵庫を含めても4人に絞ったせいか
それぞれの過去や心理描写も丁寧に描かれたし、
主人公一行は確かに逃げ回ったけど、
一方的にやられっぱなしになってないし、
兵庫が手練れの敵と戦うシーンも、危機に陥るシーンも
たっぷり描いてあるし。

それに加えて、敵キャラにまでドラマを用意してある。
南朝再興に執念を燃やす謀将・楠木不雪。
戦い続ける日々に疑問を抱き、さらには
自らがもつ "ある秘密" に葛藤する自天王。
敵陣営内の人間模様も読みどころの一つだ。

デビュー作と比べると、
かなりの進歩を感じる出来になっていると思う。


しかしながら実際の歴史に題を採った小説である以上、
史実から大きく離れた結末は許されない。

それはまあ歴史小説の宿命ではあるのだろうけど、
本書の中で終始一貫して平和を願っていた幸子が、
この物語が終わった「後」に辿る運命を史実から追ってみると
そのあまりの落差に驚き、ちょっと切ない気分になったよ。


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キミは知らない [読書・ミステリ]

キミは知らない (幻冬舎文庫)

キミは知らない (幻冬舎文庫)

  • 作者: 大崎 梢
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2014/04/10
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

ヒロインの水島悠奈は高校2年生。
12年前に歴史の研究者だった父親を火災事故で亡くし、
出張が多く留守がちな母と二人暮らしである。

ある日悠奈は、学校の図書館で父の著書を読んでいる青年と出会う。
彼の名は津田孝之。数学の非常勤講師だった。

ぱっとしない外見、野暮ったい服装にもかかわらず、
孝之と言葉を交わしていくうちに、悠奈は淡い恋心を抱くようになる。

しかし孝之は突然学校を退職し、実家へ帰ってしまう。
ショックを受けた悠奈だが、偶然にも
彼の実家の住所を知り、愕然とする。
父の遺品の手帳にも、同じ住所が記してあったのだ。

試験休みを利用して、彼の実家のある地方都市を訪ねた悠奈。
しかし、やっとの思いで巡り会えた孝之は、
別人と見違えるほどの精悍な風貌、そして冷たい眼をしていた・・・


巻末の解説に、本書を評して
「ジェットコースター・ノベル」とあるが、その言葉に偽りはない。
とにかくテンポが速くどんどんストーリーが進行していくのだ。

何せ、物語の開始から上記の展開まで、文庫で40ページもない。
全部で370ページほどの作品なので、
物語はまだ9割ほど残っていることになる。

そしてこれ以後も、予想外の展開は続く。


翌日、父の焼死したロッジ跡を訪れた悠奈の前に
謎の黒服三人組が現れる。
彼らは「お迎えに上がりました」と言いつつ
悠奈を拉致同然に連れ去ってしまう。

到着したのは資産家・大公路(おおこうじ)家の豪邸。
そして当主・誠太郎は一族郎党を前にして
「悠奈に財産の相続権を与える」と宣言してしまう。


なんと突然の「犬神家の一族」展開?
なあんて思ってる暇もなくどんどん物語は進む。


誠太郎の宣言直後から悠奈は命を狙われ、
そこに現れた孝之に連れられて屋敷を脱出するが、
さらに彼女の行く先々でさまざまな事件が起こっていく・・・


孝之以外にもマキやレンと名乗る青年が登場し、
悠奈は3人のイケメンに囲まれるという逆ハーレム。

彼ら以外にもさまざまな人物が悠奈の前に現れるが、
みな腹に一物も二物も抱えていて、
いったい誰が味方で誰が敵なのか、ラストに至るまで判然としない。

そして、ひとり悠奈だけが事情が分からずに右往左往。
まさにタイトル通りに「キミは知らない」状態。
しかし彼女は逃げずに、自分の運命に果敢に立ち向かっていく。
すべてを明らかにして、自らの進む道を切り拓くために・・・


恋あり、冒険あり、出生の秘密あり、父の死の真相あり。
後半に入ると、古の因習に囚われた村に秘められた悲劇やら
旧家同士の確執やら因縁やらも絡んできて、まさに横溝正史の世界。

もう大盛りの幕の内弁当みたいにお腹いっぱいの大盤振る舞い。
しかし胃もたれの心配は御無用。
大崎作品の持ち味とも言える、爽やかな読後感が待っているから。

女子高生・悠奈ちゃんが巻き込まれた、手に汗握る5日間。
とにかく読み出したらページを繰る手が止まらない。
ロマンティックでアドベンチャー満載の
ジュブナイル・ミステリの傑作だ。


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迷いアルパカ拾いました [読書・ミステリ]

迷いアルパカ拾いました (文春文庫)

迷いアルパカ拾いました (文春文庫)

  • 作者: 似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/07/10
  • メディア: 文庫



評価:★★★

楓ヶ丘動物園に勤務する飼育員の "僕" こと桃さん、
お客さんに絶大な人気のアイドル飼育員・七森さん、
変人でオタクの服部くん、獣医の鴇先生の4人組が活躍する
ミステリ・シリーズ第3作。

ある夜、退勤しようとした桃さんと七森さんは
動物園の通用門近くの路上で "迷いアルパカ" を保護する。

しかしこの件がニュースで報道されても所有者は名乗り出ず、
それどころか謎の二人組の侵入者が現れる。
そしてなぜか、七森さんの様子が変だ。

どうやら、彼女の大学時代の友人・千恵が失踪したらしい。
彼女のアパートを訪れた4人組だが千恵の姿はなく、
いたのは放置されて死亡寸前のハムスターだけ。
そこへ現れたのは、千恵の恋人と名乗る青年・鈴木だった・・・


ぼやいてばかりで惚けた桃さんが語り手なので
ドタバタ劇が続くユーモア・ミステリになってるが、
引き起こされる騒ぎの底は意外と深い。

今回も、ある目的のための "動物の利用" がテーマで、
事件の裏には "人間のエゴ" がある。
まあ、動物たちは喋れないからなあ・・・

3作目にもなると、レギュラー陣の安定感はもう充分。
事件が解決に至るクライマックスでの4人の呼吸もぴったりである。


さて、七森さんと鴇先生という "ダブルヒロイン" に対して、
桃さんの立ち位置はどこにあるのか、あるいはどこへ向かうのか。
本作のラストでは鴇先生とちょっといい雰囲気になったみたいだが、さて。


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ラブコメ今昔 [読書・恋愛小説]

ラブコメ今昔 (角川文庫)

ラブコメ今昔 (角川文庫)

  • 作者: 有川 浩
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/06/22
  • メディア: ペーパーバック



評価:★★★☆

タイトル通り、ラブコメ小説の短編集なのだが
普通のラブコメではない。
なぜならば、本書でラブコメを演じる方々が
みんな「自衛隊員」だから。
自衛隊といっても人間なのだが、その職場の "特殊性" ゆえに、
ひと味違う恋愛模様が垣間見える。


「ラブコメ今昔」
 習志野を本拠とする第一空挺団の隊長・今村二佐。
 ある日、彼の前に隊内広報誌『あづま』の記者を務める
 矢部千尋二尉と吉敷一馬一曹が現れる。
 『自衛隊員の恋愛と結婚について』をテーマに、
 今村に結婚当時のことを語ってほしいという。
 冗談じゃないとばかりに二人から逃げ回る今村だが、
 それをきっかけに妻との出会いの頃を思い巡らす・・・
 いやあ、昭和のラブ・ストーリーだねえ。こういうの大好きだ。

「軍事とオタクと彼」
 出張からの帰りの『のぞみ』車内で歌穂が出会い、
 意気投合した森下くんは、海上自衛隊の三曹。
 しかも戦隊ものと仮面ライダーとマンガとアニメを
 こよなく愛するオタクちゃんだった。
 しかし、めげない歌穂は(えらい!)
 順調に森下くんとの仲を深めていくのだが、
 中東地域で行われるPKO活動に森下くんが参加することに・・・
 歌穂さんにココロの広さに乾杯したくなる。

「広報官、走る!」
 政屋征夫一尉は、防衛省広報室勤務。
 現在は、軍事小説の大家の原作による、
 自衛隊が登場するSFドラマの撮影に協力している。
 撮影スタッフのAD・鹿野汐里と組んで連絡/調整を担当するが
 頻繁に変更されるスケジュールに二人はきりきり舞い。
 しかも、ディレクターが勝手に変更した台本が
 原作者の怒りを買い、撮影は中断してしまう羽目に。
 窮地に陥った汐里を救うべく、征夫は一計を案じる・・・
 この「軍事小説の大家」って福井晴敏がモデルだよねえ。
 
「青い衝撃」
 相田公恵の夫・紘司は航空自衛隊の花形、
 ブルー・インパルスのパイロットだ。
 毎回、大量の女性ファンに追いかけられる紘司だが、
 ある日、夫の制服の襟裏に隠された紙片を見つける。
 それは、見知らぬ女性から公恵に宛てられた "挑戦状" だった。
 その日から、夫の浮気を疑う日々が始まるが・・・
 自衛隊員にもストーカーがつく時代なんですねえ。

「秘め事」
 航空自衛隊第10飛行隊所属の手島岳彦二尉は、
 人に言えない秘密を持っている。
 それは、彼の直属の上官である
 水田三佐の娘・有季とつきあっていること。
 いつ上官に打ち明けるかタイミングを計っていた頃、
 事故で隊員の一人が命を落とした。
 葬儀に出席し、悲しみに暮れる遺族を見た水田三佐は宣言する。
 「俺の娘にだけは、こんな思いはさせない」
 いやあ、お父さんの気持ちはよ~く分かります。

「ダンディ・ライオン~またはラブコメ今昔イマドキ編」
 冒頭の「ラブコメ今昔」の前日譚。
 矢部千尋二尉と吉敷一馬一曹の馴れそめが綴られる。
  こちらは平成のラブ・ストーリーですね。

基本的にはラブコメで、みなハッピーエンドなストーリーなので
けらけら笑いながら読めるのだけど、
その底にはさまざまな "覚悟" が潜んでいる。

毎日が生命の危険と隣り合わせの生活を送る覚悟、
有事があれば死地へと飛び込んでいかなければならない覚悟、
そしてそういう家族を持ち、共に生きる覚悟。
本書に登場し、ドタバタ騒ぎを演じる恋人たちや夫婦も、
みなそれぞれの "覚悟" を背負っている。

本書は実はひと月前(3/6)に読み終わってる。
今回、この文章を書くためにもう一度手にとって
ページをぱらぱらめくっていたら、
いつのまにか夢中になって読みふけってしまった。
再読、三読に耐えるのも、ストーリーテリングの巧みさもあるけれど
上記のような "覚悟" をもったキャラクターたちが
たまらなく愛しく思えるようになるからだろう。


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