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忍びの森 [読書・ファンタジー]

忍びの森 (角川ホラー文庫)

忍びの森 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 武内 涼
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/04/23
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

物語は天正九年の伊賀に始まる。
ちなみに本能寺の変の前年である。

織田信雄を総大将とする織田軍団が伊賀国へ侵攻した。
伊賀六十六家と呼ばれる忍者達は必死の抵抗を試みるも、
織田方に加勢する甲賀者の存在もあって敗北を喫してしまう。

阿保(あお)一族の上忍・影正もまた妻子を織田軍に殺され、
残った5人の仲間とともに再起を期して紀州へと落ち延びていく。

途中、伊賀忍者・田屋党の生き残り2名と合流し
総勢8名となった一行は、険しい山岳地帯へと分け入り、
やがて深い森の奥深くで荒れ果てた寺に辿り着く。

そこで彼らを待っていたのは、
手練れの忍者をも一瞬で屠ってしまう、姿なき "敵" 。
この寺こそ、この世に恨みを残して
人外の魔物へと変貌した5体の妖怪の棲み処だったのだ。

寺は謎の結界に取り囲まれて外部への脱出は不可能となり、
やがて彼らの眼前に異形の怪物が姿を現す。
超常能力を秘めた妖怪軍団vs超人忍者軍団の戦いが始まった・・・


作者はこれがデビュー作。
2010年、第17回日本ホラー小説大賞で最終候補まで残りながら
惜しくも受賞を逸した。
しかし、選考委員・貴志祐介氏の強力な推薦により
大幅な改稿を経て文庫にて出版、という経緯。


怪物と超人の対決を戦国時代を舞台に描く、という
ありそうでなかったパターン。まあ発想の勝利だろう。

小説での前例は思いつかないが、
映像ならどうだろう・・・って考えていたら、一つ思い当たった。

古い話で恐縮だが1967年から68年にかけて放映された
特撮TVドラマ「仮面の忍者 赤影」。
50代以上の方なら、鮮烈に記憶されているものと思う。

巨大な怪獣を相手に赤影たち飛騨の忍者が
海を大地を大空を縦横無尽に飛び回って、大立ち回りを繰り広げる。
あれは基本的に子供向け番組だったから、
作品の雰囲気はとても明るいものだったけど
あれを思いっきりダークにして、ホラー風味を増量し、
スプラッター風味をちょっと加えると本作に近くなるように思う。


妖怪達は律儀にも、5体いっぺんには襲ってこない。
武道の団体戦のように1体ずつ攻めてくるのだが
後から出てくる奴ほど手強くなるのはお約束。

迎え撃つは伊賀忍者・阿保一族の棟梁・影正、
その親友にして参謀役となる朽磨呂(くちまろ)。
影正に思いを寄せるくノ一・詩音(しおん)。
そして田屋党の少女・鵺(ぬえ)。
他の四人も一騎当千の強者揃い。
みなそれぞれ得意とする一撃必殺の技を持ち、
知恵と力を合わせて怪物どもに反撃を加えていく。

しかし櫛の歯が欠けるように、一人また一人と、
仲間を失っていくのもまたお約束。


戦いが続くなか、次第に明らかになる寺の由来、
そして妖怪たちの正体、というかこの世に恨みを残した理由。

忍者たちの側にも様々な愛憎の思いがあり、
それが彼らの間に亀裂をもたらしていく。
しかしそれを乗り越え、協力しなければ生き残ることはできない。

妖怪vs忍者の五番勝負の終わりに、生き残るのはどちらか・・・


デビュー作のせいか、そういう先入観を持って読んだせいか、
文章にいささか力が入りすぎな気もする。

肝心の "戦い" が始まるのは、全体の1/4を過ぎたあたりから。
分量的には妥当な配分かと思うのだけど、
読んでいるとなかなか始まらないのでイライラしてしまったよ(笑)。

序盤では、織田方・伊賀方の人物が大量に登場してきて、
誰が妖怪との対決におけるメインキャラになるのかが
判然としない状態が長く続くのがたぶん原因。
とは言っても、この部分で描かれた状況が、
後半の物語にも絡んでくるので、大幅にカットするのも難しい。
このへんは痛し痒しなんだろうけど、何とかならなかったのかなぁ。

まあそれだけ本番の対決に向けて期待が高まる、ということだね。
実際、始まってしまえば迫力充分な描写で楽しめる。

作者はこのデビュー作の後、順調に作品を発表しているようだ。
第二作である「戦都の陰陽師」も手元にあるので、近々読む予定。


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光圀伝 [読書・歴史/時代小説]

光圀伝 (上) (角川文庫)

光圀伝 (上) (角川文庫)

  • 作者: 冲方 丁
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/06/20
  • メディア: 文庫




光圀伝 (下) (角川文庫)

光圀伝 (下) (角川文庫)

  • 作者: 冲方 丁
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/06/20
  • メディア: 文庫



評価:★★★★


徳川御三家の一つ、水戸家第2代藩主・光圀の生涯を描いた一代記。
文庫で上下巻合わせて1000ページを超える大長編ながら
途中でダレることもなく最後まで面白く読めた。


冒頭、67歳の光圀が家老・藤井紋太夫を
自ら手に掛けるところから始まる。
老境に至った光圀がなぜ忠臣の命を奪ったのか。

この謎を "つかみ" にして、次章より時系列を巻き戻し、
この "天下の副将軍" の生涯が綴られていく。

光圀は同母兄・頼重を差し置いて世子(世継ぎ)に定められた。
その理由はわからない。父も、重臣達も黙して語らず。

本来、自分の手に入るものではないものを手にした。
兄が受け継ぐべきものを自分が奪った。
自分は重大な "不義" を犯している・・・
これが彼の前半生を支配する "業" となり、
この不義を正すために、光圀は煩悶し続けることになる。

十代の頃はいわゆる "傾き者" 。
仲間とつるんで悪さをしたり、飲む・打つ・買うの三拍子揃った
立派な(?)不良少年ぶり。
しかし不良仲間にはめられ、浮浪者を一人斬り殺してしまう。

その現場で出会った浪人・宮本武蔵に導かれ
沢庵和尚、山鹿素行といった人物と知り合う。
これが、光圀が文人として生きていくきっかけとなる。


物語は、徳川の治政が次第に盤石となっていく時代を追いながら
光圀が "暴れ馬" から "水戸の獅子"へと
成長していく様子を描いていく。


上巻ではさまざまな人々との出会いがある。
生涯の友、志を同じくする仲間、忠実な臣下たち。
そして何より、光圀が生涯愛し続けることになる正室・泰姫。

しかし下巻に入ると一転して、立て続けに別離を経験する。
友を、同志を、そしてなにより家族との哀しい別れが続く。
しかし光圀はそれらを乗り越え、歩みを止めることはない。
そして最後に、冒頭の藤井紋太夫殺害シーンへと戻り〆となる。

 「天地明察」でも、中盤あたりで号泣したなあ・・・
 あ、安井算哲(渋川春海)もちょい役で下巻に登場してる。
 このあたり、水戸家から見た改暦の様子が窺えて面白い。
 しかし算哲も光圀も、すんごい愛妻家だよなあ・・・

 NHKの大河ドラマなんかもそうだけど、
 ある人物の生涯を描いていくと
 終盤近くはどんどんキャラが死んでいくよねえ・・・

 閑話休題。


武家社会が舞台なので、メインキャラのほとんどは男性。
しかしながら、中盤より登場する二人の女性キャラが
群を抜いて素晴らしく、作中で燦然と輝いている。

一人目は、近衛家から光圀の元へ正室として嫁いできた泰姫。
17歳にして文芸諸事に秀で、その博覧強記ぶりで
光圀をはじめ水戸家の人々を驚かせるが
それより何より器の大きさが違いすぎる。
光圀の抱く野心はもちろん、悩みまでもすべて受け入れ、
最大の理解者であり協力者であり同志となり、
そして時として母のようなおおらかさで包み込む。
光圀は、初めて逢った婚礼の夜から、
彼女の魅力の虜となってしまう。10歳も年下なのに(笑)。
この夫にしてこの妻あり。
"獅子" の奥方は彼女のような人でなくちゃ務まらないよ・・・

そしてもう一人は、侍女として京から
泰姫とともにやってきた左近。
水戸家の独身男性の視線を一身に集めるような美貌ながら
とてつもない堅物で、その性質は無愛想にして不器用。
でもこの不器用さがしばしば笑いを誘って、
彼女を実に愛すべきキャラにしている。いやあ左近可愛いよ左近。
口数も少ないながら、その発言はしばしば物事の本質を突く。
しかし、決して侍女としての分を超えることはなく、
生涯、泰姫への忠誠を貫いていく。


フィクションの要素はもちろん含んでいるのだろうが、
おそらくかなり史実に沿って描かれているものと思う。

光圀は生涯のほとんどを江戸と水戸で過ごす。
だから日本中を世直し行脚することはない。

スケさんカクさんも出てくるが、こちらは
肉体労働ではなく頭脳労働系。

八兵衛は出てこないが小八兵衛なる人物が出てくる。
もっとも、役回りは風車の弥七に近いかな。

戦国の世ではないから、派手な合戦シーンも無い。
でも、幕閣や大奥の "権力者" たちが、将軍の威光を笠に着て
横車を通そうとすると、公然と反駁し立ち向かっていく。
そういう意味では立派に "正義の味方" もしている(笑)。


人の価値は「どれくらい生きたか」ではない。
「どう生きたか」そして「死して後、何を残せたか」。
作中、多くの人々が亡くなっていくが、
彼ら彼女らがどう生き、何を残したか。
それが本書のテーマであり最大の読みどころだろう。


「天地明察」と比べるとやや取っつきにくいかも知れないが
(実際、かみさんは冒頭の紋太夫手討ちのシーンで挫けた。)
物語に没入してしまえば、光圀の強烈な個性にぐんぐん引き込まれて
楽しい読書の時間を過ごすことができるだろう。


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英国パラソル綺譚 アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う [読書・ファンタジー]

アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う (英国パラソル奇譚)

アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う (英国パラソル奇譚)

  • 作者: ゲイル・キャリガー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2011/04/08
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

舞台はパラレルワールドの19世紀イギリス。
人狼や吸血鬼、ゴーストなどの "異界族" と人類が共存している世界。

主人公は貴婦人アレクシア・タラボッティ嬢。
イタリア人の血を色濃く引く容姿のため、
十分に魅力的ながら社交界ではいささか浮き気味のよう。

しかし彼女には容姿以上に "スペシャル" な能力があった。
アレクシアが触れると、吸血鬼は牙を失い人狼は変身が解ける。
つまり "異界族" の力を封じることができるのだ。
彼女のような力を持つものは〈魂なき者〉と呼ばれていた。
(「SOULLESS」は本書の原題でもある。)

ある夜、退屈な舞踏会を抜け出して
図書室に逃げ込んだアレクシアはそこで一人の吸血鬼に襲われる。
もみ合っている内に彼女は吸血鬼を刺殺してしまう。

アレクシアは異界管理局の捜査官、コナル・マコン卿の
取り調べを受けることになるが、この二人はかねてからの犬猿の仲。

ちなみに異界管理局とは異界族と人間の間の犯罪を
取り締まる警察組織のことで、マコン卿自身も人狼である。

やがて事件の背後には、群れに属さない "はぐれ" 吸血鬼の出現や
相次ぐ人狼の失踪が絡んでいることが判明していく。


・・・というわけで、この後は事件の謎を追う
アレクシアとマコン卿の冒険が綴られていくわけだが
終盤になって明らかになる陰謀の正体が
本書の主眼かと言えばそうでもなさそうだ。

作品中最大の読みどころは、何と言っても
アレクシアとマコン卿のロマンスだろう。

「ケンカするほど仲がいい」の典型で
物語の進行と並行して、アレクシアが次第に
自分の中にあるマコン卿への愛情に気づいていく様子が実にかわいい。
マコン卿も、アレクシアが他の男性に会いに行く時の
気が気でない様子とか、もうわかりやすすぎて・・・

アレクシアとマコン卿、このドタバタカップルのラブコメこそ
最大の読みどころで、事件はそれを描くための舞台装置。
・・・そこまで言うと言い過ぎかも知れないが。


作中、しばしばアレクシアは "オールドミス" と呼ばれる。
何せ19世紀のイギリスなので女性は結婚が早いらしく
アレクシアは20代半ばにして、周囲からすれば充分に
"婚期を逃した" と思われているようだ。

 平均初婚年齢が女性で30歳に迫ろうという現代日本から見たら
 アレクシア嬢は充分に若いヒロインなんだけどね。
 もっとも、20年くらい前までは「クリスマスケーキ」とか
 「大晦日」なんて言葉があったよなあ・・・
 今そんなこと言おうものならセクハラになってしまうが。

人狼や吸血鬼は登場するものの、
ホラーはちょっぴり、ユーモアはたっぷり、
そしてエロスはほどほど(かなり?)な案配で
気楽なエンターテインメントに徹したつくり。
払ったお金に見合うぶんは充分に楽しめるだろう。

ラストは画に描いたようなハッピーエンドを迎えるんだが・・・
いやあ、君たち若いねえwww(意味深)。


アレクシア女史のシリーズは全5作ということで本書はその第1作。
近々第2作も読む予定。


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極光星群 [読書・SF]

極光星群 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

極光星群 (年刊日本SF傑作選) (創元SF文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/06/28
  • メディア: 文庫



評価:★★★

2012年に発表された短編SFによる年刊傑作選。
早いものでもう第6集になった。

「星間野球」(宮内悠介)
 宇宙ステーションに常駐している二人の職員。
 一週間後に交代要員がきて、一人だけ地球に帰れる。
 しかし二人とも事情があって一刻も早く帰りたい。
 そこでどちらが先に帰るかを "ゲーム" で
 決めることになったのだが、選ばれたのは「野球盤」だった。
 二人はあの手この手で相手の裏をかこうと本気で挑むのだが・・・。
 最先端科学の塊のステーションで行われるレトロなゲーム。
 そのギャップがとてもおかしい。毛色が違いすぎていて
 短編集「盤上の夜」には収められなかったというのも納得。

「氷波」(上田早夕里)
 土星の衛星ミマスに配置された観測用AI・〈222〉(トリプルツー)。
 そこへ、芸術家の人格をコピーしたAI・タカユキが送られてくる。
 目的は、土星の輪に発生する "波" を観測すること。
 協力して観測するうちに、〈222〉に少しずつ変化が現れてくる。
 輪の "波" の "音" を聞くとか、"波" でサーフィンをしたいとか
 イメージの拡がりもスケールが大きい。
 作者が初めて書いた宇宙SFらしいけど、とても面白い。
 もっと書いて欲しいなあ。

「機巧のイヴ」(乾緑朗)
 江戸時代に、人間と見まごうような "からくり人形" を
 作ることができる男がいた。
 主人公は彼に、惚れた遊女にそっくりな "人形" を
 作らせようとするが、その目的は・・・
 時代劇とロボットSFとミステリを合体させた作品。
 時代SFって数が少ないし、あんまり好きじゃないんだけど
 本作はミステリとしての評価は高いらしい。
 でもこのオチは○○○の「○○○○○○」と同じだよね。

「群れ」(山口雅也)
 主人公の周囲に、群れをなして行動を始める人間が現れ、
 そしてどんどん増加していく。
 オチの解釈は読者にまかせる「リドル・ストーリー」。
 でもきちんと終わってくれないのはやっぱり据わりが悪いなあ。

「百万本の薔薇」(高野史緖)
 崩壊寸前のソ連。優性品種研究所にやってきた研究員・フィーリン。
 彼の目的は、試験場で起きた連続不審死の調査だった。
 うーん、よく分かりません。
 この手の現実と幻想の境目が曖昧な作品は苦手です。
 だって何が何だか分からなくなるんだもの。

「無情のうた『UN-GO』第二話」(會川昇)
 珍しくアニメのシナリオが登場。
 ネットでこの「第二話」を見たけど、戦後が舞台の原作を
 うまく近未来に置き換えてあるなあとは思う。
 坂口安吾とネットアイドルとボーカロイドで三題噺、って趣きか。

「とっておきの脇差」(平方イコルスン)
 本書中唯一のマンガ作品。
 絵柄は私の好みではないし、あんまりSFっぽくないんだけど、
 読んでいる内に登場人物達が暮らしている世界の異様さが
 だんだんわかってくる。

「奴隷」(西崎憲)
 奴隷が存在し、普通の家庭であれば
 奴隷を "購入" して "使う" ことができる。
 この奴隷、ロボットではなく生身の人間。
 ありそうで無かった世界を描いた作品ではある。

「内在天文学」(円城塔)
 どうして私は円城塔が理解できないのでしょう。
 やっぱ私のアタマが悪いから?

「ウェイプスウェード」(瀬尾つかさ)
 温暖化で水位は上昇、しかもミドリムシの変異体に支配された海。
 ほとんどの人類は宇宙へ脱出し、地球には一握りの者が残った。
 木星圏からやってきた主人公・ケンガセンは地球へ不時着し、
 12歳の少女・ヨルに助けられる。
 やがて彼は、地球に残ってミドリムシ変異体と共存する人間達の
 秘密に気づいていく。
 ヨルちゃんが健気でもう・・・続きがあるなら読みたいな。

「Wnderful World」(瀬名秀明)
 主人公が中学二年生の娘・愛美と朝食を済ませ、
 学校へ送り出すところから始まるが、
 このシーンには意外な秘密があった。
 同一の未来世界を描いたシリーズの一編とのこと。
 どうしてもこの作者とは波長が合わない感じ。
 SFとしては良い出来なのだろうけど。

「銀河風帆走」(宮西建礼)
 第4回創元SF短編賞受賞作。
 生命の遺伝情報、人類の知識と経験を載せ、
 外宇宙探査へと向かった二体のAI、レラとエトク。
 擬似的に "女性" のレラと "男性" のエトク。
 数万光年という果てしない宇宙を数十万年にわたり、
 "会話" をしながら旅を続けていく "二人"。
 しかし、そんな "二人" を大いなる脅威が襲う。
 超大質量のブラックホールから放出される、
 光速の99%以上に加速された銀河ジェットが
 "二人" を直撃しようとしていた・・・
 解説にもあるけど、堀晃を彷彿とさせるような
 巨大スケールの時間空間をきっちり描いたハードSF。 
 実は本書の中で一番SFらしさを感じ、
 読んでいて心地よかったのがこれ。
 意外にも作者はまだ二十代の若さらしい。
 次作にも大いに期待してしまう。


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邪馬台 蓮丈那智フィールドファイルⅣ [読書・ミステリ]

邪馬台: 蓮丈那智フィールドファイルIV (新潮文庫)

邪馬台: 蓮丈那智フィールドファイルIV (新潮文庫)

  • 作者: 北森 鴻
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/01/29
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

美貌の民俗学教授・蓮杖那智が活躍するシリーズの
第4作にして初の長編、そしておそらくは最終作。

作者の北森鴻が48歳の若さで急逝した時、本作品は雑誌連載中だった。
本来なら未完として終わるはずだった作品を、
浅野里沙子さんという作家が書き継ぎ、完成させた。

浅野さんはまだデビューして間もない新人ということで
すでに大ベテランの域に達していた北森鴻氏の作品に挑むのは
さぞかしプレッシャーが大きかったのではないか。

それでも引き受けたのは、浅野さんと北森氏は
結婚の約束をされていたということで
つまりは婚約者だったということなのですね。
彼女も、何としても自分の手で完成させたかったのでしょう。

そのあたりの経緯は、彼女の手になる「あとがき」、
そして千街晶之氏の「解説」に詳しい。

浅野さんの補筆分は全体の約1/3。
通して読んでみた感想だけど、補筆部分に入ると
若干の雰囲気の変化はあるような気がするが、その差はわずか。
他の人が書いた、って事前の情報を知らなければ
気がつかない人の方が多いのではないかな。
それくらい、"北森鴻の世界" を壊さないように
細心の注意を以て書かれているのが感じられる。

出来映えについても、文句ない。
どこまでが北森氏の構想でどこからが浅野さんのオリジナルなのかは
よく分からないけれど、そんなことは気にならないくらい面白く読めた。


骨董商の越名を通じて異端の民俗学者・蓮丈那智の手元に渡ってきた
明治時代に書かれた文書・「阿久仁村遺聞」。

鳥取と島根の県境に位置し、明治の初期に2つの県が
合併・分割をするうちに消滅したのが阿久仁村だった。

そしてその文書には、邪馬台国の "真実" に迫る内容が記されていた。
阿久仁村でそのような文書が書かれたのは何故か。
村はなぜ消滅した(させられた)のか。

蓮杖那智の推理によって、謎に包まれた古代王朝の姿が
少しずつ明らかになってくるが・・・

そして、どうやらこの文書は蓮丈の手元に渡るように
画策されていたらしいことが判明する。
そして同時に、この文書を闇に葬ろうとする勢力も存在することも。


古代史がらみのミステリーは基本的に大好きなんだけど
本作については100%手放しで喜べないところもある。
古代史部分はとても面白いのだけど、
現代で起こる事件のほうがよく分からない。
殺人事件も起こるのだけどかなり終盤になってからで、
フーダニットの興味も乏しい。

それらの不満の一番の原因は、
実は本作は独立した作品ではない、というところにあると思う。

本作は、宇佐見陶子シリーズの長編第2作・「狐闇」の
後日談というか、実質的な続編になっているのだ。
だから、「狐闇」を未読の私にはよく分からないのも
無理はなかったというわけだ。

もちろん「狐闇」を未読でも、邪馬台国がらみの部分は
全く支障なく楽しめるのだけれど、
現代に起こる事件や「阿久仁村遺聞」を巡る
闇の勢力の暗闘はいまひとつ理解に苦しむ部分がある。

北森鴻ワールドというか、彼の作品世界は皆つながっていて
あるシリーズの登場人物が他のシリーズに
ゲスト出演するのはよくあること。
それは読者から見ても楽しみな部分であるのは認めるが
シリーズAに属する作品の続編をシリーズBで展開するのは
やっぱりやめて欲しいなあ・・・

文句ばかり書いているようだが、「邪馬台」という
タイトルにふさわしく、古代史の謎とき部分は無類の面白さ。
おそらく蓮杖那智シリーズの最終作になる(であろう)けど
これで終わってしまうのはやっぱり哀しいなあ。
今回示される邪馬台国の解釈もとてもユニークで
もっともっと北村版古代史を読みたかった。


さて、緊急事態を迎えて急遽リリーフ登板した浅野さんだけど
無事にピンチを乗り越えてセーブポイントを稼いだと思う。
可能かどうかわからないけど、機会があったら
北森鴻のシリーズ作品のパスティーシュを書いて欲しいなあ。
本書の補筆部分を読む限り、かなり実力のある作家さんだと思うから。


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黄昏たゆたい美術館 [読書・ミステリ]

黄昏たゆたい美術館―絵画修復士 御倉瞬介の推理 (実業之日本社文庫)

黄昏たゆたい美術館―絵画修復士 御倉瞬介の推理 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 柄刀 一
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2011/12/03
  • メディア: 文庫



評価:★★★

絵画修復士・御倉瞬介の活躍する、
美術にまつわるミステリー・シリーズ第2巻。

私は全くといっていいくらい絵心のない人間なので、
絵が得意な人はとにかく羨ましくて仕方がない。

 楽器が弾ける人も同じくらい羨ましいんだけど。


「神殺しのファン・エイク」
 花形プロデューサー・花房進太郎が謎の投身自殺を遂げる。
 生前、進太郎と共同生活を送っていた画家・山野稜は
 自殺の直後から自宅の壁に "転落する男" の絵を描き始めた。
 山野はコミュニケーション不全で、他者とはほとんど
 会話ができない状態にあった。
 二人のアトリエには、ファン・エイクの『アルノルフィノ夫妻』、
 そしてブリューゲルの『イカロスの墜落』の複製画が飾られていた。
 瞬介の開陳する『アルノルフィノ夫妻』の解釈は
 とても面白いのだけどね・・・

「ユトリロの、死衣と産衣」
 漆工芸の大家・鳴沢冬志郎の妻は、
 18ヶ月も妊娠したまま、未だ出産に至っていないという。
 (ちゃんと『姑獲鳥の夏』みたいだ、って
  登場人物の台詞が入るのが律儀だ。)
 鳴沢家の所有するユトリロの複製画の修復のため訪れた瞬介。
 そこで見たものは、冬志郎と、その長男・悠人との確執だった。
 相変わらず、絵画への蘊蓄は凄く面白いんだけど、
 うーん、これはミステリなんですかね。サスペンスはあるけど。

「幻の棲む絵巻」
 大学での絵巻物の修復に立ち会う瞬介。
 しかし構内で、自作のアートを撮影中の女学生が殺害される。
 残されたカメラには犯人らしき者は写っているものの、
 人物の特定には至らない。
 やがて、事件の背後には30年前に大女優が殺された事件が
 関わっていることが明らかになってきて・・・
 これはミステリです。ちゃんとしたミステリです。
 その気になれば長編にもできるんじゃないかな、このネタ。
 大盤振る舞いの一編です。

「『ひまわり』の黄色い囁き」
 本書中で最大のボリューム、文庫で約170ページを占める。
 フランス人と結婚した日本人女性が、
 夫の死後に遺品の中から見つけた絵画群。
 東京総合美術研究所に持ち込まれ、鑑定された結果、
 ゴーギャンの真筆と判明する。
 さらに、研究員の成瀬いずみが
 「ゴッホの死の謎を解く手がかりを発見した」との報告メールを
 発信した直後、謎の服毒死を遂げる。
 現場は内部より施錠された自宅で、自殺と判断されたが
 なぜかいずみの片耳は絵の具で茶色く染められていた。
 これもしっかりしたミステリだけど、
 こちらは長編には向かないネタ。この長さがちょうどいいと思う。

「黄昏たゆたい美術館」
 高原に建つ "山ノ端貝殻美術館"。
 児童文学者だった妻が建設し、その死後は夫である平田が
 受け継いで経営してきたが、夫妻に子はなく、
 唯一の肉親である妻の弟は4年前に失踪していた。
 教え子の個展のためにここへやってきた瞬介は、
 折からの悪天候に、美術館に一泊することになる。
 平田と言葉を交わし、内部を見学していく内に
 瞬介はこの美術館の "秘密" に気づく・・・
 ちょっと大がかりな "日常の謎" 的な話、かな。


最後の「黄昏-」を除き、登場する絵画についての
蘊蓄・解釈がとにかく半端ない面白さ。
私は美術に関しては全くの素人なんだけど、全く関係なく楽しめる。
あんまり面白すぎて肝心の事件の方の印象が薄まってしまうくらい。
このへんはちょいと本末転倒かな・・・とも思うけど
蘊蓄無くしては、このシリーズの面白さは
半減以下になってしまうので痛し痒しかなとも思う。


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てのひらの宇宙 星雲賞短編SF傑作選 [読書・SF]

てのひらの宇宙 (星雲賞短編SF傑作選) (創元SF文庫)

てのひらの宇宙 (星雲賞短編SF傑作選) (創元SF文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/03/21
  • メディア: 文庫



評価:★★★

「星雲賞」とは、SFファンの投票によって選ばれる、
その年のベストSF作品に与えられる。
アメリカの「ヒューゴー賞」に倣って創設されたものだ。

昨年で45回を迎え、毎年の長編小説、短編小説などに贈られる。
その他もどんな部門があるかとか、受賞作品名とかの
詳しいことはwikiでも見てもらうとして、
本書の「序」によると、受賞短編全部を合わせると
5巻分くらいの分量があるそうな。

そこから編者がいくつかの基準を当てはめて選考し、
最終的には現在入手しにくい20世紀に発表された作品で、
原稿用紙にして70枚以内のものから選び、
1巻本にまとめたものが本書。


第1回(1970)「フル・ネルソン」(筒井康隆)
 これ、文庫の短編集で昔読んだなあ。たぶん大学生の頃。
 ということは70年代の終わり頃か。
 先生と生徒らしき者の会話のみで進行する、という作品。
 ストーリーらしいストーリーはなく、
 台詞の中身がだんだんおかしな方向へ進んでいく。
 今読んでも、よく分からないんだけど、
 昔はこれを面白いって思ったんだろうなあ・・・

第3回(1973)「白壁の文字は夕陽に映える」(荒巻義雄)
 病院都市を舞台に、研究者として赴任してきた主人公と、
 壁に文字のような謎の文様を刻む患者を巡る物語。
 精神医学と超能力を組み合わせた、ある意味直球のSF。
 のちに架空戦記で大ブレイクするとは想像もできない、
 まだ "普通の" SF作家だった頃(笑)の作品。
 これも何かの時に読んだなあ。

第7回(1976)「ヴォミーサ」(小松左京)
 某SF作家へのオマージュ的なSFミステリ。
 これも大昔に既読だった。今回読み終わったら、
 TVアニメ「新造人間キャシャーン」を思い出したんだけど
 wikiを見たら「キャシャーン」は73年。向こうの方が早かったね。

第14回(1983)「言葉使い師」(神林長平)
 言葉を発することが禁じられた世界の物語。
 この作者とはどうも相性が悪いみたい。
 アンソロジーとかでたまに出くわすんだけど、
 一度も面白いって思ったことがない。
 凄く評価の高い人らしいんだけどねぇ。
 「戦闘妖精・雪風」のアニメ版はそれなりに面白かったんだが。

第18回(1987)「火星鉄道(マーシャン・レイルロード)一九」(谷甲州)
 「航空宇宙軍史」シリーズの一編。
 これも既読のはずだったんだけど、内容はすっかり忘れていた。
 第一次外惑星動乱(懐かしい響きだなあ)時の火星を舞台に、
 宇宙船発着用の軌道カタパルトを巡る攻防が描かれる。
 このシリーズ、「物理的に正しい宇宙空間の戦闘」がポリシーなので
 地味~なイメージがあるんだけど、
 本作はなかなかエキサイティングな雰囲気で読ませる。
 ちょっぴり松本零士の「戦場まんが」シリーズっぽい?

第19回(1988)「山の上の交響楽」(中井紀夫)
 200年前に演奏が開始され、現在に至るまで山の上の奏楽堂で
 演奏が延々と続けられてきた通称「山頂交響楽」。
 8つのオーケストラが交代でステージに上がり、24時間休みなく
 演奏が行われてきた。
 すべての演奏が終了するのは数千年後という途方もない曲。
 そして、3ヶ月後に難所が迫っていた。
 全オーケストラが演奏に参加し、さらには
 各楽器群に、神技に等しい超絶技巧が要求される、
 人呼んで "800人楽章" が。
 この難関を前に、演奏に携わる楽団員達の
 様々な葛藤や人間模様が描かれる。
 これは初読。SFというよりはファンタジー。
 とにかくイメージが素晴らしい。
 作者はここ何年か作家業から離れてしまっているらしいけど、
 もったいないなあ。
 「能なしワニ」シリーズ、好きだったよ。

第23回(1992)「恐竜ラウレンティスの幻視」(梶尾真治)
 カジシンには珍しく、恋愛要素皆無の直球SF。
 中生代白亜紀を舞台に、恐竜 "ラウレンティス" くん(笑)と、
 ある "知性体" とのファースト・コンタクトが描かれる。
 これもそれなりに面白いけど、
 カジシンはやっぱLOVE成分がある方が好きだなあ。

第24回(1993)「そばかすのフィギュア」(菅浩江)
 ゲームのキャラ・コンテストに応募した大学生・靖子。
 なぜかそれが最優秀作に選ばれてしまい、
 靖子のもとに彼女の考案したキャラ・"村娘アーダ" の
 一般販売前の試作フィギュアが送られてきた。
 アーダの人格AIを備え、動き、しゃべるフィギュアに
 どんどん感情移入していく靖子だったが・・・
 本作は一種の "ロボットもの" であり、泣かせる展開が待っている。
 私はフィギュアというものに、
 さっぱり思い入れのない人間なんだけど、
 それでも充分に涙腺を刺激されたことを記しておこう。
 世のオタクさんたち必読の作品である。
 本書の作品からベスト1を選ぶとしたら、これに決まり。

第25回(1994)「くるぐる使い」(大槻ケンヂ)
 これ、つい最近「日本SF短編50」で既読。
 その時も書いたが、大槻ケンヂの文才は認めるけど、
 この題材は好きになれないんだなあ。

第28回(1997)「ダイエットの方程式」(草上仁)
 大富豪になった昔なじみの男性を籠絡すべく、
 ぽっちゃりヒロインが乗り込んだ医療用宇宙船だったが、
 なんと、予定通りに体重を減らしていかないと
 無事に地球へ帰れないというトンデモナイものだった。
 草上仁って一時期、怒濤のように短編を発表していた作家さん。
 もっとも、私がちょうどSFから離れていた時期に当たったせいか
 あんまり読んだ記憶が無いんだけど。
 私も最近、ちょっぴりというか密かにというか
 ダイエットを敢行しているので、なかなか身につまされる。
 なぜなら、人間ドックで医者から減量を厳命されたから(とほほ)。
 とりあえず目標は2ヶ月で1kg(1年で6kg)くらい。無理かな?

第29回(1998)
「インデペンデンス・デイ・イン・オオサカ(愛はなくとも資本主義)」
                        (大原まり子)
 大阪のクラブのホステス・ミキちゃんのもとに、
 ある日突然、謎の侵略者が現れて・・・
 人外の魑魅魍魎をネタに金儲けしてしまうという、
 ある意味侵略者よりオソロシイ(?)、オオサカ人が描かれる。
 いやあ、これはバカバカしい(褒めてます)。
 考えたら、こんなお馬鹿なSFって久しぶりに読んだ気がする。


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青き犠牲 [読書・ミステリ]

青き犠牲 (光文社文庫)

青き犠牲 (光文社文庫)

  • 作者: 連城 三紀彦
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/02/10
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

ちなみにタイトルの「犠牲」は「いけにえ」と読む。 

高校3年生の杉原鉄男の様子がおかしい。
心を閉ざし、何者とも関わらなくなった。
鉄男の恋人でもある同級生・順子は、
図書館で鉄男が借りだしていた本を発見した。
その本の一節に、鉄男は赤線を引いていた。
「私は自分の母親と交わり、また父親の血を
 この手で流さなければならぬ運命にある」

鉄男の母・沙衣子(さえこ)は人並み外れた美貌を誇り、
鉄男の父であり夫でもある高名な彫刻家・杉原完三とは
離婚する意思を示し、父子とは別居中だった。

やがて完三が自宅兼アトリエから失踪し、
1ヶ月後に武蔵野の森から遺体で発見される。

容疑者として鉄男が浮上するが、捜査が進むにつれて
杉原家の中で異常な事態が進行していたことが明らかになっていく・・・


連城三紀彦は短編の名手であるのはもちろんだが、
長編になるとさらに手が込んだつくり込みをしてくる。

短編だと、ラスト近くで事件の様相ががらりと変わるような、
いわゆるどんでん返しが多用されるのが連城作品の特徴だが、
この作品では、どこまで行っても真相が明らかにならない、
という、これまた技巧を凝らしたつくりになっている。

中盤過ぎあたりで、ひとまず真相に行き着いたらしく思えるのだが
読み進むにつれてさらにまだ「奥」があることがわかる。
要するに、読み終わるまで油断ができないという、
ミステリとしては非常に良くできているんだけど・・・

ミステリ好きの人には充分楽しめる話になってると思う。
そのわりに星が3つ半とあまり多くないのは、
ただ単純に「私はこの手の話が苦手」だから。

「何がどう苦手」なのかを書くとネタバレになってしまうし
ほんとミステリの紹介は難しい・・・


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小太郎の左腕 [読書・歴史/時代小説]

小太郎の左腕 (小学館文庫 わ 10-3)

小太郎の左腕 (小学館文庫 わ 10-3)

  • 作者: 和田 竜
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2011/09/06
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

「のぼうの城」「忍びの国」に続く、和田竜の長編第3作(たぶん)。
私としては、3冊の中でこれが一番面白かったと思う。


時は戦国、1556年。
南蛮から渡来した鉄砲が、合戦の場に現れ始めた時代。

勢力拡大を目指す戸沢家は、隣国・児玉家と衝突を繰り返していた。
戸沢家の猛将・"功名漁り" 林半右衛門は、
次期当主・戸沢図書(ずしょ)率いる軍勢に加わり、
児玉家の所領へと侵攻するが、
児玉家の猛将・"功名餓鬼" 花房喜兵衛の策略にはまり、
大敗を喫してしまう。

自領へ逃げ帰った戸沢軍だが、児玉軍の反撃が予想された。
当主・戸沢利高は半右衛門の反対を押し切り、
勝利の目算が全く立たない籠城戦を決断する。

そして大軍を以て侵攻してきた児玉軍を前に、
戸沢軍は半右衛門の指揮の下、よく持ちこたえるが
児玉軍の謀略によって糧食の蓄えを失ってしまう。

いよいよ全滅の危機を迎える中、半右衛門は起死回生の一手として、
雑賀党の流れをくむ少年・小太郎の利用を思いつく。
彼はかつて行われた鉄砲試合で、神がかり的な命中率を示したのである。
しかし小太郎の祖父は頑として小太郎が戦場に立つことを拒む。
そのために半右衛門がとった行動は・・・


タイトルに「小太郎」とあるけど、むしろ主役は半右衛門。

剛勇無双にして豪放磊落、人望も厚くまさに戸沢軍の要。
しかし愛した女性は図書の妻になり、その後夭折。
図書との確執はもちろん、当主でさえ半右衛門を当てにしつつも、
自らの体面を最優先に、家臣や領民は二の次として振る舞っていく。

そんな彼の最大の理解者は、皮肉なことに戸沢家の中ではなく、
敵である児玉家の中にいた。花房喜兵衛だ。
実際、この二人は敵味方を超えた "友情" 、あるいは "共感" を示し、
交わした約定は必ず守りあう、信頼に結ばれた好敵手として描かれる。

物語は、戦国の世を生きた不器用な男たちの軌跡を辿っていく。
そして、半右衛門が自ら起こした "過ち" に、
自ら "けり" をつけるところで "幕" となる。

私は時代劇・時代小説ってあまり好きでは無いし、
実際ほとんど読まないのだけど、本書はとても面白く読めた。
とくにラスト近くのあるシーンでは、
涙腺が緩んでしまったことを告白しておこう。

この作者の時代小説なら、次も読んでみたい。
そう思わせる作品だった。


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おかげさまで総閲覧数70万突破しました [このブログについて]

本日、このブログの総閲覧数が70万を突破しました。
2006年1月2日の開設以来、約9年半。
何度かの中断やら放置やらを乗り越えて、
何とかここまでたどり着くことができました。

150706.jpg

これもキリ番突破のたびに毎回書いていることなんですけど、
また書かせていただきます。

まとまらない駄文ばかりのブログですが、
こんなに見に来て頂いて本当にありがとうございます。

いつまで続けられるか分かりませんが、これまで通り
書きたいときに書きたいことを好き勝手に書き連ねるという、
ゆる~いスタンスで行きたいと思いますので、
これからもよろしくお願いいたします。m(_ _)m


60万アクセス突破の時に、このブログがSo-netの
「本」というテーマ別ランキングで13位まで上がった、
って書いたんですが(14年10月21日のことです)、
その3週間後にはなんと12位まで上がったんですねえ。

12位_141212.jpg

まあ、算出根拠が謎だらけのランキングなので、
この順位にどういう意味があるのか皆目不明ですが。
それに、最近の放置のおかげでここ何ヶ月かは
30~40位あたりをウロウロしている状態です。

 逆に考えれば、ろくに更新もしていないのに
 この順位なのは不思議でもありますが。

このへんも、So-netランキングの謎の一つですな。


次の目標は80万アクセスですかね。
80万に届けば、100万も見えてくるかなあ。

私が還暦を迎えるのと、アクセスが100万を超えるのと、
どちらが早いか競争になりそう。
案外いい勝負になりそうな気がします。

まあ、健康に気をつけつつ、のんびりといきます。


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