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日本SF短編50 IV [読書・SF]

日本SF短篇50 IV 1993-2002―日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー (ハヤカワ文庫 JA)

日本SF短篇50 IV 1993-2002―日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー (ハヤカワ文庫 JA)

  • 作者: 日本SF作家クラブ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/08/05
  • メディア: 文庫



評価:★★

日本SF界50年にわたる、50人による、50作。その第4巻。
私の年齢でいえば30代半ば~40代半ばあたり。
公私ともにいちばん大変な日々だったような気がするんだけど
もうあんまり憶えてない。
単に記憶力が衰えただけ?・・・

たしか「日本SF 冬の時代」とか言われてた頃じゃないかなぁ。
私自身、このころあんまりSFは読んでなかったような気がする。
実際、本書に収録されてる10人の中で、けっこう読んだのは
SFが本業(?)ではない宮部みゆきのみ。
それ以外はほとんど読んでないか、
読んでも片手に足りないくらいの冊数。

このころは仕事が忙しかった上に嫁をもらい、
親元を離れてアパート暮らし、次は一戸建ての借家に移って
引っ越しも3回、さらにはマイホームを建てたり。
思い返せば怒濤のような10年間だった。

そんなわけだから、読書の絶対量が少なかった上に、
この頃は新本格ミステリを中心に読んでたから、
SFを読む時間が減ってたのも仕方がない。


1993「くるぐる使い」(大槻ケンヂ)
 大槻ケンヂって文才あるんだね。
 見世物小屋を舞台にしたSFって、
 津原泰美にもあったような気がするんだけど
 今ひとつ好きになれないなあ・・・

1994「朽ちてゆくまで」(宮部みゆき)
 若い女性を主人公に、超能力をテーマにした作品。
 宮部みゆきで超能力、と言えば「クロスファイア」が
 まず思い浮かぶけど、あれも後味が悪かったなあ・・・
 本作品はそこまでではないけど、
 ヒロインが辿る(であろう) "その後" の人生が
 あまり幸福そうな気がしないんだよなあ・・・

1995「操作手(マニュピレーター)」(篠田節子)
 介護ロボットが家庭に入り込んできた近未来の話。
 私の父親も最近、足元がかなり怪しくなってきたので
 他人事には思えないなあ・・・って思ったんだが
 あまり遠くない将来、自分自身がこういう境遇になる可能性も
 あながち否定できないのが何とも・・・

1996「計算の季節」(藤田雅矢)
 「NOVA1」に収録された「エンゼルフレンチ」は傑作だった。
 本作品は、パラレルワールドの日本を舞台に、
 "電算草" という植物を巡る人々の暮らしを描く
 ファンタジックな一編。
 作者って農学部出身だったんだね。

1997「永遠の森」(菅浩江)
 本作品を収録した短編集を買ったんだけど、
 読まずに放置しておいたら引っ越しのどさくさに紛れたか
 結局読まないうちに行方不明になった記憶がある。
 とても綺麗なラブストーリーのはずなんだけど
 あんまり心に響いてこないのはなぜ?

1998「海を見る人」(小林泰三)
 短編集で既読。
 海抜によって時間の進み方が異なる世界を舞台にした
 ボーイ・ミーツ・ガール・ストーリー。
 星野之宣の短編マンガ「愛に時間を」を思い出した。

1999「螺旋文書」(牧野修)
 私にはこの作品が理解できませんでした。
 すみませんアタマ悪くて。

2000「嘔吐した宇宙飛行士」(田中啓文)
 短編集で既読。
 よくまあ、こんなにモノスゴイ話が思いつくもんだ。
 オチがダジャレなのもお約束だが、この人の作品を読む人は
 そんなことで目くじら立てたりしないんだろうな。

2001「星に願いを ピノキオ二〇七六」(藤崎慎吾)
 私はどうもこの作者とは相性が悪い。
 「ハイドゥナン」も「ストーンエイジ」も、
 途中まではけっこう面白く読んだけど、
 結末が近づくにつれてガッカリ感が増してくる。
 私の好みとはどこかが根本的に異なるんだろうなあ。
 本作品も、アイデアや未来世界の描写は面白いけど
 ストーリーがどうも好きになれないんだよねえ・・・

2002「かめさん」(北野勇作)
  「アキレスと亀」と「秋刀魚」と「宇宙船」で
 三題噺を書いたらこうなった、って感じですか。
 この人の作品って、「NOVA」シリーズに
 何編か収録されてるけど、
 私のストライクゾーンからは外れてる作品ばかり。


ここまで書いてきて思ったけど、
1993~2002の10年間でSFを読む量が減ったのは、
時間が足りなかったせいもあるけど、
私の好みの作品を書く作家さんが減った、
ってこともあったのかも知れない。


無線LANルータ更新 [日々の生活と雑感]

我が家では、LANで5台のPCを利用している。
1台はデスクトップで有線接続。私のメインPCでもある。
ブログの更新ももっぱらこのPCで行っている。

他の家人も自分専用のノートPCを持っていて
これらはみな無線接続。かみさんの仕事用のPCも。

さらにスマホやらiPodなんかもWi-Fi接続になってきたので
数えてみたらけっこうな台数の機器が無線につながってる。


ところが最近、無線LANの調子が悪い。
ネット接続がしょっちゅう途切れるようになってしまったのだ。
最初のうちはその都度、ルーターの電源を切って
再起動してたんだが、ここひと月ほどは
それをやってもなかなか接続が回復しない事態が発生し始めた。

有線接続については全くといっていいほど問題なかったのだが
無線の利用者の方々から猛烈なブーイングが湧き起こり、
(当たり前だよねえ)何とかすることにした。


まず思いついたのは機器の老朽化。
7年前にADSLから光ファイバー回線に切り替えたのを機に
ルータを買い換えたんだが、それをずっと使ってきた。
考えてみれば秒進分歩のIT業界で、7年前なんて大昔だろう。

それから、これは家人に指摘されたんだが、
固定電話機を買い換えたこと。
これも以前ブログに書いたかと思うんだが
受話器がコードレスになった。
その無線が干渉しているのかも知れない。

電波干渉についてはルータのチャンネル設定とかをいじれば
何とかなりそうな気もしたんだけど、
年数も経っていることだし買い換えることにした。


というわけで近くの家電量販店に行き、無線LANルータを探した。
7年前と比べるとけっこう安くなってて、数千円で買えるものもあった。

でも、結局購入したのはBUFFALOのWZR-1750DHP2。
実売価格は税込みで14,000円くらいだったか。

20150426.jpg

ちょっとオーバースペックかなあとも思ったが
毎年買い換えるようなものでもないので
ちょっと奮発していいものを買うことにしたのだ。


さて、買ったはいいがルータの設定なんて7年ぶり。
うまくつながるかな心配だったけど、
やってみたらけっこう簡単だったよ。
プロバイダ接続時のユーザID、パスワード、
DNSサーバのIPの設定だけでつながった。
もっとも説明書の図と設定画面がちょっと違ってたけどね。

 説明書では一画面で設定できるはずが、実際は二画面に別れてた。
 いっぺんに設定できる画面があったのかも知れないが
 私には分からなかったなあ。
 ファームウェアのバージョンによって違うのかも知れない。
 私はあまり困らなかったが、PCに弱い人はここで躓くかも。


Webページを表示するレスポンスも明らかに早くなったので、
ルータの性能というのはけっこうバカにならないことも分かった。
その後、ノートPCの設定を片っ端から変更していき、
現在は順調かつ快適に運用中である。


夜よ鼠たちのために [読書・ミステリ]

夜よ鼠たちのために (宝島社文庫)

夜よ鼠たちのために (宝島社文庫)

  • 作者: 連城 三紀彦
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2014/09/04
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

「このミステリーがすごい! 2014年版」で
復刊希望の第1位に輝いた短編集らしい。


「二つの顔」
 画家の真木は妻を殺して庭に埋めた。
 しかしその直後にかかってきた電話は
 ホテルの一室で真木の妻が死んでいるとの連絡だった・・・

「過去からの声」
 大企業の重役・山藤の一人息子が誘拐される。
 身代金と引き替えに子供は無事に発見されるが
 犯人は警察の追っ手を逃れて逃走してしまう。
 しかし、捜査に加わっていた新米刑事の村川だけは
 事件の裏の潜む意外な真相に気づく。

「化石の鍵」
 交通事故の後遺症で車椅子となった少女・千鶴。
 ある日、彼女がネクタイで首を絞められて
 失神しているところが発見されるが、
 犯行が行われた時間帯には、誰も彼女のいたアパートに
 入ることが出来なかったことが判明する。

「奇妙な依頼」
 興信所で働く品田のもとへ、土屋という男から
 妻の行動を調べて欲しい、という依頼が入る。
 しかし土屋の妻・沙矢子には全く怪しいところがない。
 それどころか尾行に気づかれてしまい、逆に彼女から
 夫の行動を調べて欲しい、という逆依頼をされる。
 そして、夫婦それぞれの依頼を受けて行動しているうちに
 品田の愛人・由梨が殺されてしまう・・・

「夜よ鼠たちのために」
 病院長とその娘婿の医師が脅迫電話で呼び出され、殺される。
 死体には白衣が着せられ、針金で首を巻き付けられていた。
 過去の医療ミスによる遺族の恨みの犯行かと思われたが・・・

「二重生活」
 30歳の牧子と46歳の静子。
 二人の女の間で生きている45歳の男・修平。
 夫と妻と愛人。
 奇妙な均衡の上で6年間続いてきた関係が
 ある日を境に崩れ始める・・・

「代役」
 一人息子を事故で失い、妻・撩子との仲が破綻した "俺"。
 離婚を前に、二人はある人間を探し始める。
 それは容貌が "俺" にそっくりな男。
 条件にぴったりの男が見つかった時から、
 夫婦それぞれの異なる思惑が動き始める・・・

「ベイ・シティに死す」
 殺人の罪を着せられ、刑務所に服役した"私"。
 出所した "私" は、偽証した元愛人・恭子と
 弟分の征二を、ある港町で探し当てる。
 ピストルの銃口を向けた "私" に対して
 恭子は意外な事実を語り始める・・・

「ひらかれた闇」
 高校教師・麻沙のもとへ、
 退学した女生徒・典子から助けを求める連絡が入る。
 暴走族仲間の一人が殺されたという。
 二日前にも同僚の体育教師が殺されており、
 関連を疑う麻沙は典子のもとへ向かうが・・・


「戻り川心中」を引き合いに出すまでもなく、
ミステリの名手なのは誰しも認めるところだろう。

収録された作品はいずれも、
1981~83年にかけて発表されている。
短い期間に書かれたものだが、
いずれも高水準なのはたいしたもの。
「復刊希望第1位」というのも頷ける。


「二つの顔」と「化石の鍵」は
一見して不思議・不可解な謎が提起され、
ミステリ的にとても魅力的な導入だ。

「奇妙な依頼」や「二重生活」、「代役」は
登場人物の不可解な行動が次第にサスペンスを高めていく。

そして、他の作品も同様だが、
結末に至るまでの間に読者に見えていた光景が、
ラストであざやかに反転し、さまざまな事柄や登場人物の言動の
"真の意味" が露わになっていく。
ここでの切れ味がもう抜群の一言。

そして連城三紀彦作品で欠かせないのが "人の思い" だろう。
憎悪、怨念、嫉妬、執着、愛、慕情・・・
"本格ミステリ" に、様々な人の "情念" というスパイスを
たっぷりと振りかけて、濃厚に味付けした一品料理、
といった趣きである。


もっとも「ひらかれた闇」はちょっと毛色が異なるかなぁ。
青春推理的な雰囲気もあって、
連城三紀彦もこんなの書く(書ける)んだなあ・・・なんて思った。


亡くなって一年半ほどになるけど、遺作の刊行や
旧作の再刊が続いているのは嬉しい限り。
これからもできるだけ追いかけていきたい。


太陽系無宿/お祖母ちゃんと宇宙海賊 [読書・SF]


太陽系無宿/お祖母ちゃんと宇宙海賊 (スペース・オペラ名作選) (創元SF文庫)

太陽系無宿/お祖母ちゃんと宇宙海賊 (スペース・オペラ名作選) (創元SF文庫)

  • 作者: エドモンド ハミルトン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/01/29
  • メディア: 文庫

評価:★★

宇宙軍大元帥閣下(懐かしい呼び名だなァ)こと
スペースオペラ研究の第一人者だった野田昌宏氏が
1972年に編んだ2冊のアンソロジーの再版だ。
合本して分厚くなったけど、たぶん別々に買うよりは安い。


「鉄の神経お許しを」(エドモント・ハミルトン)
 〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉の短編。
 NHKでアニメになったよなあ・・・と思ってwikiを見たら1978年。
 「スター・ウォーズ」や「ヤマト」が一世を風靡した頃。
 いわゆるSFブームの最中だったなあ。
 フューチャーメンの一人、グラッグが主役の話。
 鉄のロボットなのに抑鬱気味の神経症に悩み、
 その治療のために冥王星まで出かけるのだがそこで事件が。

「大作〈破滅の惑星〉撮影始末記」(ヘンリー・カットナー)
 月のスタジオで、映画の撮影が行われる。
 撮影用に用意した冥王星の巨大生物だが、
 脳に仕込んだコントロール機械が働かなくなって・・・
 という「ジュラシック・パーク」みたいな話。
 もっとも、こちらの方がネタとしては50年以上も先んじてる。

「月面植物殺人事件」(フランク・ベルナップ・ロング)
 月面にある大富豪の屋敷で、当主が謎の死を遂げ、
 そこに居あわせた月面植物園の園長が活躍する。
 "ミステリ" というよりは "探偵小説" という雰囲気。

「太陽系無宿」(アンソニイ・ギルモア)
 西部劇をそのまま宇宙に持っていった、
 まさに(当時としての) "スペース・オペラ" の
 典型みたいな作品なのだろう。
 土星の衛星イアペデスに "牧場" があり、
 そこが悪党どもに襲われる。
 復讐を誓う主人公、"〈鷹〉(ホーク)のカース" の活躍を描く。

「夜は千の眼を持つ」(ジョン&ドロシー・ド・クーシー)
 タイタンの酒場で、はずみで男を殺してしまった主人公が
 その場にいた踊り子の女の子を連れてタイタンから逃げ出す。
 迫る追っ手から逃れるために彼がとった方法は・・・
 この話、基本的には嫌いじゃないパターンなのだけど
 ラストがなあ・・・って思ってたら野田氏も同感のようだ。

「サルガッソー小惑星」(フレデリック・A・カムマー・ジュニア)
 タイトル通り、宇宙船の遭難が相次ぐ謎の "磁力点"。
 2ヶ月前、そこで恋人の乗った宇宙船が消息を断った。
 彼女の救出のために "磁力点" にやってきた主人公が見たものは。

「お祖母ちゃんと宇宙海賊」(ジェイムズ・マッコネル)
 子供たちから邪魔者扱いされ、豪華客船に乗せられて
 地球の老人ホームへ向かう "お祖母ちゃん"・マチルダ。
 しかしその客船の前に海賊船が現れて・・・
 マチルダお祖母ちゃんの意外な大活躍が描かれる。
 いやぁ、これ面白い。本書の中で一番好きだなあ。

「宇宙船上の決闘」(ヘンリー・ハス)
 舞台は小惑星ケレス。
 無実の罪を着せられた弟を救うため、
 主人公は密輸商人と一対一の決闘に臨む。

「隕石製造団の秘密」(ピーター・ハミルトン)
 主人公のお尋ね者ジャックは、
 太陽系パトロールが追うギャング・「隕石製造団」に
 潜り込むことに成功するが、彼にはある目的があった・・・


1931~54年にかけて発表された作品群なので
描写に古くささがあるのは否めない。

太陽系の惑星(あるいはその衛星)それぞれに
土着の人間型生物がいる、というのも
今となっては無理がありすぎるだろう。
文中に「金星人」とか「木星人」とかの単語が現れると
それだけで「なんだかなあ~」(by 阿藤快)って思ってしまう。

それに加えて、描写にもリアリティがないのもねぇ。
例えば冥王星が舞台のシーンに、
「極低温」な雰囲気が皆無に近いのは如何なものか。


とまあ現代の視点からなら、いくらでも文句が言えるけど、
元本の出版されたのは1972年で、SFブームの数年前。
当時のSFというものに対する認知度の低さを考えたら、
こういうアンソロジーを出した野田氏の
意気込みというか熱意はたいしたものだとも思う。


あと気になったことがひとつ。
それは登場人物がやたら "べらんめえ口調" でしゃべること。

それが野田氏独特の語り口だといえばそうなのだろう。
これもたぶん、一人でも多くの人に
スペースオペラに親しんでもらいたいという
野田氏のサービス精神の賜物だったのだと思う。

ただ、当時はそれはそれで "楽しかった" のかも知れないが
果たしてそういう語り口が、収録されている作品群に
ふさわしいものだったのか? というのは若干疑問に感じた。

野田氏の功績は功績として、収録作のいくつかは
新訳(別訳)で読んでみたかったなあ・・・という思いも
心の隅にあったことは記しておこう。


見晴らしのいい密室 [読書・SF]

見晴らしのいい密室 (ハヤカワ文庫JA)

見晴らしのいい密室 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 小林 泰三
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/03/22
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

毎年のことだけど、年度初めは忙しいなあ。
落ち着いて本が読める時間がなかなか取れないのはチョイ哀しい。


され、本書はタイトルだけ見ると本格ミステリ短編集みたいだけど
実態はSFだったりホラーだったりでむしろ非ミステリがメイン。


「見晴らしのいい密室」
 密室殺人、しかもどう考えても不可能な犯罪を扱った
 二つのエピソードを連ねた作品なんだが・・・
 これ、普通のミステリと思って読んでて、
 オチまで来たら怒り出す人いるんじゃないかなぁ。
 と思ったんだけど、短編SFのアンソロジーが初出だったんだね。

「目を擦る女」
 隣人の女性が、「この世界は私が見ている夢だ」と主張する。
 実相寺昭雄あたりが映像化したら面白そうなホラー。

「探偵助手」
 探偵の"先生"を訪れた若い女性には、
 慢性の心臓病を患う夫を殺害した容疑が掛けられていた。
 ミステリとしてはごく普通の作品かと思うのだけど
 作中に頻繁に挿入されるのが、謎のイラスト入り(?)QRコード。
 残念ながら私には意味がわかりません。ごめんなさい。

「忘却の侵略」
 ミステリではなく純然たるSF。
 読んだことあるなあと思ったら「NOVA1」が初出だった。
 「シュレディンガーの猫」と侵略SFを混ぜてホラーで味付け。

「未公開実験」
 "私" を含めた3人は、丸鋸遁吉に呼び出され、
 彼の "ターイムマスィーン" 実験につき合わされるが・・・
 最後まで読んで思ったけど、本作と
 「見晴らしのいい密室」と「目を擦る女」と、
 似たようなオチの作品でないかい?

「囚人の両刀論法」
 いわゆる "囚人のジレンマ" を扱った作品なんだけど
 それを "人類のありよう" まで拡大していくという、
 途方もない展開を見せるSFに仕上げた。
 冒頭からこのラストにつながるとは、誰も予測できないだろう。

「予め決定されている明日」
 ひたすら算盤での計算に明け暮れるケムロ。
 我々の世界は、実はケムロ達の計算の中に存在している
 仮想現実だった。
 そしてある日、彼は "仮想世界" の中にある
 "電子計算機" の存在に気づくが・・・

うーん、ここまでくると確信犯ですね。
いま、考えて生きている "私" ですら、
実は誰か見ている "夢" だったり、"計算結果" だったりする。

『我々の世界は、実は誰かが作り出した「仮想世界」なのだ』

これがこの短編集の "裏テーマ" なのでしょう。

ただまあ、これらの作品群の味わいは、
私の好みとはかなり離れたところにあるのでねぇ・・・


タイタニア [読書・SF]

タイタニア 1<疾風篇>2<暴風篇>3<旋風篇> (講談社ノベルス)

タイタニア 1<疾風篇>2<暴風篇>3<旋風篇> (講談社ノベルス)

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/08/07
  • メディア: 新書




タイタニア4<烈風篇> (講談社ノベルス)

タイタニア4<烈風篇> (講談社ノベルス)

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/09/25
  • メディア: 新書




タイタニア5 <凄風篇> (講談社ノベルス)

タイタニア5 <凄風篇> (講談社ノベルス)

  • 作者: 田中 芳樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/02/05
  • メディア: 新書



評価:★★★★☆

1988年に第1巻が発売で、91年に第3巻が出たきり、
続巻がでないまま22年。
完結を諦めていた読者もいたんじゃないかな。
(実は私も半分くらい諦めてた。)

それが2008年にアニメ化され、
それがきっかけかどうか知らないが作者が続編執筆を宣言、
2013年に第4巻、そして今年になって完結編となる第5巻が刊行。
(もっともアニメは第2巻までの内容で終わってるらしいけど。)

1988年から数えると実に27年かかったわけだ。
1~3巻はリアルタイムで読んでたけど何せ昔のこと。
今回の完結編発売を機に、もう一度最初から通して読んでみた。


遙かな未来、銀河宇宙に版図を広げた人類は、
いくつかの勢力に別れて存在していた。

その中で「タイタニア」と呼ばれる一族は
最大の経済力と軍事力をもって、事実上人類社会を支配していた。

「宇宙はタイタニアとともにあり」

初代藩王ネヴィルとともに台頭してきたタイタニアは
八代藩王アジュマーンの治政を迎えていた。

タイタニアの意思決定を司るのは、アジュマーンと4人の公爵。
戦闘指揮で最大の武勲を示す "軍事" のアリアバート。
深い洞察力と知略を持つ "政治" のジュスラン。
敵を正面から押しつぶす "猛将"・ザーリッシュ。
そして最年少ながら次期藩王位を狙う "野心家" のイドリス。

アジュマーンは未だ40歳、四公爵はみな20代と若く、
その体制は盤石と思われた。

しかし星暦446年、弱小都市国家エウリヤが見せた
ささやかな抵抗を討伐に向かったアリアバートの艦隊は、
無名の指揮官による奇策によって完敗を喫した。

それは、タイタニアの支配に穿たれた "蟻の一穴" となり、
歴史は大きな転換点を迎えることとなる・・・


アリアバートに苦杯をなめさせたのは、これもまた20代の
ファン・ヒューリックという一介の砲術士官。
しかしこの勝利により、彼の運命もまた変転していく。

ヒューリックの周囲にはドクター・リーをはじめとする
反タイタニア派のメンバーが集まっていき、彼らによって
宇宙の歴史の歯車もまた、大きく動き出していく。

歴史上、永遠に続いた王朝はない。
ならば、タイタニアの支配もまたしかり。

果たしてタイタニアは滅亡するのか。
いや、させることができるのか。
そして、それが可能な者はこの宇宙に存在するのか。
この物語で描かれるのは、これである。

多彩な登場人物が織りなす、
華麗なるSFスペースオペラ歴史絵巻の開幕だ。


とにかく、まずは完結編が読めてよかったと思う。
(もっと早く出してくれたらもっと良かったけど。)

1~3巻までは、
タイタニアに反抗する勢力の動きが語られていくが
タイタニアの治政そのものが
揺るがせられるような雰囲気はほとんど無い。
しかし、4巻の後半から5巻にかけては、
激流に巻き込まれたような大転回を見せる。

よく "怒濤の展開" なんて言葉があるけれど、
本作を読んでしまうと "怒濤" なんて言葉さえ生易しい。
(私は4・5巻はまとめて1日で読んでしまったよ。)

3巻までにあちこちに蒔いておいた伏線やらタメやらを
一気に開放して、ジェットコースターのように結末まで一直線だ。

 考えたら、作者はこの4・5巻を齡60を超えてから書いている。
 いやはやスゴいことだ。

 実は、一番心配していたのはいわゆる "筆力の衰え"。
 田中芳樹だって人間だから、老いには勝てない。
 そう思っていたのだが、その心配は本作に限っては杞憂だった。

 ちょっぴり文体が変わったかな・・・とは思ったけどね。
 若い頃よりは、やや脂っ気(笑)が抜けたかも知れない。
 とはいっても、その差は微々たるものだが。
 むしろ年齢を重ねた分、描写が深まった部分もあるようにも思う。

最近になって本作を知った若い人もいるだろうし、
私と同じく20年以上待っていた人もいるだろう。
未読の人はぜひ、タイタニアの行く末を見届けて頂きたい。

ちなみに、本書に登場する数多のキャラの中で、
私の一番のお気に入りはリディア姫。
彼女の登場シーンは、殺戮と陰謀の嵐が吹き荒れる中での、
一陣の涼風である。

内容についてこれ以上細かいことは書かない。
新書で全5巻、楽しい読書の時間が得られることは保証しよう。


あと、余計なことを一言書いておきたい。
(別にネタバレになるようなことではないと思うのだが・・・)

第1巻から読み直してみて、リアルタイムで読んでいた時に感じた
疑問が再び甦ってきた。
それは、本作の主人公は誰なのか、ということ。

基本的には群像劇なので、特定の人物が全編を通じて
極端にクローズアップされ続けることはない。

27年前に第1巻を読んだ時は、「銀英伝」の影響が残っていたせいか
ファン・ヒューリックが主役かなあと思ってたんだが
(ヤン・ウェンリーと似てるとこも多かったし。)
3巻まで読んでいくと、どうやら違っていたらしいと気づいた。
(気づくのが遅いって!)

今回読み直してみて改めて思ったが、3巻までだと
タイタニアの中でいちばん描写が厚いのはジュスランで、
実は "主役" の位置に最も近いところにいるのが彼だ、
というのが分かってきた。
(そんなのとっくに分かってたよ!って人も多いと思うが。)

 実際、アニメ版ではジュスランが主役扱いだったらしいし。

これから本書を読む人は、ジュスランを主役と思って読むことを
オススメしておこう。たぶん一番楽しく(?)読めると思う。


閑話休題。

日本SF史上に燦然と輝く「銀河英雄伝説」。
本書はその完結から1年後の88年から刊行が始まった。
前作があまりにも売れすぎて、作者はさぞかし
プレッシャーが大きかったろうと推測する。

 読む方もまた期待するしねえ。

今回読みながら、かつて刊行が
途中で止まってしまった理由をあれこれ考えたりもしたし、
「これがそうかな?」って思いあたるところもいくつか感じた。
でもまあ、本当のところは作者にしか分からないし、
本作の評価には関係ないのでここには書かない。

これから本書を読む方はそんなとこも考えて読むのも一興か。
(↑そんなひねくれた読み方をする人はいないって)

ただ、20年以上も放置してあった作品なのに、
きちんと完結させてくれた作者には敬意と感謝を表したい。

 世の中には、未完の旧作はスルーしてしまう作家さんや
 申し訳程度にちょいと書き足してお茶を濁す人もいたりするし。
 そういう不遇な作品に比べたら、
 忘れられずに最後まで描ききってもらえた本作は幸福だ。

作者には、まだまだ未完のシリーズが
たくさんあったような気がするのだけど、
とりあえずアルスラーンの残り2巻を書いてくれれば私は満足です。
アニメも始まったことだし、早く完結編を読ませて下さい。
期待してます。


猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数 [読書・ミステリ]

猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数 (講談社文庫)

猫柳十一弦の後悔 不可能犯罪定数 (講談社文庫)

  • 作者: 北山 猛邦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/03/13
  • メディア: 文庫



評価:★★★

名探偵に憧れながらも、自らの才能に見切りをつけ、
探偵の助手になることを目指した、クンクンこと君橋君人くん。

彼が入学したのは大東亜帝国大学の "探偵助手学部"。
2年生からは "探偵号" を持つ指導教官のゼミに入るのだが、
志望のゼミに落ち、友人のマモルとともに配属されたのは
猫柳十一弦(ねこやなぎ・じゅういちげん)という
25歳の若さで指導教官を務める女性探偵のゼミだった。
(表紙イラスト中央の女性ですね。)

早速、名探偵と評判の高い雪ノ下樹(ゆきのした・いつき)のゼミとの
合同合宿が決まり、探偵2名と学生9名が
本土から船で20分ほどの孤島へ渡ることになった。

しかし、2泊3日の合宿初日の夜、2人の女学生が相次いで殺害される。
その後も、殺人を狙ったトラップが次々と発見され、
犯人は島にいる全員の殺害を意図しているものと思われた。
おりしも台風が接近しており、本土との交通手段が断たれてしまう。

猫柳とクンクンとマモルは、犯人の魔の手を逃れて生き延び、
真相に迫ることが出来るのだろうか・・・


読んでいてまず感じるのは探偵役の性格設定。
昔から "名探偵" というものは、たいていエキセントリックな人が多く
シャーロック・ホームズや御手洗潔とか、数え挙げていくと
両手で余るくらいはすぐに思い浮かぶのではないだろうか。

本書の探偵役の猫柳は、まず妙齢の美女であり、
さらに控えめでおとなしく、常識人でもある。
およそ自己主張というものもほとんどしない。
(確かに名探偵としては珍しい設定だろう。)
主人公・クンクンからすると、保護意欲をくすぐられるくらい
"か弱さ" も感じさせる。

 もっとも、か弱いだけでは探偵は務まらないわけで、
 ラストでは充分に有能なところも証明してみせるけれど。

そして猫柳の、探偵としての目標。
たいていの探偵は事件が起こってから活動を始めるのだが
彼女は、「次の殺人」を未然に防ぐことを最優先として行動する。
つまり、犯人の行動の先を読むことだ。

 本書でも、次々に起こる犯行から、共通するもの
 (いわゆるミッシング・リンク)を見つけ出し、
 そこから犯人の行動を予測しようとするのだが・・・

 もっともこのミッシング・リンク、読んでいて
 何となくは分かるような気もするが、
 カンペキに「これだ!」って見抜くことは至難の業だろなあ。

犯人が、わざわざ容疑者の限られる孤島を犯行場所に選んでいながら
ネットや電話といった通信インフラを断ち切らなかったりと
「お約束」を外しているところも、キチンと理屈づけされているし、
孤島を舞台としたクローズト・サークルものという、
いわば「よくある舞台設定」を使用しながら、
それだけには終わらない工夫が凝らされている。

ついでに書くと本書の犯人はとても勤勉で、
一生懸命にいろいろとトリックを弄している。
中には、成功確率がいささか怪しいものもあるような気もするが
まあそのへんは甘く見てあげないと、この手の話は楽しめないとも思う。

古い舞台に新しい趣向を盛り込んだ作品。
探偵役・猫柳嬢のキャラの魅力も相まって、楽しく読めた。


本書はシリーズになっていて、すでに第2作が出版されているらしい。
本書でなかなかいい雰囲気になった
猫柳嬢とクンクンの仲も、進展するのでしょうか。