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ソロモンの偽証 第3部 法廷 [読書・ミステリ]

ソロモンの偽証: 第III部 法廷 上巻 (新潮文庫)

ソロモンの偽証: 第III部 法廷 上巻 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/10/28
  • メディア: 文庫




ソロモンの偽証: 第III部 法廷 下巻 (新潮文庫)

ソロモンの偽証: 第III部 法廷 下巻 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/10/28
  • メディア: 文庫



評価:★★★★★

自分たちの手で柏木卓也の死の真相を突き止める。
一人の中学生・藤野涼子の決意がクラスメートを動かし、
学校の教職員を動かし、保護者や学校を取り巻く大人たちを動かし、
ついに「学校内裁判」が開廷する。

第3部もまた、文庫で1100ページを超えるが、
そのほとんどすべてが法廷場面である。
舞台は、城東第三中学校の体育館に設えられた "特設法廷"。

元校長・津崎が、少年課の刑事・佐々木が、
HBS記者の茂木が、柏木卓也の兄・宏之が。
事件の関係者たちが次々と証人として出廷する。

あくまで大出俊次の犯行とする検事・藤野涼子。
すべては "空想" と断言する弁護人・神原和彦。
正反対の主張を貫く二人の鋭い主尋問と反対尋問によって、
事件の細部が次第に明らかにされていく。

そして、ついに告発状の差出人・三宅樹里が出廷するが・・・


私はそんなにたくさん法廷ものを読んできたわけではないけれど、
本書の裁判シーンの緊張感は、凡百のそれを上回るものがある。

どんなにもっともらしくても、
中学生が行う "裁判ごっこ" に過ぎないはずなのに。
専門家から見たら、おそらく裁判の体を為していないであろうに。

しかし。

検事役の涼子、弁護人役の和彦、
そして裁判の秩序と進行を仕切る判事役の井上康夫。

そして、検察事務官役の佐々木吾郎と萩尾一美、
弁護人助手の野田健一、廷吏の山崎晋吾、
そして竹田和利率いる9人の陪審員団。

このすばらしい連中は、中学校の体育館に
立派な "法廷" を現出させることに成功した。

もっとも、言葉や仕草のあちこちに
中学生らしさが垣間見えるのはご愛敬。
重苦しくなりがちな雰囲気に適度にクッションを入れてくれる。
その辺りのさじ加減も絶妙である。


第2部まで読んできた人なら、
なんとなく裁判の最終的な行方の見当はつくかも知れないし、
"事件" の真相も、ある程度予想できるのかも知れない。

でも、それでも。

ページを繰る手が止まらない。
証人の爆弾発言あり、隠し球あり、思いがけない人物の乱入あり。
最後の最後まで、必死になって活字を追い続けてしまう。
それだけのパワーと牽引力を持った作品だ。


なんといっても、登場する中学生たちが素晴らしい。
"学校内裁判" という異常な状況で、しかもクラスメートを裁くという
特異な体験の中にいながら、みな真摯に法廷に向き合う。
ちょっと(かなり?)背伸びしながら。

そう、読んでて感じたのは「微笑ましさ」だった。
スーパー中学生である涼子・和彦・康夫の3人組だって超人ではない。
かなり無理していて、いっぱいいっぱいである。
他の生徒は言わずもがな。

でも、子供たちが身の丈を超えて、精一杯頑張っているところを見たら、
大人は思わず微笑んでしまうんじゃないか?
そして、素直に応援してしまわないか? 「頑張れ!」と。


裁判の前は、必ずしも親しい関係にはなかった生徒たち。
俊次たち三人の傍若無人の振る舞いにも、内心では憤っていても
目を逸らしたり、無関心を装ったり、見ざる聞かざるを決め込んでいた者も。

でも生徒たちは、この裁判を通じて、ひと夏で大きく成長する。
単に同じ学校に通っていた、同じクラスだった、というだけではなく
本当の意味での "級友" になってゆく。

下巻P.395の吾郎の台詞を読んだら、不覚にも目頭が熱くなってしまった。
そうだよねぇ、裁判を通じて心をつないだ仲なんだ。
もしそんなことになったら、この子たちはこうするよねえ。


下巻の最後に、"ボーナストラック" として
本編の20年後を描いた150枚の書き下ろし中編が収められている。

中年の私立探偵が、ある私立中学校で起こったトラブルの調査に赴き、
そこで弁護士となった涼子と遭遇する。
35歳になり、結婚して子供もいるようなのだが、
名刺の名前は「藤野涼子」。
(たぶん旧姓をそのまま使っているのだろうけど、
 ダンナが藤野家に婿入りしたのか? それとも事実婚?
 なーんて思ってしまったよ。)
本書ですっかり涼子のファンとなってしまった人(私もだが)には
うれしいプレゼントだろう。
ラスト近くの涼子の台詞で思わず「どひゃあ!」
これもうれしいサプライズ。

弁護士・藤野涼子の活躍する作品も読んでみたいなあ。
長編とはいいません。短編でもいいです。
宮部みゆきさん、お願いしますよ。


終わってみれば、本編+ボーナストラック合わせて4850枚を、
2週間で読んでしまったよ。
決して急いで読んだわけじゃないんだけど、
気がつくとページが進んでるんだよねえ。

第3部だって、一昨日(金曜)の段階では
上巻半ばまでしか読んでなくて、まだ900ページ近く残ってた。
この土日で読み終わるかなあ・・・なんて思ってたんだが
何のことはない。日曜の昼過ぎには読み終わってしまったよ。

素晴らしい中学生たちと過ごしたこの14日間は、
至福の読書体験だった。
文句なく、今年読んだ本のベスト1です。


最後に余計な一言を。
この物語って、4700枚にも及ぶ
壮大な○○○○○○○○○でもあったんですねぇ。

あと、ついでだから書いてしまおう。
本書は前後編で映画化されるとのことだ。
長大な原作をどうまとめるかも気になるけど、キャストも気になる。

公式サイトによると、この映画のために
1万人に及ぶオーディションを実施し、
そこから選ばれた中学生たちがメインとなるとのこと。

決定したキャストも載ってる。

藤野涼子役のお嬢さんは、ほぼイメージにぴったり。
原作通りの "可愛さが売り物ではない、凛とした美人" だと思う。
成人後の涼子は尾野真千子。これもいいねえ。

神原和彦役はちょっと背が高いかな。原作では小柄だったはずだけど
スクリーンでの見栄えを優先したのかも知れない。
でも顔つきはとても知的でいい感じである。

井上康夫はちょっと線が細いかな。
もっと図太いイメージがあったんだけど、
これもスクリーンでは違うのかも知れない。

藤野剛は佐々木蔵之介。うーん、剛はもっとゴツいイメージだけどなあ。
邦子の夏川結衣はいい感じ。

津崎は小日向文世。これも "豆ダヌキ" という感じではないなあ。
まあ上手な人だから大丈夫だろうけど。

涼子が、和彦が、そして康夫がスクリーンの中で動き回る。
それだけでも見に行く価値がありそう、って思ってしまうのは
やっぱりそれだけ原作が素晴らしいからだろう。

いや、たぶん私はこの映画、ホントに見に行くと思うよ。


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スノーホワイト [読書・ミステリ]

スノーホワイト (講談社文庫)

スノーホワイト (講談社文庫)

  • 作者: 森川 智喜
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/11/14
  • メディア: 文庫



評価:★★

極悪探偵(笑)・三途川理(さんずのかわ・ことわり)くんの登場する
シリーズ第2弾。

前作「キャットフード」では、「化け猫」という突拍子もないファクターを
導入したミステリという、ある意味斬新な作風で驚かされたが、
今回の "びっくりガジェット" は、なんと「魔法の鏡」である。

「鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだーれ?」ってアレである。

質問に対して、"真実を映し出す"。
つまりこの世の中で起こっていることはすべてお見通しになってしまう。

「○○を殺したのはだーれ?」「それは△△です」ってわけで、
これさえあればどんな事件もたちどころに解決してしまう・・・はずだ。

化け猫が孤島の屋敷に誘い込んだ人間を
キャットフードにしてしまおうという、
という前作が「注文の多い料理店」なら、
今回はタイトル通り「白雪姫」がモチーフになっているのだろう。


ヒロインは襟音ママエ(14歳)。
ものすごいネーミングだが本名ではない。
実はさる国の王様のご落胤で、つまり王位継承権第一位。
しかし本人はそれを知らず、巷で普通の中学生として暮らしていたりする。
ただ、彼女が一般市民と違うのは、
母親の形見である「魔法の鏡」を持っていること。そして彼女は、
その鏡を使って「私立探偵」を開業していたりするのである。

本書は、彼女のもとに舞い込む事件を扱った短編3つによる第1部と、
200ページほどの中編からなる第2部との二部構成。

SFやファンタジーの世界におけるミステリでは、
その世界の設定や登場するアイテムの説明が欠かせないが
本書では第1部がその役割を担っているのだろう。
「魔法の鏡」なるものの使用法に始まって、
鏡にわかることとわからないこと、
鏡にできることできないことが明らかにされていく。

またここでは三途川の宿命のライバル(?)ともいうべき
緋山燃(ひやま・もゆる)くんも前作に続いて再登場する。

そしてメインとなる第2部では、
ママエを亡き者にして、玉座を奪わんとする
"悪いお后さま" が登場(彼女もまた「魔法の鏡」を持っている)、
三途川理と組んでママエ暗殺計画を始動させる・・・


というわけで、双方とも不思議アイテム「魔法の鏡」を
持ち合っているわけで、ここからどんな物語を作り出すか、
というのが本書のキモなわけだが・・・


本書は第14回本格ミステリ大賞を受賞したとのこと。
しかもデビュー2作目での受賞は最速らしい。

まあ確かに、「魔法の鏡」が実在することを前提にした犯罪計画や、
敵味方の駆け引きなど、とてもよく考えられていると思う。
(時として論理展開が難しすぎて???なときもあるが)
そういう部分が "本格ミステリ" として評価されたのだろうが・・・

ただ、私の評価はあまり高くない。
評価しないというより、好みでない、と言った方が正しいかな。
本格ミステリというものが虚構性の強いものであるのは
百も承知しているのだけど、
本書の "虚構性" は私にはちょっと "軽すぎ" るように思う。

"ライト感覚のミステリ" ではあるのだろうけど、
いささかライトに過ぎるんじゃないかなあ・・・というのが私の感想。

前作「キャットフード」の感想で私は「パズル」って表現したんだけど
今作は何だろう・・・「ゲーム」かなあ。

「魔法の鏡」というルールに則り、殺人の計画を立てる。
実行する、失敗する、では次の手、見破られた、
これではクリアできない、じゃあ邪魔なやつを先に消して・・・

作者は84年生まれで、26歳でデビューしてる。
本書を書いたのはたぶん29歳くらいだろう。
作者にとっては、本格ミステリもまたゲーム感覚に近いのかなあ。

 いわゆる今風のライトノベルなのかな・・・とも思ったんだが
 現在のラノベのミステリってどんなものなのか、
 ほとんどというか全くといっていいくらい読んでないもんで
 比較しようがないんだなこれが・・・


こういうテイストの作品が大好きな人もいるでしょうし
"お気に入り" ミステリのリストに入れる人もいるでしょう。
でも、私は今ひとつなじめないんだなあ・・・


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ソロモンの偽証 第2部 決意 [読書・ミステリ]

ソロモンの偽証: 第II部 決意 上巻 (新潮文庫)

ソロモンの偽証: 第II部 決意 上巻 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/09/27
  • メディア: 文庫




ソロモンの偽証: 第II部 決意 下巻 (新潮文庫)

ソロモンの偽証: 第II部 決意 下巻 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/09/27
  • メディア: 文庫



柏木卓也の転落死により、城東第三中学校は激震に見舞われた。

同級生による "殺人" を証言する "告発状"。
マスコミによる偏向した報道番組の放映。

卓也の死は自殺なのか他殺なのか?
不良3人組のリーダー、大出俊次は殺人者なのか?

真実の追究はおろか、事態の収束のみを目指して動く教師たち。
そして、生徒たちに向けられる好奇の目、誹謗、中傷。


主人公・藤野涼子は決意する。
このまま、何もわからないままでいることには耐えられない。
自分たちの手で卓也の死の真実をつかむのだ。

そのために彼女が選んだ方法は、
"告発状" で名指しされた "犯人"・大出俊次を "被告人" として、
「学校内裁判」を開くこと。
目的は、裁判を通じて卓也の死の真相に迫ること。

夏休みを控えたクラス集会の日。
涼子は自分の決意を級友たちに語りだす・・・


事態の進展についていけずに右往左往するばかりの大人たち。
事件を自分のために利用しようとする大人たち。
そんな大人たちが大手を振っていた第1部からは打って変わって、
第2部では生徒たちが舞台の中央に躍り出る。

涼子の熱意に導かれるように、
一人、また一人と仲間に加わっていくクラスメートたち。


涼子さんが並外れて聡明な少女なのは、
第1部を読んでればもう十分すぎるほどわかってるんだけど、
第2部の開巻早々、読者はさらにびっくりさせられる。
彼女はまさに、"超中学生級" のスーパーガールだ。

裁判の開廷には学校側の了解が必要だが、
事態の沈静化を狙う教職員たちが、すんなりOKを出すはずもない。
この最初の難関を、涼子はどう突破したか。

彼女は、ただ成績がいいだけの優等生ではない。
策も弄するし駆け引きもするし、ある意味腹黒。
涼子は、学校側の "ある失策" を逆手にとって、
(深読みすれば、その失策だって
 彼女の側から仕掛けたようにも思えるが)
見事、学校側に裁判の開催を認めさせてしまう。

開廷期間は8月15日から19日までの5日間、そして判決が20日。

いやはやたいしたものである。
彼女を敵に回して勝てる気がしない。
この学校内での最強キャラであることを存分に証明してみせる。
同時に、読者は確信するだろう。
「彼女なら、できる!」と。


しかし、他のメンバーもどっこい負けてない。
ふたを開けてみると、この城東第三中学は逸材ぞろいだ。

学年トップの成績で、涼子とともにクラス委員を務める井上康夫。
道理が合わないことには、教師相手であっても
とことん理詰めで論破してしまう一徹さを持ち、
自他共に認めるままに "判事" の座に納まる。

 この文章を書いている今、第3部の冒頭部分を読んでいるんだが
 実に堂々とした "裁判官" ぶりで、彼もまた "超中学生級" だ。

"検事" を務めることになった涼子を助ける "検察事務官" 二人組。
佐々木吾郎は気配りとフォローの達人で、
重苦しい雰囲気を吹き飛ばす見事なコメディリリーフぶり。
もう一人の萩尾一美は、ミーハーだが事務処理能力は抜群。

バスケット部主将・竹田和利と将棋部主将・小山田修の
絶妙に息が合った凸凹コンビが総勢9名の陪審員団を率い、
"空手家" の山崎晋吾が "廷吏" を務める。

最後まで決まらなかった "弁護人" も、
いつのまにかクラス集会に紛れ込んでいた他校生が名乗りを挙げる。

大学の付属中に通う、神原和彦というその生徒は、
柏木卓也と小学校時代の友人だったという。

 卓也の死について何らかの事情を
 知っていそうな素振りもあるのだが・・・
 彼の抱えている "秘密" も、
 第3部の大きなキーポイントになるのだろう。

物語が進むにつれ、和彦もまた
涼子に匹敵する知力と胆力の持ち主であることがわかってくる。
ここにも "超中学生級" が一人。

 第3部では、"検事" 役の涼子の前に立ちはだかる
 "最強の弁護人" となるのだろう。

卓也の死体の第一発見者であり、第1部での過酷な状況から
涼子たちに救い出された野田健一もまた、
和彦の助手として裁判に加わることになる。


第2部もまた上下巻で1000ページを超す大ボリューム。
しかし、これが少しも長いと感じられない。
どんなエピソードも、この長大な物語に必要な要素だと思える。
それくらい、徹底して書き込まれていている。


生徒たちを応援しようとする大人も現れる。

事件の責任をとって辞職した津崎前校長は
"告発状" がマスコミに流れた経緯を解明するため、
旧担任の森内と共に探偵事務所長の河野に調査を依頼する。
教職員の中でただ一人、涼子たちの行動を支持する北尾教諭は、
裁判の "顧問" 役を買って出る。
(裁判はあくまで、生徒有志による "課外活動" という名目なのだ。)

大出家の顧問弁護士・風見や
涼子の父である捜査一課の刑事・藤野剛なども
表立って協力はしない(できない)けれども
要所要所で生徒たちの支えとなってくれる。


"被告人"・俊次との間に徐々に信頼関係を構築していく和彦たち。
一方、"告発状" の差出人が、涼子へ接触を図ってくる。

物語は、検事側の涼子たちと弁護人側の和彦たちが
それぞれ関係者を訪ねて証言を集め、裁判の準備を重ねていく様子が
交互に描かれていく。

実は涼子にとって、裁判の勝ち負けは問題ではない。
(それは、この法廷に関わるすべての生徒の共通認識なのだが)
目的はただ一つ、級友だった少年の死の真実。
それを突き止めるための法廷が、まもなく幕を開ける。

開廷に向けての盛り上がりも最高潮。
いよいよ第3部へ突入である。


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キャットフード [読書・ミステリ]

キャットフード (講談社文庫)

キャットフード (講談社文庫)

  • 作者: 森川 智喜
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/09/13
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

ミステリとしてはかなりの変化球だ。

あらゆるものに化けられる化け猫・プルート。
彼女(?)は4匹の仲間の化け猫たちと共に、
人間を解体してキャットフードの缶詰にしてしまう工場を
孤島に完成し、手始めに4人の高校生をおびき寄せることに成功する。

一方、高校生たちの一人、狼森(おいのもり)ユキに世話になっている
化け猫・ウィリーは、なんとかユキを助けようと、人間に化けて
4人の中に混じって工場に潜入する。

4人の中に化け猫が混じっていることに気がついたプルートたちは
彼らに手が出せなくなってしまう。
なぜなら、化け猫同士の殺生は禁じられているためだ。


設定はファンタジーのようなメルヘンのような世界だが
展開されるストーリーは殺すか殺されるかというかなり物騒なものだ。

探偵も登場する。
三途川理(さんずのかわ・ことわり)という高校生の探偵が
中盤から登場するのだが、こいつは人間のくせに化け猫に味方し
(なにせプルートの飼い主なのだから・・・)
ウィリーをあぶり出すための策をプルートたちに授けるという
悪役側のボスといってもいいような外道ぶり。

ウィリーはユキたち人間に正体を知られないように、
5匹の化け猫+悪徳探偵を相手に戦わなければならない。
まさに孤立無援、孤軍奮闘を強いられるのだが・・・


本書の読みどころは、
ウィリーvsプルートたちの繰り広げる頭脳戦だろう。

誰がウィリーなのかを探るために罠を仕掛けるプルートたち、
それを見破って正体がばれるのを未然に防ごうとするウィリー。

中盤までは互角にすすむ勝負が、
三途川の参戦によってウィリーは劣勢に陥り、
ラスト近くでは絶体絶命の危機に追い込まれる・・・


"化け猫" とか "人肉工場" とか、かなり意表を突いた設定や舞台装置。
文体や雰囲気もかなり個性的なので、好き嫌いはあるだろう。
実際、私も最初の50ページくらいまでは
読み続けようか止めてしまおうか迷ったし。

化け猫たちの頭脳戦における論理展開はたしかに良くできてるし、
ラストのオチも鮮やかに決まっていると思う。

ただ、「物語を読んでいる」というよりは、
「推理パズルを読んでる」に近い感じではある。
そのへんも好き嫌いが分かれそうだ。

ミステリとしては星3つ、小説としては星2つ。
合わせて均して星2つ半。


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若桜鉄道うぐいす駅 [読書・ミステリ]

若桜鉄道うぐいす駅 (徳間文庫 か 46-1)

若桜鉄道うぐいす駅 (徳間文庫 か 46-1)

  • 作者: 門井慶喜
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2014/10/03
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

舞台は鳥取県の片田舎、鶯村。
この村を通るローカル線・若桜鉄道のうぐいす駅。
この古い駅舎を取り壊し、
跡地に病院を誘致しようという話が持ち上がる。

しかし、駅舎は世界的な建築家、フランク・ロイド・ライトが
設計したものとされていて、その保存を求める
市民運動の盛り上がりによって誘致運動は難航していた。

歴史を専攻する大学院生・芹山涼太は、
村長である祖父・豪造に呼び出され、命令される。
「駅舎の歴史的価値を落とすように、歴史を捏造せよ」

一方、豪造の幼なじみで市民活動に肩入れする
京都大学名誉教授の重次郎は、涼太に対して
学問の世界での将来を "盾" にして圧力をかける。
「駅舎の歴史的価値を高めるように、歴史を捏造せよ」

板挟みになった涼太は、恋人の悠花とともに鶯村に帰省し、
とりあえず駅舎の調査を始めるが、その矢先に豪造が急死、
村長選挙に立候補させられてしまう・・・


文化財の保存か、生活の効率と利便性かを巡って
田舎の村で起こるドタバタ騒ぎを描いたコメディ、なんだが。

裏表紙の惹句の末尾には「傑作青春ミステリー」ってある。
「傑作」かどうかはおいといて、「青春」ではあるかな。
主人公は25歳で、恋愛もストーリーの大きな要素ではあるし。
でも、「ミステリー」っていう雰囲気は終盤まで感じられない。
ラスト40ページに至って「ああ、そこだったのか」ってわかるんだけど。


ここから先は、ネタバレではないけどそれに近いことを書く。
(勘のいい人なら分かってしまうかも知れない。)
また、この作品を批判するような内容でもあるので、
未読の人、これから読むつもりの人は、
以下の文章には目を通さないことを推奨する。


この作品の結末は、私は好きになれない。

このオチに持っていくなら、第八章の後半は何だったんだろう。
少なくとも○○○はまずいだろー、△△△じゃないと。
いや、○○○でもいいんだが、それなら涼太以外の○○○にしないと。

単なる田舎の村長選挙を巡るコメディです、っていうだけなら
こんなにへそを曲げるつもりはないんだけど・・・
仮にも惹句に "ミステリー" って銘打ってある以上は、
これはアンフェアだと思うよ。

 それとも、私の器が小さいのか・・・。

あと、これは人によるかと思うんだけど、
物語的にも、私はこの結末は好きになれない。

だってこれじゃあ、あまりに涼太が可哀想すぎないかい?
駅舎を巡るごたごたはこれでキレイに収まるし、
本人も納得しているんだろうけど・・・でもねえ。

私なら少なくともこういう結末を迎えたら
涼太みたいに前向きに生きていくことは
(少なくとも当分の間は)無理だ。断言してしまうが。

 まあこれも、私の器が小さいってことですかね・・・。

少なくとも、第八章まではかなり面白く
読ませてもらっていただけに・・・残念。

私は、このブログに滅多に文句は書かないんだけどね。
だって、文句はどう読んでも楽しい文章にはならないから・・・
スミマセンでした。

★2つにしようかと思ったんだけど、
第八章までは面白かったのは間違いないので、半個増量。


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宰相の二番目の娘 [読書・SF]

宰相の二番目の娘 (創元SF文庫)

宰相の二番目の娘 (創元SF文庫)

  • 作者: ロバート・F・ヤング
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/10/31
  • メディア: 文庫



評価:★★★

「時が新しかったころ」に続く、ロバート・F・ヤングの長編である。
一年のうちに2本も長編が翻訳されるとは、
日本での人気は格別なものがあるんだね。

「時を生きる種族-ファンタスティック時間SF傑作選」に収録された
「真鍮の都」の長編化作品である。


過去の時代から歴史上の有名人をさらってきて、
そっくりのコピーロボットを作り、
ホンモノは元の時代へと戻す「自動マネキン社」。

主人公のビリングスが初めて会社から請け負った仕事は
9世紀のアラビアへタイムトラベルし、
<千夜一夜物語>の語り部・シェヘラザードを連れてくること。

しかし、スルタンの後宮に首尾良く潜入し、
見事シェヘラザードを連れ出したと思ったら、
実は彼女の妹・ドニヤザード(15歳)のほうだった。

しかも、追っ手を振り切ろうとタイムマシンを操作したところ
マシンが誤作動を起こし、二人はいずことも知れない
不思議な世界へ迷い込んでしまう。

そこは巨大なロック鳥やグール(食人鬼)が跋扈し、
ランプから現れるのは見上げるような巨大魔神、という
アラビアンナイトそのままの現象が起こる世界。
ビリングスとドニヤザードは必死になって帰り道を探すのだが・・・


基本的に短編作家だったヤングは長編は5作しかなく、
みな短編作品の長編化だ。しかも、その評価は総じて低いようだ。

日本で独自編纂された短編集「たんぽぽ娘」が手元にあるので
見てみたんだが、この編者・伊藤典夫氏は「あとがき」の中で
この作品をけっこう酷評している。

「15歳のアラブの少女といちゃいちゃしているだけで
 ページが過ぎていき、原形にあったファンタジーのアイデアすら
 活かせていない。」「壊れている」

・・・まあ、寅さんじゃないが「それを言っちゃおしまいよ」だねえ。

「15歳のアラブの少女といちゃいちゃしているだけ」
まあそう言われればその通りなんだが、でもこの15歳の少女が
とても魅力的なんだから、いちゃいちゃしたくもなるよねえ。

姉に劣らず物語を語らせたら上手だし、頭も回って機転が利く。
異形の "魔神" を前にしても一歩も引かず、度胸も満点。
(ラストまで読むと分かるが)こうと決めたときの実行力もまた抜群。
おまけにとびきりの美人なんだから・・・
そんな女の子に、うっとりとした瞳で見つめられたら
ビリングスでなくたって惚れてしまうじゃないか。

 二人が盗賊に捕らえられ、彼らの前でドニヤザードが踊るシーンで
 彼女がおもむろに○○○○○してビリングスが大慌てするところでは
 思わず笑ってしまったよ。

「ファンタジーのアイデアすら活かせていない。」
これにもある程度は同意する。
SFとして始まった物語が、なし崩し的にファンタジーになっていくのは
やはり読んでいて違和感を感じざるを得なかった。

異世界を支配している "魔神" たちの正体も、
SF的にこじつけて作中で語られているんだけど、
彼らのあやつる "魔法" については全く説明がない。
説得力があるかないかは別にして、一言でもいいので
それなりの説明がほしかったなあと思う。
(そんなのは "野暮" なこと、って思う人もいるとは思うが・・・)

でも、「壊れている」かどうかは読者が判断することだと思うし
私は伊藤氏が言うほどひどいもんじゃないと思うよ。
「大傑作だ!」とは言えないと思うが
「私は好きだよ」と公言しても恥ずかしくない出来だと思うし。


短編版の時は、ラストのオチの部分が
ちょっと唐突なような気もしたんだけど、
長編化したせいか本書ではそのようなこともなく、
時を超えた愛のハッピーエンドを楽しむことができる。

 これでこそ「ヤング」だよねえ。
 ヤングのファンは、みんなこの独特の雰囲気を味わいたくて
 彼の作品を読むんだろう。


去年は「タンポポ娘」、今年に入って長編2作と
思いがけずヤングの作品に恵まれた。
伊藤典夫氏は三冊目の短編集を計画しているらしいので
それを期待して待つことにしましょう。


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ソロモンの偽証 第1部 事件 [読書・ミステリ]

ときどき、ものすごく長い小説を読みたくなるときがある。
普段読んでいるのは文庫で300~400ページくらいのものばかり。
たまに500ページ超なんてのもあるけども。

今年の初めに、長大なタイムトラベルSFを二分冊にした
「ブラックアウト」と「オール・クリア」を読んだのも、
そういう思いが頭にあった。
原稿用紙にして3500枚。普通の小説6冊分のボリュームを前に、
なんだかわくわくしたものだ。

長い小説を読んでいると、時間もかかる。でもその代わり、
必然的に登場人物や作品世界の理解も進み、愛着も湧いてくる。

だから、「おもしろくて長い小説」に出会えたら、
それはとても幸せなことだ。
「オール・クリア」を読み終えるとき、
主人公3人と別れるのがとても寂しかったよ。


さて、「ソロモンの偽証」である。


ソロモンの偽証: 第I部 事件 上巻 (新潮文庫)

ソロモンの偽証: 第I部 事件 上巻 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/08/28
  • メディア: 文庫




ソロモンの偽証: 第I部 事件 下巻 (新潮文庫)

ソロモンの偽証: 第I部 事件 下巻 (新潮文庫)

  • 作者: 宮部 みゆき
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2014/08/28
  • メディア: 文庫



本書は文庫で6冊、総ページ数で3000を超える。
原稿用紙で4700枚。最終刊の巻末には
書き下ろしの中編(20年後の後日談らしい)を
収録してるとのことなので、たぶん合計4800枚くらい。
普通の作品なら8~10冊分くらいに相当するだろう。

でも、最初は食指が動かなかったんだよなあ。
書店で平積みにされてるのを見ても。

宮部みゆきって、デビューの頃からしばらくは読んでた。
一時期は大好きで、初期の作品はだいたい読んでる。
ちなみに私の一番のお気に入りは「レベル7」だった。

でも、なんだかだんだん私の好みからは外れていったんだよねえ。
時代小説の割合が高くなってきたこともあったのかも知れない。
それでも99年の「理由」くらいまでは読んでたかなあ・・・

決定的だったのは「模倣犯」だった。文庫で5巻まであったけど
1巻目の終わりでどうにもついて行けずに放り投げてしまった。
それ以来、もう「私には縁のない作家」と思って
新刊が出てもスルーするようになった。

 あ、「ブレイブ・ストーリー」だけは読んだかなあ・・・


本好きな人なら経験があると思うんだけど、
書店で本の表紙を見ていると、ときどき "本が呼ぶ" ことがある。

8月末に、第1部(1巻と2巻)が本屋に並んだときも、
9月末に、第2部(3巻と4巻)が本屋に並んだときも、
全くといっていいほど読む気にならなかったんだけど
10月末に第3部(5巻と6巻)が出たとき、なんだかすごく
「これ、読まなくっちゃいけない」って衝動に駆られて
気がついたら1巻と2巻を持ってレジに並んでいたよ。

なぜこの本を手に取ってしまったのか。
それは今思い出してもよくわからない。
上に書いたように、この時期がちょうど私の
「長い話が読みたい」周期に当たってたのかもしれない。

こういうふうに呼ばれた本でも、
読んでみたらがっかりってことはよくあるし、
逆に、「この本を見逃さなくてよかった!」って
うれしくなる本もある。

この「ソロモンの偽証」は、後者だった。


閑話休題。


全6巻すべて読んでからでもよかったんだけど、
幸い3部構成になっているので、
各部ごとに書いていくことにしようと思う。

第1部「事件」は、題名の通り事件が起こって、
それに振り回される大人たち、生徒たちが
文庫上下巻1000ページにわたって延々と綴られていく。


1990年、クリスマスの未明。男子中学生・柏木卓也が
通っていた城東第三中学校の校舎から転落死した。

一旦は「自殺」として処理され、収まるかと思われたが、
一通の告発状が事態を一変させる。
「卓也は、同級生に殺された」
その書状の中で犯人として名指しされたのは、
大出俊次ら不良生徒3人組。
さらに、告発状の一通が、差出人の思惑を超えて
マスコミの手に渡ってしまう。

野心的なHBSテレビ記者・茂木は、
入手した告発状を元に報道特別番組を作成、放送する。
その日から、城東第三中学校は激しい嵐にさらされることになる。

そして、事態に翻弄される生徒たちの中から、
また一人命を落とすものが現れる・・・

この長大な物語の主役は、藤野涼子という中学生。
死んだ卓也の同級生で、クラス委員。
成績優秀で剣道に打ち込む文武両道の優等生。
(しかもなかなか美人らしい。)
父親は警視庁捜査一課の刑事、母親は司法書士と
これまた非の打ち所のない家庭環境。

しかし、そうはいっても14歳の中学生である。
第1部での彼女は、事態に翻弄される中学生たちの一人に過ぎない。
思春期の女の子らしく、感情豊かで揺れ動く。
生徒からも教師からも、一目も二目も置かれているが、
自分が聖人君子ではないことも十分承知している。
しかし、その聡明さでものごとを一段高いところから見ることができる。
そんな彼女は、周囲の大人たちの振る舞いに次第に憤りを強めていき、
第1部のラストである "決断" をする。

 実はこの文章を書いている段階で、
 第2部の1/4くらいもう読んでいるんだが、この物語の主役が
 なぜ彼女のようなキャラクターでなければならないか。
 第2部では、それがよくわかる。


とにかく、登場人物が多い。
台詞と名前のあるキャラだけでも30人くらい
いるんじゃないかと思うが、皆しっかり書き分けられていて、
誰をとっても短編が一本書けてしまうんじゃないか
(キャラによっては長編が書けそう)
っていうくらい、書き込みが半端ではない。

城東三中の教職員、城東警察署の刑事たち、
そして生徒の保護者たちもまあ多彩な人がそろってる。

特に転落死した柏木卓也の家と、
第一発見者の野田健一の家はたいへんだ。
子供は親を選んで生まれてくることはできないというが、
卓也の兄・宏之と野田健一の二人が、それぞれ事情は異なるが
親たちから受けるプレッシャーは半端ではない。
彼らは卓也の転落死以前から長年にわたって高負荷状態にあり、
事件がきっかけで一気にそれが吹き出てきてしまう。
このあたり、読んでいるこっちまで息苦しくなってくるようだ。

 今から考えれば、このあたりの "読み続ける苦しみ" を
 極端に強く感じたのが「模倣犯」だったんだね・・・

茂木記者のあからさまな取材態度にも読んでいて本当に腹が立つし。

そんな中に、涼子や涼子の両親(この二人は良識の人)の
シーンが入るとほっと一息つける。
まるで読者の感情をコントロールしているみたいで、
宮部みゆきは本当にうまいとつくづく思い知らされた。

 私が第1部を投げ出さずに読み切ることができたのは、
 この "まっとうな人々" である藤野家のおかげだ。

上の方にも書いたが、第2部では、大人たちの思惑や好奇の視線に
翻弄されてきた生徒たちが、反攻に転ずる。
自らの手で真実を突き止めようと、前代未聞な行動を始めるのだ。
その中心人物はもちろん涼子。
もう第1部を読み終わった段階で続きが気になって仕方がない。

うーん、本を読んでいてこんなにわくわくするのは
久しぶりというか滅多にないことだ。

第2部読了時点で、また続きを書くことにする。


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ウィンター・ホリデー [読書・その他]

ウィンター・ホリデー (文春文庫)

ウィンター・ホリデー (文春文庫)

  • 作者: 坂木 司
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/11/07
  • メディア: 文庫



評価:★★★

ヤンキー上がりのホスト・大和(やまと)くんの前に現れた少年・進。
彼は、昔大和がつき合っていた女性の子供、つまり大和の息子だった!
というわけで、息子と暮らすことになった大和はホストから足を洗い(?)
堅気の宅配便配達員となって、まっとうに父親として生き始める・・・

というのが前作『ワーキング・ホリデー』の出だし。
本書はその続編である。
前作が夏休みの話だったが、ラストで進は母のもとへ帰って行く。
「冬休みにまた来るよ!」と言って。
そして今回は、大和と進が過ごす初めての冬の物語。
クリスマス~年末年始~バレンタイン~ホワイトデーまでの
イベント盛りだくさんの日々を二人は過ごしていく。

 しかしまあ、主人公の名前が沖田大和、その息子が進、
 そして大和のかつての彼女で進の母親が由希子(ゆきこ)。
 これは、わかってやってるよねぇ・・・

宅配サービスで起こるさまざまな出来事や、
始めてできた職場での後輩のことなど、
大和の日常がまず綴られていく。
年末のおせち料理の配達をめぐるトラブルなどは
宅配業ならではの苦労で、最近流行の「お仕事小説」の趣もある

そして、そこへ夏休み以来の登場となる進が加わっての
大小様々の騒動がユーモアたっぷりに描かれていく。
これはもう父と子の「人情小説」ですね。
進と出会って以来、"父性" に目覚めた大和は、
クリスマスに、初詣に、そして年始の凧揚げと大奮戦するのだが・・・

何と言っても大和を取り巻く人々が温かい。
ジャスミンや雪夜などのホスト時代の仲間。
"ボス"、"リカさん"、"コブちゃん" などの同僚たち。
終盤のクライマックスには、
大和のヤンキー時代の仲間たちまで登場して、
大騒動を繰り広げて物語の最後を締める。

 なんだかここままTVドラマの原作になりそうだ。
 坂木司って基本的にはミステリ作家だと思うんだけど、
 前作ではミステリ要素はかなり薄く、本作に至ってはほぼ皆無。

 もちろん本書の内容を無理にミステリに仕立てる必要は無いし、
 今回のような展開で正解なんだとは思うけど、
 私はやっぱり "坂木司のミステリ" が読みたいなあ。
 次はお願いしますよ。

気になる由希子との "復縁" だが、まだまだ道は険しそうだ。
でも、大和の身にも大きな転機が訪れたり、
由希子の心もすこしずつ変化してきているようで、
二人の未来については充分に希望を持てそうなエンディング。
読者は心穏やかな気持ちで読み終えることができるだろう。

続編・・・はどうかなあ。
その気になれば、まだまだ続けられそうな気もするけど、
ここらへんでスパっと終わらせるのがキレイだとも思うんだけどねえ。


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感謝! 総閲覧数60万突破とかいろいろ [このブログについて]

本日、このブログの総閲覧数が60万を突破しました。
2006年1月2日の開設以来、8年と10ヶ月あまり。
何度かの中断を超えて細々と続けて参りました。

600000.jpg

キリ番突破のたびに書いていることなんですけど、
また書かせていただきます。

まとまらない駄文ばかりのブログですが、
こんなにたくさんの方に見に来て頂けて感謝、感謝です。

いつまで続けられるか分かりませんが、これまで通り
書きたいときに書きたいことを好き勝手に書き連ねるという、
ゆる~いスタンスで行きたいと思いますので、
これからもよろしくお願いいたします。m(_ _)m


あと、このブログはSo-netで「本」というテーマに
登録しているんですが、
去る10月21日に "椿事" が起こりました。

どんな風の吹き回しか、このブログがテーマ別ランキングで
13位まで上がったんですねえ。
私の記憶にある限り、開設以来、というか
テーマを「本」に登録以来、最高位です。

13.jpg

まあ、このランキング自体、
どういう基準で算出されているのか皆目分かりません。
何をどうやったら順位が上がるんでしょうかね?

 「順位」が発表されてるからには、
 そりゃ下位にいるより上位の方が
 嬉しいことは嬉しいんですけど・・・


と思っていたら、またずるずると下がってきてます(笑)。
ランク外へ消えるのも時間の問題でしょうねぇ・・・


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さよならの手口 [読書・ミステリ]

さよならの手口 (文春文庫)

さよならの手口 (文春文庫)

  • 作者: 若竹 七海
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/11/07
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

フリーの調査員・葉村晶(はむら・しょう)の活躍を描くシリーズ、
久しぶりの新作だと思ったら13年ぶりだそうだ。
シリーズ物の主役って歳をとらないのが多いのだが、
彼女は律儀に空白期間の分だけ年齢を重ね、
40代半ばになっているらしい。
家族にもずっと会ってないし、男にも縁の無い生活を送ってきて
そろそろ老後の年金暮らしを心配し始めていたりする。


仕事を回してもらっていた探偵調査会社が店じまいして、
図らずも探偵稼業も長期休業に入ってしまった晶。
ミステリ専門の古書店でバイトを始めたが、
古本の引き取りに赴いた民家で、床の崩壊事故に巻き込まれて
倒れ込んだ拍子に頭をぶつけた相手が床下の白骨死体(!)。

晶自身も、尋常でない怪我を負って病院に担ぎ込まれるが、
病床に聞き込みに来た刑事相手に、
白骨死体に関する推測を話したらこれが大的中。
晶と同室で入院していたのが往年の名女優・芦原吹雪。
芦原は晶の能力を見込んで調査の依頼を申し出る。
20年前に家出した娘を探して欲しい、と。
しかし、その当時に調査を依頼した探偵もまた
行方不明になっていたのだ・・・

いくら何でも20年前のことを調べるのは容易ではないよ・・・
と思いつつ調査に入った晶だったが、始めてみると
なんだかすいすいと糸がつながっていく。
こりゃラッキー、って喜ぶ晶だったが・・・


人生、いいときもあれば悪いときもある。
前半の好調と対照的に、後半の晶は不運の連続に見舞われる。
とにかく今回の晶はキズだらけ。冒頭から大怪我をするんだが
直る暇も無く退院して芦原の娘の調査。
どんどん新事実が分かるのはいいんだが、
その事実が示すのはどんどんヤバそうな方向。
中盤以降はいろんなトラブルに見舞われて
打撲・出血・骨折のオンパレードでもうボロボロ。
まさに "歩く満身創痍" といった風情になっていく。
それでも最後まで突っ走ってしまう晶さん、素敵です。

物語は晶の一人称で、それもトボけた語り口でひたすらぼやいてるので
(本人はホント必死なんだろうけど、)
読んでると自然と頬が緩んできてしまうんだよねぇ。
ストーリーや出来事だけを追ってみると
立派なハードボイルド・サスペンスなんだけど
晶さんにかかるとドタバタ・コメディになってしまう。
まあこれも彼女の人徳(?)ですかね(笑)。

数年前に法律が変わり、探偵業は届け出が必要になったとのこと。
つまり "フリーの探偵" ってのは
もう存在できなくなってしまったらしい。

今回の晶も、この法律改正のせいで
いろいろ面倒くさい目に遭うんだが、
ラストではこれも何とかなりそうな雰囲気なので、
葉村晶の物語はこれからも続くのだろう。

13年ぶりの再会で、こんなシリーズがあったことさえ
忘れかけていたけど、思いがけなく(失礼!)楽しませてもらった。
次回作が楽しみです。今度は13年後ってことはないよねぇ?(笑)。


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