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沈底魚 [読書・サスペンス]

沈底魚 (講談社文庫)

沈底魚 (講談社文庫)

  • 作者: 曽根 圭介
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/08/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★

第53回江戸川乱歩賞受賞作。

中国国家安全部のスパイと目される貿易商・呉春賢が来日した。
公安部の刑事・不破は、呉の国内での行動を追ううちに、
呉が一人の女性と会っている現場に遭遇する。
彼女の名は伊藤真理。不破の学生時代の友人であり、
次期総理との呼び声も高い衆議院議員・芥川の私設秘書だった。

折しも、一人の中国人外交官がアメリカに亡命し、
「日本の現職国会議員が中国に極秘情報を漏洩している」と証言する。

公安上層部は一旦は偽情報と結論するが、
外務省は独自のルートで
「日本国内に、暗号名 "マクベス" と呼ばれる
 大物 "沈低魚" (sleeper agent)が潜伏している」
との情報を中国国内の協力者から入手する。

かくして "沈低魚" の捜査が開始される。指揮するのは、
警察庁から公安へ異動してきた女性理事官・凸井(とつい)。
しかし警察庁と警視庁の軋轢、司法と国会の綱引き、
そして警察内部の権力闘争まで展開され、
捜査を自分のコントロール下に置こうとする凸井の思惑も絡んで
"マクベス" の捜査は難航する。

そんな中、不破は真理と接触するが、
その直後、彼女は失踪してしまう・・・


前に「天皇の代理人」という本の時にも書いたけど
私は「スパイ・サスペンス」というジャンルに
ほとんど魅力を感じない人間なので
私には本書の魅力は理解できないように思う。

 90年代初めの頃かなあ。ロバート・ラドラムの作品を
 まとめて読んでた時期があったんだけど、
 やたら長いだけで、よく分からなかったよなあ。
 世界的なベストセラー作家ということなので、
 欧米では「スパイもの」にかなりの需要があるんだろうね。
 この手の作品の魅力が分からないのは、
 私のアタマが平和ボケしているせいかも知れないなあ。


国家と国家が(時には同じ組織の人間同士であっても)
キツネとタヌキの化かし合いを演じ、
当事者たちも、それを百も承知の上で茶番劇を延々と繰り広げる。
どこまでが真実でどこからが虚構なのかの境界も判然としない。

そして、たとえ100%の虚偽であっても、
それを守るために奪われる人命。
この世界では、命は鳥の羽よりも軽い。


いちおう断っておくが、けなすつもりは毛頭無い。
新人のデビュー作とは思えないほどの
堂々たる書きっぷりは見事の一言。
二転三転するストーリーは最後まで予断を許さない。

 あんまり二転三転しすぎて、最後で真相が明かされても
 「まだ何かあるんじゃないか」って思わせるし、
 それがまた思い過ごしにならないところはたいしたもの。

たぶん、この手の話が大好きな人には
双手を挙げて歓迎されたんじゃないかと推察する。


ただ、私の好みと合わなかっただけ。


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ペンギン・ハイウェイ [読書・SF]

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)

  • 作者: 森見 登美彦
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/11/22
  • メディア: 文庫



評価:★★

主人公のアオヤマ君は小学4年生。
本はたくさん読んでるし、考えたことはすぐにノートに記録するし、
いろんなことに興味を持っている。
その対象は宇宙、生き物、海、ロボット、歴史、伝記etc・・・
とにかく限りないのだ。
歯科医院に勤めている、あこがれの "お姉さん" のおっぱいも
もちろん興味の対象なんだけど。

 まあ、口を開けば理屈っぽくて、
 あまりかわいげが無さそうなお子さんなので
 実際に身近にいたら「やな奴だなあ」って思いそう。

アオヤマ君の住む街に、ある日大量のペンギンが現れる。
どこから来たのかも分からないし、何より
捕まえて運んでいる途中で一匹残らず消えてしまう。

そして、ペンギンの発生には "お姉さん" が関わっているらしい。
いや、ペンギン以外のものも "つくり出して" いるみたいだ。
アオヤマ君はペンギンと "お姉さん" の関係について "研究" を始める。

そんなある日、クラスメイトのハマモトさんに教えてもらったのは
街外れの "ジャバウォックの森" の奥深く、
そこに開けた草原に現れた謎の球状物体、<海>。
同級生のウチダ君も加わって、3人は<海>の観測と研究を始める。


これは、ハマモトさんやウチダ君、そしていじめっ子のスズキ君、
さらにはお父さんやお母さんも巻き込んで一緒に過ごした、
アオヤマ君の不思議なひと夏の物語。


物語の構造としては「銀河鉄道999」みたいな話。
アオヤマ君が鉄郎、 "お姉さん" がメーテル。
少年が年上の美しい女性と出会い、恋と冒険を経験する。
そして、最後に女性は少年の前から去って行く。
少年の心に "青春の幻影" を残して・・・


と書いてはきたものの、私の評価は上記の通りであまり高くない。
物語の中では、いろいろイベントが起こりはするのだが
全体としては坦々とストーリーが進行して、盛り上がりに欠ける。
ラストはそれなりにいろんな事が一気に起こるのだけど
クライマックスというほど劇的なものでもなく、ちょっと物足りないかなあ。

まあ結局は好みの問題なのだと思う。
主人公の送る、まったりとした学校生活、
家族や "お姉さん" と過ごす時間などを、
じっくり味わいながら読む人もいるだろうし、
それをこの上ない愉しみとして感じる人もいるだろう。

第31回日本SF大賞を受賞したとのことだが、
SFというよりはファンタジー、だね。


最後まで<海>の正体や、ペンギンの役割がよく分からないのも
私の評価を下げた原因。

だいたいなんで「ペンギン」なのかもよく分からないし。

一から十まで全部説明しろとは言わないが、
すっきりしない部分がちょっと多すぎるように感じてしまう。

森見先生、ごめんなさい。
別に恨みがあるわけではないんですけどね。
「有頂天家族」の続編、待ってます(^_^;)。


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「蒼穹のファフナー EXODUS」 Webラジオ 第2回 [アニメーション]

7/26(土)に行われた公開生放送。
この日も仕事が入っていて、ニコ生が見られなかった。
というわけで前回と同じくタイムシフト予約での視聴。

司会は前回に引き続き一騎役の石井真さんと真矢役の松本まりかさん。
まりか様はなんだかとってもトロピカルな扮装ですね。
そして、剣司役の白石稔さん。
白石さんを見るのは二回目くらいかなあ。

翔子役の松来未祐さんの話とか、
映画「HEAVEN AND EARTH」のときに、
剣司が道生さんみたいに死んじゃうんじゃないかと心配したこととか
なかなか貴重なお話を語ってましたね。
しかし、剣司は無印「ファフナー」の序盤のヘタレ具合からは
信じられないくらい逞しくて頼れる男に成長したよねぇ。
石井さんから「剣司と咲良のカップルはみんなが応援している」
ってコメントがあったけど、
それはファフナー・ファンみんなの総意だろうね。

総士役の喜安さんは今回いなかったけど
ときおり声だけでツッコミが入るのはご愛敬。


さて、今回も新キャストの配役の発表があった。

ナレイン・ワイズマン・ボース
 着ている服から類推するに、人類軍の指揮官クラスかな。
 無印ファフナーで言うところのバーンズ大佐みたいなポジションか。
 中の人は大友龍三郎さん。
 wikiで見たら、70年代あたりからいろんな作品に出演されてますね。
 御年62とのことなので、もう超ベテランですねえ。

エメリー・アーモンド
 彼女も名前から察するに竜宮島以外の人ですね。
 中の人は佐々木りおさん。劇団ひまわり所属の子役で、なんと12歳!

ジョナサン・ミツヒロ・バートランド
 もう名前からしていろいろ物議を醸しそうなキャラ(笑)。
 何なんでしょうねこの人。真矢の親父さんのクローンか、
 真矢の異母兄弟のどちらか二択のような気がしますが、さて。
 中の人は岡本信彦さん。この人は知ってる。
 「青の祓魔師」では主役でしたね。
 「宇宙戦艦ヤマト2199」でも
 徳川太助とガミロイド・オルタの二役を演じていたはず。
 wikiでみるとここ数年たくさんの作品に出演されてるようで
 人気声優なんですねぇ。


前回発表されたキャストの石川由依さんや小野賢章さんといい、
今回の岡本信彦さんといい、
単独で主役を張ったり、メインヒロインが務まるような人気声優さん。
そういう人を引っ張ってこれるんだから
「ファフナー」って作品も大きくなったものですねえ。


あわせて、8月に公開になるPV第3弾のスクリーンショットも公開。
いやあ、真矢さんのシナジェティック・スーツ姿をようやく見られました。
すごく凜々しい顔してますねえ。
カノンとショコラも登場。ショコラ大きくなったねえ。
無印ファフナーでは子犬だったんだよなあ。

漫画雑誌でのコミカライズも発表。担当は松下朋未さん。
寡聞にしてこの漫画家さんは知らないんだけど、
今回公開された作画の一部を見る限り、
けっこうしっかりした画を描く人のようですね。
これも楽しみです。

次回は8月下旬とのこと。今度は何が出てくるのでしょうね。


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空想オルガン [読書・ミステリ]

空想オルガン (角川文庫)

空想オルガン (角川文庫)

  • 作者: 初野 晴
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2012/07/25
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

"吹奏楽の甲子園" と呼ばれる普門館。
そこで行われる高校吹奏楽全国大会への出場を目指す
上条ハルタと穂村チカ、通称 "ハルチカ" ・シリーズの第3巻。

ハルタとチカは高校2年生。
1学期が終わり、草壁先生率いる清水南高校吹奏楽部は、
いよいよ決戦の時を迎える。

1年生の春に、わずか5人から始まったメンバーも、
オーボエ奏者の成島美代子、バストロンボーンの "元気娘" ・後藤朱里、
サックスのマレン・セイ、打楽器のカイユなどが次々に加わり、
数は少ないながらもだんだんと形が整ってきた。

吹奏楽B部門(少人数編成の部)の最上位である
東海支部大会への出場を目指す部員たち。
しかしそれには、何としても地区大会と県大会を突破しなければならない。
一致団結してコンクールへと挑む彼らの "熱い夏" が描かれる。

「ジャバウォックの鑑札」
 静岡県中部地区大会の日。
 取材のために会場に現れたフリーライターの渡邊は、
 草壁先生の過去について何か知っているらしい。
 そして会場に迷い込んだ一匹の犬。どうやらとっても高価らしいが、
 この犬の飼い主だ、と名乗る人物が二人も現れて・・・
 地区大会と犬の話がメインなんだが、
 実は最初の10ページくらいがいちばんオモシロイ。
 いやあチカちゃん、カッコいいよ。

「ヴァナキュラー・モダニズム」
 住んでいたアパートが老朽化して解体され、
 校内で野宿する羽目になったハルタのために、
 チカとカイユは新居探しに奔走する。
 そこへ、ハルタの姉の南風(みなみ)が加わり、
 毎度お馴染みのドタバタ騒ぎが始まる。
 そしてやっと見つけた激安の "超優良物件" 。
 もちろん、安さにはそれなりの "理由" があった・・・
 大型台風みたいな南風さんのキャラが強烈。
 いやあ、こんな豪快すぎるお姉さんがいたら、
 たしかにハルタみたいになっちゃうだろねぇ。

「十の秘密」
 地区大会を突破した清水南高校が、
 県大会の会場で出会ったのは、
 部長の "ナナコ" と、ナンバー2の "トーノ" が率いる
 清新女子高校吹奏楽部。
 部員たちの奇抜な外見と鉄の結束、
 そしてステージ映えする演奏ぶりから、
 今大会の "台風の目" と呼ばれている。
 しかし、彼女たちは、ある大きな秘密を抱えていた・・・
 ミステリとしても良くできてるけど、
 本書中でいちばん "青春小説" してる作品かな。

「空想オルガン」
 ギャンブルと借金で身を持ち崩し、
 「振り込め詐欺」組織の手先と成り下がった "俺" 。
 今回も年老いた女性の息子になりすまし、400万円出させることに成功。
 その受け取りのために、三重県総合文化センターへ向かうことに。
 しかし、折しもその総合文化センターでは、
 高校吹奏楽の東海支部大会が開かれようとしていた。
 そしてなんと、県大会まで突破してしまった清水南高校もまた
 総合文化センターへと向かっていたのだ。
 小悪党の "俺" と、支部大会へ臨む清水南高吹奏楽部と、
 二つの物語が並行して、ときには交錯しながら綴られていく。
 歳をとったせいか、"親子の情愛" が絡んでくると
 とたんに涙腺がユルくなるようになってしまったよ。
 最後の最後でもう一回ビックリさせる構成も上手い。

ハルタやチカにとっては、勝っても負けても
この東海支部大会で今年の夏は終わる。
(この大会がB部門の最上位大会だから、これより上はない。)
支部大会の結果についてはここには記さないが、本書のラストでは、
清水南高にまた一人、強力なメンバーが加わることになりそうで、
来年夏のA部門(大人数編成の部)出場に向けて、
希望をつなげるエンディングを迎える。

本書の冒頭には、「イントロダクション」と題した、
文庫でわずか8ページほどの作品がある。
(たぶん)高校を卒業して数年後くらいのチカが、
高校2年生の夏を回想する、という形式で綴られている。
清水南高校が支部大会まで駆け登ったことも
実は巻頭のこの掌編中で明かされているんだが、
高校卒業後の自分自身やハルタ、草壁先生、
そして吹奏楽部の仲間たちのその後については
全く触れられていない。
そりゃそうだよね。
そのへんはいつか発表されるであろう最終巻でのお楽しみだから。

私の手元には、あと一冊「千年ジュリエット」がある。
これも近々読む予定だけど、どうやら現在刊行されている
"ハルチカ・シリーズ" は、これが最新刊らしい。
今年中には続刊が出る、という情報もあるんだが
そうすると文庫になるのはかなり先かなぁ。
まあ気長に待つことにしよう。


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階段途中のビッグ・ノイズ [読書・青春小説]

階段途中のビッグ・ノイズ (幻冬舎文庫)

階段途中のビッグ・ノイズ (幻冬舎文庫)

  • 作者: 越谷 オサム
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2010/05
  • メディア: 文庫



評価:★★★

かつては華々しい活動で名をはせた、
県立大宮本田(ほんでん)高校軽音楽部。
しかし、いつの間にか部員も減り、
上級生の "ある不祥事" がさらに追い打ちをかける。

そして、たった一人残った部員、啓人(けいと)は、
2年生の春休みに、学校側より最後通告を受ける。
「半年以内に目立った成果を上げない場合は廃部とする」、と。

しかし、1年前に軽音楽部を辞めた伸太郎と
同じクラスとなったことをきっかけに、
啓人は部の立て直しに向けて走り始める。

上級生の不祥事のおかげで、学校の名誉に傷をつけた軽音楽部への、
一般生徒の視線は冷たい。しかし、啓人と伸太郎はくじけない。

まず、なり手のいない顧問に就いてもらうべく、
冴えない国語教師・加藤をかつぎ出し、
さらに新メンバーを求めて校内を奔走する。

その甲斐あって、ギターとして加わった勇作は、
テクニックこそ天才的だが口の悪さも半端なく、
伸太郎との相性は最悪でケンカが絶えない。
さらに、吹奏楽部の高圧的な顧問に反発して辞めた
ティンパ二奏者・徹がドラム担当に収まって、
だんだんバンドとして形をなしていく。

目指すは文化祭の中のイベント「田高マニア」。
ど派手で素晴らしい演奏をぶち上げて、
軽音楽部のマイナスイメージを吹き飛ばす!

しかし彼らの前途は多難である。
軽音楽部は、不祥事のおかげで練習場所さえ与えられない。
タイトルにある「階段途中」とは、
校舎の屋上階へ通じる階段の最上部のこと。
半ばガラクタ置き場と化したそこが、彼ら唯一の居場所なのだ。

しかも、そこで演奏の練習を始めると、
近くの文化部から「うるさい」と苦情が。
男どもで毛布を縫い合わせて遮音幕にしたはいいが、
その中は殺人的な猛暑。
ならば屋上の扉を開けてもらおうと、
生徒指導の鬼・森先生と押し問答したり。
その間にもメンバー間の諍いは絶えず、啓人は胃が痛い日々が続く。
しかし、同級生の亜季ちゃんを心の支えに、今日もがんばるのだ。


優しくて気配りのきく主人公、猪突猛進な親友、
毒舌を吐く天才、なごみ系の巨漢。
それぞれキャラも立っているし、会話も十分面白い。
彼らを中心に、ある意味「王道」な「部活動立て直し」物語が展開する。

生徒のキャラもよくできているんだけど、教師の方もなかなか。

生徒から見れば悪役になってしまっている森先生だが、
彼女にも彼女なりの葛藤があることが描かれているし、
昼行灯みたいな加藤先生にも意外な面が隠されている。
(ちなみにラストでの彼の役回りは何となく予想してた。)

しかし、ダントツによかったのは校長先生だね。
のほほんと校庭の隅で庭いじりしてるんだけど、
実はいちばん生徒を信頼し、彼らを守って
世間(学校の外の世界)と戦っている。
(まあ実際、こんな校長さんは少ないだろうけどね。
 往年の青春ドラマで有島一郎が演じていたような校長先生、
 て書いても、分かる人は少ないだろうなぁ。)


・・・と書いてきたように、面白いのは間違いない。
間違いないんだが、今ひとつ評価が伸びなかったのは、
まさにこの「王道」ぶりにあるかも知れない。
なんとなくラストまでの流れが予想できてしまい、
この手のドラマには必須であろう、クライマックスに至るまでの
ドキドキ・ワクワク・ハラハラ感がやや希薄なような気がしたんだ。

  巻末の解説によると、作者のデビュー2作目だとのことなので、
  手堅くまとめたのかも知れない。

  もちろん「充分にエキサイティングで最高にオモシロイ!」
  って感じる人もたくさんいると思う。
  これはあくまで私個人の感覚である。


読み終わった後、彼らが文化祭で演奏した曲を
YouTubeで検索してしまった。
私は、ロック(それも洋楽の)はほとんど聴かない、というか
聴いてこなかった人間なんだけど、それでも、
これからちょっぴり聴いてみようかな、って思った。

そう思わせるだけのパワーを持った作品なのは間違いない。


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放課後はミステリーとともに [読書・ミステリ]

放課後はミステリーとともに (実業之日本社文庫)

放課後はミステリーとともに (実業之日本社文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2013/10/04
  • メディア: 文庫



評価:★★★

「鯉ヶ窪学園探偵部」シリーズに属する作品。
以前、読書録を書いた「殺意は必ず三度ある」は
部長の多摩川、部員の八橋・赤坂が登場するが、
本書は副部長の霧ヶ峰涼が活躍する短編集になっている。

全8編収録なのだが、タイトルはすべて
「霧ヶ峰涼の○○」or「霧ヶ峰涼と○○」
というふうに統一されてる。

名探偵を自任する涼の周囲で起こる怪事件を綴る
学園ミステリなんだが、そこは東川篤哉。
奇人変人の学生やら教師やら、その他大勢の
エキセントリックなキャラが毎回登場してドタバタ騒ぎを引き起こす。
でも、しっかり本格ミステリになってるところも、この作者ならでは。


冒頭の「霧ヶ峰涼の屈辱」は、
アルファベットのEの形をした校舎からの人間消失の謎を描く。
また、これには一回こっきりしか使えない、
ある "大ネタ" が仕込んであるんだが
私はすっかり引っかかってしまいました。
探偵部顧問の生物教師・石崎先生登場。

続く「逆襲」も、衆人監視下のアパートからの人間消失事件。
わずか文庫40ページほどしかないのに、多重解決ものになっていて、
二転三転する謎解きが楽しめる。
ゲストは猫恐怖症(笑)の芸能カメラマン・藤瀬。
ミステリ的にはこれと、「屋上密室」が本書の双璧だと思う。

「見えない毒」は、資産家の毒殺未遂事件。
珈琲を飲んで倒れたはずなのに、
被害者のカップから毒が検出されない謎に涼たちが挑む。
鯉ヶ窪学園シリーズのレギュラーメンバー、
祖師ヶ谷大蔵警部と烏山千歳刑事の "私鉄沿線" コンビ登場。

「エックスの悲劇」は、足跡のない殺人(未遂)。
校庭で流星雨を見ていた涼たちはUFOを発見する。
UFOを追って行った涼たちは、
畑の中で首を絞められて倒れていた女性を発見するが、
彼女の周囲の土には、彼女の足跡しかない。
UFOマニアの地学教師・池上冬子女史がいい味を出してる。

「放課後」は、物体消失。
体育倉庫で不審な行動をしていた不良学生・荒木田。
どうやら煙草を吸っていたらしいが、煙草もライターも見つからない。
物体消失事件なのだが、事態は二転三転して意外な結末を迎える。
メインゲストは鯉ヶ窪学園芸能科の女王様・小笠原玲華さん。

「屋上密室」は、タイトル通り密室殺人(未遂)。
校舎の屋上から、2年生の加藤美奈が突き落とされる。
たまたま下を教育実習生・野田が通りかかっており、
美奈の身体は野田を直撃。二人は病院送りに。
しかし、美奈の落下した時刻には、
屋上には誰も出入りしていなかったことが確認される。
一種の不可能犯罪ものでもあり、上にも書いたが
個人的には「逆襲」と並んで本書のツートップ。

「絶叫」も、足跡なき殺人(じゃなくて殴打)事件。
自称、 "鯉ヶ窪学園陸上部のスーパースター" 足立駿介が、
校庭の砂場で、何者かに後ろから殴打されて転倒する。
しかし彼の周囲の砂には、彼以外の足跡はない。

「二度目の屈辱」では、冒頭の「屈辱」の舞台となった
E型の校舎で、再び人間消失が起こる。
美術室で涼を待ち受けていた "謎の学ラン男" は、
不良・荒木田を襲ったあと、校舎内を逃げるが
追跡する涼の前で姿を消してしまう。
探偵部顧問・石崎先生再登場。


いちおう探偵役は涼なんだろうが、
回によっては他のキャラに謎解きをされてしまって
ワトソン役になってしまうことも。
中でも石崎先生は意外と切れ者である。

このシリーズは継続していて、続編では多摩川・八橋・赤坂の
"探偵部の三馬鹿トリオ" との共演もあるらしい。
また文庫になるのを待つことにしよう。


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不連続の世界 [読書・ミステリ]

不連続の世界 (幻冬舎文庫)

不連続の世界 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 恩田 陸
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2011/10/12
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

長編「月の裏側」の登場キャラ・塚崎多聞を主役とした
ホラー風味のミステリ短編集。

多聞はレコード会社に勤める音楽プロデューサー。
彼の周囲で起こる不思議・不気味な5つの事件が語られる。

「木守り男」
 後輩の放送作家・田代と散歩中の多聞は、
 ケヤキの木のてっぺんにやせこけた謎の男が
 しがみついているのを目撃する。

「悪魔を憐れむ歌」
 正体不明の謎の歌手 "セイレン" の歌を聴いた者は、
 つぎつぎと不審な死を迎えるという。
 "セイレン" の正体に迫る多聞が行き着いたのは、
 謎の失踪を遂げた女性だった。

「幻影キネマ」
 多聞がプロモーションを担当するバンド、 "ネバーモア" 。
 メンバーの一人、杉原の故郷でPVの撮影をすることになり、
 ロケに訪れたH県O市。
 しかし、撮影中のスタッフを見る杉原の目は、
 なぜか恐怖におののいていた・・・

「砂丘ピクニック」
 友人の巴とともにT砂丘を訪れた多聞。
 巴が持っていたフランス人のエッセイに記載されている
 "砂丘が目の前で消えた"という描写の謎解きを試みる二人。
 そして、彼らが入館した美術館で入場者が一人、消失する。

「夜明けのガスパール」
 四国へ向かう夜行列車へ、三人の友人とともに乗り込んだ多聞。
 夜を徹して酒を飲む彼らに多聞は、
 「別居中の妻が旅行先から写真だけの手紙を送ってくる」
 という話をするが、ある友人は言う。
 「おまえの奥さんはもうこの世にいない。おまえが殺したから」


ホラーの衣をまとっているけれど、
事件自体はミステリとしてきっちり解決される。
ただ、各編の "つかみ" に相当する
"不可解・不気味" な部分の "絵解き" がやや物足りないかなぁ・・・

たとえば「木守り男」の "正体" だったり、
なぜセイレンの歌に人の死を誘う効果があるのか、とか
砂丘が "消失した" と思わせる理由とか。

それでも、前に読んだ「きのうの世界」よりは
よっぽど "まし" だけどね。

この作品も、あまり細かいことを気にせずに
"恩田陸の世界に浸る" ことだけに徹して読めば、
楽しい読書の時間を持てるんだろうなぁ、と思う。


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ブック・ジャングル [読書・冒険]

ブック・ジャングル (文春文庫)

ブック・ジャングル (文春文庫)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/11/08
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

自治体の合併による合理化で、
3月末での閉館が決まった綾北市立図書館。

大学院生の沖野が親友の秋元からその知らせを聞いたとき、
すでに市立図書館は閉館してしまっていた。
自分を昆虫学へと導いてくれた思い出の図書館へ
もう一度行ってみたいと思い立った沖野は、秋元とともに
市立図書館への深夜の潜入を敢行する。

一方、高校を卒業したばかりの百合香も、
思い出の本を手に入れるため、友人の真優・一実とともに
市立図書館への潜入を決意する。

というわけで、4月5日の深夜の図書館にて
不法侵入者である男女5人は出くわしてしまうわけだが、
驚きと戸惑いの中にある彼らの眼前に突如として現れたのは
なんと超小型のラジコン・ヘリコプター。

しかも、その機体には "必殺の武器" が仕込まれていた。
最初の襲撃で真優の命が奪われたとき、
彼らは、自分たちが "強烈な殺意" にさらされていることを知る。

外部との連絡手段を断たれて孤立した4人は、
自らの生存をかけて "謎の殺人者" と対決する・・・


おもちゃのようなラジコンヘリでも、
それに仕込まれた種々の攻撃アイテムによって
深夜の図書館がサスペンスフルな "バトル・フィールド" へと変貌する。

立ち向かうは若者4人。
作者自ら「あとがき」で彼らの役割分担を解説している。
理不尽な仕打ちに怒りを爆発させる熱血漢の主人公・沖野。
常に冷静な判断で沖野をサポートする参謀役・秋元。
(いわゆる肉体労働担当と頭脳労働担当、ってやつだね)
可愛らしくて気丈なヒロイン・百合香。
しかもメガネっ娘である。これはポイントが高い(←え?)。
自らを "図書館の子" と言うくらい本が好きなんだが、
じつはこの言葉にはもう一つ意味がある。
そして、ややツンデレ風のヒロインの友人・一実。

この手の物語ではお約束のようなチーム編成。
ベタといえばベタ。だがそれがいい。

その夜が初対面の彼らだが、ヘリの襲撃から身を守り、
力を合わせて姿無き殺人者と戦っていくうちに
次第に心を通わせていく。
沖野と百合香の間もだんだん "いい感じ" に。
いやあ、"吊り橋効果" ってすごい。


この作者は、毎回異なったシチュエーションで
バラエティに富んだ物語を読ませてくれるが、
都会の真ん中の、しかも図書館という
およそ活劇には縁のなさそうな舞台で
こういう冒険アクションを展開してしまう力量は
本当にスゴいものだと思う。


★4つでもいいかなあ・・・って思ったんだが
ちょっぴり減点してしまった理由は、
犯人の動機が今ひとつ納得いかなかったことと、
その正体にいまひとつひねりがないこと。
もっとも、犯人あてがメインの話ではないので、
今回は敢えてそっち方面の要素はバッサリ切って、
スリムな構成にした、とも考えられるが。
(たぶんそうなんだろうと思う。)


あと、どうでもいいことなんだが、
黒髪ロングでスリム体型という、
私好みのタイプだった真優ちゃんが(←ええ?)
最初の犠牲者となって開幕早々で死んじゃうんだよなあ・・
もったいないじゃないかぁ・・・


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夢幻諸島から [読書・SF]

夢幻諸島から (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

夢幻諸島から (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

  • 作者: クリストファー・プリースト
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/08/09
  • メディア: 単行本



評価:★★

北半球と南半球に大陸があり、
その間に無数の島々が散らばる世界。

この惑星は、 "時間勾配によって生じる歪み" とやらが原因で、
正確な地図の作成が不可能、という設定。

どういうことなのかはあまりよく説明されていないんだが、
飛行機で島の上空を南北に突っ切るときと、
東西に突っ切るときでは、島の形が変わって見えるらしい。
しかも、高度によっても地形が異なるという。

島の人間から空を見上げると、
しばしば飛行機が停まって見えるときがあるそうな。

  要するに、私にはよくわからないんだ。

本書は、そんな島々の "ガイドブック" の形式をとって、
30あまりの島について書かれた連作短編集である。

もちろんガイドブックそのものみたいに書かれた章もあるし、
独立した短編としても読めるように書かれた章もある。

読んでいくとわかるんだが、
何人かの人間は複数の章にまたがって登場する。
それも若かったり壮年だったり晩年だったりするので、
彼ら/彼女らのミニ伝記集みたいな趣もある。

ある章で起こった事件の真相が他の章で語られたり、
別々の章に登場していた人物たちが後の章で出会ったりと、
なかなか多層な構造をしている。


で、感想である。

読んでる間はそこそこ楽しいんだけど、
読み終わってみると何だかすっきりしない。
作品中で提示された "謎" がいくつか放り出したままなのだ。

ある島には正体不明の塔が立ち並んでいるのだが、
誰が何のために建てたのかが最後まで明かされない。

ある島は(おそらく)軍事上の理由で地図に記載されない。
恋人がそこへ行ってしまい、ヒロインは何とか
その島へ秘密裏に上陸しようとするのだが、
結局、島で何が行われていて、
恋人が何に関わっていたのかも明かされない。

読み終わって非常にもやもやしたものが残る結末である。

  まあ、この<夢幻諸島>はシリーズになっていて、
  他に何冊かあるそうなので、本書の疑問点は
  そちらで解決されているのかも知れないが・・・

「英国SF協会賞」と「ジョン・W・キャンベル記念賞」を受賞した、
って帯には書いてあるんだけど・・・どうもピンとこない私です。


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NOVA8 書き下ろし日本SFコレクション [読書・SF]

NOVA 8 ---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)

NOVA 8 ---書き下ろし日本SFコレクション (河出文庫)

  • 作者: 山田 正紀
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2012/07/05
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

書き下ろし短編SFアンソロジーも第8弾。
今回も今ひとつという印象。

「大卒ポンプ」(北野勇作)
 バチガルビの短編「第六ポンプ」のパロディっぽく始まって
 コメディな雰囲気から最後はホラーになる。
 やっぱり私は、北野勇作とはいまひとつ波長が合わない感じ。

「#銀の匙」(飛浩隆)
 北海道の農業高校の話ではない。作者の他の作品に登場する、
 天才詩人アリス・ウォンの誕生時のエピソード。
 作中に登場する、リアルタイムでライフログを生成する "Cassy" って、
 要するに自動で日記を書いてくれるシステムだね。
 これが実用化されたらブログ書く手間が省けるなあ。もっとも、
 なんでもかんでも垂れ流されたら読む人がいなくなりそうだが。

「落としもの」(松尾由美)
 浜辺に落ちていた眼鏡を見つけた主人公。
 でもこれは、主人公たちには使えない。
 なぜなら、彼らは "猫" だから。
 植民星に置き去りにされ、やがて知性化した猫たちの物語。
 なんだかふんわりほのぼの系の話。

「人の身として思いつく限り、最高にどでかい望み」(粕谷知世)
 主人公の弟が山から連れてきたのは "神様" だった。
 その "神様" に願いを叶えてもらっているうちに、
 だんだんと "神様" をもてあましていく人間たち。
 その "神様" をナントカしようと主人公が考えついた方法とは・・・
 うーん、ラストのオチはなんとなく見当がついたし、
 その結果も予想の範囲内かなあ。

「激辛戦国時代」(青山智樹)
 天下布武も、本能寺の変も、朝鮮出兵も、鎖国も、
 すべては激辛の唐辛子が原因だった。
 良くできたコメディだけど、これってSFなのかなあ。
 でもこういうの、嫌いじゃない。

「噛み付き女」(友成純一)
 ホラーです。
 これ読むとスキューバダイビングが怖くなる。
 やったことないけど。

「00:00:00.01pm」(片瀬二郎)
 時間が止まった世界で、一人だけその時間から切り離され、
 取り残された男。
 やがてもう一人、自分と同じ境遇の人間がいることに気づくが・・・
 いやあ、ここからあんな展開になるとは予想外。
 これもホラー。しかもスプラッタ気味。こういうの苦手。

「雲の中の悪魔」(山田正紀)
 流刑星<深遠>。量子鉱山で奴隷的に扱われる結晶化した知性。
 重力知性体が管理するこの牢獄から、
 四次元構造体やら疑似ブラックホールやらの監視態勢を突破して
 脱獄を図る16歳の少女、李兎(リーユイ)。
 文庫で100ページ超の力作で、こてこてでSF純度300%。
 ・・・なんだけど、あまりに濃すぎてよく分からない。
 "過ぎたるは及ばざるがごとし" って言葉を思い出した。
 だけど還暦過ぎても、こんな前衛的な作品が描けるなんて
 まだまだSFマインドは20代だねえ、山田先生。

「曠野にて」(飛浩隆)
 「#銀の匙」の続編。天才詩人アリス・ウォンちゃん5歳。
 お友達の克哉くん(7歳)と "電子的書字空間" で "ゲーム" をする。
 文章をつくりだし、そのイメージや世界の広がりで陣取りをする
 (言葉で "囲碁" をする感じ?)、っていうもの。
 当然、天才アリスちゃんの大勝利なのでした。

「オールトの天使」(東浩紀)
 「NOVA2」収録の「クリュセの魚」から始まった、
 連作短編のような長編分載のような作品も、今回の4作目で完結。
 物語は火星から始まり、地球へ移り、
 ついに太陽系最外縁部、オールトの雲まで広がる。
 愛する娘・栖花を救うべく、地球外知性体との接触を目指して
 単身ワームホールをくぐった彰人の前に現れたのは・・・
 ラストで彰人と "麻理沙" が出した結論のくだりを読んで
 思ったのは、「こいつらも人の親なんだなあ・・・」
 しかしエピローグがああなるとはびっくり。
 栖花が✕✕の✕✕になってるなんて、予想の斜め上にもほどがある。
 このアンソロジーではいちばん面白かったかな。
 でもそれは、いままで彼らの登場する短編を3作読んできて、
 彰人や栖花、 "麻理沙" や "L" といったキャラたちに
 馴染みと愛着が湧いてたからだろうなぁ。


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