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ロマネスク [読書・ファンタジー]

ロマネスク (創元推理文庫)

ロマネスク (創元推理文庫)

  • 作者: 瀬尾 こると
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/04/28
  • メディア: 文庫



評価:★★

ファンタジーの世界を描くときの "言葉の使い方"って
なかなかムズカシイと思う。

前に「フェンネル大陸 偽王伝」のときにも
いろいろ書いたかと思うんだが、本書の言葉もなかなか引っかかる。
漢字表記の地名や人名が出てくるのはいいんだが、
本書の場合はちょいと行き過ぎな気も。

「芽出臼」(メディウス)やら「惟儀守」(コレギス)はまあ許そう。
でも「奉良雲」(ブラウン)とか「銅鑼湖爾猗」(ドラコニア)とか
「梨威蒙厳」(リイモウガン)なんて出てくるとねぇ・・・
○走族じゃないんだぜぇ・・・


まあ枝葉の部分の話はこれくらいにして内容に入る。

故郷・讃大仁(サンドニ)の神殿から盗まれた宝物と
その盗賊・オキワゼを追って旅を続ける勇者・バシリスク。

砂漠の国ケ・イキョーに入った彼は、
蛮族に追われていた宮廷女官・シエナを救う。
彼女によって宮廷へ招かれたバシリスクは、
王位を巡る陰謀に巻き込まれることになる。


ざっくり言うと、ファンタジーの世界を舞台にしたミステリ、である。
なんだけど、ファンタジーとしてもミステリとしても、
何か "うすい" 感じが否めないんだなあ。

言い方は悪いが出来の悪いノベライズを読んでいるような気もする。
上に書いたシエナの救出から、王宮に行って大臣・エゼカイオと会い、
舞台と状況の説明が一通り済んでしまうまでが、
約10ページちょいで、しかもほとんど会話文で進行してしまう。

無駄な描写がなくて進行がスピーディ、という評価もあるだろう。
(巻末解説の城平京氏は肯定派。
 まあ解説を頼まれてけなす人はいないだろうが。)
でも私からすれば、スケルトンで描写不足な文章だと思う。

文庫で300ページほどだが、全編にわたって
"書き込んでじっくり読ませる" より、
"テンポ良く読ませる" ことを目的としたつくりのようだ。

  若者はこういうつくりが好みなのかな?
  最近のライトノベルも、こんな感じのものが多いのだろうか?

でもそれがいいか悪いかは評価の分かれるところだろう。

たとえば怪物・銅鑼湖爾猗が棲む迷宮の中で見つかった刺殺死体。
出口には見張りがいて、出てきたものはいない。つまり密室殺人。
でも、その解決はけっこうあっけない。
ミステリを期待して読む人からすると「おいおい」って言いたくなる。

もう一つ挙げると、冒頭に登場するシエラという女性。
彼女は物語中にも所々顔を出すのだが、ほとんどモブキャラに近い扱い。
そして実は、ラストにも出てくるのだが、その展開がちょっと唐突。
ああいう風に持っていくのなら、
途中でそれに向けた伏線を張っておくべきで
これは明らかに描写不足なんじゃないか?


もちろん評価は人それぞれなので、
こういう記述やら文体が好みの人も当然いるだろうが・・・

私としては、分量がこの2倍になってもいいので
読み応えのある文章にして欲しかったなあ。
個々の要素には、面白そうな素材も多いと思うので。


人形の部屋 [読書・ミステリ]

人形の部屋 (創元推理文庫)

人形の部屋 (創元推理文庫)

  • 作者: 門井 慶喜
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/05/12
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

主人公・八駒敬典は専業主夫。
かつては旅行会社に勤務し、
仕事への必要性から蓄積したあふれる知識で
同僚からは "歩く百科事典" やら "電源の要らない検索サイト"
という異名まで頂戴し、バリバリ仕事をしていたのだが、
妻・陽子が発案したアイデアが社内ベンチャーとして取り上げられ、
彼女はそこの要職に抜擢されてしまう。

以来、共働きしながら一人娘のつばめを育ててきたものの、
仕事や時間のやりくりにも限界が訪れ、
ついに敬典は職を辞し、家庭に入ることを決断する。


本書は、主夫となった敬典の、周囲で起こる
ささやかな(でもないか)事件を綴ったミステリである。

長めの短編3つの間に掌編を2つ挟んだ全5作から成る。

「人形の家」
 元上司が持ち込んだ、壊れたフランス人形をめぐる話。
 これ、ラストがよく分からなかった。
 終盤を二回読んだら「そういうことか」って思ったけど、
 やっぱり分かりにくいと思うし、
 ミステリ的にも物語的にもカタルシスに乏しいと思う。

「お花当番」
 大学時代の同級生だった女性・朝美から来た、
 花の名前だけがずらずらと記されたメール。
 (敬典の回想に出てくる朝美さんは、とても魅力的。思い出補正?)
 一種の暗号解読なんだけど、とても回りくどい気がしてしまう。
 あと、○○○○が△△の○○○だなんて、
 いくらなんでもちょっと偶然が過ぎる気が。

「お子様ランチで晩酌を」
 敬典の娘・つばめが家出をしてしまう。理由が分からない敬典。
 たまたま訪れた姉・里美と、自分たちの子供の頃を思い出して
 昔話をしながらあれこれ考えを巡らせる。
 ざっくり言ってしまえば、いつの時代でも、
 父親は思春期の娘を理解することはできない、という話なんだが・・・
 終盤、それまでほとんど登場していなかった陽子が出てくるけど
 たしかに良くできた嫁さんで、
 敬典が支えたくなるのもわかるなぁ、とは思った。


2つの掌編は、敬典が家事を逃れて
年に一度だけ外泊できる旅行での出来事を扱っている。
テーマがそれぞれ「万年筆」に「筆」と、
どちらも文字を書く道具になってるのはなぜだろう。


ミステリとしては、微妙に私の好みからは外れているかなあ。
特に「人形の家」と「お花当番」はね。
「お子様-」も、「家族をテーマにしたいい話」ではあると思うけど。

というわけで、評価は "ちょい微妙" となりました。


あと、どうでもいいことなんだけど、主人公の娘の名前「つばめ」が、
裏表紙でも、1ページ目の惹句でも「つばさ」って誤植されてた。
私が持ってるのは初版なので、再版からは直ってしまうんだろうなぁ。


十三番目の王子 [読書・ファンタジー]

十三番目の王子 (創元推理文庫)

十三番目の王子 (創元推理文庫)

  • 作者: 岡田 剛
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/05/30
  • メディア: 文庫



評価:★★★

タイトルの「十三番目の王子」の意味は、かなりの説明が必要になる。

舞台となるシオン神王国には、
かつて "悪神" が星の海を渡って攻め込んできた、という伝説がある。

このとき、初代神王の第三王子が神の使いである<剣の天使>を招喚、
第三王子と契約を交わした<剣の天使>は、人間と力を合わせて
 "悪神" の軍勢を打ち破り、その後も人間の地にとどまることになった。

神王国は、初代神王の12人の王子が分割統治することになり、
第三王子が封じられたのが王国最北の地・ラダッカであった。

しかし、神王には実はもう一人、「十三番目の王子」がいたのだが、
反逆者として王国を追われたという・・・


それから遙かな時が流れ、物語はラダッカからはじまる。

この地は、120年に一度襲ってくる
激しい吹雪と原因不明の死病に悩まされていた。

極北の砦に駐留していた<蛇の目>団の団長・ソローは
猛吹雪の中、謎の黒い建物の影を目撃する。

その直後、帰還命令を受けたソローは、副団長のエネミア、
団員にして<剣の天使>の後継者・ゼンを伴ってラダッカへ戻る。

ソローとエネミアに与えられた新たな任務は、
神王家から派遣された "地形官" の護衛であった。


ゼンは<剣の天使>の子孫であるカムド家の嫡男である。
ずば抜けた身体能力は持つものの、剣の才能はからっきしで
姉のファラにも遠く及ばない。
本人は家のしがらみから逃れ、自由奔放に生きることを望み、
娼婦であるシリに心を寄せている。

ソローは貧乏貴族の出で、剣の才能に恵まれ、
当代の<剣の天使>であるゼンの父親から手ほどきを受けた。
身なりはもとより世俗のことにも無関心で
何事にも醒めた目を向ける。
(ちょっと「装甲騎兵ボトムズ」のキリコを彷彿とさせる。)

エネミアは女性でありながら騎士になることを目指す。
後宮に納められた姉を救い出すために。
しかし王国の旧弊は女性騎士を認めようとはしない。

この三人は、それぞれ胸の中に複雑な葛藤を抱えている。

物語は、この三者三様の葛藤を縦軸に、
ゼンの18歳の誕生日を祝って行われる御前剣技会や
「十三番目の王子」の末裔、"悪神" の復活と再侵攻について語られ、
終盤では "悪神" の尖兵たる "雪の王" との戦いに突入する。


一言で言うと "重厚" か。
冒頭の吹雪のシーンを読んだだけでもわかるが、描写は緻密。
すらすら読めるような軽さは微塵もないが、
かといって読みにくいこともない。
気がつくと、"じっくり" と読まされている自分に気がつく。
不思議な文体だと思う。

登場人物紹介では、一番最初にソローの名があって、
エネミア、ゼン、ファラ・・・と続くので、
主役はソローかなと思って読んでいたのだが、
結局いちばん出番が多くて目立っていて、
最後に美味しいところを持っていってしまうのはゼンだったねぇ。

ソローは何を考えているのかが分からないので、読んでいても
なかなか感情移入しづらいキャラになってて損してるかな。
剣技会での一回戦の相手を "秒殺" したあと平然と帰ってくるとか
おそらく作品中では(人間としては)最強なんだけどね。

ソローとファラは、お互いに想い合っている様子なのだが
過去の経緯とか身分の違いとかいろいろあって
二人とも表に出すことをしない不器用なカップル。でもそれがいい。

エネミアもまた、ソローに気がありそうな描写があるんだが・・・


物語は、最後は落ち着くところに落ち着くのだけど
巻末の解説によると、本書は長大な物語の序章に過ぎないらしい。

まあ、そう言われてみればけっこう重要な伏線とかが回収されてないし、
次巻以降では "悪神" たちの本格的な侵攻が始まるのかも知れない。
主人公たちが得た平穏な時間も、つかの間のことなのだろう。

 いまひとつ主役っぽくなかったソローにも
 活躍の場面が増えるのだろうか?

シオン神王国と他国の関係も予断を許さないし、
この世界はこれから動乱の時代を迎えるのだろう。
そのなかで、彼らがどんな運命を辿るのか。

続巻はまだ発表されていないらしいが、
早く続きを読んでみたい、と思わせる作品だ。


天皇の代理人 [読書・サスペンス]

天皇の代理人 (ハルキ文庫 あ)

天皇の代理人 (ハルキ文庫 あ)

  • 作者: 赤城 毅
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2014/05/13
  • メディア: 文庫



評価:★★★

昭和の終わり頃。
当時、駆け出しの物書きであった "私" が通っていた銀座のバー。
そこで知り合った老人・津村。

彼は第二次大戦中、および戦後を通じて外交官をしており、
歴史上有名な事件の真相や、表層に現れない部分について語り出す。

本書には、津村が経験した4つの "影の昭和史" が収められている。


「死神は誤射した」
 1929年。新米外交官である津村が引き合わされたのは、
 桁外れの外交特権を与えられた謎の人物・砂谷。
 二人は箱根の老舗ホテルで起こった、
 佐分利公使の怪死事件の真相を探ることになる。

「頑固な理由」
 1936年。英国駐在を命じられた津村は、砂谷と再会し、
 日独防共協定を巡る諜報戦に巻き込まれる。

「操り人形(マリオネット)の計算」
 1940年。ベルリンに着任した津村は、自ら諜報網を立ち上げる。
 ドイツ海軍総司令部内に得た協力者から、
 東洋における英軍の拠点・シンガポール要塞の情報を得ようとしたが
 そこに砂谷が現れる。

「終幕に向かう列車」
 1945年。太平洋戦争開戦に伴い、スイスへと異動していた津村は、
 対米終戦工作のために、ある重要人物の移送とその護衛を
 砂谷とともに務めることになるが・・・


以前、この作者の「氷海のウラヌス」という作品を読んだが、
あれも "歴史に残されなかった戦い" を描いていた。

作者は歴史研究者という側面も持っていると聞くので、
事実関係はもう十二分に把握しているのだろう。
その上で空白部分に創造力を駆使して、
意外な "歴史の裏面" を仕立て上げている。

ただ、私自身はスパイものとか諜報戦とかいうものに
今ひとつ魅力を感じない人間なので、本書も
つまらないとは思わないが、ずば抜けてスゴイとも思えなかった。

でもきっと、その手の話が好きな人には
たまらない内容になってるんだろうなぁ、とは思う。

  私はやっぱり上述の「氷海のウラヌス」みたいに
  アクション主体の冒険活劇が好きだなあ。

「終章」において、砂谷の正体が明かされるが、
これ、タイトルがそのままネタバレになってるような気がするんだけど
いいんでしょうか。
いいんでしょうねぇ、きっと。


人造人間キカイダー The Novel [読書・SF]

人造人間キカイダー The Novel (角川文庫)

人造人間キカイダー The Novel (角川文庫)

  • 作者: 松岡 圭祐
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2013/07/25
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

往年の特撮変身ヒーローの再登場。
41年ぶりにリメイクというか、実写映画化なのだそうだ。
ちなみに、映画版のタイトルは「キカイダー REBOOT」。

本書と映画がどんな関係にあるのかはよく分からないが、
巻末に "(c)「人造人間キカイダー」製作委員会" とあるので
何らかの関係があるのだろう。
でも、映画の公式サイトでの情報を見る限りでは、
本書は映画版とは異なるストーリーのようである。

  ちなみに、映画の方は未見である。
  観に行く余裕も無さそうなので、
  たぶんレンタルで観ることになるだろうな・・・


内容に入ろう。
昔のTVシリーズを見た人ならば(私もそうだが)
懐かしい要素がてんこ盛りだ。

キカイダーにはもちろん "良心回路" が備わっているし、
"サイドマシンでやってくる" し。
ちゃんとギターを弾きながら登場するし!
"ハカイダー" だって出てくるし!!
(しかも、「オレはサブローだ」って名乗るんだよ!)
なんと "ビジンダー" まで出てくる。
(さすがに "ビジンダー" というネーミングは使わずに、
 "マリ" という人間態の名前で出てくるけどね。)
"ダーク破壊部隊" の方々(笑)だって、
グレイサイキングとかオレンジアントとかカーマインスバイダーとか
お馴染みの名前のオンパレード。
うーん、筆者はよく分かってる。


もちろん、21世紀に復活したのだから、
時代に合わせてアップデートされてるところも随所にある。

ロボット工学・人工知能研究の世界的権威、
光明寺博士がつくったアンドロイド、という設定こそ同じだが、
悪の組織「ダーク」は、産業用ロボットの世界的大企業となり、
光明寺はそのロボット開発のリーダー、
プロフェッサー・ギルはそのCEOである。

戦闘用ロボットの大増産へと舵を切ったギルを見限り、
光明寺は姿をくらます。

彼を追うダークの魔の手が、光明寺の娘・ミツコに迫る。
彼女が危機に陥ったとき、颯爽と現れた謎の青年・ジロー。
戦闘ロボット集団である "ダーク破壊部隊" を前に、
ジローは赤と青の二色のボディーを持つロボット、
"キカイダー" へと姿を変える。

青いボディは、医療救護救難用レスキューロボット "ゼロダイバー" 。
赤いボディは、破壊に特化した戦闘用ロボット、
"フュージティヴ・フロム・ヘル" 。
光明寺の開発した二体のロボットの
ハイブリッドとして生まれたのがキカイダーである。

キカイダーをはじめとするロボットたちの機能も
最新の工学・技術によって新たに定義され、リアリティを増している。
(現在の水準からすると、かなりオーバーテクノロジー気味だが、
 そんなことを気にする人はそもそもこの本を読まないだろうし。)


しかし、「キカイダー」の物語を甦らせるにあたって
一番大きな改変は、彼の「戦う理由」だろう。

「世界平和のため」とか「人類のため」ではない。

彼に与えられた命令はただひとつ。
「光明寺ミツコを守ること」

  40年という時間が経ち、キカイダーに限らず、
  ヒーローたちの戦う理由も変化してきた。
  「世界のため」という言葉にリアリティを感じられなくなったのは
  私たちが少年から大人になったこともあるだろう。

でも、戦う理由は変わっても、キカイダーの戦いは変わらない。
ダーク破壊部隊を打ち破り、ギルを倒すことこそが、
すなわち「ミツコを守ること」に他ならないのだから。


この改変は実に良かったと思う。これによって本書は、
ジローとミツコのラブ・ストーリーをメインに絞り込み、
長大な原典を文庫本420ページほどに収めることに成功している。


物語は、ミツコを中心に語られるが、
ミツコのキャラも原作から改変されている。

本作の彼女は、幼いときに母と兄を飛行機事故で失い、
父は研究開発に明け暮れて家に寄りつかない。
親の愛を求めても得られなかった淋しい幼少期を経験し、
大学生になった今も、何事にも消極的で
バーチャルな世界に慰めを見いだすという、
いささか "残念な" 娘に成長してしまっている。

そんなミツコが、ダークとの戦いに巻き込まれ、
ジローに救われ、彼と行動を共にしていくうちに、
内に向かって閉じこもっていた心に変化が現れる。

ジローに淡い慕情を抱くも、彼が機械であることを知って
裏切られた思いで意気消沈する。
しかし、ジローが彼女のために戦う姿を見ているうちに
父がジローに託した、娘への深い愛情を感じるようになっていく。

 ジローはミツコにとって、あるときは恋人、あるときは父親、
 そしてあるときは喪われた兄でもあったのだろう。

ラストシーンでは、彼女は過去のこだわりと決別し、
自分を取り巻く世界と向き合う決意をするまでになる。
これは、ミツコの人間としての成長の物語でもある。


ヒーローであるキカイダーも無敵ではない。
プロフェッサー・ギルの吹き鳴らす笛の(!)
高周波の影響で機能不全に陥ったり、
キカイダーをスペック面で凌駕するハカイダーには
全く歯が立たなかったりと、何度も敗北を経験する。

でも、何度倒れようとも、キカイダーは立ち上がる。
すべてはミツコを守るために。
たとえこの体がどうなろうとも・・・


読んでいて目頭が熱くなるシーンが何回もあった。
どうしてSFに出てくるロボットってこんなに
泣かせる奴ばっかりなんだろう・・・
ハードウェアとソフトウェアの集合体である機械に過ぎないのにね・・・
でも、ロボットに "機械以上" のものを感じてしまう。
それもまた人間の性(さが)なのか。


どうにもまとまらないので、最後に私が思うところの
本書のベストシーンを紹介して終わりにしよう。


ダークの追っ手を逃れ、サイドマシンに乗って脱出したミツコに、
はじめて「僕は、ジロー」と名乗るシーン。

ミツコはたずねる。
「どうして私を守ってくれるんですか?」
ジローはサイドマシンを操作しながら、穏やかにつぶやく。
「あなたのために戦いたくなる。ただそれだけです。」

ああ、ジロー、かっこいいぜぇ・・・


おまけ

続編(「キカイダー01編」?)への伏線っぽいものが
いくつか張ってあるんだけど、さてどうなりますやら・・・
本書で綺麗に終わっているだけに、
読みたいような、読みたくないような・・・


黒猫の接吻あるいは最終講義 [読書・ミステリ]

黒猫の接吻あるいは最終講義 (ハヤカワ文庫JA)

黒猫の接吻あるいは最終講義 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 森晶麿
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/05/23
  • メディア: 文庫



評価:★★★

「黒猫の遊歩あるいは美学講義」「黒猫の刹那あるいは卒論指導」
に続く、文庫では三冊目の<黒猫>シリーズ。

前2巻は短編集だったが、今回は長編である。

弱冠24歳にして大学教授になった<黒猫>と、
彼の同期生で博士課程一年目の "私" こと<付き人>。

ある夜、二人はバレエ『ジゼル』を観に行く。
彼らを招待したのは劇場オーナーの息子にして硝子工芸家の塔馬。

しかし第一幕の途中、突然男性ダンサーが倒れるハプニングが起こり、
プリマバレリーナの川上幾美は、公演を中止にしてしまう。

実は五年前にも同じ舞台、同じ演目で
プリマが死亡するという事件が起こっていた。
そして、死んだのは幾美の異父姉・愛美であった。

<黒猫>と大学の同期生でもあった塔馬は、
幾美の婚約者であり、さらには<付き人>に
「<黒猫>と愛美・幾美の姉妹は恋人関係だった」と告げる。

五年前の事件と今回の事件の真相、
そして<黒猫>と姉妹の関係が気になって仕方がない<付き人>は、
塔馬の誘いを受けて彼のアトリエを訪ねるが・・・


<黒猫>の、美学に関する蘊蓄は相変わらず。
読む方の私も相変わらずで、彼の語る内容について
分かったんだか分からないんだか自分でも判然としないんだが、
それでも、この作品をミステリとして愉しむことは十分できる。

塔馬という人物がとる行動の目的については、
私でも途中で何となく見当がついたけどね。

事件についての手がかりや事実関係は
前半でほぼ出尽くして、中盤あたりから
<黒猫>による事件全体の "絵解き" が始まるんだが・・・

でも、××が○○○○○○○を△△△△△△というのはねえ。
普通に考えたらそいつはあり得ないんじゃないかなぁ。
でもって、そういう大事なことを
ここまで伏せておくのはいかがなものか。
これで星半分減。

さらに、クライマックスを読んでいたら
なんだかどこかで見たような・・・と思ったら、
これ某有名ミステリ映画「□□□」と同じ演出だよねえ。
でも、これはこれで悪くないと思ったので、
星半分加点しちゃおう。

というわけでプラマイ無しで星3つの評価。


本シリーズはミステリではあるが、同時並行的にすすんでいるのが
<黒猫>と<付き人>のラブ(?)・ストーリーである。

相変わらず<付き人>に対して本心を見せない<黒猫>だが
そんな彼に、フランスの大学から
客員教授として招きたいという話が舞い込んでくる。

<付き人>は、 "事件の真相" と、 "<黒猫>との別れ" という
二つの苦難に立ち向かわなければならないわけで、
その心労は察するにあまりある。

つくづく彼女もやっかいな男に惚れたものだね。

彼女がこれからどうなってしまうのか、心配だったんだけど、
本書のあとに出た「黒猫の薔薇あるいは時間旅行」は、
時系列的には本書の後の話らしいので、
とりあえずシリーズはまだ続くのだろう。


カンナ 天満の葬列 [読書・ミステリ]

カンナ 天満の葬列 (講談社文庫)

カンナ 天満の葬列 (講談社文庫)

  • 作者: 高田 崇史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/05/15
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

カンナ・シリーズ第7巻。全9巻のシリーズなので、
物語も完結へ向けて動き出している。
そのせいか、単巻としてみると、
ストーリーのまとまりが今ひとつのような気が。
まあ、 "終わりの始まり" の巻なので、連続性が高くなってるのだろう。

丹波が何者かに襲われ、加えて貴湖や甲斐、
さらには犬のほうろくまでも刺客が襲う。

特に甲斐くんは、何度も襲撃に遭うのだけど
何だか "不思議な力に目覚め" てきて、
ことごとく攻撃を躱したり、相手を撃退したりして
なんだかヒーロー然としてきた。

まあそれはいいんだが、(前にも書いたかも知れないが)
もはや(私基準では)ミステリではなくなって
伝奇アクション小説になってる。


今回の "歴史蘊蓄" は菅原道真の "怨霊化" 。
ここの部分だけを取り出してみるとそれなりにオモシロイのだけど、
ストーリーとの絡み方は、何だか取って付けたよう。
(まあ、それは今回に限ったことではないけど)

物語の仲で蠢いているいろんな勢力が
一斉に動き出したのはわかるんだが、
全体像は錯綜していて、全く見通しがきかない。

志乃芙・澪の親子にもあんなことやこんなことが起こったり。
聡美さんも急にしおらしくなってしまったり。
彼女、こんなキャラでしたっけ?

このシリーズは、いったいどこへ着地するのでしょうか。
まあどちらにしてもあと2冊なので、最後までつきあう予定。


有頂天家族 [読書・ファンタジー]

有頂天家族 (幻冬舎文庫)

有頂天家族 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 森見 登美彦
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2010/08/05
  • メディア: 文庫



評価:★★★

読むまで忘れていたけど、この人、
「夜は短し歩けよ乙女」を書いた人なんだね。

この作品、深夜アニメになったのは知ってる。
夜中にチャンネル回してたら、
たまたま映ってちょっと見たことがある。
ストーリーとか全然分からなかったんだけどね。


主な登場人物は、ほとんどみな "狸" である。
これは比喩ではなくて、ホントにあの "人を化かす" 狸なのだ。

作品世界の狸たちは、人間に化けて人の中に混じって暮らしている。
主人公は、そんな狸たちの中で名門といわれる
下鴨家の三男坊、矢三郎。

父の総一郎は、狸たちを統べる「偽右衛門」の地位を占めていたが
"金曜倶楽部" なる人間の集団に捕らえられ、狸鍋にされてしまった。

長男・矢一郎は家長の自覚は旺盛だが、ここ一番に弱い性格。
次男・矢二郎は、父を亡くしたショックからか蛙に化けたきり、
古井戸の底で隠棲生活を送っている。
末っ子・矢四郎は臆病ですぐに尻尾を出してしまう。
寡婦となった母親は、子供らを慈しむ一方で宝塚に入れあげる。

そんな家族の中で育った矢三郎は
「面白きことは良きことなり!」をモットーに
毎日のほほんと暮らしていた。


やがて次期「偽右衛門」の選出時期が近づき、
父の後を継ぐべく矢一郎が立候補する。

ライバルは総一郎の弟(つまり下鴨兄弟の叔父)で
夷川(えびすがわ)家に婿入りした早雲。

下鴨四兄弟と夷川一家との「偽右衛門」選出を巡る対立を縦糸に、
天狗の "赤玉先生" 、その弟子の女天狗 "弁天" 、
"金曜倶楽部" の面々などユニークなキャラが多数登場し、
京都を舞台に大騒動が巻き起こる。

そんな中、総一郎の死の真相が明らかになっていく・・・


中盤くらいまでは短いエピソードの積み重ねだが
後半に入ると、急展開を見せる。
前半部はかなりとっちらかった印象を受けるのだけど
けっこう伏線も張ってあったりする。
でも、基本的には喜劇なので、
あまり深く考えない方がいいみたいである。


下鴨四兄弟も個性派揃いだが、早雲の子供らもオモシロイ。
双子の息子、通称 "金閣" と "銀閣" は典型的な悪役だけど、
肝心なところが抜けていたりして憎めない。

その妹・海星(かいせい)もカワイイ。
かつて矢三郎の許嫁だったのだが、総一郎の死によって
婚約解消されてしまっている。
彼女、登場シーンでは声のみで、姿はいっさい見せない。
口は悪いんだけど、矢三郎たちのために情報を漏らしてくれたりする。
内心では四兄弟をけっこう気遣っている様子で、
そのためか、夷川家を毛嫌いしている四兄弟の母親も、
海星だけは "お気に入り" のようだ。


「偽右衛門」の座を巡る騒動は決着がつくが、
本書は三部作の一作目らしいので、まだ狸たちの活躍は続くはずだ。
個人的には、矢三郎と海星の仲がこれからどうなるのかは知りたいなあ。

アニメの公式サイトで、登場キャラを見てみたら
四兄弟がみんなイケメンになってて笑った。
(あ、矢二郎は蛙だけど)
海星は小説では姿を見せないのだけど、
アニメ版では人間に化けた姿を見せているようで、
高校生くらいのカワイイ女の子になってる。

何だかアニメも見たくなってきたなあ。


初恋ソムリエ [読書・ミステリ]

初恋ソムリエ (角川文庫)

初恋ソムリエ (角川文庫)

  • 作者: 初野 晴
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/07/23
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

上条ハルタと穂村チカの高校生コンビが
廃部寸前の吹奏楽部を立て直し、全国大会出場を目指す。
そんな二人の前に現れる数々の謎を連作ミステリで綴る、
「ハルチカ・シリーズ」の第二巻。

「サザエさん」や「名探偵コナン」と異なり、
作中でしっかり時間が経過していく。
前作「退出ゲーム」は主役の二人が一年生だったときの話。

本書も4編収録の短編集となっていて、
二年へ進級した春休みから、一学期の終業式までが描かれる。

賑やかな "奇人変人大行進" 的な雰囲気は相変わらずで
それに毎回のゲストキャラがまたユニークなことこの上ない。

「スプリングラフィ」
 ハルタやチカの同級生・芹澤直子は、
 クラリネットのプロ奏者を目指している。
 しかし、一年生の途中から成績が急降下し、
 春休みには補習に強制参加させられる始末。
 いったい彼女に何が起こったのか?
 ラストでチカが "あるもの" を作るんだが・・・
 ここ、個人的には本書のベストシーンに挙げたい。
 もし、このシリーズが映像化されることがあるなら、
 ここはぜひ描いて欲しいなあ。絶対、 "絵になる" よ。
 ちなみに、直子ちゃんのかかえた "事情" は、
 私もかつて経験したことがある(彼女ほどではなかったが)。
 ちょっと人ごとに思えなかったよ。

「周波数は77.4kHz」
 トレードマークのヘルメットに身を固め、校内を駆け巡る美少女。
 その正体は地学研究会の部長・麻生美里。
 生徒会のブラックリスト十傑の一人でもある。
 ローカルラジオ放送局「FMはごろも」。
 正体不明のパーソナリティ・カイユの仕切りで
 "七賢人" たちがリスナーの悩みに答えるコーナーが人気。
 一見無関係に思える「地学研究会」と「FMはごろも」だったが・・・
 いざというときには出馬してくる草壁先生。
 やっぱりこの人はただ者ではなさそうだ。
 ハルタとチカの、夫婦漫才orどつき漫才も健在。
 おまえら仲いいなあ。もう結婚しちゃえよ・・・
 とはいかない "関係" だったんだよなあ。

「アスモデウスの視線」
 吹奏楽のライバル校・藤が崎高校の顧問である堺先生が、
 "自宅謹慎" を命じられた。
 堺本人は一切の事情を語らず、部員たちは混乱する。
 途中の事情は省略するが、藤が崎高の部長から
 協力を求められたハルタとチカは、藤が崎高校に "潜入" し、
 堺先生が指導していた教育実習生・大河原に接触する・・・
 堺が、最近一ヶ月の間に三回も席替えを実施していたことから
 ハルタが導き出した結論も意外だが、
 さらに堺が謹慎にいたった事情はさらに意外で、かつ深い。
 こんな教師に出会えた生徒は幸せだろう。

「初恋ソムリエ」
 長いこと外国で暮らしていた芹澤直子の伯母・響子が帰国し、
 突然、学校に現れる。「初恋研究会」なる部に招待されたという。
 その「初恋研究会」の部長・朝霧亨は、
 老舗興信所経営者の三代目にして、
 生徒会のブラックリスト十傑の一人でもあった。
 響子が語る、40年前の奇妙な初恋。
 ハルタの推理が、その裏に潜んだ重い過去を明らかにする。
 (前作の「エレファンツ・ブレス」の真相も重かったが、
  今回もそれに負けないくらい重い。)
 でも、物語の雰囲気まで重苦しいモノにならないのは、
 主役の二人を含めて、過去よりも未来のほうを多くもつ、
 元気いっぱいの若者たちがたくさん出てくるからだろうなあ。


本シリーズでは、事件が一つ解決するたびに
吹奏楽部のメンバーが一人ずつ増えていく。
そしてその新しいメンバーは、次回からはレギュラー陣に加わって
ストーリーに関わっていく。

解説(by大矢博子)によると、
作者は『南総里見八犬伝』を発想の元にしているらしい。

ならば、吹奏楽部のメンバーが「八犬士」だね。
草壁先生はさしずめ「金碗大輔」こと「丶大(ちゅだい)法師」か?
ということは、「伏姫」にあたる存在も、
この「ハルチカ・ワールド」のどこかにいるのだろうか?
草壁先生が一介の高校教師に甘んじている理由も、
彼女が握っているのかも知れないね。

一話完結方式ながら、物語は着実に進行し、
次巻ではいよいよ、新生吹奏楽部が大会に出場するらしい。
その第3巻「空想オルガン」も近々読む予定。


殺意は必ず三度ある [読書・ミステリ]

殺意は必ず三度ある (光文社文庫)

殺意は必ず三度ある (光文社文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/08/07
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

出れば一回戦負けの鯉ヶ窪学園野球部。
その野球部のグラウンドからすべてのベースが盗まれる。
怪事件に沸き立つ探偵部の三人組だが、真相は杳として知れない。

一週間後、同じ弱小な飛龍館高校野球部との試合が行われるが
なぜか鯉ヶ窪の監督が現れない。
キャプテンが監督代行となって試合は行われるが、
終了後、バックスクリーンから監督の死体が発見される。
その傍らにはホームベースとミットとボールが。

犯行時刻は前日の夜。
容疑者となる人々はすべて犯行現場の近くにいたのだが、
なんと全員に犯行が不可能なことが判明してしまう。


探偵部の三馬鹿トリオ、多摩川・八橋・赤坂。
方向音痴の生徒会長・桜井あずさ。
祖師ヶ谷大蔵警部と烏山千歳刑事。
エキセントリックなキャラが多数登場する、
著者お得意のユーモア・ミステリ長編である。

解決編に入ると、早々に "爆弾" が一つ炸裂する。
いわゆる "意外な事実" って奴だが、私もすっかりだまされてました。

さらには、予想外の探偵役が出現して、
最後まで飽きさせない作りなのはさすが。

ラストではひさびさに大がかりなトリックが披露される。
よ~く考えると、かなりバカバカしいものなんだが
物語全体のおバカな雰囲気の中では何だか許せてしまうのが不思議。
人を一人殺すためとはいえ、犯人が一生懸命にこのトリックの
仕込み(?)をしているシーンを想像すると、
かなりお間抜けで笑えてしまうんだが、それもまた良し。

やっぱり東川篤哉は長編がいいなあ。