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ホペイロの憂鬱 JFL編 [読書・ミステリ]

ホペイロの憂鬱 JFL篇 (創元推理文庫)

ホペイロの憂鬱 JFL篇 (創元推理文庫)

  • 作者: 井上 尚登
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2010/07/10
  • メディア: 文庫



評価:★★★

「ホペイロ」とは、ポルトガル語で「用具係」のこと。
サッカーのチーム・スタッフで、主に選手のスパイクの管理をする。
本書の主人公である坂上栄作くんは、サッカーJFLのチームである
「ビッグカイト相模原」で、ホペイロとして働いている。
しかしながらプロとはいっても、J2のさらに下のリーグなので、
金もスタッフも足りない。
必然的に栄作くんの役回りは "雑用係全般" となる。

J2昇格を目指して奮闘中の「ビッグカイト相模原」。
そのチーム内でしばしば起こる
"奇妙な出来事" を巡る、ライト・ミステリである。
分類すれば "日常の謎" 系になるだろう。

  サッカーチームが舞台ではあるが、サッカーの知識は必要ない。
  実は、私は「オフサイド」の意味がよく分かってない。
  (何となく「こんなことなんだろな」というのはあるんだが)
  でも、本書を読むのに全く支障はない!(←いばってどうする)

熱狂的なサポーターが応援に使う旗を盗まれたり、
芋畑に穴を掘った容疑で外国人選手がつかまったり、
監督の部屋から熊のぬいぐるみが盗まれたり、
まあいろんなことが起こり、そのたびに
"雑用係" である栄作くんが奔走する羽目になる。

いちおう栄作くんが探偵役のようなんだが、
実は彼が真相に到達する直前に、いつもヒントを与えてくれるのが
洗濯係の光恵おばちゃん(当年とって65歳)。

中には、明らかに光恵さんのほうが先に
真相に到達しているんじゃないかと思える話もあるので、
真の探偵役は彼女なのかも知れない。

この二人以外にも、男勝りの上司である三島撫子女史とか、
ナイジェリアから来たアモちゃんとか、高卒ルーキーの元気くんとか、
とにかく出てくるキャラがみな楽しい。

ミステリとしてはそんなにひねった話ではないのだけど、
肩の凝らない読み物として、よくできていると思う。

続編として「J2編」「J1編」の2冊があるが、これも近々読む予定。

最後にひとつだけ。

読み終わって表紙を見てみると、表題に「憂鬱」って入ってる。
でも作中では、栄作くんはてんてこ舞いはしていても
「憂鬱」なところは見せなかったんじゃないかなぁ。
(ちょっと抜けてるが)いつも明るく前向きに頑張ってたよ。


もう誘拐なんてしない [読書・ミステリ]

もう誘拐なんてしない (文春文庫)

もう誘拐なんてしない (文春文庫)

  • 作者: 東川 篤哉
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/07/09
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

今をときめく「謎解きはディナーのあとで」の作者による
第一級の脱力系ユーモア・コメディ・ミステリ。

大学生・翔太郎は、夏休みのたこ焼き屋のバイト中、
ひょんなことから二人組のチンピラに追われる女子高生を助ける。
セーラー服がよく似合う彼女の名は花園絵里香。
なんと暴力団・花園組の組長、花園周五郎の娘だったのだ。
もっとも構成員が7人しかいない弱小ヤクザなんだけど。

絵里香には父親の異なる妹・詩緒里がいて、
内臓疾患で苦しい闘病生活を送っていた。
絵里香は父の目を盗んで妹に会いに行こうとしていたのだ。

事情を打ち明けられた翔太郎は、狂言誘拐を思い立つ。
絵里香の身代金として周五郎から詩緒里の手術代を巻き上げよう。
翔太郎は先輩の甲本を引き込み、3人で "誘拐" 事件をでっち上げていく。

とにかく登場してくる人物がみな楽しい。
絵里香を溺愛してる周五郎も面白いんだけど、
何と言っても絵里香の姉・皐月がいい。
頭は切れるし度胸も十分。
堅気なのに周五郎よりはるかに組員からの人望があったりする。
ボケまくる組員たちに彼女がツッコミまくるのも読みどころ。

"誘拐" 事件で組は上を下への大騒ぎ。しかし、それと並行して
偽札がらみの殺人事件が発生する。
これがやがて "誘拐" 事件とつながっていくのだが・・・


コメディタッチの軽妙な会話(ほとんどギャグ漫画の世界)、
キャラたちの見事なまでのドタバタぶり。
全編にあふれるユーモアはよくできた喜劇映画のようで、
読んでいると頭の中に映像が浮かんでくる。

ラストの真犯人との対決シーンでも、読んでるうちに
自然に頬が緩んでしまう。それくらい徹底している。

そこで明かされるトリックには、
ちょっと無理がありそうな気もしなくはないんだが、
そこをあげつらうのは野暮というものだろう。
本作の眼目はそこじゃないし、
物語の面白さはいささかも損なわれない。

文庫で300ページほどなので、3時間もあれば読み切れる。
ちょっとした乗り物での移動のお伴なんかにどうだろう。
とても楽しい読書体験が味わえる。

最後にどうでもいいことを。

文庫版の表紙なんだけど、私のような純情なオジサンは(←どこがだ)
目のやり場に困ってしまうんだなぁ・・・

さらにおまけ。

この作品、何年か前にドラマになってたような気がして
wikiで調べたら載ってた。

公式サイトを見る限り、主役カップルの年齢が
20歳の大学生と17歳の女子高生から
29歳のフリーターと21歳の女子大生へと
若干上がったくらいで、あとはほぼ原作通りのようだ。

ちなみに配役は、翔太郎が嵐の大野智。絵里香が新垣結衣。
甲本が佐藤隆太。皐月は貫地谷しほり。
けっこう違和感がないキャスティングだなあ・・・
って思ってたらなんと! 花園周五郎は北大路欣也だった!
ソフトバンクのCM以来、すっかりネタキャラになってしまったね・・・


永井一郎さん、ご逝去 [アニメーション]

本日、声優の永井一郎さんの訃報に接しました。

世間的には「サザエさん」の波平役でお馴染みなのでしょうが
私的にはやはり「ヤマト」の佐渡先生と徳川機関長です。

  ナレーションの木村幌さん、スターシャ役の平井道子さん、
  古代進役の富山敬さんがはやばやと旅立たれ、
  ここ数年でも、沖田艦長役の納谷悟郎さん、
  真田志郎役の青野武さん、広川太一郎さん、小林修さんと
  オリジナルキャストの方々がたくさん鬼籍に入られてしまって
  淋しい思いでいっぱいです。
  ヤマト関係以外でも、アニメの草分けの頃から活躍されてきた
  個性派の声優さんたちが次々にいなくなってきて
  時代の流れを実感します。

永井さんは "ファースト・ガンダム" のナレーションでも有名でしたし
最新作の「ガンダムユニコーン」にも出演されてましたよね。
(たしか最終巻になる7巻でも出番があったはずでは・・・)

ハリー・ポッターのダンブルドア校長役で声を聞いた人も多いはず。
報道番組のナレーションもつとめていて、一昨日も耳にしました。
(さすがに「サザエさん」は最近見なくなってましたが・・・)

まさに「生涯現役」を貫かれたのでしょうね。
ご冥福をお祈りします。


宇宙戦艦ヤマト2199 第4巻 (コミック) [アニメーション]

昨日、ヤマトのことを記事に書いたおかげではないのだけど、
今日、むらかわみちお版コミック第4巻が入手できた。


宇宙戦艦ヤマト2199 (4) (カドカワコミックス・エース)

宇宙戦艦ヤマト2199 (4) (カドカワコミックス・エース)

  • 作者: むらかわ みちお
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/01/24
  • メディア: コミック



いままでの1~3巻も持っていて、
「よくできてるコミカライズだなぁ」って思ってたんだが、
この第4巻は今まで以上によくできてるように思う。

内容としては、アニメ版第7話の太陽系赤道祭から、
第8話のガス生命体との戦いまでが描かれている。

全170ページのうち、赤道祭に約120ページを割いて、
乗組員たちのキャラクターを掘り下げてある。
このあたりがまず一番の読みどころだろう。
もちろん、グリーゼ581での攻防も読み応え十分だ。


以下の文章はネタバレを含んでいるので
これから読もうという人はここでやめて、本屋さんへGo!

思いつくままに順不同で感想を挙げていくと・・・

まず、古代が徳川と沖田、二人の古参戦士を訪ねて
「戦争とどう向き合うべきか」を問う場面がいいなあ。
ここは、真面目な2199古代ならではのシーンじゃないかと思う。
旧作古代のキャラだと、ちょっとそぐわないような気がする。

あと、山本がかわいいなあ。
猫耳コスプレもいいんだが、古代と艦外作業をしながら、
火星のことや兄・明生のことを話すシーンもいい。
特に、地球と戦火を交えたマーズノイドとしてのこだわりについては
知りたかった人も多いんじゃないだろうか。

もちろん、古代と雪が展望室でお互いの心を通わせていくシーンも
しっかり描かれているので、ちゃんとバランス(?)も取ってる。


地球の家族との交信も、アニメ版では島の通信が泣かせたが
コミック版はそれ以上に涙腺が緩んでしまう。

佐渡先生と下宿のおばちゃんの会話もいいんだが、
旧作をうまく織り込んだ徳川と太助の通信、
南部の母親の言葉も泣かせる(親の涙はいつの世も悲しいものだが)。
意外なところでは、加藤が戦死した杉山の両親に報告をするシーンまで。

ガミラス側も負けてない。
ヤマトに最後の戦いを挑むシュルツもかっこいいんだけど
それよりましてガンツがいいんだなぁ。

戦死したヤレトラーを思い出して自らを鼓舞するシーンも、
シュルツを支え続けて、ともに最後を迎えるシーンも涙を誘う。
ガンツ、ホントおまえは漢だよ!

  39年も経って、この冥王星コンビに
  こんなに感動させられるとは思わなかったよ。


アニメ版の大枠は外さずに、アニメで描けなかったことや
旧作の台詞・シーンをうまく織り込んでいる。
「アニメの補完ではない」ってむらかわ氏は言ってるらしいが、
確かにその通りだろう。
独自のアレンジを盛り込んでいて、本編を見た人でも充分に楽しめる。
「おれならこう演出する!」っていう声が聞こえてきそうだ。


  あと、忘れてはいけないのは、ラストページ。
  このヒルデの可愛さ、破壊力は半端ではない(笑)。


とても楽しく、かつ感動させてもらった。
掲載誌は休刊になって、Web連載に移行してしまったが、
ぜひこのまま続けてもらって地球帰還まで描いてほしいなあ。

こういうものを読ませてもらうと、
つくづく小説版が残念に感じられてくるなあ・・・
もっとページ数に余裕を持たせて、
作家さんの自由にできる部分を増やしてあげてたら、
また別の2199の物語が読めたんじゃないかって思えるんだよね・・・

あと、最後に一言だけ。

こらぁ百合亜! お父さんはおまえを
そんなふしだらな娘に育てた覚えはないぞ~!(笑)


"古代進" と "キャプテン・カーク" と「ヤマト新作」 [アニメーション]

先日の記事で「スター・トレック イントゥ・ダークネス」を見て、
いろいろ考えることがあった、って記した。

いつになるか分からないけどそれについて書く、とも。

宣言してしまった以上は書かないといけないなあ・・・というわけで
ちまちま書き出したら、意外とすらすらと、
しかもけっこう大量に書けてしまったので載せることにした。

例によって、長いだけが取り柄の駄文なので、
ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・

09年の映画「スター・トレック」と13年の「~ダークネス」は、
40年以上続く有名シリーズ作品を、原点に戻ってキャストも一新、
設定などの新しい解釈も含めて再構築された作品だが、
これと同じような経緯で製作された作品が日本にも存在する。
昨年夏に完結を迎えた「宇宙戦艦ヤマト2199」である。

この二作品の比較を始めると、いろいろな切り口がありそうで
とても私の手に負えるものではなくなってしまう。

  だいたい「ヤマト」に関してはとりあえず全作見てるけど、
  「スター・トレック」に関しては、映画は全部見たが
  TVシリーズは話数が膨大すぎて、見ていない方がはるかに多い。
  TVに関しては、語る資格もなさそうだし。

なので、ここでは直近の「スター・トレック」と
その続編「~ダークネス」に絞って話をする。

この2作、見てみると
けっこう「ヤマト」を彷彿とさせる場面があるように思う。

たとえば、「スター・トレック」(09)の序盤では、夕闇迫る中、
荒野の真ん中に設置された造船ドックで建造中のエンタープライズを、
宇宙艦隊アカデミーに入隊する前のカークが見上げるシーンがある。

ここで私は、ヤマト第一話ラスト、
いわゆる「夕陽に眠るヤマト」のシーンを連想したんだ。

カークは、眼前にある宇宙船に、将来自分が乗り込むことも、
ましてやその指揮を執るようになることも知らない。

ヤマトの場合、古代と島はそもそも自分たちが見ているものが
宇宙船であることすら知らないんだけどね。

「~ダークネス」中盤では、
ワープ中の亜空間での戦艦同士の戦いが描かれる。
これも「2199」第25話にあった。

  もっとも、「~ダークネス」の方には、
  使用できる武器に制限があるようには見えなかったけどね。
  ちなみに亜空間航行中の戦闘を初めて描いたのは
  「伝説巨神イデオン」だったように記憶してる。

さらに、「~ダークネス」終盤では、エンタープライズが地球近傍で
デカブツの敵艦(サイズはエンタープライズの2倍程度だが)の攻撃を受け、
どんどんボロボロになっていくシーンがある。
でまた、ご丁寧にも敵艦の艦体色は黒というから念が入ってる。
見方によってはこれもずいぶん「ヤマト」っぽい。
しかも、エンタープライズがあんなにズタボロになったのは
シリーズ中でも珍しいんじゃないかな。

  まあ、未来世界を舞台に
  宇宙船が単艦で飛び回ってドンパチする話を作れば、
  似たようなシーンが出てきてしまうのは、
  ある程度仕方ないのかとも思うけど。

でも、ここで私が書きたいのはそういうところではなく、
それぞれの主人公についてだ。表題にもあるとおり、
それぞれのメインキャラクターについて考えてみたい。

「古代進」とは、言わずと知れた
「宇宙戦艦ヤマト」シリーズの主人公であり、
「キャプテン・カーク」もまた
「スター・トレック」オリジナル・シリーズの主役である。


まず、キャプテン・カークである。
「スター・トレック」(09)での登場時は、
父親のこともあってか、やたらとケンカっ早い荒んだ生活をしていて、
この性格はアカデミー入隊後もあまり変わらず、
理性よりも感情と直感で動く人物として描かれている。
スポックをはじめ乗組員たちと派手に激論を交わし、
エンタープライズを留守にして
自らすすんで危地に飛び込むことも日常茶飯事。
「~ダークネス」でも、自らの命を顧みず、
艦とクルーを守るために奮戦する。

  昔のTVシリーズのカークは、
  もう少しおとなしかったような気がしていたんだが、
  79年からの映画版でもけっこう無茶苦茶な指揮ぶり、
  戦いぶりを披露していたような気がするので、
  オリジナルの頃からカークの設定はあまり変わっていないんだろうね。
  落ち着いたイメージは、たぶんに吹き替えを担当した
  矢島正明氏の声質によるものだってwikiにもあったし。

さて、一方で「古代進」はどうか。
第一作であるイスカンダル編で登場したときは、
両親と兄を殺したガミラスへの復讐に凝り固まり、
直情径行を絵に描いたような性格であった。
その後、沖田艦長や島、真田など仲間とのふれあいを通して
次第に成長していき、艦長代理を経て、
正式にヤマト艦長を拝命するまでになる。
しかし過激な性格はあまり直らず、
20年後の「復活編」でも自ら艦載機を操縦したり、
大破した状態の戦艦で敵艦に突っ込んで行ったり、
挙げ句の果てには単なる前線司令官の身でありながら
他の星系国家に戦争をふっかけたりと、
言ってしまえばかなり無茶苦茶な人物である。

新生カークも、旧作古代もおよそ沈着冷静とはほど遠い人物なのだが、
「キャラ立ち」という意味ではどちらも抜群の存在感を示していて、
彼らの行動がそのままストーリーを引っ張っていく原動力にもなっている。

ここまで書いてくると分かると思うが、
要するに新生スター・トレックのカークが、
私にはかなり「旧作の古代」に重なって見えるのだ。


しかし、これがリメイク版ヤマトでは、事情はかなり異なる。
「2199」での古代は、時として激昂することはあっても
基本的には落ち着いた性格で、自分の感情を抑えることのできる
「大人」として描かれている。
これはこれで演出意図があっての変更だし、
大人の古代も私は好きだ。何せ今までが今までだったからね。

ただ、それに伴い "主役" の座が沖田に移ってしまい、
旧作古代の直情径行さは山本や南部などの
他のキャラが受け継ぐことになった。
結果として、旧作に比べると「2199」古代は
かなり "存在感の薄い" キャラになってしまったことは否めない。
位置づけも "脇役筆頭" くらいになってしまっている。

せっかくの活躍の機会だった23話でも、
尺の問題からか中途半端なものに終わってしまい、
おそらく多くのファンが失望したことだろう。
(ネットでもかなり叩かれていたしね。)
旧作よりも、描かなければならない情報量が飛躍的に増えたという
事情が背景にあるとしても、だ。

「2199」に続編は必要ない、って
このブログのあちこちで書いてる私だが、
不満をひとつだけあげるとすれば、やはり古代の扱いだと思う。
(デスラーの扱いに関しても不満はあるんだけど、
 古代ほどではないんだな、これが。)

そんな "いささか残念" な古代くんに復権の機会はあるのだろうか。

今年、「宇宙戦艦ヤマト2199映画版(仮)」の上映が予告されている。
内容については未だに正式な発表はないが、
どうやら「2199」の続編で新作ストーリーになるらしい。
"沖田亡き" 続編の世界において、
古代は「ヤマト」の中心に、そして「ドラマ」の主役に
今度こそ躍り出ることができるのだろうか?

「2199」古代は、最後までヤマトにおける戦術長という一士官に過ぎず、
戦士としての活躍は描かれたが、それ以上のものではなかった。
(ユキとの恋愛要素は旧作以上に描かれたが)
つまり指揮官としては描写は全くといっていいほど皆無。

しかしこれは見方を変えれば、古代というキャラには
まだまだ "余白" がたくさん残されているとも言える。
指揮官・古代としての成長はこれから、のはずなのだ。

「スター・トレック」では、
一介のチンピラ青年だったカークが、 "キャプテンになる" までが、
続編の「~ダークネス」では、
さらに "キャプテンとはどうあるべきか" を巡って
スポックをはじめとするクルーや悪役の "ハリソン" との関わりの中で
カークが成長していく姿が描かれた。


「2199新作」では、「スター・トレック」と同じことが
やれるとは思わないし、やる必要もないけど、
古代の "存在感" を確固としたものにして欲しいと願うところだ。

「2199」での描写から考えれば、新作で古代が
いきなり副長や艦長代理になることは、まずないだろう。
土方なり山南なりが新艦長で、
古代はその下での戦術長というのが順当なところか。
(新作の時代が「2199」の10年後とかの設定でない限りは。)

でも、一士官からの出発でけっこう。
古代が "指揮官へと踏み出す一歩" を、
"未来のヤマト艦長としての器の片鱗" を、見せていただきたい。

  もしそれが無かったら、
  2199肯定派の私でも、ブーイングの声を挙げるだろうなぁ・・・

もっと言うならば、
それさえ実現すれば、私は充分に満足して映画館を出られるだろうし、
それが "私にとっての「2199」の完結" になるだろう。

なんだかんだ言っても、最後は結局「2199新作」への
要望だったり願望だったりに落ち着くんだね・・・

最後に余計なことをひとつ。
この "リブート" された新生「スター・トレック」シリーズ、
伝え聞くところによると、一部の古参ファンからは
評判があまり芳しくないのだという。

なんだろうね、やっぱ
「あたしのカークはあんなに脳筋じゃない!」とか
「スポックが激高して殴りかかるなんて信じられない!」とか
「俺のウフーラはあんなにフェロモンをまき散らす女じゃない!」とか
「スールーはあんな大立ち回りをするような武闘派じゃない!」とか
いろいろ文句を言いたい人がいるんだろうなあ・・・

このへんも「2199」と似てるね。


羊の秘 [読書・ミステリ]

羊の秘 (祥伝社文庫)

羊の秘 (祥伝社文庫)

  • 作者: 霞 流一
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2010/06/11
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

自分が見た夢の内容をお互いに "プレゼン" し合うという
風変わりなサークル、「夢視の玉」(ゆめみのたま)。

そのメンバーの一人が土蔵の中で殺される。
身体を白い紙で覆われ、口の中には矢印形の金属を差し込まれて。

成り行きで事件に関わることになった
アンティークショップのマスター・邦彦は、
友人の志恵・世太の姉弟とともに関係者を訪ねるうちに
メンバーの女性が事件の直前に自殺していたことを知る。

さらにメンバーが密室状態で殺されていき、
それぞれの死体に施された数々の "装飾" は、
ことごとく「羊」を暗示するアイテムだったことが判明する・・・


作者はいままで動物をモチーフにした "バカミス" を多数発表してきた。
"バカミス" とは、(私解釈では) "脱力系ユーモア・ミステリー" のこと。
狸に始まり狐、馬、鹿。哺乳類以外では蟹・蛸・鰐とかも動員して。
この作品は題名で分かるように「羊」。
なので、過去作のようなお笑い系を想像して読んだんだが、
今作はいささか雰囲気が異なる。

エキセントリックなキャラは多いし、会話もコメディ調なんだが、
物語が進むにつれて明らかになってくる事件の背景はかなり凄惨で、
ホラーっぽい呪術的要素まで出てくると、もはや笑うに笑えない・・・

ミステリとしての土台はけっこうしっかりしてる。
終盤で犯人を指摘するロジックも良く出来てるし、
島田荘司ばりの物理トリックが炸裂する密室の謎解きも面白いんだけど、
面白すぎて「いくらなんでもそれはないだろう」状態なのが玉にキズ。

巻末の解説によると、作者はいままでのユーモア路線から
新境地開拓を目指して作風を変えつつあるらしい。
この作品はその模索のひとつにあたるのかも知れない。

ただ、私には(この作品に限って、だけど)
それがうまくいっているとはちょっと思えなかったかなぁ。


そんなこんなで、普段なら星3つくらいの作品なんだけど
ちょっと減点して2つ半。


スター・トレック イントゥ・ダークネス [映画(レンタル)]

スター・トレック イントゥ・ダークネス 3D&2Dブルーレイセット(2枚組) [Blu-ray]

スター・トレック イントゥ・ダークネス 3D&2Dブルーレイセット(2枚組) [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • メディア: Blu-ray



先週末、ぽっかりと時間が空いたもので、
(その原因のひとつは、前にも書いたHDDの不調だったりするが)
映画でも見ようと思ってツタヤに行った。

そこで見つけた新作レンタルの中にあったのがこれ。
そういえば見てなかったなあ・・・と思って借りてきた。

 1979年公開の「スター・トレック」をはじめ、映画版は全部見てる。
 「スター・トレックVI 未知の世界」(91)までは、
 ちゃんと映画館へ行って見ていた。
 その後生活が激変し、映画館へ行く回数も激減してしまい、
 (その理由のひとつはかみさんをもらったことだが)
 「ジェネレーションズ」(94)以降はずっとレンタルで済ませてきた。

  ちなみにTVシリーズの方は、The Original Series(66~69)は全話見た。
 (ハヤカワ文庫から出てたノベライズも全巻買ったし)
 The Next Generation(87~94)は最初のうちはけっこう見てたんだけど、
 後の方はほとんど見てないなあ。
 Deep Space Nine(93~99)と Voyager(95~01)については、
 2~3話くらいかなあ。
Enterprise(01~05)に至っては何とゼロだ。

  書いてみて思ったけど、映画版は皆勤だが、
 TVに関してはあまり熱心なファンではありませんね・・・


閑話休題。結論を書こう。

「イントゥ・ダークネス」は、とても面白かった!
正直言って、映画館の大スクリーンで見なかったことを後悔したよ。

前作「スター・トレック」(09)で、
物語の時間軸を主人公・カークの青年時代へと戻して、
"リブート" された新生 "スター・トレック世界" における第2作。

続編なんだけど、ストーリーは独立しているので
前作を見ていなくても充分に楽しめるようにできてる。
もちろん、前作を見ていた方がより楽しめるし、
もっと言えば79年からの映画版を見てきた人なら、さらに楽しめる。

 旧作(とここでは書かせてもらうが)からのキャラやネタが
 随所に仕込まれていて「おお、そうきたか」と驚くやら唸るやら。

新しいファンでも楽しめるし、古くからのファンでも楽しめるという
上手な作りになってると思う。

前作では、酒とケンカに明け暮れる不良青年だったカークが、
パイク大佐の導きで宇宙艦隊アカデミーへ入隊し、
カークの父の仇でもあるロミュラン人ネロとの戦いを経て
U.S.Sエンタープライズのキャプテンになるまでが描かれた。

今作では、惑星連邦への復讐を目論む
謎のテロリスト・ハリソンとの戦いが描かれる。

ハリソンによる宇宙艦隊司令部襲撃により、
父親代わりともいえる恩人・パイク提督を失うカーク。
逃亡したハリソンを追い、カークはエンタープライズとともに
クリンゴン帝国領にある星系へと向かう。

物語はそこから二転三転する。
最新SFXたっぷりのアクションと戦闘シーンが満載で、
中盤からはほとんどジェットコースター・ムービー状態。

おなじみの "キャラたち" も登場したり、
旧作の "あのシーン" がシチュエーションを変えて再現されたりと、
昔からのファンへのサービスも忘れてはいない。

私のようなオジサンには、ちょっと涙腺が緩むシーンも。

ホント、面白いなぁ・・・って思いながら見ていた。

映画のラストで、物語はこの後、
最初のTVシリーズで描かれた時代に入ることが示される。

ぐるっと時間軸が一周して原点に戻ったわけだが、
この "新生スター・トレック" は、
オリジナルの世界とは "パラレルワールド" (並行宇宙) の関係にある。
つまり、これから先は、まさしくオリジナルのように "未知の世界" 。

この新生シリーズがこの作品で終わるのか続くのか分からないが
(私としてはもっと続いて欲しいけど)
新旧のスター・トレックのファンに対して
"最後のフロンティア" はまだまだ続くよ! って示してくれた、
とても「嬉しい」作品になってると思う。

  あんまり面白かったので、前作「スター・トレック」(09)も
  また借りてきて見てしまったよ。


うーん、ディスク買おうかなあ・・・
いま、本気で悩んでる。
先週のHDDでの出費
が無ければなあ・・・


あと、この作品を見ていて、思うことは他にもいろいろあったんだが
これは改めて稿を起こすつもり。

いつ書けるかは分からないけど・・・

 


HDDご臨終 & 買い換え [日々の生活と雑感]

14日頃かな。
メインマシンのデスクトップPCを使っていたら、
どこからか「カッタン、カッタン」って異様な音が聞こえてきた。
どこからなんだろうって出所を探したら、PCに外付けのHDDからだった。

あわてて確認してみたら、ドライブは認識してるんだけど
データの読み書きが異常に時間がかかるようになってた。
これは、壊れかかってる・・・ということか?

このHDD、容量は500GB。
買ったのは・・・5年くらい前? 7年くらい前?
あれ・・・忘れてるよ。
今のデスクトップに買い換える前のPCを使ってる頃に買ったと
思ったんだが、ひょっとするともう一台前の頃だったかも知れない。

PCを買い換えたときは、メールやら重要なデータやらを全部コピーして、
それをそのまま新PCに接続するだけで、
引っ越し作業がずいぶん楽だったことを覚えている。

現在は主にデータのバックアップと作業領域として使ってる。
あと普段はまず参照することのないデータが60GBくらい。
でも、参照頻度は低くても無くなるのは惜しい。
あわてて本体内のHDDの空き領域にコピーを始めた。

  昔、ツタヤで借りてきたCDから吸い上げたデータとかなので
  無くなっても困りはしないんだが、
  また借りてくるのも面倒くさいしねぇ。
  中には、もう置いてないCDもあるだろうし。
  形式もmp3とかじゃなくてwavだからサイズもでかい。

  2000年代初めくらいに使ってたPCはHDD容量に余裕が無くて、
  DVD-RAM(最近めっきり見かけなくなったメディアだよねぇ)
  に入れてたんだが、枚数は増えるし、アクセスが遅いし、
  なにより曲を探すのが面倒くさい。
  そこで、外付けHDDを買ったのを機に、全部入れてしまった。

  見かけないメディアと言えば、私はMOディスクが好きで、
  一時期愛用してたんだけど、結局メジャーな存在にはなれなかったね。
  DVD-RAMはまだ売ってそうだがMOはどうなんだろうと思って
  wikiで見てみたらドライブを製造してるのはロジテックのみ、
  ディスクを製造してるのははソニーのみだそうな。
  ITの歴史は、こんなふうに競争に敗れて消えていった
  (MOはまだ完全に消えてはいないみたいだけど)技術の
  オンパレードなんだよなあ・・・閑話休題。

壊れかけの私の外付けHDD、上に書いたように異常に読み出しが遅い。
普通だったら3分くらいで終わるデータが10分近くかかることも。
それでも、読めるだけまだ良かったね。

結論から言うと、データの吸い出しが98%くらいまで終わったところで、
ついにHDDからの読み出しが出来なくなってしまった。
電源ランプは点灯しているんだが、ドライブを認識してくれない。
いろいろいじってみたんだが状態は改善せず、とうとうギブアップ。

まあ、98%救えれば御の字かなあ。
うちのHDD君は、最後までよく頑張ってくれたよ。

さて、外付けHDDが無いとバックアップがとれない。
それはやっぱり困る。
そこで昨日、近所のヤマダ電機(もう我が家はお得意さん!)で
新品のHDDを買ってきた。
容量については、500GBではそろそろ窮屈に感じていたので
もっと増やそうと思っていた。
1TBではちょっと少ないかなあ・・・3TBじゃ多すぎるかなあ・・・
というわけで2TBにした。あまり深く考えてない。

で、いま本体内のデータのバックアップを取ってる。
終わったら、旧HDDから吸い出した分も入れて、
やっと原状復帰かな。

やれやれ、予想外に手間と時間とお金がかかってしまった。

前に書いた、iP9910に代わるプリンタもまだ買ってない。
というか、予算をこっちに回してしまったから、当分買えないかなぁ・・・


アイスマン。ゆれる [読書・SF]

アイスマン。ゆれる (光文社文庫)

アイスマン。ゆれる (光文社文庫)

  • 作者: 梶尾 真治
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/10/13
  • メディア: 文庫



評価:★★

まず、変わったタイトルの説明が必要だろう。

"アイスマン" とは、 "氷人" を英語にしたもの。
では、 "氷人" とは何か。
正式には "月下氷人" というらしいが、中国の故事から来た言葉で、
縁結びの神さまのことだという。
転じて、男女の縁の仲立ちをする人を指し、
仲人や媒酌人のことをいう場合もあるとか。

 不勉強なもので、全く知りませんでした。

この物語のヒロイン、知乃(ともの)は、男女を結びつける力がある。
事の起こりは、知乃が高校生の頃に祖母が亡くなった時。
葬儀を終えて、母が形見分けで文箱を一つもらってきた。
その中にあった<傀儡秘技>と題された古文書。
そこに、男女の恋情をかき立てる "呪い" (まじない)が記されていたのだ。

知乃が、その呪いを嫌いな高校教師に試してみたら、
なんとバッチリ効いてしまってびっくり仰天。
しかし、その呪いを行った直後から、知乃は高熱を出して寝込んでしまう。
この呪いには、 "術者の命を削る" という "副作用" があったのだ。
(二度三度と行うと、やがて生命の危機が訪れる。)

そして15年後。
成長してOLとなって働いている知乃だが、
病弱な母の世話に明け暮れて、いつの間にか三十路に突入。
半ば結婚をあきらめかけていた知乃だが、
ある日、高校時代に淡い思いを寄せていた同級生、東村と再会する。
彼は東京の大学を卒業し、外資系の証券マンとなっていた。
しかも、未だ独身!

親友の鮎美を交えて3人で過ごしていくうちに、
どんどん東村に惹かれていく知乃だったが、
鮎美もまた、東村への思いを募らせていた・・・


タイトルに「ゆれる」とあるが、
まさに知乃の「ゆれる想い」が綴られていく。

婚期を逃しつつあるアラサー女子の焦りと諦念、
母親との介護を巡る葛藤、東村への恋慕の情、
一人の男を巡って、親友との板挟みとなる苦悩、
そして、呪いを実行することへの恐怖心・・・

ちなみに、術者本人は呪いの対象外となってしまうので、
呪いによって東村の恋愛感情を知乃自身へ向けることはできない。


前に読んだ「あねのねちゃん」は、
読んでいたら唐突に "中国の秘術" だかが出てきて、
物語の流れからしてかなり違和感があったのだけど
今回の "山本家に伝わる秘法" では、なぜかさほど違和感がなかった。
なぜだろう?


東村くんが、ホントに "画に描いたような" 好青年として描かれていて
娘がいたら嫁にやりたいくらい(笑)である。
ヒロインの知乃ちゃんが、これまたとても優しく健気な女性で、
好感の持てるキャラになってる。
知乃ちゃんには、何としても幸せをつかんでほしいなあ・・・
って思って読んでいた。


小説というものは、読んでいる人はほとんど
程度の差はあれ、なんとなく「こうなるんじゃないかな」って
結末の予想をたてて読んでると思う。
(結末近くまで読みすすんでも、全く予想がつかない作品もあるけどね。)


この物語についても、読者はある予想を持つんじゃないかな。
そしておそらく、その予想は半分は当たって、半分は外れる(と思う)。
(少なくとも、私はそうだった。
 まあ、完璧に当てられたら作家さんが困るだろうけど。)

そして、予想というのは
「良い方に外れる」か「悪い方に外れる」かが問題で、
このラストは、私にとっては「悪い方に外れたなぁ」って感じた。

ネタバレになるので、
具体的にどこがどうって書けないのがもどかしいんだけど・・・

もちろん、評価は人それぞれなので、
このラストが「すばらしい!」って感じる人もたくさんいるだろうし、
それを否定しようとも思わないんだけど、
少なくとも私の好みには合いませんでしたねぇ・・・


ブラックアウト [読書・SF]

ブラックアウト (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

ブラックアウト (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

  • 作者: コニー・ウィリス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/08/08
  • メディア: ペーパーバック



去年の11月から12月にかけて40冊くらいの本を読んだんだけど、
300ページくらいの薄めの本が多かった。

その反動なのかどうか分からないんだが、
とにかく長い小説を読みたくなった。
で、我が家にある "積ん読" 状態の本の中で
一番長いものを引っ張り出してきた。

4日あたりからちまちま読み始めて、
途中で他の本と並行して読んだりしたこともあって、
やっと今日読み終わった。10日間くらいかかったなあ。

この本は新書版・上下二段組で760ページくらいある。
文庫換算で1000ページを超えるだろう。
しかも、これで "前編" なのだ。

ちなみに "後編" は「オール・クリア」というタイトルで、
"前編" より長い。
長すぎて一冊に収まらず、「1」「2」との二巻本になってる。
"後編" だけで新書版で約1000ページという一大長編。

大森望氏の「訳者あとがき」によると、
前後編合計で原稿用紙3500枚分くらいになるらしい。
普通の本の6冊分くらいに相当する文章だ。

そんなこんなで読み始めたのだが、読み始めて感じること。
とにかく、厚い! 重い!
厚みが3.5cmくらいあって持ちにくいし、
重いので、手に持って読んでると手が疲れる。

 私は、人よりも手のひらが小さめな人間なので、
 (たぶん、私よりかみさんの方がちょっぴり手が大きいと思う)
 持ちにくいのはそれも理由のひとつかも知れないが。

アメリカでは、1000ページくらいまでの小説なら
平気で一巻本にしてしまうらしいが、
彼らはみんな、手が大きくて力持ちなんだろうねえ。


余計な話はやめて内容に入ろう。

2060年。
タイムマシンが実用化され、大学管理の研究施設となっている時代。
それを使って、オックスフォード大学の史学生3人が、
歴史研究の一環として第二次世界大戦中のイギリスへと送り込まれる。

ポリーはデパートの売り子となって、
大空襲の元でのロンドン市民の生活を観察するために。
メロビーは "アイリーン" と名乗り、
ロンドン郊外の領主館のメイドとなって、
空襲を逃れて疎開してきた児童たちの観察をするために。
マイクルはアメリカの新聞記者 "マイク" として、
史上最大の撤退作戦である「ダンケルクの戦い」での、
民間人の英雄を探すために。

ちなみに、タイトルの「ブラックアウト」とは、
空襲時に燈火をすべて消してしまう "完全消灯" のことで、
戦時下の燈火管制を指している。


この作品でのタイムトラベルは、目的時空のある一点に、
 "降下点" と呼ばれる、いわば "トンネル" のようなものを開き、
ここを通ることによって時代を行き来する。

学生たちは、一定時間ごとに開くこの "降下点" を通って2060年に戻り、
その都度、進行状況を定期報告することになっていた。 

しかし、到着した3人には思いも寄らない事態が次々に起こり、
さらに、3人とも自分の "降下点" が使えない状況に陥ってしまう。

過去へ送り込まれた史学生との連絡が途絶えた場合は、
ただちに "回収チーム" がやって来るはずなのだが、
待てど暮らせど救援隊が来る気配も無い。

そんな原因不明の "歴史の島流し状態" になってしまった3人の学生が
未来へ帰る方法を探して奮闘していく姿が描かれていく。


最初の1/3くらいは、あまりストーリーが動かない。
ビニーとアルフの姉弟をはじめとする悪ガキどもに振り回される
アイリーンの日常生活や、
1940年に出発する準備で忙しいポリーの様子とかが延々と描かれてゆく。

イギリス沿岸で、撤退してくる部隊を
観察するだけだったはずのマイクが、
いつのいまにか砲弾飛び交うダンケルクの戦場へ
飛び込む羽目になってしまうあたりからかな、
だんだん面白くなってくるのは。

このあたりまでくると、3人の学生にもそれぞれ思い入れが出てきて、
登場人物の関係や性格も把握できて、
ストーリーに没頭できるようになったし。


読んでいてふと思ったのは、歴史の勉強のためとはいっても、
2060年の未来人が、1940年の生活に馴染むのはたいへんだろうなあ・・・
ということ。

言うことを聞かない悪ガキどもを何十人も相手にしてるアイリーンとか、
がみがみうるさい下宿のおばさんの作る超マズい飯を食べながら、
厳しい上司の下で働くポリーとか、
つくづく、よくできてるお嬢さんたちだなあ・・・って思ってしまったよ。

例えば2014年の日本人が、120年前の日本の生活に馴染めるかなあ。
1894年っていったら、日清戦争の頃。
少なくとも私には無理だねぇ、絶対に。


さて、これから "後編" である「オール・クリア」に向かう。
これもまた長いんだけど、今度は二分冊で、
どちらも500ページくらいの厚さ。
そうだよねえ。手に持つなら、これくらいが限度だよねえ。