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「夏至の森」 [読書・ファンタジー]

夏至の森 (創元推理文庫)

夏至の森 (創元推理文庫)

  • 作者: パトリシア・A・マキリップ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2011/01/21
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

ストーリー的には前作「冬の薔薇」とほとんどつながりはないので、
この巻だけ読んでも大丈夫ではあるけど、
読んでいおいた方が、物語の背景がよりわかりやすいかなとは思う。

「冬の薔薇」から150年くらいあとかなあ。前作の舞台でもあった村は、
現代になってもケータイの電波がちょっと届きにくいところになってる。

ヒロインのシルヴィアは、前作の主人公ロイズとコルベットの6代くらい後の子孫。
成人して村を出て、都会で働いていたシルヴィアは、
祖父の葬儀のため、7年ぶりに村に帰る。

そこで彼女が知る、祖母をはじめとする村の人々が代々伝えてきた秘密とは・・・
そしてシルヴィア自身もまた、ある秘密をかかえて生きてきたことが明かされる。


時代は変わっても、村の中は変わらない。
いや、前作よりさらに妖精や魔法の世界に近づいてしまったんじゃないかと思う。
ただ、派手なストーリーではなく坦々とすすむので、
途中で読むのがちょっと億劫になる。
でも、やっぱり読んじゃうんだよね最後まで。さすがマキリップ。


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「花と流れ星」 [読書・ミステリ]

花と流れ星 (幻冬舎文庫)

花と流れ星 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 道尾 秀介
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2012/04/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★

霊現象探求家の真備とその助手の凛、作家の道尾が登場するシリーズの短編集。

長編はちょっと伝奇的というかオカルトっぽいところもあるんだけど
収録されている5作は、どれも本格度が高く、私の好みである。
(別に長編が嫌いというわけじゃないんだけどね。
 ただ超自然的なものを肯定しちゃうと何でもありになってしまうから・・・)

内容的には「日常の謎」以上「殺人事件」未満、って感じかな。

聞くところによると、作者は最近ミステリ以外のものも書いているらしい。
それはそれで、たぶん文庫で出たら買ってしまうんだろうが
こういう本格ものを書ける才能があるんだから、
もっとたくさんミステリを書いて欲しいなあ。

でも、このシリーズは今後も書いていく意志はありそうなので、嬉しい限り。
真備と凛の仲もどう変化していくのか興味津々なんだが
(凛の気持ちが道尾の方に向くことはまあなさそうだし)
そのへんも含めて、次作に期待。


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「ARIEL 08」 [読書・SF]

ARIEL08 (ソノラマノベルス)

ARIEL08 (ソノラマノベルス)

  • 作者: 笹本 祐一
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2010/01/20
  • メディア: 新書



大長編シリーズもいよいよ8巻目。
残り2巻と言うことでそろそろ話をまとめにかかってきたか、というところ。

地球周辺宙域に、侵略会社の遊撃艦隊と銀河帝国の第三艦隊が対峙している状況で、
一触即発の危機を回避するべく立ち上がったのが
女子高生三人組というこのギャップ。

この巻の前半はもう完全に彼女らが主役。
8巻から読み始める人はまずいないとは思うが、1巻から読んできている私でさえ
主役が誰だかわからなくなるくらいだから、彼女らの存在感は半端ではない。
最初の頃は何となく和美の背景にいるモブキャラかと思っていたが
どんどん大きく成長してきて、もう彼女らなしでは話が進まないんじゃないの?

はじめからそのつもりで登場させていたんだったらスゴイ構成力だと思うんだけど
後書きを読む限りそんな雰囲気はかけらもないしねぇ。

後半になって、やっとSCEBAIやらARIELの出番がやってきて
ああ、そういえばこんな話だったよな、と思い出す。


あと2巻でどういうふうにこの大風呂敷を畳むのか、楽しみではあるけどね。


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「豪華客船エリス号の大冒険」 [読書・ミステリ]

豪華客船エリス号の大冒険 (創元推理文庫)

豪華客船エリス号の大冒険 (創元推理文庫)

  • 作者: 山口 芳宏
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/02/11
  • メディア: 文庫



評価:★★★

ダンディな荒城と左手が義手の真野原、二人の探偵が活躍するシリーズ第二作。

荒城の元へ訪れた依頼人が殺され、豪華客船エリス号の招待状が残される。
事件解決のためエリス号へ乗り込んだ荒城と弁護士・殿島だったが、
船には伝説の犯罪者・夜叉姫もまた乗り組んでいた・・・。

ミステリなんだが、前回にもまして冒険活劇の色が濃くなった。
前半はどちらかというとユーモアミステリみたいにほほえましい光景が続くんだが
後半に入ると一転して殺人・爆発・難破・漂流と
インディ・ジョーンズみたいになってくる。

昔懐かしい明智小五郎(+少年探偵団)vs怪人二十面相みたいに
へたに犯人を当てようなんて思わずに、頭を空っぽにして物語の行方を追うのが
この作品の正しい(楽しい?)読み方じゃないかな。
(作者も犯人を隠すことにはあまり注力していない感じもするし)

とにかく楽しい作品なのは間違いないし、この手の作品はほとんど見当たらないので
作者にはがんばって書き続けてほしいなあ。


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納谷悟朗さん死去 [アニメーション]

俳優(「声優」という言葉は嫌いだったらしいですね)の納谷悟朗さんが亡くなられた。

「ルパン三世」の銭形警部役やチャールトン・ヘストンの吹き替え
(真っ先に「猿の惑星」が思い出されるなんてトシが知れてしまうなぁ)
で有名な方だったが、私にとってはなんといっても
「宇宙戦艦ヤマト」の沖田艦長役の人。

沖田十三の人物像に「厳格な父」や「責任ある大人」を感じた
同世代の人は多かったのではないか。

私自身、沖田艦長はある意味、理想であった。
「沖田のようにはなれない」とは思いつつも
「少しでも近づきたい存在」ではあった。

そういう風に感じさせることができた、素晴らしい役者さんであった。

銭形や沖田以外にも多くのキャラクターを演じてこられて
(ちょっと思いつくだけでも
 「仮面ライダー」のショッカー首領とか「ゴッドマーズ」のズール皇帝とか)
まさにアニメ・特撮文化の隆盛を導いた一人でもあろう。

ルパン役の山田康雄、古代進役の富山敬、真田志郎役の青野武さんと
懐かしい方々がどんどん鬼籍に入られて、納谷さんも仲間入りされてしまった。

なんだか無性に寂しさを感じる日だった。

納谷悟朗さんのご冥福をお祈りします。

合掌。


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「ニッポン硬貨の謎」 [読書・ミステリ]

ニッポン硬貨の謎 エラリー・クイーン最後の事件 (創元推理文庫 (Mき3-6))

ニッポン硬貨の謎 エラリー・クイーン最後の事件 (創元推理文庫 (Mき3-6))

  • 作者: 北村 薫
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2009/04/20
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

名探偵エラリー・クイーンが日本にやってきて、
滞在中に起こった事件を解決する・・・という設定。
ミステリファンならいかにも喜びそうなシチュエーションだね。

ただ、彼が今回立ち向かうのは幼児連続殺害事件。
いわゆるシリアル・キラーで、被害者間に直接の関係は無い。
しかしそこは犯人からすれば一定のルールがあるわけで
それを見破るエラリーの慧眼・・・というわけだ。

個人的にはやっぱり、国名シリーズみたいなオーソドックスな
謎解き・犯人当てに挑んで欲しかったなあとも思うが・・・
いきなり来た外国でそれは難しかろうな。

小説なんだけど、作中にはエラリー・クイーンに関する蘊蓄がいっぱいだったり
作品に関する評論みたいな文章もあり、
さらに「五十円玉二十枚の謎」への作者なりの解答もあったりして。
ちょっぴりカオスな感じも。

ミステリ的にはちょっと物足りないけど、
クイーンのファンにはたまらない作品なんだろうなあ。


北村薫と言えば、「円紫さんとわたしシリーズ」って完結したんだっけ?
主人公の女子大生である「わたし」が大学卒業して社会人になって
なんとなくイイ感じの男性と知り合ったあたりで終わってたような気がするんだが。

ちなみに、どうでもいいことなんだけど、「わたし」が通ってた女子高って、
かみさんの母校がモデルじゃないかと勝手に思ってるんだけど。


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「天使のナイフ」 [読書・ミステリ]

今日は午後に外出する予定だったんだけど
なんだかものすごく風が強くて・・・
結局、家に籠もっている。
そんなわけで(どんなわけだ)ブログ更新。 


天使のナイフ (講談社文庫)

天使のナイフ (講談社文庫)

  • 作者: 薬丸 岳
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/08/12
  • メディア: 文庫



評価:★★★☆

主人公・桧山は、三人の少年に妻・祥子を殺された。
それも、わずか生後5ヶ月の娘・愛実の前で。
しかも、少年たちはみな犯行時13歳。
つまり刑事罰の対象とならなかったのだ。

4年後。桧山は幼い娘を抱えて懸命に生きていた。
雇われオーナーとはいえ、一軒の店を任されて
アルバイトたちに囲まれながら精一杯働く日々。
愛実も祥子の友人だった保育士・みゆきにすっかりなつき、
事件の暗さを感じさせずに育っているかに見える。

そんな彼に降りかかってきた殺人犯の疑惑。
犯人だった少年の一人が、桧山の店のすぐ近くで殺されたのだ。

桧山は自分にかけられた疑いを晴らすべく、一人で事件を探り始める。
残りの二人の少年の現在を追っていくうちに、
思いもよらない真実が現れてくる・・・・

第51回江戸川乱歩賞受賞作。
少年犯罪という重いテーマを掲げているんだが、
読み始めるとページがどんどん進む。
「読ませる力」は充分ある作品。

終盤では、事件の裏に仕組まれた背景が明らかになるが
正直なところ、登場人物間の「××と△△には、過去にこんなつながりがあった」
的な展開がちょっと多すぎて「いくらなんでもそりゃできすぎ」な感も。

いささか肩に力が入ってるかなあ、とも思うけど
新人の第一作としては出色の出来なのは間違いない。

物語的に続編が作られることはないと思うが、
短編でもいいので、主人公たちのその後が知りたいと思った。
桧山親子と、二人を取り巻く人々の生活はずっと続くのだから。

そして、そう思わせるくらい、
登場人物が生き生きと描かれていたと言うことなんだろう。


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「第六ポンプ」 [読書・SF]

第六ポンプ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

第六ポンプ (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

  • 作者: パオロ・バチガルピ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/02/09
  • メディア: 新書



評価:★★☆

最近の海外SFというものにとんと縁が無くなってしまった。
大学時代から結婚するまでの10年ちょっとの間は、
ハヤカワ文庫SFなんかをそこそこのペースで読んでたんだけど
(そういえばサンリオSF文庫なんてものもあったよなぁ)
ここ20年くらいすっかりご無沙汰してしまった。

それが、去年の暮れに「リヴァイアサン」シリーズを読んで、
「いまの海外SFも面白いじゃん」って思ったので、ちょっと読んでみようと思った。

でも、何から読むのかが問題。
ただでさえ国内作品が大量に積ん読状態になってる私の読書環境を鑑みるに、
月に何冊も海外ものを読むのは物理的に不可能。

というわけで、とりあえず「リヴァイアサン」シリーズを出した
ハヤカワSFシリーズを読んでみることにした。
隔月感というゆっくりめな刊行ペースもいい。
いまのところ全10冊まで刊行が決まっているらしいので、残り7冊。

で、その1発目がこれ。短編が10作収録されている。

でも、ちょっと選択を誤った感がちらほら。
だって話がよくわからないんだもの。

いや、わかるのもあるんだけど、皆目わかんないものもある。
著者のバチガルビという人は「ねじまき少女」という作品でブレイクしたらしいんだが
それと同じ世界を舞台にした作品「カロリーマン」と「イエローカードマン」が
「わからなかった」作品の双璧。
「わからない」というのは
作品中で何が起こっているのかはわかるんだが、どこが面白いのかがわからない。
そういう意味。もうこれはどうしようもない。相性が悪いというんだろうか。

逆に面白かったのもある。
「フルーテッド・ガール」とか「ポップ隊」はけっこう私の好み。

読んでて思ったのは、基本的にみんな未来の話なんだけど
どれも明るく楽しい未来ではないということ。
まあ、50年代は脳天気かつ楽観的な未来を多く描いていたSFも
時代の進歩、科学技術の進歩、そして世界情勢の変容によって
それが許されなくなってきたということなんだね。

短編集の最後に収録されてる表題作「第六ポンプ」は、
まさに化学物質汚染によって緩慢とした滅亡に向かっている人類の日々を描いている。
それでも、主人公は最後にそれに抗う決心をするが
それがあくまで個人レベルの努力にとどまり、全体を動かす力にはほど遠い。
でも、そういう個人の力が積み重なっていかないと
世界は変わらないんだろうなあとも思ったり。

昔だってこういう「悲観的な未来」を描いた作品は多々あったはずなんだが
現代の文明の様子やら世界状況やらを考えながら読むと、
なんだか暗さとやるせなさが段違いに感じられる。


個人的には50~60年代(いわゆる欧米SFが「黄金期」って言われてた時代あたり)の
明るく楽しくて脳天気なSFが大好きなんだけど、現代には現代のSFがあって、
それもまたそれなりに面白いのかなあ・・・って感じた(当たり前だよね)。

このSFシリーズ、もうちょっとつきあってみようかと思ってる。


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「QED 河童伝説」 [読書・ミステリ]

QED 河童伝説 (講談社文庫)

QED 河童伝説 (講談社文庫)

  • 作者: 高田 崇史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/02/13
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

数えたらシリーズ13作目なんだよね。

前作「~ventus~御霊将門」に登場する人物が今作にも引き続き登場する。
そういう意味では前作と続けて読んだ方がいいかな。

河童がすんでいるという言い伝えのある川に、
身体の一部が損壊された死体が次々と浮かび、連続殺人の様相を呈する。

一方、奈々たちレギュラーメンバーは相馬の祭り見物に出かけていき、
そこでまた事件と遭遇する。

13作もよく歴史ネタ(日本史ネタ)が続くなあとも思うが、
ここ何作かは実は一つのネタを毎回ちょっと違う切り口で料理しているような気もする。
「これ、前の作品にも書いてあったことだよなあ」って思うところがいくつか。
ネタを使い回しているのか、
(いい方に解釈すれば)大きいネタなので一冊に収まらないのか。

別にそれが悪いというわけではない。
各作品は充分に歴史ミステリとして面白いとは思う。

聞くところによると、このシリーズは17作くらいで完結するらしい。
だったら、あと4作と言うことに。
歴史の謎解きもいいけど
主役カップルの関係にはきっちり収まりをつけて欲しいなあ。
奈々ちゃんもいつまでも若くないんだし。
沙織と小松崎は何となくくっつきそうなので、放っといてもいいけど。


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「天地明察」 [読書・歴史/時代小説]

天地明察(上) (角川文庫)

天地明察(上) (角川文庫)

  • 作者: 冲方 丁
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/05/18
  • メディア: 文庫




天地明察(下) (角川文庫)

天地明察(下) (角川文庫)

  • 作者: 冲方 丁
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2012/05/18
  • メディア: 文庫



評価:★★★★

あらすじはあちこちで紹介されてるだろうし、映画にもなったので省略。

冲方丁といえば、私にとっては「蒼穹のファフナー」の脚本家。
ライトノベル作家としても評価が確立しているはずだが、
その彼が書いた(たぶん初めての)時代小説である。

まず、とにかく読みやすい。
若者向けの文章で鍛えたせいかも知れないが、すいすい読める。
時代小説を読んだことのない人でも、ほとんど抵抗なく読めるんじゃないかな。

次に、キャラが立っている。
主役級のメインキャラはもちろん、サブキャラにも魅力的な人物がたくさん出てくる。
そして、感情移入が非常に容易だ。
このへんはライトノベル的手法をうまく活用している感じ。
(とはいっても、実は冲方丁のライトノベルは一冊も読んでない。
 「マルドゥック・スクランブル」も1巻の途中で挫折してしまったし。)

物語の中盤過ぎあたりで、ある人物が死去する。
物語的に重要なキャラではあるが、そこまでに登場したシーンはわずか。
しかし、そこで私は涙が止まらなくなってしまった。
そのキャラが死んだことよりも(もちろんそれも悲しいんだが)、
それによって主人公が嘆き悲しむ姿がもう半端なく涙を誘うのだ。
このあたりは本当にうまいなあと思う。

褒め言葉のつもりで書くんだが、冲方丁はキャラの死なせ方がうまい。
というと語弊がありそうだが、
要するに、登場人物の「死」にちゃんと意味を持たせている、と言えばいいか。
その人物の死が、残されたものたちに与える影響とか
ストーリー上の必然性がきちんと計算された上で死なせている、と思う。
(「ファフナー」でもそうだったけどね)


世の中には、キャラを安易に死なせれば感動を呼べると勘違いしている製作者が
たくさんいそうだが、このあたりは見習ってほしいものだ。


この作品は、作中時間で20年以上経過する。
だから、年長者をはじめとして多くのキャラが死んでいく。
もちろんそれらは主人公に衝撃を与えるのだが、
それがまた主人公を使命完遂に向けて走らせる原動力にもつながっていくのだ。


年長者と言えば、この作品にはほんとオジサンにいいキャラが多い。
水戸光圀や保科正之なんて、そのまま長編の主人公がつとまりそう。
(と思ったらすでに「光圀伝」なんてもの書いてたんだね)
建部伝内と伊藤重孝というコンビも絶品。

この作品は映画になってるので、建部と伊藤のキャスティングを見たら
建部が笹野高史、伊藤が岸辺一徳。これはぴったりだねぇ。
ヒロインの宮崎あおいもドンピシャ。主演の岡田准一だけは微妙だが。
(映画自体は見ていないので、映画単体での評価はしない、というかできない。
 ここに書いたのはあくまでキャスティングのみでの話)


最後になってしまったが、この作品の最大の成功ポイントは
主役である渋川春海の造形だろう。

「日本独自の暦を作る」なんて偉業を達成した人物なので
どんな天才かと思いきや、算術の才能に非凡なところはあるものの、
同時代の数学者である関孝和には遙かに及ばない。
そのため、春海は終生、関へのコンプレックスを抱いて生きていくことになる。
しかし、彼はそのコンプレックスをバネにして、彼にしかできない使命に挑んでいく。

かといって眉間にしわを寄せたような気難しい人物ではなく、
明るくユーモアあふれる天然ボケに設定されていて、
親しみがいやがおうにも湧いてきて、誰にも好かれそうなキャラになっている。
(「銀河英雄伝説」のヤン・ウェンリーにちょっと似てるかな。
 ヤンほど切れ者ではないけれど、またそれがいい。)

暦の完成までの彼の半生は、それこそ山あり谷ありなんだが、
読者は春海にどっぷりと感情移入できて、
彼と一体化したまま最終ページまで駆け抜けられる。
それはとても楽しい読書体験だ。


何だかまとまらない文章になってしまったが、
読み出したら最後まで一気に読ませる作品だ。
笑いあり涙あり感動あり。
これぞエンターテイメント、といえる傑作である。

うーん、映画見ようかなあ。
岡田准一の「春海」はどうでもいいけど、宮崎あおいの「えん」は見てみたいなあ。
でも原作からの改変も多いらしいので、そのへんちょっと不安。


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