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星籠の海 上下 [読書・ミステリ]

星籠の海(上) (講談社文庫)

星籠の海(上) (講談社文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/03/15
  • メディア: 文庫




星籠の海(下) (講談社文庫)

星籠の海(下) (講談社文庫)

  • 作者: 島田 荘司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/03/15
  • メディア: 文庫



評価:★★☆

年代は1993年の夏。御手洗が渡欧する直前で、
彼が日本で解決した最後の事件、ということらしい。

物語は、いくつかのストーリーラインで進んでいく。
主なものは3つかな。

その1。
横浜で暮らす御手洗と石岡のもとへ、ある相談が持ち込まれる。
四国は松山の沖、興居(ごご)島に次々と死体が漂着しているという。

現地へ飛んだ御手洗は、潮の干満によって
瀬戸内海に特有の流れが生じていると睨み、
死体が海に投棄された場所が
港町・鞆(広島県福山市)であることをつきとめる。

その2。
演劇を目指して恋人・田丸千早と共に上京した小坂井茂。
しかし夢破れた彼は故郷・鞆に帰るが、さらに千早まで失ってしまう。
失意の茂は新興宗教「日東第一教会」へとのめり込んでいく。
やがて看護学生・辰見洋子とつきあい始めるが
ある夜、洋子に呼び出された茂は、彼女の意味不明な行動に
無理矢理協力させられる・・・

その3。
福山市立大学の助教授・滝沢加奈子は、
地元出身の幕末期の老中・阿部正弘が
開国を迫る黒船を仮想敵として、対抗策を立案した古文書の中に、
「星籠(せいろ)」という謎の言葉を発見する。
対黒船の "切り札" となるらしい「星籠」の探索を始める加奈子。

この3つ以外にもサブストーリーがあるが
やがてそれらは交差したり一体化したりしながら
終盤へ向かっていくのだけれど・・・


冒頭にも記したように、私が本書に与えた評価は高いものではない。
その理由となる点をいくつか挙げてみよう。
以下の記述には、ネタバレになる点もあろうかと思うので、
未読の方はご注意を。


まず、冒頭の死者が次々と流れ着く謎も、御手洗が解くまでもなく、
だいたい海流の影響だろうって分かりそうなものだ。

そして死体の投棄場所が特定されると、
そこには新興宗教の総本山が存在していて、
その宗教がまた胡散臭さ充分。
「オウム事件」の記憶がある人なら、
そこで死体の発生理由も何となく見当がつくだろう。

 ちなみに「日東第一教会」のモデルはおそらく「統一教会」だろう。
 「オウム真理教」もちょっと入っていそうだが。

小坂井茂を巡るエピソードはちょっと長過ぎないか?
こんなに延々と引っ張る必要があるのかなぁ。

 この部分に限らず、文庫で上下巻あわせて
 1100ページを超える分量があるけど、ちょっと冗長に感じる。
 「アルカトラズ幻想」でも同じことを感じたけど、
 作者もトシを取ってきてクドくなってきたのかな?(笑)

辰見洋子が茂を巻き込んだ "謎の行動" についても、
普通にミステリを読んでる人なら容易に予想がつくだろうし。

表題にもなっていて、おそらく本書最大の謎になる(はずの)
「星籠」の正体についても、読んでいるうちに何となく
"あれ" じゃないかと目星がついてくる。


要するに「謎」が解決した時の「そうだったのか!」感に乏しいのだ。
ラストに大どんでん返しを用意していて、それを効果的にするために
意図的に分かりやすく書いてるのかとも思ったのだけど
最後まで読んでみても、そんな意図はなさそうだ。

今回の "犯人" が宗教団体なのも、ミステリ的興味を減じているかな。
もちろん、手を下しているのは "個人" なのだけど、
御手洗は「推理によって容疑者群の中から犯人を特定する」と言う
通常のミステリ的手順をすっ飛ばして
ピンポイントで "犯人はこいつだ" に持っていってしまう。
つまり、なぜこの "個人" に特定できるのか納得できる説明がないのだ。

まるで最初からすべて分かっているみたいで
"名探偵" というよりは "神様" ですね。
本作における御手洗は、全編を通じてこの調子。
勝手にどんどん突っ走って行ってしまって
しかもそれが常に "正しい" んだけど、
読者を置いてけぼりにしないように書いて欲しいなあ。

つまるところ、ミステリ的カタルシスがあまり感じられないのだ。
犯人確保のクライマックスはB級アクション映画みたいだし。

 アクション・シーンが悪いとは言わないけど、
 御手洗潔シリーズにそれを期待する人は少ないんじゃないかなぁ。

登場する女性陣も総じて好きになれないキャラばかり。
今作のヒロイン的立ち位置に一番近いのは滝沢加奈子さんなんだろうが
この人を含めて千早も洋子もみんな我が儘で自己中心的で
さっぱり感情移入ができないのも減点ポイントかなあ。


あともう一つ、私がかなり気になったことを書く。
作中時間こそ1993年だが、本書が発表されたのは2013年。
おそらく「3.11」後に執筆されていると思う。

本書の登場人物の一人に、福島の原発が原因の
被爆を思わせる描写があるのだ。
しかし、1993年時点で何事もなく平常運転していた原発がある地で
放射能漏れがあったことを疑わせる描写は如何なものか。

このテーマに立ち入ると話が難しくなりそうなので
これくらいにしておくけど、
この人物はストーリーに大きく関わることなく退場してしまうし、
被爆描写もこの人物の "不幸度" を上げるためだけに
持ち出されたようにも感じる。

誤解されないように書いておくが
島田氏が原発に対してどのような考えを持っていようと自由だ。
しかし、それを自作(それも創作)の中に採り上げるのであれば
充分な必要性がなければならないし、
その描写には配慮が必要なのではないかと思う。


そんなこんなで高い評価はつけられませんでした。


聞くところによると本書は映画化されたとのこと。
ちょっと公式サイトを覘いてみたんだけど
「日東第一教会」がなくなって、
代わりに大企業がその役回りになっているみたいだ。
やっぱり宗教がらみは難しいのかね。

サイトのあらすじからはよく分からないけど
おそらく福島の原発がらみの部分も
ごっそり削除されてるんではないかな。

個人的には、石岡君が出てこないらしいことが残念。
代わりにオリジナルの女性キャラが御手洗の相棒を務めるらしいが。

 まあたしかに本作の石岡君は、御手洗に振り回されてばかり。
 特に現地入りしてからは御手洗の後にくっついて
 ひたすら彼の言動を記録するだけで、
 ほんとに存在感がなかったから、致し方ないのかな(笑)。

もっと御手洗と石岡の "とんちんかん問答"(笑) が読みたかった私です。


私は「御手洗潔シリーズ」が好きだし、
現代のミステリ界の隆盛に島田氏が果たした功績も
十分に理解しているつもり。
だからこそ期待も大きくなる。

ここまで、なんだか文句ばかり書いてしまったが、
不満が多いのは「期待の大きさ」の裏返しだ。
作者からしたら、勝手にハードルを上げられて迷惑かも知れないが(笑)。

他の人はどうか知らないけど
私が "御手洗潔のシリーズに求めるもの" が本書からは
ほとんど得られなかった気がして、低い評価をつけてしまいました。
御手洗潔ファンの皆様、ごめんなさい。


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mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。
by mojo (2017-02-27 02:09) 

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