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宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち Ⅲ 《総統帰還》 [アニメーション]


小説 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち (3)

小説 宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち (3)

  • 作者: 皆川 ゆか
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/05/25
  • メディア: コミック
同題のアニメーションのノベライズ、第3巻。

サブタイトル通り、表紙にはデスラー総統が堂々と。


内容としては第10話の宇宙ホタルのエピソードから
第13話のテレザート上陸作戦までを描いている。

基本的にはアニメ版に則っているのだけど
そこはそれ今回も500ページ超えのボリューム。
映像版では描かれなかったエピソードや明かされた設定も多い。

追加エピソードとしては、空間騎兵隊関連が多いかな。

ヤマトの女子乗組員たちが、空間騎兵隊を怖がって
遠巻きに眺めているのを見て、餅つきを思いつく永倉とか。

 餅つき自体は旧作Part1のネタだけどね。
 「餅」というものを初めて見たキーマンのリアクションも抱腹もの。

あと、山本が機動甲冑に乗り込むに至った経緯とか
そもそも機動甲冑というものがいつ開発され、
いつヤマトの中に出現したのかも、ちゃんと時系列に沿って描いてる。

 このへん、アニメ版では登場が唐突だったからねえ。

斉藤が永倉を副隊長に任じた理由も案外深い。


これ以外にも興味深いエピソードの追加が。

例えば古代が遊星爆弾で両親が亡くなった日を回想するシーンとかも。
古代の叔父夫婦も登場するので「2199」第14話を思い出したり。

なんといってもテレサのメッセージが現れた後の徳川のセリフがいい。
「わしらは試されたのかな」から始まって
「あれから3年もの月日が経っておる。
 昔の〈ヤマト〉はクルーの価値観が一つだったが・・・」
続けて、いまのヤマトクルーの現状を的確に言い当て、それでも
「最善の結果を模索せねばならんのだ」にいたる一連の流れ。
さすが年の功。このセリフは徳川だからこそ言えるものだろう。
山崎さんがこういう台詞を言うには、もう10年くらいかかるかな(笑)。

 全部を引用するのは、さすがにはばかられるので、
 興味がある方はせひ本書を購入して確かめていただきたい(笑)

デスラーの襲撃~ワープ~チクワ侵入~脱出に至る流れも
アニメ版のような唐突な展開ではなく、
それなりに説得力のあるものになっていると思う。
ただまあ、小説版のような流れがをそのまま映像化してしまうと
リズムやらテンポなりの問題が出そうな気はするが・・・

そして鶴見たちを送り出したあと、
テレザートの岩盤前面にいる艦隊と交戦するヤマト。
ここでの土方のセリフが超絶にかっこいい。
いやぁ、なんでこれアニメで採用しなかったのかなぁ。

 たぶんこの辺はシナリオにあったけど
 尺の問題で・・・ってやつかなあ。

アニメ版ではサッパリ活躍シーンがなかったが、
テレザート上陸作戦でもしっかり航空隊の出番はあったりする。
まあ尺の問題ですね。はい。

そしてクライマックスはゴーランド艦隊への波動砲発射シーン。
ここは第4章のクライマックスだし、
全26話の物語の、前半を締める(ここは13話)シーンでもあるからね。
ここでは機動甲冑のみならず、発艦していた航空隊まで参加して
ヤマトを支える。

 さすがにここまで描くとテンポが悪くなりそうなので
 映像ではカットされたのかな。


これ以外にも、興味深い記述がいろいろと。

白色彗星内部に引き込まれたヤマトが
彗星中心部のデータを得るシーンがあったけど、
小説版では、アニメ版よりも情報量が多めに語られている。
これはもちろん第5章の公開に合わせたものだろう。

このとき彗星帝国のガス体内に遊弋していた艦隊が
アナライザーの計算では推定1000万隻以上、とか
ノイ・デウスーラは複数の波動機関を装備しているので
ワープ明け直後にデスラー砲を打つことが可能だった、とか。


ラスト30ページは鶴見が主役。
負傷した鶴見の回想シーンなのだけど
ここは雑誌に掲載された外伝部分らしい。
第5章で彼がたどる運命を知って読むとなおさら・・・

まずは、航空隊と空間騎兵隊が協力して
テレザート上陸に成功したことがきっちり書き込んであって。

鶴見に姉がいたこと、
同い年の優秀な従兄がいたこと。
彼と比べて、いかにも自分が凡庸であることに
コンプレックスをいだいていたこと・・・。

 このあたり、身につまされる。
 私自身、自分の能力のなさに悩む日々を送ってるし、
 他人と比較してのコンプレックスと
 一切無縁の人なんていないだろう。

でも、この後の加藤のセリフに救われる。
「〈ヤマト〉に特別な人間なんていやしないんだ」
から始まる一連のセリフはもう感涙ものだ。

かつて私が書いた記事と同じことが書かれていたことも思い出したよ。
「ヤマト2199」に関する駄文雑文集(3) ~「さらば」私的考察~

 そう、〈ヤマト〉とは、そういうフネなんだよ。
 そして、「普通の男たちの物語」なんだ。


著者は映像の補完のために書いてるつもりはないだろうけど
この情報量はとてもありがたいし、
本編の裏で展開していた物語を想像する助けになる。

このノベライズ・シリーズは、
”ノベライズ” というものの最適解の一つだと思う。

おしらく完結まであと3巻。楽しみに待ちたいと思う。


さて、肝心の「ヤマト2202 第五章 煉獄篇」の
“感想・・・のようなもの” ですが
今月は公私ともいろいろあって、まだ一行も書いてません(^_^;)

これから書き始めるつもりなんですが
まあ、焦らずにいきます。

 考えたら、「ヤマト」の “感想を書く” なんてことも
 この第五章を含めても、あと3回しかないかも知れないわけで・・・

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ラプラスの魔女 [読書・ミステリ]


ラプラスの魔女 (角川文庫)

ラプラスの魔女 (角川文庫)

  • 作者: 東野 圭吾
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/02/24
  • メディア: 文庫
評価:★★★

いまや大御所となった感のある東野圭吾氏。

初期の作品はけっこう読んでたし、
加賀恭一郎シリーズも途中までは読んでた。
でも今では、必ず読むのは
「ガリレオ」シリーズだけになってしまったなあ。

そんな私が本書を読もうと思ったのは、なんといっても
桜井翔と広瀬すずという2大アイドルスターの共演という話題性。

桜井くん演じるのが地球化学の研究者という役回り、
っていうのもポイントが高かった。

 要するに「ガリレオ」みたいなのを内心では期待していたんだね。

しかしながら、今日に至るも映画は未見(おいおい)。
実は本書を読み終わったのは5月初め。
映画封切りの直前だったのだが・・・


物語は、10歳の羽原円華(うはら・まどか)とその母・美奈が
北海道をドライブしているシーンから始まる。
しかし二人は、突如として発生した竜巻に巻き込まれ、
美奈は亡くなってしまう。

そして数年後。
円華は父親の勤務先である開明大学の敷地内で、
なぜか軟禁状態で暮らしている。
外出する際には常にボディガード兼監視役の
武尾(たけお)が同行することになっていた。

武尾は元警官だったが、円華の護衛役を務めるうちに、
不思議なことに気づいていく。
風に飛ばされた帽子が落下する場所を事前に察知していたり、
彼女が折った紙飛行機は見事な旋回を描いて飛翔し、
そして彼女のもとへ帰ってきたり、
雨の降りやむ時刻を正確に言い当てたり・・・

そしてある日、彼女はその “予想能力” を駆使して
武尾を振り切り、脱走してしまう。

一方、ある温泉地で映像プロデューサー・水城(みずき)が死亡する。
死因は硫化水素による中毒死と思われたが、
同行していた水城の妻・千佐都(ちさと)は
二回り以上も年下であったことから、殺人の疑いも捨てきれない。

泰鵬大学教授で地球化学の研究者・青江修介は
地元の警察の依頼を受け、現場の調査に赴く。
そこで修介は若い女性(円華)を目撃する。
どうやら、彼女は一人の青年の行方を追っているらしい。
彼は事件のあった前日に現場近くに宿泊していたのだ。

そして2か月後、別の温泉地でも同様の死亡事件が起こった。
調査に訪れた青江は、ふたたび円華の姿を目撃する。

二つの中毒死にはつながりがあるのか?
円華が探す青年は事件とどんなかかわりを持っているのか・・・?


読んでいて感じたのは何ともすっきりしない思い。

映画版ではおそらく主役となるであろう青江だが、
小説版ではややキャラが弱いんじゃないかなあ。

快刀乱麻に謎を解くわけでもなく、
どちらかというと円華嬢に振り回される役どころ。
地球化学の知識も事件解決にさほど役立つわけでもない。
年齢も40代で既婚、中学生の息子がいて、
颯爽とした桜井翔を期待して読むと当てが外れるだろう。

物語の展開も、犯人も、ある意味予想の範囲内で進行していく。
それでも先へ向けて読ませるのはさすがのわざだとは思うが。

そして、いちばん気になったのは、円華嬢の特殊能力である。


以下はネタバレに属する内容なので
これから本書を読む、あるいは映画を見る、という人は
目を通さないことを推奨する。


円華嬢の予知能力は、実は外科手術による
一種の脳改造によるものであることが明らかになる。
これにより、彼女はスパコン並みの演算能力を身に着けることになった。

 珠算の達人による暗算の様子なんかをたまにTVで見ることがあるが、
 あれを数億倍(?)にしたくらいの計算を
 瞬時にこなすようになったわけだ。

しかしこの手術、彼女自身が脳改造を自ら望み、
彼女の実の父・羽原全太郎(脳神経細胞再生研究の第一人者でもある)も
それに応じてしまうところはいささかひっかかる。
その背景には母親(全太郎にとっては妻)の死があるとはいえ
娘を人体実験に使うのではマッドサイエンティストだろう・・・

「それがなかったら話が始まらないだろう?」
って意見もあるのはわかるが。

 昭和のヒーローものみたいに、
 その手術をしなければ彼女の命が失われるとかの
 切羽詰まった状況でもあればねぇ。
 そういえば「仮面ライダーV3」(昭和48~49年)が、
 やはり主人公が瀕死の重傷を負い、
 彼の命を救うために改造人間にした、って展開だったなあ。

 ちなみに本作で謎の青年を演じているのは福士蒼汰。
 『仮面ライダーフォーゼ』の主役だったのは偶然だろうが。


しかし、以上の点は私にとってはあまり大きな問題ではない。

「脳がスパコン並みの演算能力を得ればなんでも未来がわかる」
ってことこそ、私がいちばんひっかかったところ。


これ以降の文章は、難癖というか重箱の隅をつつくというか
本作が好きな人にとっては不愉快な文章になってると思います。
ネットでは書く自由もありますが読まない自由もあるので
ぜひその権利を行使していただきたい。


どんなスパコンだって、データがなければ計算そのものが成立しない。

たとえば、冒頭にある飛ばされた帽子のエピソード。
彼女がその様子を見て、落下地点を当てることを考えてみよう。

飛ばされた帽子の質量、速度、角度、回転、そして空気抵抗、
そのときの大気の圧力やら密度やら
関わる要素はそれこそ無限にありそうだし、これを瞬時に、
しかも目で見ただけで数値化するのははたして可能なのか?


天気の変化を予知するのだって、
将来、気象庁にあるスパコンが今の数十倍に性能アップすれば
狭い地域のリアルタイムな天候変化を
瞬時に計算できるようになるかもしれない。
しかしそれは、無数の観測機械から送られてくる
データあってのことじゃないのか?

彼女が空を見上げて入手できる情報だけで
その場所における数時間後の天候の変化を計算できるものなのか?
どう考えても上空の温度とか風速とか湿度とか
最低でも周囲数十キロくらいの気圧配置とか雲の分布とかも
わからないと、まず不可能なのではないかい?


表題の「ラプラスの魔女」は、
「ラプラスの悪魔」から来ているのだろう。

Wikipediaからの引用なので恐縮だが・・・

フランスの数学者ラプラスによって提唱された概念で、
彼は自著において以下のような主張をした。

「もしもある瞬間における全ての物質の
 力学的状態と力を知ることができ、
 かつもしも
 それらのデータを解析できるだけの能力の知性が存在するとすれば、
 この知性にとっては、不確実なことは何もなくなり、
 その目には未来も(過去同様に)全て見えているであろう。」
                 — 『確率の解析的理論』1812年

このような “超知性” を「ラプラスの悪魔」と呼んでいるのだが
円華嬢は「かつもしも」以降の部分の能力は獲得していても
以前の部分の能力は有していないんじゃないのかなあ。

 実はもう一つ書きたいことがあったんだけど
 もういい加減書いてきたので割愛。


「フィクションなんだからそんなに固いこと言うんじゃないよ、
 野暮だなあ・・・」
って意見があるのは百も承知なのだが
なまじ理論的に説明しようとして
かえってリアリティを失っているような気がしてならない。

「大多数の人はそんなとこまで気にしないよ」
たぶんそうなのだろう。でも私は気になってしまうんだよなあ。

いっそのこと超常現象と割り切って
「予知能力なんです」って言いきってくれたほうが
なんぼかすっきりするように思うし、
私もこんなに長々と “難癖” を唱えることもなかったろうに・・・

 いやホントに、こんなに長く書くつもりなんて全くなかったんだけど
 書き始めたら止まらなくなってしまった。

これもまた “東野マジック” なのでしょうかねぇ・・・

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生者の行進 [読書・ミステリ]


生者の行進 (ハヤカワ文庫JA)

生者の行進 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 石野 晶
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/06/05
  • メディア: 文庫
評価:★★★

島田隼人と藤原冬子(とうこ)は1歳違いの従兄妹同士。
家も近所で、幼いころから兄妹のように暮らしてきた。

しかし物心ついたころから、冬子は隼人に対して
強烈(!)な愛情を抱くようになり、
隼人は彼女の振る舞いに悩まされることになる。

隼人の周囲にいる女子はもちろん、男友達まで排除にかかるのだ。
自他ともに認める美少女である冬子は隼人の友人に恋を装って近づき、
相手が本気になったところを手ひどく振って捨て去る。
なんともはや、男心を弄ぶ、とんでもない悪女である。
隼人は何人の男友達、女友達を失ったことか・・・

 美人の従妹にこんなに慕われても、隼人にとって
 冬子は恋愛対象にはならない。
 まあ冬子嬢の過激すぎる性格もあるのだろうが(笑)、
 実はこの二人、隼人の家庭にまつわる、
 ある “秘密” を共有しているのだ。
 そのあたりはおいおい明らかになっていく。

隼人が高校2年生、冬子が1年生になったある日、
病院へかつての友人の見舞いに訪れた隼人。

 その友人は冬子に振られたショックで高校進学を断念、
 さらには交通事故で足を骨折と、なんとも悲惨な人生を送っている。

その病院で隼人は、階段で突如意識を失って
転落しかけた少女・細山美鳥(みどり)を助ける。

彼女は冬子の同級生で、はじめての親友といってもいい存在だった。
意識を取り戻した美鳥は言う。「ドッペルゲンガーを見た」と。

隼人と美鳥を見ていた冬子は、やがて隼人が
美鳥を愛するようになるのではないか、との予感におののくのだった。

やがて隼人と冬子の前に、美鳥にそっくりな人物・スオウが現れる。
そして二人が共有する “秘密” に、
美鳥とスオウも意外な形で関わっていたことも・・・


物語はほぼこの4人のみで進行する。
ちなみに表紙のイラストにある4人がそうだ。
左から美鳥、隼人、スオウ、そして冬子(で、間違いないだろう)。


なんといってもこの物語の推進役は、強烈な個性を放つ冬子さんだろう。
隼人に対するストーカー紛いの執着を除けば
意外にも(失礼!)、料理もうまいし家事もそつなくこなす、
いたって家庭的なお嬢さんだったりする。

 まったく、あの性格を除けば(笑)いい奥さんになれそうで
 隼人の父親など、冬子が息子の嫁になることを
 内心期待しているふしもある(笑)。

隼人も人間的には決して悪くはないんだが、冬子には甘いかなあ。
そこには秘密の共有者という引け目があるのかもしれないが。

何も起こらなければ、このままずるずるといってしまいそうな
二人の前に、突如現れた美鳥とスオウ。

この二人もまた複雑な家庭の事情を抱えていることが
後半明らかになってくる・・・


本書は、この若者4人が過去の軛(主に家族からの)から逃れ、
新たな道へ踏み出すまでが描かれる。
もちろんミステリであるから、そこにはある “犯罪” が
絡んでいるのだが・・・

ラブストーリーとしては、落ち着くところに落ち着く結末かな。
登場人物の描写も、少女漫画的というかライトノベル的というか。
このあたりは好みが分かれるかも知れない。

ミステリとしてはちょっと中途半端かもしれないが、読後感は悪くない。

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神の積み荷を守れ・上下 [読書・冒険]


神の積荷を守れ(上) (新潮文庫)

神の積荷を守れ(上) (新潮文庫)

  • 作者: クライブ カッスラー
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/08/28
  • メディア: ペーパーバック
神の積荷を守れ(下) (新潮文庫)

神の積荷を守れ(下) (新潮文庫)

  • 作者: クライブ カッスラー
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/08/28
  • メディア: ペーパーバック
評価:★★★

海洋冒険小説「ダーク・ピット・シリーズ」第21作。

第1作の刊行が1973年で、いまだに新刊が出るのだから、
もう45年も続いてることになる。
本作の原書が刊行されたのは2010年だけど、それでも37年。
もうそれだけでたいしたものだと思う。
ぜひ48作まで書いてもらって、
「男はつらいよシリーズ」と肩を並べていただきたい(冗談です)。


NUMA(アメリカ国立海中海洋機関)の特殊任務責任者として登場し、
様々な世界的陰謀を阻止してきた主人公のピットも
巻を追うごとに年を重ね、ついにはNUMAの長官へと登り詰める。
長年恋人関係にあった米国下院議員のローレン・スミスとも結婚し、
さらに成人した息子や娘も物語に加わるようになってきて
ここ何作かは「ピット・ファミリー・シリーズ」(笑)になってきた。


トルコ沖で沈没船の調査をしていたピットは
オスマン帝国時代と思われる船から引き上げた遺物を
トルコへ預けるため、イスタンブールへと向かう。

そこで外遊中の妻・ローレンと落ち合うが
二人が訪れていた博物館が謎の一団に襲撃される。

所蔵品の一部が盗まれ、ローレンは拉致され、強盗たちは逃走する。
ピットは直ちに追跡し、妻の奪還に成功するが、
これが中東地域を混乱に陥れる事件の幕開けだった。


オスマン帝国最後の皇帝メフメト6世の血を引く
実業家・セリク兄妹が今回の黒幕となる。

おりしもトルコは大統領選挙の時期を迎えていた。
セリクたちは歴史的遺物の強奪や聖地へのテロを重ねて、
イスラム教徒の怒りを誘おうとしていた。
兄妹の息のかかった急進的かつ過激な原理主義を標榜する候補を当選させ、
トルコ支配の実権を握るためだ。

それを阻止すべく立ち上がるダーク・ピット。
NUMAの長官職にあっても、相変わらず外洋を駆け巡っている。
今回も相棒のジョルディーノとともに、陸に海に大活躍である。

さらにピットの子供たちも見せ場がたっぷり用意されている。

息子のダーク・ピット・ジュニアはイスラエルの発掘現場にいたところを
セリクの一味に襲われ、危機に陥る。
ついでに発掘を仕切っているイスラエル人女性といい仲になるのは
父親譲りというかお約束というか。
親父が愛妻家になってしまったので、
そっち系の発展ぶりは息子の役回りになってきたのだね(笑)。

一方、娘のサマーは1916年に爆沈を遂げた
英国戦艦ハンプシャー号の謎に迫る。この船に乗船していた、
当時の陸軍大臣キッチナーの日記を追っていくうちに
沈没は事故ではなく、英国国教会による陰謀の可能性が浮上してくる。
どうやら、キッチナーの所持品の中に、
キリスト教徒の信仰を根底から揺るがすものがあったらしい。


さすがに長く続いているシリーズらしく、話の運びは手慣れたもの。
4世紀のガレー船に第一次大戦時の戦艦、
現代では小型潜水艇に大型タンカーと、
様々な艦船が登場するのはまさに海洋冒険ものならでは。
それらを駆使したアクションシーンもうまく盛り込んで
読者を飽きさせない。
そして最終的にはピット、ジュニア、サマーの話は
一つに収斂して結末へなだれ込んでいく。


水戸黄門的なマンネリ感を感じないわけではないが
いい方に考えれば、40年以上にわたって
安定した面白さをキープしてるわけで、それはそれですごいこと。
ひと時の読書の楽しみとしては十分なレベルだと思う。

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トッカンvs勤労商工会 [読書・その他]

トッカンvs勤労商工会 (ハヤカワ文庫JA)

トッカンvs勤労商工会 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 高殿 円
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2013/02/20
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

京橋中央税務署の新米徴収官・鈴宮深樹(すずみや・みき)。
口下手で言いたいことも言えずにグッと口ごもってしまうことから
ついたあだ名が “ぐー子”。

直属の上司は、“京橋中央署の死神” と恐れられる
特別国税徴収官(略して "トッカン" )の鏡雅愛(かがみ・まさちか)。

“ぐー子” と ”死神“ のコンビが
様々な税金滞納者と対決する、シリーズ第2弾。

日本橋の大衆食堂《からかわ》の主人・唐川成吉(なるよし)が自殺した。
遺体の傍らには遺書らしきメモ書きがあり、そこには
自殺する前日、税務署に行って鏡に会い、
滞納している税金について話をしたが
ものすごい剣幕で怒鳴られた、と記されていた。

成吉の妻・詠子から相談を受けたのは、
“勤労商工会” お抱えの弁護士・吹雪敦(ふぶき・あつし)。
彼は京橋中央署に現れ、鏡と国税局を相手に
公式な謝罪と損害賠償を求めて訴訟を起こすことを宣言する。

 ちょっとネットで調べてみたのだが、
 “勤労商工会” という名称の団体自体は存在しないらしい。
 経済産業大臣の認可のもとに地域ごとに設立される
 “商工会”というものがあるので、それがこのモデルだろう。

 本作中の “勤労商工会” は、税務行政の改革をスローガンに
 デモ活動なども積極的に行う、税務署の “天敵” として描かれている。

成吉の残した日記など、鏡にとって不利な状況にもかかわらず
本人は外回りや出張に明け暮れ、ぐー子と話す機会もない。
彼女の心配は募るばかり・・・


今回から登場する新キャラもまた濃いメンバーがそろっている。

“ナポリ育ちのジョゼ” と自称する
謎の弁護士・本屋敷真事(ほんやしき・まこと)、
唐揚げ作りの修行に明け暮れる
謎のプー太郎・里見輝秋(さとみ・てるあき)、
如何にも胡散臭いこの二人組は、鏡の幼なじみでもあるという。

 もっとも、鏡は栃木県出身なので、
 本屋敷の “ナポリ育ち” はもうそれだけで充分に怪しいのだが

“はるじい” こと、ぐー子の新しい後輩・錦野春路(にしきの・はるじ)は
古美術商の娘で、美術品の鑑定ではかなりの目利き。
錨貴理子(いかり・きりこ)も新しい同僚で、34歳の既婚者。
バリバリ仕事をこなしていくのだが、そこにはある秘密が・・・

そして今回、堂々の悪役を張るのは
「まあそこは、蛇の道は蛇で・・・」が口癖の弁護士・吹雪。
鏡の訴訟をステップに、何やらもう一段上のことを企んでいる様子。
嫌らしい物言いで、次第にぐー子を絡め取っていく・・・


鏡を相手取った訴訟騒ぎを縦軸に、
様々なキャラたちのユニークなエピソードを横軸に展開する
ユーモア・エンターテインメントの傑作だ。


前作では、自らの過去と向き合ったぐー子が
今作では「現在の自分」について悩み出す。

優秀な上司(自分はまだ独り立ちできていない)、
仕事の早い先輩(自慢じゃないが私は仕事が遅い)、
そして “特技” をもつ後輩(私にはそんなもんはない!)に囲まれ、
ぐー子の悪戦苦闘の日々は続く。

自分はこの組織の中でやっていけるのか、いや、自分に居場所はあるのか。
そして、どうやったら居場所を見つけられるのか・・・

訴えられた鏡のことも心配だ。
“残念女子”・ぐー子さんの悩みは尽きない。

時には悩んで逡巡し、時には後先考えずに猪突猛進する。
読者は前作に続き、この愛すべきヒロインにエールを送るだろう。

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